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イベントレポート

2019/12/3
2019年12月3日 富山セミナー「職域におけるがん対策の最新情報」を開催しました

令和元年度の全国3ブロックセミナーの「富山セミナー」が、富山市の富山県民共生センターサンフォルテにおいて12月3日(火)に開催されました。

講演の様子

当日は、厚生労働省健康局がん・疾病対策課課長補佐の猪股研次氏からの挨拶、がん対策推進企業アクション事務局長の大石健司氏より本事業の説明のあと、東京大学医学部附属病院放射線科准教授の中川恵一先生より「自分のカラダをがんから守るために」、がん経験者である風間沙織氏より「がんの治療も家族の看取りも働きながら ~患者として、家族として、後悔せず生きていくために~」、西日本旅客鉄道株式会社 金沢健康増進センター主任医長の西澤依小先生より「職場のみんなで取り組むがん対策」の講演が行われました。

講演のあとには、登壇者と地元企業を代表し中越合金鋳工株式会社 総務部総務課長の河口裕之氏が参加したパネルディスカッションが行われました。

【挨拶 国のがん対策の現状について】
猪股研次氏
(厚生労働省健康局がん・疾病対策課課長補佐)

我が国において、がんは昭和56年から国民の死因の第1位であり、生涯のうち2人に1人ががんに罹患し、3人に1人ががんで亡くなるという、国民の生命と健康について重大な問題となっています。

がんの予防には早期発見・早期治療が重要です。多くの人にがんについて関心を持っていただくとともに、がん検診を受診していただきたいと思います。

猪股氏

▲猪股氏

平成29年には、年間のがんによる死亡者数が約37万人にのぼっています。部位別では、男性は胃がん、女性は乳がんが1位で、死亡数では、男性は肺がん、女性は大腸がんが1位となっています。

国のがん対策は、平成18年にがん対策基本法が制定されたことで、一層加速しました。

がん対策基本法は平成28年に改正され、がん患者の就労等、がんに関する教育の推進が盛り込まれました。学校教育でもがん教育が盛り込まれ、また、全国どこでも専門的・標準的ながんの医療が受けられるよう進められてきました。

平成30年に策定された第3期がん対策推進基本計画では、がん患者を含めた国民ががんを知り、がんの克服を目指すこととし「がんの予防」「がん医療の充実」「がんとの共生」を3本の柱にし、これらを支える基盤の整備として、「がん研究」、「人材育成」、「がん教育、普及啓発」を進めています。

がん検診には、対象集団全体の死亡率を下げることを目的とした「対策型検診」と、職域においては個人の死亡リスクを下げることを目的とした「任意型検診」があり、国として主に担当しているのは「対策型検診」です。

がん検診の受診機会は、受診者の約3〜6割が職域での受診となっており、受診率向上のためには職域での啓発が重要です。

厚生労働省では職域におけるがん検診受診に関して、参考となる事項を示し、科学的根拠に基づく検診ができるよう平成30年3月に「職域におけるがん検診に関するマニュアル」を作成しておりますので、ぜひ活用してください。

がん患者の約3人に1人は、就労可能年齢で罹患しており、平成28年の統計では、約99.5万人のがん患者のうち20〜64歳までが全体の26%、20〜69歳まで広げると41.9%になり、5歳伸びるだけで数字は劇的に増加しています。定年の延長など、働く期間が長くなれば職域のがん対策は非常に重要になってきます。

治療と仕事を両立するためには、働き方改革実行計画に基づいて、経営トップや管理職などの意識改革、両立を可能とする社内制度の整備促進、傷病手当金の支給要件の検討など、会社の意識改革と体制の整備が必要です。

また、計画では、主治医、会社・産業医、両立支援コーディネーターの3者により患者の治療と仕事の両立をサポートする「トライアングル型支援」を推進しています。

がん患者の就労に関する取り組みは、厚生労働省健康局がん・疾病対策課、職業安定局首席職業指導官室、労働基準局産業保健支援室の3部局によって連携を密に取りながら進めています。

がん対策推進企業アクションは、職域でのがんに対する課題を解決するために役立つ、先進的な事例や情報なども数多く提供していますので、ぜひ利用していただきたいと思います。

【がん対策推進企業アクション事業説明】
大石健司氏
(がん対策推進企業アクション事務局長)

がん対策推進企業アクションは、職域でのがん検診受診率を向上させるための国家プロジェクトであり、厚生労働省の委託事業です。「がんでもやめない、やめさせない」「今年も行こう、今年は行こう、がん検診」「会社が始めるがん対策」をキャッチフレーズに、がんになっても働ける社会を目指して活動しています。

がん対策推進企業アクションは、企業等におけるがん検診受診率向上とがん患者の就労支援を目的として2009年にスタートし、今年で11年目を迎えました。推進パートナー数は、今年の7月に3000社を突破し、大企業から中小企業まで業種を問わず全国からご参加いただいています。今後のさらなる事業発展で、未来の日本のがん対策の重要な一翼を担っていきたいと思っています。

大石氏

▲大石氏

日本で1年間にがんになる人は約101万人、その3分の1が働く世代であり、64歳までに何らかのがんに罹患する確率は男女ともに約15%となっており、会社員の死因の約半数ががんとなっています。企業のがん対策は待ったなしの状況であるといえます。

今後、企業が取り組むべきがんアクションは3つあります。

① 「がん検診の受診を啓発すること」

② 「がんについて会社全体で学び、正しく知ること」

③ 「がんになっても働き続けられる環境をつくること」

女性の社会進出は今後ますます増えるとともに定年の延長などで高齢化が進めば、従業員のがん罹患問題はより深刻になっていきます。本事業では、このようなことへの対応策を模索し、がんから従業員を守る、国民を守るという、より壮大な国家プロジェクトに進化させようとしています。

取り組みとしては、「がん検診のススメ」小冊子の配布、中央・地方でのセミナーの開催、最新情報の発信、専門医やがん経験者による出張講座の開催、大企業・中小企業・女性がん向けのコンソーシアム活動、経営団体や自治体等との連携・推進などを行っています。

推進パートナーにまだご登録されていない方がいらっしゃいましたら、この機会にぜひご登録をお願いします。

【講演①】
「自分のカラダをがんから守るために」

中川恵一氏
(東京大学医学部附属病院 放射線科 准教授/がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長)

がんは我々働く者にとって大きな意味を持つ病気です。1999年から2003年の調査では、サラリーマンの死因の半分ががんでした。おそらく現在では、女性の社会進出や定年の延長などで、もっと割合は増えていると思われます。

伊藤忠商事の調べでは、在職中の社員が病気で亡くなるケースの9割ががんでした。

がんは、罹患する前に知っておくことが重要です。すでに小中高校ではがん教育が始まりましたが、がんに今直面している大人は、自分で学ばなければなりません。そのためには、従業員に対してある程度の強制力を持っている企業側が、従業員にがん教育をする必要があります。会社のがん対策が非常に重要なのです。

中川先生

▲中川先生

日本の累積がん罹患リスク、一生でがんになる確率は、2014年のデータで男性が62%、女性が47%です。現在はおそらく男性は3人に2人、女性は2人に1人ががんになる時代と予想されます。

私自身もがんになりました。男性の3人に2人ががんになるわけですから、私がなっても何ら不思議ではないのですが、まさか自分ががんになるとは予想もしていませんでした。

私はお酒好きが原因で、肝臓に塊状に脂肪が貯まるまだら脂肪肝を持っています。去年の12月9日、当直の日に自分で肝臓の超音波検査をし、膀胱も検査したところ、偶然にも膀胱がんを発見しました。血尿が出るなどの症状も全くありませんでしたから、まさに晴天の霹靂です。

その後12月27日に入院をして翌28日に経尿道的内視鏡での検査切除、その検査により悪性ではなかったため12月31日に退院し、1月4日からは通常勤務に戻れました。

がんになってわかったことは、がんは症状を出しにくい病気であるということ、そして誰しも自分はがんにならないと思うもの、ということです。

多くの人が誤解しているのは、体に異常が出たら検査を受けようと思っていること。がんの場合は早期では症状をほとんど出しません。むしろ、症状が出てしまってからでは進行がん、末期がんの可能性が高く手遅れとなります。体が絶好調でも定期的にがん検診は受けなくてはならないのです。

私の場合は、特殊な環境であったため自分でがんを発見した訳ですが、普通の人でも見つけられるがんもあります。例えば、乳がん。乳がんの発見契機の5割以上が自己触診です。

がんは8割りがたがゆっくり進行しますが、2〜3割は急激に進行するものがあり、それは2年に1度のマンモグラフィーでは見つかりません。しかし、乳がんは触れるがんですから、毎月触っていれば自分で変化に気付けます。リンパ腺は首と脇の下と足の付け根しかありませんから、これもたまに自分で触って変化がないか確かめるといいと思います。

触り心地のポイントは、がんは固いということ。がんは、細胞分裂のスピードが早いので、密度が高く固くなります。とにかく固いものがないかを気にしておくべきです。

自分の体は自分で守るしかありません。

現在、がん全体での5年生存率は68%ほどです。3分の2程度は治るということです。早期か早期でないかが大切で、例えば胃がんの場合、5年生存率は1期であれば97.6%ありますが、4期になると8.0%しかありません。12.2倍の差があります。どのがんも早期で発見することが大切です。

大腸がんの検診方法は検便です。とても簡単で、住民検診で受ければ料金も税金の補助がありますので安く受けられます。なのに受けない人がいます。

がんと告知されると1年以内の自殺率は20倍になってしまいます。がんのイメージが“死”という間違いが、そうさせているのではないでしょうか。がん全体で見ても、早期であれば95%が治ります。

日本人はヘルスリテラシーが低いことがわかっています。今まで学校で習ってこなかったからです。国別のヘルスリテラシーの平均点調査では、調査国の中で、インドネシアやベトナムよりも低く、ダントツの最下位です。

その特徴的な事例に、WHOが日本の受動喫煙対策は「前世紀並みに遅れている」と表現しました。また、子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)の予防ワクチンも0.3%しか摂取していません。がん検診受診率も先進国の中で最下位です。放射線治療も欧米の半分です。

私の義理の妹は48歳の時に大腸がんで亡くなりました。見つかった時はすでにステージ4で転移もありましたが、何の自覚症状もありませんでした。がん検診の検便をしていれば、この不幸は起きなかったと思います。

“知る”ということは非常に大切です。

がんは全体では男性が多いと説明しましたが、20代では女性が男性よりも1.6倍多く、30代では3倍多くなります。女性のがんで最も多い乳がんは40代後半がピークです。

乳がんを増やす最大の要因は、老化以上に女性ホルモンによる刺激です。少子化の進む現在では、月経回数も多産だったころよりも多く、女性ホルモンに晒されやすくなり、約10〜11人に1人が乳がんになっています。

子宮頸がんは30代前半に最も多くなっています。子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルスの感染が原因です。

女性の社会進出で会社での若い世代のがんは女性が多く、定年延長によってさらに現役就労者のがん罹患は増えていきます。

現在先進国の中で、がんによる死亡が増え続けているのは日本しかありません。10万人あたりのがんの死亡数は、アメリカに対して2014年で1.6倍、最近ではついに2倍になりました。大腸がんの死亡数では、アメリカ全体より日本の方が多くなっています。

今後会社によるがん対策は、必ず必要となります。自分で自分のカラダを守る文化を作らなければなりません。

【講演②】
「がんの治療も家族の看取りも働きながら ~患者として、家族として、後悔せず生きていくために~」

風間沙織氏
(がん対策推進企業アクション認定講師/がん経験者)

私は2014年2月に自己触診で左胸にしこりを発見し、同年3月、乳腺クリニックでステージ1の乳がんと診断されました。同年5月、がん専門病院で左乳房を全摘手術し、インプラントによって乳房再建。同年9月から抗がん剤治療を4クール実施、2015年1月から再発予防のためのホルモン治療を開始して現在も継続中。同年5月に乳頭再建。同年10月に乳輪再建しています。

現在では、もちろん仕事をしていますし、走ったり泳いだりヨガをやったりと非常に元気に毎日を過ごしています。

風間さん

▲風間さん

私がしこりを発見するに至った経緯は、5歳年下の妹から乳がんが見つかったと連絡があったことがきっかけです。母も30数年前に乳がんに罹患していて、乳がん自体には驚かなかったのですが、ステージ4の末期だということにびっくりし、すぐには信じられませんでした。

それからインターネットで乳がんについて調べまくりました。当時10年以上、毎年マンモグラフィーと視触診による乳がん検診を受診しており、毎年異常なしでした。半年前にも検査を受けており、乳がんになるはずがないと思っていましたが、お風呂上りにふとしたきっかけで乳房に小さな飴玉くらいのしこりを発見しました。いてもたってもいられなくなり、その日のうちに一番早く乳がん検診を受診できる乳腺クリニックを予約しました。クリニックではマンモグラフィーと超音波検査を行い、影が認められたので、生検を行うと乳がんが見つかりました。

毎年マンモグラフィーを撮っていたのに、なぜ乳がんが見つけられなかったのだろうと、ふと疑問に思いました。そして、高濃度乳房(デンスブレスト)というものを知りました。乳腺の濃度が高く、マンモグラフィーでは、全体が真っ白に写ってしまうタイプの乳房のことです。私の場合、マンモグラフィーだけでは見つけることが難しかったのです。

マンモグラフィーも超音波検査も共にメリット・デメリットがありますし、年齢や体質によってどちらが適しているのかは変わりますので、自分にあった検診もしくは、交互に受診をすることをおすすめします。

そして、それ以上に自己触診をしてください。

治療については、私の会社はフレックスタイム制だったため、仕事に行く前や終わった後、中抜けなどを利用して行いました。日数を計算してみたところ、治療を行なった2014年3月から11月までの間、180日の稼働日数の中で、フレックス利用が18日、有給休暇利用が24日、そしてフルタイムの出勤が138日でした。副作用が心配される抗がん剤治療は、有給を取って金曜日に行うことで、土日を休足に充て月曜から働けるようにしました。

こうすることで、十分に治療と仕事の両立ができました。

さらに現在は、会社でリモートワークが推奨されたことにより、妹の看取りも両立することができました。

上司に相談してリモートワークを了承してもらい、妹の入院する病院に毎日パソコンを持ち込んで仕事をしました。妹の最期の日々を側で過ごせて、本当に良かったと思います。

妹も早期に発見できていれば、今でも一緒に過ごせていたのではないかと思います。家族ががんになることは、自分ががんになるより辛いです。がん検診は自分のためだけではなく、家族や大切な人のために必要です。

私の場合は勤務先がフレックスタイム制やリモートワークなど、特別な環境だからできたことだと思われるかもしれません。しかし、これらの制度も一朝一夕でできたわけではありませんし、このような制度を遠慮なく使えるようになるにも時間がかかりました。何よりも私が嬉しかったのは、制度よりも、私のことを理解してくれる上司や同僚、部下といった仲間たちのサポートでした。

本日、私の話を聞いて1人でもがん検診に行ったり、奥様に乳がん検診を勧めたりしていただければ嬉しいです。

そして、がん治療、介護、看護、看取りなど、どんな局面でも働き続けられ、キャリアを諦めなくていい社会になってほしいと願います。

【講演③】
「職場のみんなで取り組むがん対策」

西澤依小先生
(西日本旅客鉄道株式会社 金沢健康増進センター主任医長)

私はJR西日本で専属の産業医をやっております。各職場においての取り組み事例をご紹介します。

私が担当している金沢エリアは、従業員数約2900名、駅数136駅、職場は78カ所となり、分離分散職場の典型的な例です。これだけ多くの職場があると、全てを均一にサポートしていくことは実質できていないのが実状です。

西澤先生

▲西澤先生

職場で取り組むがん対策を考える上でのポイントとして、大きく2点挙げられます。

1つは健康管理や支援に関して、企業全体での目標を設定し、制度について理解し活用すること。

もう1つは、誰か1人や一部の人が頑張るのではなく、みんなが取り組むということ。

当社の健康経営の中期健康計画では、喫煙率20%未満、人間ドックの受診率70%以上、そして要精密検査になった場合の検査受診率80%以上など、具体的な数値を目標として掲げています。

がんに対しての1次予防としては、まずはタバコを吸わないということ。今までも禁煙外来やニコチンパッチなどの補助をしていましたが、今年からは実質1万円で禁煙外来を病院に行かなくてもオンラインで受けられる制度ができました。また、お酒の飲み過ぎを注意するポスター掲示や啓発キャンペーンを行っています。

2次予防として、定期健康診断後に2次検診や精密検査が必要な方に対して、緊急性や重大度の高い人には2015年より担当保健師が直接面談したり、保健師から上司に連絡を取り、本人へ受診勧奨をしてもらっています。これでそれまで30%くらいだった精密検査受診率は年々上昇し、現在60%以上になってきました。職場の上司が従業員の健康に関して理解し、本人へ直接メッセージを伝えることが大切だと実感しました。

乳がんについては、自己検診を勧めるために、女性専用デーを設けました。当社の女性社員の割合は約1割ですが、女性だけの検診会場を作り、乳がんモデルを触るなど、とにかく自己検診に興味を持ってもらうようにしました。

また人間ドックやがん検診受診率向上のために、人間ドックは35歳以上は実質無料で受けられるよう補助を、そして電話1本で簡単に予約できるようにしたり、交通費を支給したりしています。がん検診においては、健保組合から特定診断利用支援金として、男性2万円、女性3万円までのキャッシュバックを行っています。

3次予防として、もしもがんになってしまった場合には、傷病手当金や傷病見舞金などの金銭的補助、復帰する場合に短時間からの復職訓練ができるリワークトレーニング制度の導入を行っています。また、両立支援として治療中は月に5日までの治療支援休暇を認めています。

復職の際に私は産業医として面談しますが、実は本人もどのような支援が必要かわかっていない場合も多く見受けられます。本人だけでなく、主治医からの意見も聞きますが、実際にはやってみないとわからないことも多く、必要な支援は人によってそれぞれ異なります。また、同じ人でも時期や病気によって必要な支援が異なるため、産業医だけでなく職場のみなさんが協力し合い、フレキシブルにその都度何が必要なのか考えながら実行して行くことが大切だと思っています。

職場でのがん対策は、予防から就労支援までの様々な局面で個人や一部の人だけでなく、労働者を取り巻くいろいろな人が関わることが大切です。大きな旗を1つ掲げるよりも、小さな旗をたくさん振ることが必要だと思います。

【パネルディスカッション】

登壇者
中川恵一氏(東京大学医学部附属病院 放射線科准教授)
風間沙織氏(がん対策推進企業アクション認定講師/がん経験者)
西澤依小氏(西日本旅客鉄道株式会社 金沢健康増進センター主任医長)
河口裕之氏(中越合金鋳工株式会社 総務部 総務課長/国家資格キャリアコンサルタント/産業カウンセラー)

中川氏
まずは、地元の企業を代表して中越合金鋳工株式会社の河口裕之さまから取り組みを紹介していただきたいと思います。

河口氏
我が社は創立70周年を迎えた地元富山県の企業で、従業員数は660名です。健康企業宣言Step1 とStep2共に富山県で初の認定をされております。
健康づくりの取り組みとしては、衛生管理者や心理相談員、産業カウンセラー、キャリアコンサルタントなどの資格を従業員に取得させ、医師と連携しながらメンタルヘルスに取り組んでいます。
また、20年ほど前に積立有給制度を立ち上げました。2年経過すると未消化の有給休暇は消滅してしまいますが、その未消化分をさらに最大40日積み立てられるというものです。全く有給を消化していないと仮定すると、2年分の有給休暇40日にこの積立て40日が加わり、最大80日の有給があることになり、これを病気の治療や介護に充てられるというもので、本人の疾病だけでなく、家族の介護にも使用することができるといった取り組みを行っています。

中川氏
改めて企業ごとにさまざまな対策があると感じました。
風間さんのお話は印象的でしたが、ご親族には他に乳がん経験者はいらっしゃるのでしょうか。

風間氏
たくさんいます。男性乳がんもいます。

中川氏
男性乳がんもいらっしゃる。それは遺伝性のものかもしれませんね。

風間氏
可能性はあると思いますが、調べてはいません。

中川氏
男性の乳がんは、女性の100分の1です。そして、そのほとんどが遺伝性です。
アメリカの有名な女優さんが、健康な乳腺と卵巣を予防的に取った事例があります。BRCA1という乳がんをできにくくする遺伝子がありますが、この遺伝子に異常があると乳がん・卵巣がんができやすくなります。彼女はこのBRCA1に異常があり、将来的に乳がんが87%、卵巣がんが50%の確率で罹患すると推定されたため、リスクを最小限に抑えるために乳腺と卵巣を摘出したわけです。
このBRCA1に異常があるかどうかの検査は血液検査でできます。
また、欧米では異常がなくても卵巣を取る方も大勢います。それは、卵巣は子供を産む、あるいは女性ホルモンを出すといった役目を終えると、がんの温床という見方をする場合があるからです。
こういう考え方は日本人には馴染めない部分が多いのではと思います。

風間氏
そうですね。それに検査自体が高額です。私の場合は、1人で20万円、妹と一緒にやって30万円といわれました。
乳がんには遺伝性のものもあるのは知っていましたが、私は一人者ですし、妹の子供は男の子だったこともあり、高額な検査を受けてもしも異常がわかったとしても、その情報をどうすればいいのだろうということもあり、受けませんでした。

中川氏
男性乳がんの罹患リスクは低いですが、子供にも50%の確率で異常のあるBRCA1が遺伝します。BRCA1の異常は、乳がん以外にも前立線がんやすい臓がんなどにも影響します。男性にもリスクがあるということを知っておく方がいいでしょう。
BRCA1の異常に効く薬もありますので、このようながんのリスクもあるということを、社会に知って欲しいです。
風間さんの妹さんは、なぜ乳がん検査をやられてなかったのでしょうか。

風間氏
妹は長くパートで働いていましたので、企業の定期健康診断を受けられなかったことと、自治体の検査も「次でいいか」と伸ばし伸ばしになっていたのが実状です。正社員になってやっと健康診断を受けたという感じです。

中川氏
パートの方や主婦の方は、ぜひ自治体の住民検診を受けていただきたいです。
住民検診は税金が投入されているから安いですし、税金が投入されているということはきちんとしたエビデンスがあるということです。
西澤先生の会社ではどうですか。

パネルディスカッション

▲パネルディスカッション

西澤氏
契約社員に対しても、正社員とほぼ同様のサービスが受けられるようになりました。
私たちも乳がん検診への取り組み施策をやりましたが、なかなか自ら検診を受けようという状況にはなりづらく、どちらかといえば周りの人の言葉や、検診を受けて当たり前という風土などが、検診に行ったり自己検診したりするきっかけとしては多いと感じました。
自分だけではなく、周りの仲間との協力が大切だと思います。

中川氏
私もがんになりましたが、がんには運の要素もあります。たばこを吸わなくて、正しい生活習慣を送っていても防げないがんはあります。
また、お酒もがんになる要素でもあります。特に顔が赤くなってから飲むのはよくありません。日本では昔から、お酒がコミュニケーションツールとして使われていて、少々不健康なくらいがかっこいい文化がありました。今でもそうかもしれませんが、JR西日本さんはどうですか。

西澤氏
例えばメンタルヘルスケアなどで、コミュニケーションをとりましょうと言ったら、上司の方がやるのは、まず飲みに連れて行くことなんです。今の時代はそうではない、という話をしても、やはりお酒を飲んだ方が腹を割って話せると感じられていて、お酒を飲まないと腹を割って話せないそのことに実は問題があることがなかなかわかっていただけないこともあります。

中川氏
男性の場合は3分の2がたばこやお酒を含めた生活習慣、残り3分の1が運です。女性の場合は、生活習慣は男性よりいいですから、運が最大の要因となります。
がんは、がん関連遺伝子の偶発的損傷が原因です。どんなに正しい生活を送っていても必ず損傷は起きます。遺伝子も他のものと一緒で経年劣化は避けられません。
がんだけではなく、人の人生には運が関係しますが、がんのリスクはある程度コントロールできますし、運が悪かったとしても早期に見つけることができます。しかし、それができていないのが現状です。
河口さんの会社は製造業で男性が多いと思いますが、健康に関してはどのような文化がありますか。

河口氏
私どもの会社は非鉄金属鋳物製造業で、非鉄金属から出てくる煙の問題もありますので、かなり健康管理を重視しています。生まれてから死ぬまでの間では、仕事が占める時間が多くなりますから、会社が率先して健康管理を行っています。体育会系の会社ですが、衛生委員会や従業員、組合と相談しながら、人を第一として長く健康に生きて行くことに取り組んでいます。

中川氏
長く健康に生きて行くということは、非常に重要です。
がんの不幸は本人だけでなく、周りの人間を巻き込むことがあります。そのためにがん対策があり、がん対策が働き方改革の1つでもあります。
河口さんの会社は、どうやって人を第一とする文化ができたんでしょうか。

河口氏
先ほどお話ししたように人を人として扱うのが会社の方針です。
20年前から積立有給休暇制度が始まりましたが、最初は20日からスタートして、改定を重ねて今の40日になっています。月の稼働日数が20日以下ですから、治療で休んだとしても4カ月間は給与が保証されます。
例え余命宣告された社員がいても、最後まで会社が本人だけでなく家族を含めてフォローすることが使命だと思っています。

中川氏
これからは、若者が減っていき高齢者が働かざるを得ない時代です。その中でどうやって生産性を維持するかは難しい問題です。働き方や制度をコントロールすることで、会社の良し悪しが決まることも出てきます。河口さんのような総務や人事といった部門の人にも、より頑張って欲しいと思います。
最後に一言ずつお願いします。

西澤氏
身の周りの方ががんになられた経験を持つ方には、それががんに対する行動変異に繋がっていることが多いです。いかに企業の中でがんに関する具体的な話を出すか、関わっていくか、それによってがんに興味を持っていただけるように働きかけていきたいと思います。

風間氏
がんは、やっぱり死に至る恐ろしい病気です。しかし、がんは早期発見・早期治療で死に至らずに済むということを私は身をもって体験しました。職場、家族にがん検診を受けていない人がいれば、ぜひ受けることを勧めていただきたいと思います。

河口氏
みなさん大半がサラリーマンです。がんはいずれ自分に降りかかってきます。他人事ではなく自分のための制度だと思って、皆さんも労務・総務などの部署と協力共助して、より良い制度作りをしていこうではありませんか。

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