職域でのがん検診に関する情報
の取扱について
会社が実施する
①社員への結果通知の際に、検診結果と併せて紹介状も発行してもらうなど、精査の勧奨まで行なってもらえるよう、検診機関と交渉します。
②精査未受診者数を検診機関から経時的に入手(個人を特定しないように)して、定期的に受診勧奨のアナウンスをします。
事業所内にて、個別に精査勧奨をするには、
③「事業所内で精査勧奨することが、従業員の健康の保持・増進に有益である」ことを(安全)衛生委員会で審議して、労使双方が承認します。
④産業医や保健師などの医療職のみ検診結果情報を取り扱う仕組みとします。
⑤検診受診時に、検診結果情報の取り扱いについて同意を得ます。
医療職以外は、結果を見ることができません。
医療職がいない場合は、社内では検診結果の取り扱いをすることができないため、本人への通知のみとなります。
「結果は本人のみに通知されること」を(安全)衛生委員会等や社内に通知できる会議で提示して、自ら精査受診してもらうように周知徹底します。
また、社員が要精密検査と診断された場合の対応の仕方、「相談窓口」があることを案内しておきます。
- 01社員の同意をとる
- 02検診実施
- 03実施後の対応
がん検診の結果について、会社や健康保険組合が最も留意しなければならないのは、従業員のプライバシーへの配慮です。従業員から収集する情報は必要最小限にとどめるようにすると同時に、社内・組合内での当該情報を知る範囲についても、本人同意の上、最小限の範囲に限定される必要があります。
- ① 情報の収集と同意
-
取り扱う従業員の健康情報等の内容は必要最小限とします。
労働安全衛生法で定められた、検診項目以外の労働者の健康情報等を収集する場合には、あらかじめ本人の同意を得て、本人を通して行うことが望まれます。
これらを第三者へ提供する場合も、原則、本人の同意が必要です。 - ② 健康情報の整理と管理
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従業員の健康情報等を取り扱う者と、その者の権限を明確にします。
情報は特定の部署で一元的に管理し、業務上必要と判断される範囲で集約・整理した情報を必要とする者に伝えられる体制が望まれます。 - ③ 健康情報取扱規程の作成
-
健康情報等の取り扱いについて、衛生委員会等の審議を踏まえて一定のルールを策定し、関係者に周知することが重要です。
また、情報の漏えいがないよう対策が必要です。
なお健康情報取扱規程は、会社全体の方針の元で事業所毎に策定することが必要です。
同じ会社であっても、事業所毎で医療職の有無など、状況が異なることが予想されるからです。
がん検診の結果などの法定外項目については、現時点では「『医療職のみ』が扱い、『加工(翻訳)』できる」とします。※医療職による情報の加工(翻訳)とは
情報そのものを会社に伝えるのではなく、社員のプライバシーを保護した上で、業務上配慮すべきことのみを伝えることを加工(翻訳)と言います。
医療情報については、専門的知識がない方にとっては時に誤解や偏見を生む可能性があります。例えば、「胸部レントゲンで肺がんの疑いありのため、精密検査が必要」という内容について、「胸部レントゲンで肺がんの疑いあり」という情報は、不要な誤解を招く可能性があり、会社には、「検診で必ず精密検査が必要という結果なので、早々に精密検査を受診できるように配慮して下さい」という内容で伝えれば十分です。
根拠となる法律等
【個人情報の保護に関する法律】(平成15年5月制定、平成17年4月から施行、平成29年、令和3年改正)
個人情報を本人以外の第三者に渡すときは、原則として本人の同意を得ることとしていますが、要配慮個人情報にあたる健康管理の情報は、オプトアウトの手続き(本人の求めによる第三者への提供停止)が認められていません。
【労働安全衛生法第104条の新設】
健康診断並びに第66条の8第1項の規定による面接指導の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならない。とあり、事業所毎に適切な情報管理ができるように、健康情報取扱規定を策定することが必要になりました。
取扱規定の手引きは、以下のURLを参照してください。
事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き
01.社員の同意をとる
がん検診の実施にあたっては、健保組合が提供するオプション検診であっても社員ががんについて正しく理解し、がん検診の重要性を認識できるよう十分な説明を行うことが必要です。
会社への周知
がん検診を実施することについては、(安全)衛生委員会にて審議の後、会社全体に周知します。
【方法】
- 職場の衛生担当者を通じて周知する
- 説明会を開催する
- 社内HPや掲示板を介して周知を図る
- 社内の健康情報取扱規程に記載し、いつでも閲覧可能な状態にする
健康情報等の取扱規程(サンプル)
別表
社員への説明
社員に個別に説明を行う必要があります。説明には、以下のような内容が含まれるようにしましょう。
【方法】
- 職場の衛生担当者を通じて周知する
- 説明会を開催する
- 社内HPや掲示板を介して周知を図る
- 社内の健康情報取扱規程に記載し、いつでも閲覧可能な状態にする
健康情報等の取扱規程(サンプル)
別表
【説明内容】
- がん検診の目的が本人の健康管理のためであること
- がん検診結果の取り扱いの目的が、精度管理と精密検査勧奨のためであること
- 本人の費用負担(個人負担がある場合)
- がん検診及び結果についての相談窓口
社員の個別同意
会社全体の方針としてがん検診を実施することが決まった場合も、社員自身に検診を受けるか否かの意思を確認し、同意を得る必要があります。
また、受診率が低い場合には受診勧奨を行うならば、受診の有無に関する情報取得についても同意をとる必要があります。
同意は、原則文章で得る方法が望ましく、
1)書面上に「同意する」「同意しない」の両欄を設け、選択してもらう 2)本人が同意書に署名する
同意の有無についてはこの方法が最も適切です。
また、同意書を回収する際には、他の人に同意の有無を類推されないような配慮が望まれます。
一方、対象者数が多い場合や、電子的なシステムに組み入れた場合、画面上に、「同意する」「同意しない」の両欄を設け、選択してもらう方法も可能です。
また、問診票にがん検診を受診するかどうかの欄を設けて、選択してもらうことでも可能です。
【電子的なシステムに組み入れた場合の例】
- 本人からの同意する旨のメールの受信
- 本人による同意する旨のホームページ上のボタンのクリック
- 本人による同意する旨の音声入力、タッチパネルへのタッチ、ボタンやスイッチ等による入力
※尚、オプトアウト(目的を提示して検査することを拒否する人に申し出てもらう)方法では同意とはみなされませんのでご注意ください。
※
入社時に一度取得すればよいもの
健康情報取扱い規程に関する同意書
※
精密検査勧奨実施時に取得するもの
(会社が実施)がん検診における精査勧奨実施についての同意書
別紙:精度管理とは
※
従業員から開示・訂正・使用停止・削除を請求された場合に取得するもの
健康情報等の開示等請求書
02.検診実施
精密検査が必要と判定されたら、必ず専門医による精密検査を受診するべきです。
がん検診で精密検査が必要(要精検)と判定された場合、「がんの疑いがある」可能性があります。より詳しい検査を行い、本当にがんがあるかを調べる必要があります。「症状がない」「健康だから」といった理由で精密検査を受けないと、がんを放置してしまう可能性があります。
精密検査を受ける医療機関は、がん検診の種類によって異なります。
03.実施後の対応
検診結果を放置させないために、検診後の対応も行いましょう。
①衛生委員会等を通じて、個人が特定されないように、精密検査を受けていない方には精密検査を受けるように案内を出しましょう。
②「精密検査の受診率を上げるためには、どうすべきか?」を衛生委員会の議題として、労使で案を出す。など、
精密検査への関心を高めることをしましょう。
相談窓口の設置
検診結果を会社が取得する場合もしない場合も、検診や結果について、社員から相談や質問が寄せられることが考えられます。あらかじめ相談窓口を設置し、周知しておくことが望ましいでしょう。相談対応にあたっては、守秘義務を守ること、健康管理の目的以外に情報を用いないことを徹底するようにしましょう。
非医療職が窓口となる場合は、必要に応じ医療職と連携をとるようにしましょう。
相談窓口の例
医療職(産業医・産業保健看護職) | 最も望ましい |
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衛生管理者 | 医療職と連携することが望ましい |
人事部門・総務部門 | 担当者を特定し、健康管理以外の目的では結果を利用しない等の情報管理を徹底する必要がある |
【相談事項として考えられる例】
- 検診のメリット、デメリット
- 結果の取り扱いに関するもの
- 検診結果への対応に関するもの
- 就業上の配慮に関するもの
- 医療機関・社会制度に関するもの
- ハラスメントに関わるもの
精密検査の受診を促す
がん検診結果でがんの可能性があると診断された場合、本人に自覚症状がなかったとしても、必ず専門医による検診を受診するべきです。
本人へ検診結果が通知される際に、専門医への受診の必要性について十分な情報提供を行い、受診につなげましょう。