日立グループは、総合電機メーカーである株式会社日立製作所を中心に、IT(情報技術)で高度化された社会インフラを提供する「社会イノベーション事業」のグローバル展開を推進し、さらなる成長に向けた変革(Transformation)を加速していくとともに、社会インフラに関わる地球規模の課題解決に貢献している巨大企業グループです。その健康保険組合も、日本で最大規模となっています。巨大企業グループの健康保険組合は、どのような取り組みを行っているのでしょうか。常務理事の棟重さんと保健事業課長の根岸さんにお話を伺いました。
日本最大規模の企業健康保険組合
日立健康保険組合は、2012年12月末現在で、加入事業所数328事業所(263社)、被保険者数は約26万9千人(男性:約23万2千人、女性:約3万7千人)、その中には、特例退職被保険者制度への加入者(退職者の方が60歳以上74歳まで当健康保険に継続加入)を3万7千人含んでいます。さらに、被扶養者約29万人をあわせて、約56万人が加入している日本最大の企業健康保険組合です。
もともと、日立製作所内には10の健康保険組合がありましたが、1986年4月にそれらの健康保険組合を統合し、「日立製作所健康保険組合」を設立したのが日立健康保険組合のはじまりです。その後、日立グループに属している会社が設立した複数の健康保険組合との合併を行い、現在の規模まで大きくなりました。
もともと、日立製作所内には10の健康保険組合がありましたが、1986年4月にそれらの健康保険組合を統合し、「日立製作所健康保険組合」を設立したのが日立健康保険組合のはじまりです。その後、日立グループに属している会社が設立した複数の健康保険組合との合併を行い、現在の規模まで大きくなりました。
▲日本最大の健康保険組合で、データ分析に基づき、効果的な保健事業の施策に目を向ける常務理事の棟重さん
このように規模が拡大を続けているのに加え、事業所・加入者が全国各地に分布しているという現状がある中、保健事業については、20名程度の職員で実施しています。そのため、保健事業をより効率的に、効果の高い事業に集中して行っていく必要があります。
日立健康保険組合における健康増進事業の取組み(選択と集中)
社会的な背景として、超高齢化社会の進展、医療費・拠出金の増加、生活習慣病の増加、高齢者医療制度の創設といった社会背景を踏まえ、予防可能な医療費の増加を抑制することを目標に、「医学的根拠に基づく、経済効果が高い健康・疾病管理事業の確立」を目指し、2次予防(早期発見・早期治療)中心の事業から、1次予防(重症化・合併症の防止)、3次予防も含めた包括的な予防事業へのシフトを進めています。具体的な施策としては、保健事業支援基盤システムの構築(徹底したIT化)を梃子に、心身ともに健康で活力ある生活(QOL:Quality Of Life)・健保財政健全化実現を目指すべく、選択と集中による保健事業改革を実施してきました。
まず、第一段階として、1999年度から2007年度にかけて、事業資産及びコストの適正化を行いました。直営保養所を閉鎖・売却したり、会員施設の契約口数削減を行ったり、大規模な事業費の見直しを行いました。その結果、事業費は、2007年度は1999年度に比べて約50億円を削減することができました。
次に、第二段階として、事業の重点化を行いました。加入者の医療費に関して、年齢別・疾病構造を確認してみたところ、生活習慣病が30%で最も多く、次いでがんが15%を占めていました。さらに、生活習慣病のうち、予防可能な疾病は約8割ということも判明いたしました。そのため、予防重視の健康増進事業へ、事業を集中させました。特定保健指導やがん検診を含む疾病予防費の比率を増やし、健康増進施策を実施するための健康管理費の比率を増やしました。直近の2011年度の予算では、保健事業費全体における疾病予防費の割合は、約9割と非常に高い割合を占めています。
また、6年前に、「特定健診等の義務化に関する検討委員会」を設置しました。この委員会は、特定健診・特定保健指導の効果的な実施に向け、各種データの集計・分析結果を基に制度設計及び見直し等検討を行うために設置したものです。構成メンバーは、事業主病院(健診センタ)医師、産業医療推進センタ、株式会社日立製作所福利部門、健康保険組合職員、計13名です。定期的に委員会を開催し、健診結果の分析、特定健診・保健指導の実施規模や基準、補助制度の見直し等について検討しています。