• がん対策推進企業アクションとは
  • がんについて
  • がん検診について
  • 就労支援
  • パートナー企業・団体

イベントレポート

2020/10/09
2020年10月9日 令和2年度「がん検診受診率向上推進全国大会」を開催しました

令和2年度がん検診受診率向上推進全国大会(主催:厚生労働省、がん対策推進企業アクション)が、10月9日(金)に東京・赤坂の赤坂サンスカイルームにおいて、初のオンライン配信で開催されました。

毎年10月は「がん検診受診率50%以上」のキャンペーン月間です。

セミナーは、厚生労働省による挨拶と「国のがん対策の現状」についての講演、事務局から事業説明のあと、企業コンソーシアムから「コロナ禍でのがん対策」のアンケート結果報告、そしてがん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長/東京大学医学部附属病院 放射線科准教授の中川恵一氏から「コロナ禍におけるがん対策のあり方」の講演、がん対策推進企業アクションの認定講師であるがんサバイバー2名の体験談のあと、トークセッションが催されました。

(左から)中川恵一先生、認定講師 河野美和さん、認定講師 和田智子さん
▲(左から)中川恵一先生、認定講師 河野美和さん、認定講師 和田智子さん

<がん検診受診率向上推進全国大会視聴ページ>

https://www.youtube.com/watch?v=TNUcq55dICg&feature=youtu.be

【国のがん対策の現状】

岩佐景一郎氏(厚生労働省健康局 がん・疾病対策課 がん対策推進官)

我が国において、がんは1981年から死因の第1位となっております。生涯では国民の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなっており、依然として国民の生命と健康にとって非常に重大な問題です。

がんの予防では、がん検診が早期発見・早期治療のために大変重要です。がんへの関心を高め、より多くの方にがん検診を受診していただくとともに、再検査が必要な方には積極的に精密検査を受診していただくことが重要です。毎年10月を“がん検診受診率50%達成”に向けた、集中キャンペーン月間としています。本年度の全国大会は、新型コロナ禍により初のオンライン開催となりました。

新型コロナはがん検診にも大きな影響を与えています。緊急事態宣言下において、検診を一旦取りやめる対応などをしたところ、一時的にがん検診受診率が低下し、その後回復しつつあるものの、例年通りまでには至っていないのが現状です。

政府としては、新型コロナによる新しい生活様式の中で、がん検診もどうすれば最も良い形になるのかを検討し、改めて見直すことで、がん検診の重要性を再認識する機会になると考えています。

また、地域住民のがん検診に関しては、国が市町村を支援する形で実施しています。一方で職域におけるがん検診も多く行われています。この2つを一体的に、より効果的に運用できるよう取り組んでまいります。

厚生労働省 がん対策推進官 岩佐景一郎氏
▲厚生労働省 がん対策推進官 岩佐景一郎氏

国のがん対策は、平成18年にがん対策基本法が議員立法で成立したのち、平成28年のがん対策基本法の改正を受けて、平成30年3月に第3期のがん対策推進基本計画が策定されました。がん対策基本法には、がん予防及び早期発見の推進、がん医療の均てん化、研究の推進、がん患者の就労、がん教育の推進などが盛り込まれています。

第3期がん対策推進基本計画では、「がん患者を含めた国民ががんを知り、がんの克服を目指す。」とし、「がんの予防」「がん医療の充実」「がんとの共生」を3本の柱に、これを支えるためのがん研究、人材育成、がん教育、普及啓発の基盤の整備を進めています。

がん検診受診率の目標は50%ですが、年々上昇傾向にあるものの、50%に達しているのは肺がん検診だけです。国際的に見ても日本はがん検診受診率が低いです。

がん検診の受診機会は、約3〜6割が職域での受診となっており、市町村で行うがん検診よりも多くの方が職場でがん検診を受けています。受診率向上のためには職域での啓発が重要です。

がん検診未受診の理由には「受ける時間がない」「健康状態に自信があり、必要性を感じない」「心配な時はいつでも医療機関を受診できる」「費用がかかり経済的にも負担になる」などがありますが、これらの理由は必ずしも正しい知識に基づいた判断とは言えません。こういったキャンペーンを通じて、正しいがんの知識の普及・啓発に努めております。

職域におけるがん検診は、福利厚生の一環として実施されていて、検査項目や対象年齢など実施方法は様々です。

厚生労働省では職域におけるがん検診受診に関して、参考となる事項を示し、科学的根拠に基づく検診ができるよう平成30年3月に「職域におけるがん検診マニュアル」を作成しておりますので、ぜひ活用してください。

がん患者の約3人に1人は、就労可能年齢で罹患しており、最新の2017年の統計では、約98万人のがん患者のうち20〜64歳までが全体の25.2%、15〜69歳まで広げると40.5%にあたります。仕事を続けながら治療をしている人は44.8万人で、2016年の調査から8万人増加しました。

働くことが可能で、働く意欲のあるがん患者が働き続けられるようにするために必要な取り組みは何か、という世論調査では「病気の治療や通院のために短時間勤務が活用できること」「1時間単位の休暇や長期の休暇がとれるなど柔軟な休暇制度」「在宅勤務を取り入れること」などが求められています。在宅勤務に関しては、図らずもコロナ禍によりかなり多くの方が実践されています。多様な働き方が治療と就労の両立を助けることになります。

また、日本の労働人口の約3人に1人が何らかの疾病を抱えながら働いており、アンケートからも治療を続けながら働くための制度や社内の理解が必要だとわかります。

現在、がん患者・経験者の両立支援、就労支援を円滑に進めるために、がん患者が治療と仕事を両立しやすい環境の整備、拠点病院等でがんと診断された時から相談できる環境整備、離職しても再就職について専門的に相談できる環境整備を進めていますが、これで十分だとは思いません。引き続き、様々な形でがん対策、日常生活との両立の支援が必要だと考えています。

【主旨説明】

大石健司(がん対策推進企業アクション事務局長)

事務局長 大石健司
▲事務局長 大石健司

本事業は、企業・団体等におけるがん検診の受診率向上と、がんになった患者さんへの就労支援等を目的として立ち上がり、本年度で12年目を迎えました。

企業に求められるがん対策はおもに3つです。1つ目はがん検診受診率の向上、2つ目はがんについて会社全体で正しく知ること、3つ目ががんになっても働き続けられる環境づくりです。私たちがん対策推進企業アクションは、従業員・国民をがんから守ることを命題とし、様々な対策を企業とともに考え、実践していきます。

本事業では、正しくがんを知る小冊子「がん検診のススメ」の配布、ポスターの配布やセミナー開催、最新情報の発信、出張講座の開催、コンソーシアム活動をはじめ、2018年度以降からはがん経験者認定講師を13名採用し、その講師の派遣などの活動を通して、企業が取り組めるがん対策を全力で応援しています。

【「コロナ禍でのがん対策について」のアンケート結果報告】

真鍋徹氏(アドバイザリーボード・企業コンソーシアム担当/第一生命保険株式会社 生涯設計教育部 次長)

がん対策推進企業コンソーシアムは、がん対策推進企業アクションの推進パートナー企業の中の有志が自発的に立ち上がり、企業の担当者や産業保健スタッフががんについての対策、事例や情報の交換などを行うことを目的として2018年に立ち上がりました。

企業コンソーシアムの大きな目標は3つです。

①事例共有や知識習得による、参加企業のがん対策推進

・がん検診受診率の向上

・がんと就労対策

②「企業目線のがん対策」について、情報発信による社会への貢献

・参加型ミーティングを通し共有した、好事例内容の発信

・がん対策推進企業アクション主催セミナー・大会等における取り組みおよび提言の発表

③参加企業による持続的ネットワークの構築

・業種・企業規模・地域を超えた「企業がん対策の輪」づくり

・コンソーシアム参加企業の増大

②においては、今年の夏にコロナ禍における企業のがん対策実態調査を実施しました。

今回のコロナ禍において、がん検診はどうしているか、すでにがんに罹患されている方に対し通院などの治療をどのように行っているのかなど、企業の今現在のがん対策についてアンケートを実施しました。多岐にわたる業種から、非常に生々しい現場の意見が得られましたので、ぜひ参考にしていただければと思います。

<詳しいアンケート調査はこちら>

アドバイザリーボード・企業コンソーシアム担当 真鍋徹氏
▲アドバイザリーボード・企業コンソーシアム担当 真鍋徹氏

企業コンソーシアムは、がん対策推進企業アクションの推進パートナーであれば、どなたでも参加いただけます。今後はwebを活用して、地方の企業も参加できるような仕組みも考えています。さまざまながん対策や情報を共有することができ、がん対策だけでなく経営にも活かしていただくことができますので、ぜひ企業コンソーシアムを活用していただければと思います。

【講演】

「コロナ禍におけるがん対策のあり方」

中川恵一氏(がん対策企業推進アクション アドバイザリーボード議長/東京大学医学部附属病院 放射線科 准教授)

現在の新型コロナの問題は、企業においても一般の方においても大きな影響を与えていることは言うまでもありません。

昨日(10月8日)までの数字ですが、新型コロナの感染者は約8万8000人、亡くなった方は約1632人という大変な感染症です。一方、我が国では年間38万人近くの方が、がんで命を落とされています。新型コロナと比べて死亡者は約230倍と桁違いに多いのが現実です。

新型コロナは流行性の感染症ですから、数年後も流行が続くとは考えづらいのですが、がんは2019年の予測では年間約102万人が罹患し、38万人が亡くなるとされています。さらに、がんの罹患者数・死亡者数は向こう20年間は増え続けると予想されています。

新型コロナの対策はもちろん重要ですが、それによってがん対策を緩めてしまうと将来的に大きな不幸を招いてしまうことになります。

日本人が生涯で何らかのがんに罹患する確率は、男性は65.5%(3人に2人)、女性は50.2%(2人に1人)。現在も年間102万人ががんに罹患していて、その罹患者の3分の2は働く世代となっています。

さらに、働いている人の死因の半分ががんであり、在職中に社員が病気で亡くなる原因の9割ががんとなっています。がんは日本人にとって大変大きな壁となっています。

東京大学医学部附属病院 放射線科 准教授 中川恵一先生
▲東京大学医学部附属病院 放射線科 准教授 中川恵一先生

コロナ禍でのがん対策には、3つの問題があります。

①在宅勤務による生活習慣の悪化

②がんの早期発見の遅れ

③がん治療への影響

①については、喫煙の増加や飲酒なども挙げられますが、最大の問題は“座りすぎ”です。今年6月の大規模な調査では、最も座るグループ、最も座らないグループ、その中間の3グループで検証したところ、最も座るグループは最も座らないグループの1.82倍、がんで死亡するというデータか公表されました。

座りすぎと運動不足は近いと思われますが、座りすぎによる健康リスクを運動で解消しようとすると、1日60分以上の運動が必要で、週末だけの運動ではリスク解消はできません。これは、運動不足とは違い「足を動かす」ということが重要で、一番のおすすめは30分に1回は立ち上がるということ。それができない人は、座りながら太腿も揺する「貧乏ゆすり」が効果的です。

2011年にWHOは、世界で年間に喫煙が原因で500万人、飲酒を原因に300万人以上が亡くなるとしていますが、座りすぎは200万人の死因になるとしています。

そもそも、日本は世界でも座る時間の長い国で、オーストラリアの研究期間の調査では調査対象20か国中最長の1日7時間でした。ある調査では、80.7%の人が在宅勤務で座る時間が増えているようです。

座りすぎの問題は欧米では広く認識されていて、座りすぎ防止のためにスタンディングディスクで立ちながら会議や仕事をする文化があります。

また、「コロナ太り」という言葉があるように、通勤や運動不足からの肥満問題もあります。肥満し糖尿病を発症すると、がんリスクが1.2倍、肝臓がんと膵臓がんは2倍になります。

②はがん検診に深く関係しています。

がんは早期といわれるステージ1と、進行がんのステージ4では5年生存率が大きく異なります。部位別のがんを平均して、ステージ1と4では8.5倍の開きがあります。早期がんであれば約90%を治すことが可能です。

がんは、早期のうちは症状を出すことはありませんが、この早期がんのうちに発見することが重要です。健康で症状がなくてもがん検診を受けなければならないのです。

現在コロナ禍によって健康診断などが中止される例も多発しており、対がん協会の予測では今年度のがん検診の受診者は3割以上減るとされ、発見されるがん患者が約4千人減る恐れがあります。早期がんでの発見が遅れると、1〜2年後に進行がんに進んでからの発見が増えてしまう可能性があります。

③については、日本で最も多くがんの手術をしているがん研有明病院において、看護師のコロナウイルス感染により手術の8割を休止した事例がありました。

しかし、放射線治療においてはそれほどの影響がありませんでした。手術と違って95%が通院治療であり、画像診断後にコンピューターでシミュレーションを行い、実際の治療に入ります。手術室で密になることもありません。1回の照射時間も短く痛みもありませんが、日本では放射線治療を受ける患者が約半分と、欧米諸国と比べ少ないのが実情です。

放射線治療は、手術と同じようにがんを消すことができます。10年後の生存率は手術と同じで、さまざまながんの治療に放射線治療が行われています。

さらに放射線治療は通院で行えるため、治療と仕事との両立にぴったりです。

ぜひ、放射線治療を仕事との両立に役立てていただきたいと思います。

【がんサバイバーの体験談】

「がんになった私」

河野美和さん(乳がん経験者/がん対策推進企業アクション認定講師)

河野美和さん
▲河野美和さん

私は3年前に乳がんに罹患し、治療を行いました。

乳がんが発覚した当時、私には中学受験を控えた小学6年生の長女と幼稚園年長の次女をかかえ、忙しい日々を送っていました。

私の乳がんは、発見時には3センチほどの進行がんになっており、走ると痛みを感じるほどでした。発見のきっかけは、幼稚園のお迎え時にママ友に胸の痛みの話をした時に、クリニック受診を勧められたことでした。夏休みが終わったら行こうと思いつつなかなか都合がつかず、やっとクリニックに行った時には、すぐにでも大きな病院に行くように言われ、本当に頭を殴られたようなショックを受けました。

その時、「どうして今なるんだろう」「なんで私なんだろう」という言葉が頭を駆け巡りました。長女の受験、次女の小学校入学の準備など、楽しいことがこれから控えている時に私が病気になってしまった。塾の学費もかかっているのに、夫になんと言えばいいのか、タイミングが悪すぎると悩みました。

その後、病院などで乳がん経験者などと話す機会が増え、意外と子供の受験時に罹患している方が多いことを知り、私だけじゃないんだと思いました。忙しい時はさまざまな事に気を取られ、自分の体に注意が向いていなかったんだなと今となっては思います。

乳がんに罹患してから、初めて自分のがんに対する知識のなさに気付きました。乳がんにはタイプがあることです。私のタイプは“トリプルネガティブ”という恐ろしい名前のもので、抗がん剤しか効かない乳がんでした。

その時「抗がん剤は髪が抜ける」「髪が抜けると家から出られない」「私は誰にも会えずに一生を終えるのだろうか?」とも考えました。

身近にがん経験者が少なかったこともあり、自分はがんにならないだろうと思っていましたが、罹患してみて、がんは誰もがなる病気なんだということに気付きました。

抗がん剤治療が始まると、髪の毛をはじめまつ毛や鼻毛も抜けました。髪の毛はウィックで、まつ毛はつけまつ毛で過ごしました。この頃が一番気持ちが落ち込んだ時期でした。左胸を全摘したので、長女からは「ママ死んじゃうの?」次女からは「おっぱいはいつ生えてくるの?」などと聞かれ、何も答えられなかったことを今でも覚えています。

抗がん剤治療が終わってからは、髪の毛が生えてくるのと比例して気持ちにも余裕が生まれました。今は嘘みたいに元気に日々を過ごせています。

今、乳がんを経験して言えることは、あの時クリニックを勧めてくれたママ友への感謝です。そして大きな病院を探してくれ、抗がん剤治療中にずっと食事を作ってくれた主人、元気の素をたくさんくれた娘たち、両親や親戚などに感謝しています。

がんになったら死んでしまうと思っていた私ですが、がんになっても亡くならない人がたくさんいて、とても元気に過ごしている方が多いことを身をもって知りました。がんになって得るものも多かったのは事実ですが、願わくばみなさんにはがんの苦しみを味わって欲しくはありません。

忙しい時ほど、自分の体に気を配って欲しいと心から思います。

「3つのがん体験〜子宮頸がん・小児がん・パートナーのがん〜」

和田智子さん(子宮頸がん経験者/がん対策推進企業アクション認定講師)

和田智子さん
▲和田智子さん

私は毎年会社の健康診断時にがん検診を必ず受診してきました。

子宮頸がん検診では2007年まで異常なし、2008年・2009年に中等度異形成が見つかりました。毎年子宮頸がん検診を受けていましたが、異形成についての知識はなく、ネットで調べました。「中等度異形成、高度異形成を経て子宮頸がんになる。ただし、すべての異形成が子宮頸がんになるわけではない」というようなことが書かれていたと記憶しています。この時初めて、自分が将来子宮頸がんになるかもしれないと自覚するとともに、これからはもっときちんと検診を受けなければならないと思いました。

2010年に高度異形成、2011年には要検査になりショックを受けました。すぐに病院にかかり、検査切除をしたところ、子宮頸がん0期の上皮内がんということが判明しました。不幸中の幸いに、この検査切除でがんが取り切れたため、抗がん剤治療や放射線治療をせずにすみました。

やはり、早期発見が大切なんだということを感じました。

この時は2泊3日の入院でしたが、その後出血が治まるまで1か月の自宅療養をしました。私の会社には、前年度の有給休暇を次年度に繰り越せる制度がありましたので、この1か月を乗り切ることができました。病気になった社員には、このような制度は非常にありがたいと思います。

家族ががんになった場合、仕事を続けるということは大変なことだと思います。

長女が小児がんになったとき、私は専業主婦でしたので、看病と仕事の両立の悩みはありませんでしたが、もしも自分が仕事をしていた場合は両立できていただろうかと考えることがあります。長女以外の子どもの子育ても並行しなければならなかったため、非常に苦労したことを覚えています。この時は母や義母、友人たちの支えがあったおかげで乗り切ることができました。

主人は肝臓がんになり、2011年に亡くなりましたが、健康診断で異常値が出ていたものの精密検査を受診しなかったことを今でもとても悔やんでいます。がん検診受診率を上げることも大切ですが、検診を受けた後のフォロー体制もセットで充実していく必要性を感じます。

主人の会社は、治療に対して理解があったため、仕事をやめずに治療を継続することができました。わたしの会社も主人の治療に介護休暇を使っていいと言ってくれました。家族が病気になった時に使える制度は、本当に大変にありがたいものです。

がん検診を受診することは、自分のため、家族のため、社会のためだと思います。

日本には国民皆保険制度がありますが、医療費は増加の一途をたどっています。私のように早期で発見できれば、治療費も安くすむので医療費の削減にもつながると思います。

また長女の闘病生活では、輸血で命を繋いでいただきました。がん治療をする上で、献血制度のありがたさも感じました。

がん検診をみんなが当たり前に受けられる社会を作っていきたいと思います。

【トークセッション】

中川恵一氏(がん対策企業推進アクション アドバイザリーボード議長/東京大学医学部附属病院 放射線科 准教授)
河野美和さん(乳がん経験者/がん対策推進企業アクション認定講師)
和田智子さん(子宮頸がん経験者/がん対策推進企業アクション認定講師)

中川氏
一昔前までは、自分ががんになったことを伝えないことが多くありました。30年前は、患者への告知もほとんどされませんでした。それではがん対策はうまくいきません。
医療者と患者(本人)、家族が情報を共有することが、がんに打ち勝つためには必要です。
そういう意味で、本日の体験談はとてもためになります。

河野さんの場合、乳がんで痛みがあったとすると、それはかなり進行していたんだと思います。一方和田さんの場合は、毎年子宮頸がんの検診を受けられていたことにより、早期で発見できたわけです。
乳がんと子宮頸がんで、横並びでの比較は難しいのですが、進行がんと早期がんでは、その後の負担はずいぶん違っていると思います。
早期がんは、最初の治療で完治してしまうことがほとんどなので、5年生存率は治癒と同じようなもので、95%くらいが完治します。進行がんは5年生存率はもちろん下がってしまうわけですが、その後の生活に与える影響も早期がんとは明らかに違ってきます。

河野さんは、検診はされていたんでしょうか?

河野さん
一応人間ドックに行っていましたが、毎年ではありませんでした。

中川氏
河野さんは、なんで自分ががんに、とおっしゃっていました。その気持ちはよくわかります。私もがんの恐ろしさを講演などで伝えていたにも関わらず、自分ががんになるとは思っていませんでした。
今、日本の女性のがんで最も多いのは乳がんで、9人に1人が乳がんになります。女性ホルモンの刺激が最大の要因ですから、今後は少子化の影響もあり、もっと増えていくと思います。

実はがんは“運”の要素がある病気なんです。
胃がんの原因となるピロリ菌や子宮頸がんの原因となるHPV、肝臓がんのB型C型ウイルスなどの感染も大きな問題で、生活習慣やタバコも問題ですが、運が最大の要因なんです。
遺伝子も経年劣化で傷みます。どの遺伝子が痛むかはランダムで、がんにならない遺伝子やがんを押さえ込む遺伝子が痛むとがん細胞ができてしまいますが、どの部分が傷むのかは、まさに偶発的で“運”なのです。
がんにならないようにする予防も大切ですが、運悪くがんになってしまったら早期に見つけることが重要です。
冒頭で申した通り日本人は男性は3人に2人、女性は2人に1人が生涯でがんになりますので、がんになるということを想定し、自分の体を守る行動を取らなければなりません。
簡単にいうと、生活習慣と早期発見です。早期発見のためには、体の調子が悪くなってから病院にいくのではなく、絶好調でも定期的に検診を受診しなければなりません。

和田さんの場合は、早期発見できたわけですね。
早期発見して、上皮内がんを円すい切除されたんだと思います。早期に見つかって治療もできて大変に良かったのですが、この円すい切除は子宮の出口を削り取るので、子どもを重力から支える部分が弱くなり、それによって流産が増えています。和田さんの場合はすでにお子さんがおられましたが、子宮頸がんのピークは30代前半ですので、このあたりも勉強しておく必要があります。
ですから、HPVワクチンで予防することを考えなければなりません。

和田さん
中川先生はよく、がんに関しての知識がないことが問題だとおっしゃっていますが、私ががんになった時もまさに知識がありませんでした。当時ネット検索で調べましたが、安心できる正しいがんの情報を得られるサイトはありますか?

中川氏
国立がん研究センターのがん情報サービスです。
世の中にはいろいろな民間療法などがありますが、このがん情報サービスは信用できます。そして、このがん対策推進企業アクションのサイトと、「がん検診のススメ」の小冊子です。
「がん検診のススメ」はがん対策推進企業アクションの推進パートナーになれば、従業員数分を無償で入手できます(上限あり)。

河野さん
今まさに私の娘が、HPVワクチンを接種する時期で、保護者の中でも話題となっています。ワクチンの危険性を危惧されている方もいらっしゃるのですが、HPVワクチンに関してもう少し教えてください。

中川氏
確かに昔、副反応の問題がありました。
しかし、現在はこのようなデータがあります。名古屋市が名古屋市立大学の公衆衛生の教授に依頼して、HPVワクチンの副反応について調べてもらいました。HPVワクチンを接種したグループと接種しなかったグループとで、副反応の発現率に差があるか調べたところ、結果、HPVワクチンと副反応の発現率に有意な関連は見られなかったのです。世界中でHPVワクチンが打たれていて、日本でだけ副反応が起こるのはおかしいと思います。

ですからがんを知るということが重要です。
幸いにも、今は学校でがん教育が行われていますので、がんの正しい知識を勉強した子どもたちが大人になれば、リテラシーも上がってくると思います。
問題はがんの正しい知識を持たない大人で、この大人へは企業側ががん教育を行っていくしかないのではないでしょうか。
ぜひ、企業コンソーシアムも利用していただけばと思います。

本日はありがとうございました。

【トークセッションの様子】

トークセッションの様子
ページトップ
  • 参加方法・登録申請
  • お知らせ・イベント情報
  • 調査レポート
  • がん対策スライド
  • 全国3ブロックセミナー
  • がん対策推進企業アクション公式小冊子「働く人ががんを知る本」
  • 令和4年度がん検診50%推進全国大会
  • 令和5年度がん検診50%推進全国大会
  • がん対策推進企業アクション Facebookはじめました
  • がん対策推進企業アクション Facebookはじめました
  • 両立支援の啓発動画の紹介