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2021/2/19
2021年2月19日 全国3ブロックセミナーを姫路で開催しました

令和2年度のがん対策推進企業アクション「職域におけるがん対策の最新情報」のブロックセミナーを兵庫県姫路市のホテル日航姫路にて、会場とオンラインによる同時配信にて開催しました。

当日は、がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長の中川恵一先生、産業医の深井恭佑先生、がんサバイバーの認定講師川畑英美さんの講演、そして登壇者と地元企業代表によるパネルディスカッションを行いました。

■プログラム

・がん対策推進企業アクション事業説明

がん対策推進企業アクション事務局

・講演① 「コロナ禍におけるがん対策のあり方」

中川恵一先生(がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長/東京大学医学部附属病院放射線科准教授)

・講演② 「企業におけるがん対策について」

深井恭佑先生(産業医/NPO法人企業の健康いきいきプロジェクト代表理事/株式会社リードウェル 代表取締役)

・講演③ 「肺がん罹患から再就職まで」

川畑英美さん(がんサバイバー/がん対策推進企業アクション認定講師)

・パネルディスカッション(意見交換)

中川恵一先生、深井恭佑先生、川畑英美さん、高原香先生(三菱重工業株式会社高砂製作所 ・三菱パワー株式会社高砂工場 産業医)

・質疑応答

がん対策推進企業アクション事業説明
がん対策推進企業アクション事務局 事務局長 大石健司

講演の様子

がん対策推進企業アクションの推進パートナー数は、2月10日現在で3516社・団体、従業員総数は約790万人と日本の総就業人口の10%を超え、さらなる事業発展を目指し、企業のがん対策を支援するとともに未来のそして日本のがん対策の重要な一翼を担っていきたいと思います。

2020年度は新たに4つの取り組みをスタート

・YouTubeの動画配信

・優良企業表彰制度の新設

・女性会議「Working RIBBON」の発足

・e-learning「がん予防と両立支援」のリリース

日本では現在年間約100万人ががんに罹患し、その3分の1が働く世代で、会社員の死因の約半数ががんです。企業のがん対策は待ったなしの状況といえます。

企業ができるがん対策は、主に3つ

①がん検診受診率のアップ

②がんについて会社全体で学び、正しく知る

③がんになっても働き続けられる環境を作る

今後、女性のさらなる社会進出、定年の延長による就労者の高齢化などから従業員のがん罹患問題はより深刻になっていきます。

がん対策推進企業アクションは、このような問題から従業員を守ることを念頭に活動を強化しています。

企業・団体におかれては、小冊子、セミナー、専門医やがんサバイバーによる出張講座、コンソーシアム活動など、さまざまなコンテンツを有効活用していただき、対策を進めていただければと思います。

講演① 「コロナ禍におけるがん対策のあり方」
中川恵一先生(がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長/東京大学医学部附属病院放射線科准教授)

講演の様子

日本人は「がん」のことをあまり知りません。

働く人の病死の原因の9割ががんというデータがあります。がんは高齢者の病気だと思われている方も多いですが、20〜30代の若い世代では女性の方が、がん罹患者は多くなっています。一生のうちで男性は3人に2人、女性は2人に1人ががんになるデータからも、働く女性が増え、定年の延長などで長く働くようになると必然的に社員のがんは増えていきます。

がんの特徴は、症状を出しにくい病気だということです。痛みなどの症状が現れるのは末期になってからで、その時点で発見しても手遅れということになってしまいます。症状の出ない早期にいかに発見するかが大切で、そのために最も有効なのががん検診です。どんなに体調がよくてもがん検診は必ず受診しなければなりません。

また、乳がんなどは自分で乳房を触ってチェックすることができますので、セルフチェックも重要です。

最近のコロナ禍において問題となっているのが、がん検診受診率の低下です。

新型コロナで亡くなった方は2021年2月13日時点(NHK調べ)で累計約7000名。一方、がんで亡くなる方は1年間で約38万人と新型コロナの55倍以上となっています。新型コロナは大変怖い病気ですが、がんも大変怖い病気なのです。そして、新型コロナはワクチンなどの普及により徐々に鎮静化していくでしょうが、がんは人口の高年齢化が進む日本では今後も増え続けていくことが予想されます。

コロナ禍のがん対策には3つの問題点があります。

①在宅勤務による生活習慣の悪化

②がんの早期発見の遅れ

③がん治療への影響

①の中でも「座りすぎ」は大きな問題で、アメリカの研究(テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)によると座りすぎは、がんのリスクを1.8倍に高めることがわかりました。糖尿病は1.2倍、喫煙は1.6倍のリスク、座りすぎの影響は非常に大きいのです。また巣ごもりによる飲酒も増えています。1日3合以上の飲酒は、がんになるリスクを1.6倍に増やします。

日本人は平均7時間座るといわれており、世界で最も長く座る国です。座りすぎによる健康リスクを軽減するためには1日60分以上の運動が必要ですが、そうもいきません。座っている時間の中でできることは「30分ごとに立つ」あるいは「貧乏ゆすり」です。特に貧乏ゆすりは、在宅であれば他の人に迷惑をかけることもないので簡単にできて健康リスクを減らせる有効な手段だと思います。

②では、コロナ禍でがん検診が止まったり、受診することを躊躇したりして受診率が減っており、通年では3割ほど減少するのではないかと言われています。早期がんは1年で進行がんになってしまいますので、がん検診は毎年受診しなければなりません。がん検診は決して不要不急ではありません。

医療機関はきちんと感染症対策が取られていますので、必ずがん検診を受診して欲しいと思います。

③も同様に、新型コロナを恐れてがん治療を自粛してしまい、がんが進行して治療が難しくなったり、治療できたとしても再発リスクが高まってしまう例が見られます。

例えば放射線治療などは、手術と比べて感染リスクは低いので、治療の選択肢に入れることも必要です。

新型コロナを軽視してはいけませんが、がんは新型コロナと同等以上に大事な問題ですので、きちんとがん対策をとっていただきたいと思います。

講演② 「企業におけるがん対策について」
深井恭佑先生(産業医/NPO法人企業の健康いきいきプロジェクト代表理事/株式会社リードウェル 代表取締役)

講演の様子

企業のがん対策における産業保健スタッフの役割は以下の3点です。

①がん予防・早期発見

②治療と仕事の両立支援

③終末期における支援

①は、定期健康診断や人間ドックを利用したがん検診の推進、生活習慣やがんの原因などについての健康教育の実施、そして禁煙支援や敷地内禁煙などの禁煙施策です。

②は、主治医から必要な情報を得て、会社として配慮・支援していくものです。両立支援は労働者本人の働きたいという意識からスタートしますので、会社内での研修などによる意識啓発、相談窓口の明確化、時間単位の有給休暇や時差出勤などの制度の整備、主治医とのやりとりの書面様式の整備、衛生委員会等での調査審議などが必要です。

もしも、産業保健スタッフがいない場合は、がん診療連携拠点病院、労災病院の治療就労両立支援センター、産業保健総合支援センターなどの社外機関を利用してください。

③は、労働者本人の思いを第一優先にしながら、バランスを整え、関係者が後悔しないように支援していくことです。

終末期においての産業保健スタッフの役割は、労働者本人、その家族、上司、医療機関、人事労務などと連携して情報を把握し、バランスを取りながら対応することです。

企業におけるがん対策は、会社の環境整備、関係者間の連携が労働者本人を支えます。

いざという時に急に連携することは難しいので、普段からの関係性を大切にしてください。

講演② 「肺がん罹患から再就職まで」
川畑英美さん(がんサバイバー/がん対策推進企業アクション 認定講師)

講演の様子

私は、職場での健康診断の時に肺がんの疑いが発見されました。当時シングルマザーとして介護施設で介護職として働きながら3人の子育てに奮闘している時でした。

病名は初期の肺腺がん。喫煙歴もなく、自覚症状もまったくなく、やり場のない不安と悲しみ、死への恐怖にさいなまれました。そして、左肺の下葉切除・リンパ節郭清で10日間の入院、その後の治療を経て、復職しました。

しかし、介護の仕事は病み上がりだった私には辛く、少しの介護で息が上がり、頻脈も現れるなどし、半年間休職して療養しました。

この半年間は収入に不安を覚えましたが、傷病手当金、たまたま入っていたがん保険や貯金を切り崩し生活しました。なかでも民間の保険給付金はとてもありがたかったです。ただ、いつまで治療が続くのか、いつ貯金が尽きるのかという不安は常につきまとい、精神的に落ち込みました。

休職中にケアマネージャーの資格を取得し、半年後の復職時に肉体的な負担の少ない部署への異動を申し出ましたが、会社からは逆に依願退職を打診されてしまいました。悩みましたが、これ以上同僚に迷惑はかけられないと退職を決意しました。

収入の途絶えた私は生活への不安、再発への不安から、うつ状態となってしまいました。転職活動は、がんを隠して行いました。当時は、まだがん患者に対しての就労の窓口は広くありませんでした。

簡単に仕事を辞めず、元の職場で就労を継続させてもらえばよかったと今では思います。

幸い理解のある会社に再就職できましたが、再発の恐怖で定期検診の結果を聞くことがしばらくは怖かったです。

みなさんにお伝えしたいのは、怖がらずにがん検診を受けて欲しいということです。

そして、もしもがんが見つかっても仕事をすぐに辞めず、どうすれば治療と就労の両立ができるかを職場や自治体などの関係機関に相談して欲しいです。

家族や周囲の方にはがん患者への配慮をお願いします。治療中でも社会とつながっているという実感は、生きる希望の支えとなります。

がんは早期で発見できれば、治療期間も短く、治療費用も抑えられ、職場復帰もしやすくなります。

健康を過信せず、定期的にがん検診を受診し、もしもがんになっても生活費の不安を軽減できる民間のがん保険などにも加入しておくこと、相談できる窓口を利用すること、正しいがんの知識を得て正しくがんを恐れることが大切だと思います。

企業の方々には、がん検診の受診の勧奨、治療で使える休暇制度や復職制度の充実、従業員への正しいがん教育を希望します。

パネルディスカッション(意見交換)

講演の様子

中川恵一先生、深井恭佑先生、川畑英美さん、高原香先生 (三菱重工業株式会社高砂製作所 ・三菱パワー株式会社高砂工場 人事労政部 健康管理センター産業医)

パネルディスカッションに先立ち高原香先生より、三菱重工業株式会社高砂製作所 ・三菱パワー株式会社高砂工場で行われているがん対策①人間ドック受診勧奨・在宅検査(健保事業)受診勧奨②がん対策講演会(年1回予定)③健康教育(出前教育)④禁煙支援・受動喫煙防止対策⑤治療と仕事の両立支援に関する情報提供の5つが紹介されました。

講演の様子

パネルディスカッションでは、中川先生を進行役に正しいがん検診のあり方、がんへの正しい理解、がんになるには運の要素も大きく関わること、がんになってもすぐ会社を辞めないことが大切であること、産業保健スタッフのいない中小企業は産業保健総合支援センター等の公的な資源を利用するといいこと、がん治療における放射線治療の有効性など、登壇者による熱心な意見が交わされ、その後の質疑応答では、会場やオンラインで寄せられた質問に中川先生が答えました。

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