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2021/2/24
2021年2月24日 全国3ブロックセミナーを仙台で開催しました

令和2年度がん対策推進企業アクション「職域におけるがん対策の最新情報」の仙台セミナーを宮城県仙台市の仙台ガーデンパレスにて、会場とオンラインによる同時配信にて開催しました。

当日は、がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長の中川恵一先生、産業医の五十嵐侑先生、がんサバイバーの認定講師鈴木信行さんの講演、登壇者と地元企業代表によるパネルディスカッションを行いました。

■プログラム

がん対策推進企業アクション事業説明

がん対策推進企業アクション事務局

講演① 「コロナ禍におけるがん対策のあり方」

中川恵一先生(がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長/東京大学医学部附属病院放射線科准教授)

講演② 「企業における両立支援とがん検診の取り組みについて」

五十嵐侑先生(産業医/五十嵐労働衛生コンサルティング合同会社)

講演③ 「がん体験者が語る職域で活かせる3つの視点」

鈴木信行さん(精巣がん・甲状腺がん 罹患経験者/がん対策推進企業アクション認定講師)

パネルディスカッション(意見交換)

中川恵一先生、五十嵐侑先生、鈴木信行さん、髙橋一美さん(髙橋屋根工業株式会社 代表取締役)

質疑応答

がん対策推進企業アクション事業説明
がん対策推進企業アクション事務局 事務局長 大石健司

講演の様子

がん対策推進企業アクションの推進パートナー数は、2月10日現在で3516社・団体、従業員総数は約790万人と日本の総就業人口の10%を超え、さらなる事業発展を目指し、企業のがん対策を支援するとともに未来のそして日本のがん対策の重要な一翼を担っていきたいと思います。

2020年度は新たに4つの取り組みをスタート

・YouTubeの動画配信

・優良企業表彰制度の新設

・女性会議「Working RIBBON」の発足

・e-learning「がん予防と両立支援」のリリース

日本では現在年間約100万人ががんに罹患し、その3分の1が働く世代で、会社員の死因の約半数ががんです。企業のがん対策は待ったなしの状況といえます。

企業ができるがん対策は、主に3つ

①がん検診受診率のアップ

②がんについて会社全体で学び、正しく知る

③がんになっても働き続けられる環境を作る

今後、女性のさらなる社会進出、定年の延長による就労者の高齢化などから従業員のがん罹患問題はより深刻になっていきます。

がん対策推進企業アクションは、このような問題から従業員を守ることを念頭に活動を強化しています。

企業・団体におかれては、小冊子、セミナー、専門医やがんサバイバーによる出張講座、コンソーシアム活動など、さまざまなコンテンツを有効活用していただき、対策を進めていただければと思います。

講演① 「コロナ禍におけるがん対策のあり方」
中川恵一先生(がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長/東京大学医学部附属病院放射線科准教授)

講演の様子

日本人は「がん」のことをあまり知りません。

働く人の病死の原因の9割ががんというデータがあります。がんは高齢者の病気だと思われている方も多いですが、20〜30代の若い世代では女性の方が、がん罹患者は多くなっています。一生のうちで男性は3人に2人、女性は2人に1人ががんになるデータからも、働く女性が増え、定年の延長などで長く働くようになると必然的に社員のがんは増えていきます。

がんの特徴は、症状を出しにくい病気だということです。痛みなどの症状が現れるのは末期になってからで、その時点で発見しても手遅れということになってしまいます。症状の出ない早期にいかに発見するかが大切で、そのために最も有効なのががん検診です。どんなに体調がよくてもがん検診は必ず受診しなければなりません。

また、乳がんなどは自分で乳房を触ってチェックすることができますので、セルフチェックも重要です。

最近のコロナ禍において問題となっているのが、がん検診受診率の低下です。

新型コロナで亡くなった方は2021年2月13日時点(NHK調べ)で累計約7000名。一方、がんで亡くなる方は1年間で約38万人と新型コロナの55倍以上となっています。新型コロナは大変怖い病気ですが、がんも大変怖い病気なのです。そして、新型コロナはワクチンなどの普及により徐々に鎮静化していくでしょうが、がんは人口の高年齢化が進む日本では今後も増え続けていくことが予想されます。

コロナ禍のがん対策には3つの問題点があります。

①在宅勤務による生活習慣の悪化

②がんの早期発見の遅れ

③がん治療への影響

①の中でも「座りすぎ」は大きな問題で、アメリカの研究(テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)によると座りすぎは、がんのリスクを1.8倍に高めることがわかりました。糖尿病は1.2倍、喫煙は1.6倍のリスク、座りすぎの影響は非常に大きいのです。また巣ごもりによる飲酒も増えています。1日3合以上の飲酒は、がんになるリスクを1.6倍に増やします。

日本人は平均7時間座るといわれており、世界で最も長く座る国です。座りすぎによる健康リスクを軽減するためには1日60分以上の運動が必要ですが、そうもいきません。座っている時間の中でできることは「30分ごとに立つ」あるいは「貧乏ゆすり」です。特に貧乏ゆすりは、在宅であれば他の人に迷惑をかけることもないので簡単にできて健康リスクを減らせる有効な手段だと思います。

②では、コロナ禍でがん検診が止まったり、受診することを躊躇したりして受診率が減っており、通年では3割ほど減少するのではないかと言われています。早期がんは1年で進行がんになってしまいますので、がん検診は毎年受診しなければなりません。がん検診は決して不要不急ではありません。

医療機関はきちんと感染症対策が取られていますので、必ずがん検診を受診して欲しいと思います。

③も同様に、新型コロナを恐れてがん治療を自粛してしまい、がんが進行して治療が難しくなったり、治療できたとしても再発リスクが高まってしまう例が見られます。

例えば放射線治療などは、手術と比べて感染リスクは低いので、治療の選択肢に入れることも必要です。

新型コロナを軽視してはいけませんが、がんは新型コロナと同等以上に大事な問題ですので、きちんとがん対策をとっていただきたいと思います。

講演② 「企業における両立支援とがん検診の取り組みについて」
五十嵐侑先生(産業医/五十嵐労働衛生コンサルティング合同会社)

講演の様子

職域でよくあるがん対策の課題は

①がんの予防について知らない

②精密検査を受診してくれない

③がんになったら会社をやめてしまう

の3つが代表されます。

①に関しては、がんにならないための予防行動が取れるようになることが大切です。具体的には「禁煙」「節酒」「身体を動かす」「適正体重を維持する」「食生活を見直す」の5つの健康習慣を実践することでがんになるリスクが低くなります

(参考:https://ganjoho.jp/data/public/qa_links/brochure/knowledge/301.pdf)。この健康習慣を従業員に対して進めていくことで、結果的にがんを減らしていくことになります。また、ウイルス感染の予防も大切です。

がんのリスクチェックもおすすめです。

予防をしっかりと行い、がん検診を受診するようにしましょう。

②は早期発見・早期治療のために精密検査は積極的に促して、受けるようにしなければなりません。要精密検査者の中から実際にがんが見つかる確率(年齢によっても異なる)はざっくりと、肺がん2.22%、胃がん1.5%、大腸がん2.77%、乳がん4.15%、子宮頸がん1.68%です(参考:https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/data/detection/)。このような情報を利用した社内報などでの啓発活動のほか、受診のための有給休暇取得の推奨や残業を減らすこと、産業保健職を活用して精密検査の受診勧奨をして欲しいと思います。

③はがんになっても働き続けられるような環境づくりです。

第1条 社員の気持ちに寄り添う

第2条 本人の意向を確認し、話し合う

第3条 がんのイメージに振り回されない

第4条 状況の変化に柔軟に対応する

第5条 個別性を考慮する

第6条 個人情報の取り扱いに気をつける

第7条 周囲の社員への配慮も忘れない

この7ヵ条を覚えておいて、支援を必要とする個人の状況に合わせて役立ててください(参考:https://web-cache.stream.ne.jp/www11/nikkeibpw/adweb/guidebook_l.pdf)。

また、休暇制度や勤務制度の整備、関係者との役割の整理や連携も重要です。

主治医との連携においては、厚生労働省の「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」の様式を参考にするとよいでしょう。

最後に

・がん検診の結果は個人情報のため管理に注意すること。

・がん検診や精密検査を受ける受けないは本人の意思次第であること。

・腫瘍マーカーや〇〇でわかるがんチェックといった、まだ精度が不確かながん検診は不必要な不安を招く恐れもある。

ということに注意してください。

がん対策の推進は、それ以外の様々な事情を抱えた従業員の支援にもつながります。

講演③ 「がん体験者が語る職域で活かせる3つの視点」
鈴木信行さん(精巣がん・甲状腺がん 罹患経験者/がん対策推進企業アクション認定講師)

講演の様子

「私のがん体験」「いま思えば組織の一員として」「社会資源のうまい活用法」の3つの視点からお話をさせていただきます。

私は生まれつきの身体障害者です。そして、大学時代の20歳で精巣がん、24歳で精巣がんの再発、46歳で甲状腺がんを経験しています。

「私はがんにはならない」と他人事として捉えている人も多いと思いますが、もしもがんになってしまったらどうなのか? ということを是非考えてみてください。がんと告知された瞬間から、仕事、家族、お金など、さまざまな問題が降りかかってきます。

私は人生で3回のがんの治療を経験していますが、中でも2回目の精巣がんの再発の治療の時は、人生を終わろうかなと思うくらい落ち込みました。普通は治療をしていくことで気持ちも持ち直すのでしょうが、なぜか私の場合は治療をすればするほど気持ちは落ち込みました。その時は、勤めていた会社に突然病院から電話がかかってきて、翌日検査、1週間後には手術という緊急性の高い治療が行われ、私は言われるがままの治療を行いました。

46歳での甲状腺がん罹患のときは、逆に気持ちの落ち込みはありませんでした。むしろ、もしもの時に妻に自分の仕事の残務整理をさせたくない、迷惑をかけたくないといった気持ちから当時やっていた自営業の整理を行い、NPO法人の理事長も手放しましたが、それは人生の「選択」と「集中」ができた時期だったのです。今考えると人生のいい機会でした。この経験のおかけで現在本当にやりたいことができていると思います。

言われるがまま治療していた時とは違い、自分で自分の人生を選択して好きなことに集中できたことで、現在モチベーションを高く保って生活できています。がんとは恐ろしい病気というイメージがあると思いますが、ある意味人生を変えてくれる機会でもあります。

2回目の甲状腺がん再発時は、企業に勤めていたので産業保健スタッフにお世話になり、社内制度も活用させていただきましたが、今思えば産業保健スタッフをもっと活用すれば良かったと感じています。当時は、産業保健スタッフがどのような役割の人なのかがわかっておらず、上司との面談時に同席している人くらいの感覚だったのです。

当時8か月間入院、3週間の自宅療養、1週間の慣らし勤務を経て復職しましたが、辛いのは仕事ではなく通勤でした。私は二分脊椎症という障害で杖を使っていることもあり、通勤時の満員電車や階段の上り下りで会社に着く頃にはぐったりとなってしまいました。会社では座って仕事ができるので、仕事自体に辛さは感じませんでした。

また当時は、がん患者への「偏見」と「思い込み」なのか、普段通りできないだろうから簡単な仕事に、などという間違った配慮もあり、私には苦痛でした。私自身も思いの丈を正直に伝えられなかった部分もあります。

治療と仕事の両立には、会社に「上手に甘える」ことが必要です。“今は借りる、でも元気になったら返す”の精神で、がんになったからといって会社をすぐに辞めないで、産業保健スタッフなどに相談し、甘えられるという環境や雰囲気が大切です。もしがんを発症した方の同僚という立場になった時には、上手に甘えさせてあげて欲しいと思います。

そして、誰もが使える身近な医療資源として、保険薬局などにいる薬剤師さんが役立つことを知って欲しいです。薬剤師さんは専門の知識や技量を持っていますので、個別の相談にも応じていただけると思います。

また、お薬手帳に医師への質問、処方薬の残数、自分の希望することなどを書き込み、上手に活用することで、お薬手帳は健康手帳・人生手帳となり、医療機関との情報共有がスムーズにいきますし、アドバイスも受けやすくなります。

ぜひ参考にしていただければと思います。

パネルディスカッション(意見交換)

講演の様子

中川恵一先生、五十嵐侑先生、鈴木信行さん、髙橋一美さん(髙橋屋根工業株式会社 代表取締役)

パネルディスカッションに先立ち、地元で屋根工事業を営む髙橋一美さんより、自社で行っているがん対策として、創立記念日に合わせて役員・従業員全員を対象とした検診車による健康診断の実施、再検査になった社員への早期診察の推奨、がんや健康に関するポスターやチラシ等の掲示・配布等が発表されました。

講演の様子

パネルディスカッションは、中川先生を進行役に進められました。

従業員だけではなく、配偶者へのがん検診(住民検診)を勧めて企業が補助する方法、健康経営として社員を大切にする企業が選ばれる時代であること、がんでも会社を辞めずに働く時代であること、長く働く中小企業や定年の延長で会社にがん対策が求められていること、休職した従業員や雇用契約を終了した従業員が戻って来やすい制度設計や企業風土の醸成が必要なことなど、登壇者による熱心な意見が交わされました。

講演の様子

その後の質疑応答では、会場やオンラインで寄せられた質問に中川先生や五十嵐先生が答えました。

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