職域でのがん検診に関する情報
の取扱について
職域でのがん検診に関する情報の取扱についてのQ&A
よくあるご質問やそ回答を掲載しています。
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がん検診実施について「会社・社員への説明」は必ず行うべきですか。
がん検診の会社実施について、法定項目外であることから安全配慮義務には該当しません。安全衛生委員会などでがん検診の意義を伝えた上で、検査と精査勧奨について希望制にすることについては、あくまで本人の健康保持の責任になる点を安全衛生委員会で社員に通知することで問題ありません。ここの通知が大事で、安全衛生委員会出席者だけが理解するのではなく、社員全員に理解できるように通知したという実績を残しておくと、その心配はなくなります。
社員の「受診の意思確認と同意」「受診勧奨を行う際の情報取得の同意」は必ずとるべきでしょうか。
がん検診の受診の意思の確認は、がん検診を申し込んだことで確認ができると思いますので特に同意は不要です。一方で、がん検診の個人の結果を会社が取り扱う場合には注意が必要で、その場合は「誰が取り扱い、精査勧奨する」という取り決めをして、社員に情報取り扱いに関する同意を必ずとっておく必要があります。
がん検診を希望制にし、受診しなかった社員に進行がんなどが見つかった場合、会社は安全配慮義務を怠ったことになるのでしょうか。また、精密検査勧奨実施時の同意書に「希望しない(あるいは希望するも受けない)」従業員がいた場合、所見がありながら放置・積極的に対応しなかった場合も同様でしょうか。
がん検診の受診は任意であり、法定項目外として社員の健康を補助するサービスとして実施されると言う点で、安全配慮義務の範囲外となります。また、「結果に基づき自ら精査の行動をとる必要性があることを事前に周知徹底している」ことが大事で精査勧奨は、あくまで追加サービスの一環として行うことを事前に通知しておけば、安全配慮義務の範囲外となります。
通常の健康診断の結果とがん検診の結果は、情報の取り扱いの規定が異なると思います。がん検診は法定外項目なので、医療職のみが結果を取り扱えるとありました。当社は提携医療機関に健康診断とがん検診を依頼しているため、通常の健康診断の結果とがん検診の結果が同封されて送られてきてしまいます。社員に同意取得をしていれば、医療職以外のものが結果を取り扱っても問題ないでしょうか。
事業所で「健康情報取り扱い規定」を作成し、それに社員が同意していれば、取り扱いは可能になります。つまり、健診結果やがん検診結果情報を取り扱う人を限定して、その人だけであれば、情報を見て良いという内規を会社で作り、それに社員の同意を得ておくという手順となります。
医療職がいない事業所は沢山ありますので、医療職以外が取り扱う場合には、「健康情報取り扱い規定」を策定して、取り扱う人を限定し社員が同意すれば、取り扱いは可能になります。
当健康保険組合では現在、任意型がん検診として、CTがん検診を全年齢の希望者を対象に行っている。年に一度、自己負担5,000円、健保が22,000円を負担しているが、この実施方法についてご見解をいただきたいです。
がん検診の目的をどう捉えるかによります。がん検診のメリットは、そのがんでの死亡を防ぐことが第一です。そのほか、がん患者の生活の質の向上、がん患者の医療費削減、がんではない人が安心できること、などです。デメリットは時間とお金がかかることのほか、検診の苦痛やダメージ、検診による偽陽性、過剰診断などがあります。もちろんCT検診なので被爆の問題はあるので、子どもや若い世代はCTがん検診を受けるべきではないです。
がん検診で発見できないものもあるのでしょうか。
検診によって必ずがんが発見できるものではなく、べつの病変が見つかる、偽陽性の可能性もあります。例えばCTがん検診を受けたら、追加の検査をする、場合によっては針を刺す、開腹する可能性などのリスクもあり得ます。過剰診断の問題も大きく、放っておいてよいものも見つけてしまうこともあります。前立腺がんはその典型的ですが、死ぬまで悪化しないものをがん検診で見つけてしまうこともあります。
健保で実施するがん検診はどのように決定すべきでしょうか。
メリットとデメリットのバランスを鑑みて、何をやればよいか判断することが重要とされます。その中で、がん検診による効果があり、デメリットが少ないのが、国が推奨している5つのがん検診です。なので、基本的にはこの5つのがん検診を受診すればよいので、これ以上やる必要性はありません。中には40歳以上が対象とされている乳がん検診を30歳から実施する企業もありますが、場合によってはデメリットが大きいこともあります。
健保で長くCTがん検診を実施してきて、毎年受けている人もいます。長く提供してきたことを止めづらいのですが、どのようにしたらよいでしょうか。
CTがん検診自体も、福利厚生の一環として時間と費用をかけて被保険者へサービスを提供するということだと思います。医療者目線だとデメリットが大きい可能性が十分あると言わざるを得ません。特に過剰診断に関しては理解が難しく、実感としてもわかりづらいです。少なくとも、20~30代の若い世代はCTがん検診を受ける必要はありませんので、段階的に若い世代からサービスを外してもよいのではないでしょうか。続けていたサービスを中止する決断は難しいと思いますが、どういった理由付けをしてサービスを減らしていくかは他の健保や企業にも重要な事例となると思いますので、今後、企業アクションも含めて一緒に考えていってはどうでしょうか。
20~30代はCTがん検診の対象から外していきたいと思いますが、受診回数の頻度として数年に一度受けるなどの指針を健保から示してもよいものでしょうか。
CTがん検診を何年に一度受けるべきというのは、根拠がないので申し上げられません。端的に申し上げると、最終的にはCTがん検診はやめるべきだと思います。国が推奨するがん検診に合わせていくのが望ましいです。ただ、健保様の考えもありますし、高齢の方にCTがん検診を提供したいのであれば、デメリットも踏まえた上で検討してほしいと思います。