2020/01/15
2020年1月15日 富士通が社員7万人を対象とした本格的ながん教育を開始
がん対策推進企業アクションの推進パートナー企業でもある富士通株式会社が、国内のグループ社員約7万人に対し「がん教育」を開始すると発表しました。
働く世代のがんが増え続けている中で、富士通でも高年齢従業員や女性従業員のがんが増加傾向にありました。早い時期からがん対策に取り組んでいた富士通ですが、がん教育を行うことで正しいがんの知識を習得し、生活習慣の見直しなどによるがんの予防、がん検診受診による早期がんの発見、早期治療のための受診率アップを図るとともに治療と就労の両立支援にも力を入れていくとしています。
がん教育実施の初回は、がん対策推進企業アクションの議長でもある中川恵一氏を迎え『知っておきたい「がん講座」リスクを減らす行動学』をテーマとした講義を全国の事業所へ同時配信し、従業員だれもが受講できるようにし、がんの基礎知識や検診の重要性などをインターネット経由で学ぶeラーニングを1月16日より始めました。これにより、社員の健康リテラシーや健康意識の向上を目指し、行動の変革を期待しています。今回行われたがん教育は、国内企業において最大規模。また、富士通で使用されるeラーニングの教材は、がん対策推進企業アクションを通じて公開され、今後利用できるようになる予定です。

がん教育スタートについて説明する富士通株式会社
健康推進本部 健康事業推進統括部 統括部長 東泰弘氏

「大人のがん教育には企業の力が必要です」と、
マスコミ・メディアに企業のがん教育の大切さを訴える中川恵一医師
富士通のeラーニング教材の監修も中川氏
富士通がん教育第1回講演
『知っておきたい「がん講座」リスクを減らす行動学』
中川恵一氏
(東京大学医学部附属病院 放射線科 准教授/がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長)
がんは、わずかな知識の有無で運命が変わってしまう病気。日本は世界一がんが多い国です。理由は世界一の高齢化社会だからです。日本人は世界で一番がんについて知っておく必要がありますが、皆さんは今まで学校でも全く習ってこなかったと思います。
現在では一昨年から学習指導要領の中にがん教育が明記され、小中高校でがんを授業で習うようになりましたので、おそらくこの世代においてはがんによる死亡は減るでしょう。しかし、我々の世代はどうすればよいのか。これは非常に大きな問題です。私は、大人のがん教育は企業が率先して行うことが必要だと思います。
明日から富士通で始まるeラーニングは、私も力を入れて作成に協力し、とても良いものになっています。ぜひ、活用してがんに関する正しい知識を得て、がんによる不幸を減らしていただきたいと思います。
がんには誰もがなる可能性がありますが、実は私もがんになりました。
違和感があったり、血尿が出たりなどの症状も全くありませんでした。
がんは早期に見つけて治療すれば、仕事にすぐに復帰できます。治療と仕事の両立の問題では、社内の制度や周囲のサポートや理解などといったものが取りざたされます。もちろんそれも大切ですが、もっとも重要なのはがんを早期発見するということです。
がんになってわかったことは、がんは症状を出しにくい病気であるということ。皆さんは、がんは痛い、苦しい病気だと思っているかもしれませんが、それは終末期、亡くなる直前の段階です。私の場合も一切症状はありませんでした。
そして、誰しも自分はがんにならないと思うもの。私もこのようにがんに関する講演を行いながらも、自分ががんになるとは思っていませんでした。
がんは、がん関連遺伝子の偶発的な損傷が原因ですから、いくら正しい生活習慣を送っていてもがんになってしまうことがあります。人生に運の要素があるように、がんにも運の要素があるのです。生活習慣の改善でリスクを減らすことはできますが、この予防も万全ではありません。
ですからがんに備えるためには、生活習慣の改善でがんになるリスクを抑え、運悪くがんになってしまったとしても、がん検診による早期発見がとても重要です。
毎年受けているがん検診で見つかるがんは、ほとんどが早期がんですから、その9割以上が治ると思っていいでしょう。早期で見つけることが大切です。
現実には、がんと診断された後に自殺する人が20倍になるデータや、診断後、治療が始まる前に仕事を辞めてしまう方が4割以上いるなど、まだまだがんに対する知識が足りません。
がんになってしまってからでは冷静に対処することは難しくなります。がんになる前に、がんのことを知っておくということがとても大切です。
現在の日本では毎年約101万人ががんになり、約38万人ががんで亡くなっています。生まれてくる子供より、がんになる人の方が多い時代です。がんの死亡者数は年々増えており、その3人に1人は15〜64歳の働く世代のがん患者です。
欧米では、がんの死亡者数は減っています。先進国の中で、がんによる死亡が増え続けているのは日本しかありません。
大腸がんの死亡者数は、アメリカ全体より日本の方が多くなっています。人口比を考えるとこれは大変なことです。大腸がんの検診は検便です。簡単な検便をするだけで大腸がんでの死亡が防げるのに、それをやらないのはもったいないと思います。
がん検診で受けていただきたいものは、会社から勧められている検診です。住民検診で実施されている、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんが基本で、何も高額な検診を受ける必要はありません。エビデンスがあるものを受診するように心がけてください。
そして、学校でがんについて学んでこなかった大人の世代には、ある種の強制力を持っている企業側ががん教育を行うことが必要です。
明日から始まるeラーニングをぜひ受けてください。私も富士通さんと一緒に作りました。とてもわかりやすく、飽きにくいものになっています。これを受けていただければ、皆さんががんで命を落とすリスクは大きく下がると思います。
この富士通さんのeラーニングは一部改定を行い、今後は厚生労働省の事業であるがん対策推進企業アクションでも活用し、他の企業にも受けてもらえるようにしていきたいと考えています。
人生100年を幸せに過ごすための最大の障壁は、がんです。しかし、がんを知ることによって、その壁は乗り越えることができます。ぜひ、がんについて正しく知って欲しいと思います。
