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イベントレポート

2019/10/9
女性メディア向けセミナー「がんとセックス〜パートナーと考える子宮頸がん〜」を開催しました

東京大学医学部附属病院(東京都文京区)において、女性メディア向けセミナー「がんとセックス〜パートナーと考える子宮頸がん〜」 (主催:がん対策推進企業アクション)が10月9日(水)に開催されました。

同セミナーは、女性特有のがんである子宮頸がんにスポットを当て、早期発見のための検診の重要性だけでなく、男性を含む社会全体としてどう理解していくかということを、メディアとともに考えることを目的に開催したものです。

当日は、自身も子宮頸がん経験者の難波美智代氏の司会のもと、厚生労働省健康局がん・疾病対策課課長補佐の猪股研次氏からの挨拶、がん対策推進企業アクションの事務局長の大石健司より本セミナーの趣旨説明のあと、東京大学医学部附属病院 放射線科准教授の中川恵一氏から「子宮頸がんの現状と検診の重要性について」をテーマにした講演が行われました。

講演のあとには、子宮頸がん経験者の重田かおる氏と女性向けの課題解決型アパレルブランドを運営するハヤカワ五味氏を交えたディスカッションが行われました。

参加メディアの中から質問も相次ぎ、子宮頸がんへの関心度の高さが伺われました。

講演の様子

【挨拶】

猪股研次氏(厚生労働省健康局がん・疾病対策課課長補佐)

がん対策推進企業アクションは平成21年度からスタートし、今年で11年目を迎えました。本年7月には、パートナー企業が3000社を突破しました。

本事業では、メディアへの情報発信も積極的に取り組んでおり、7月には放射線治療に対する最新情報を説明するセミナーを開催しました。今回のセミナーは、女性特有のがんである子宮頸がんをテーマとし、定期検診の重要性、子宮頸がんの現状などをアドバイザリーボード議長中川恵一先生に講演いただき、実際に子宮頸がんを経験されたがんサバイバーの方たちとのディスカッションを通して、子宮頸がんをはじめとするがんに関する正しい知識の普及に努めていただければと思います。

【メディアセミナー主旨説明】

大石健司(がん対策推進企業アクション事務局長)

本事業は、企業・団体等におけるがん検診の受診率向上とがんになった患者さんへの就労支援等を目的としています。

企業が取り組めるがん対策には、がん検診受診率のアップ、がんについて会社全体で正しく知ること、がんになっても働き続けられる環境づくりの3つがあります。今後、女性の社会進出がますます増えるとともに、定年の延長など働き手の高齢化が進めば、従業員のがん罹患問題は深刻になり、その対策は待ったなしで求められています。

本事業はその対応策を模索し、従業員をがんから守る、国民を守るという壮大な国家プロジェクトに進化させようとしているところです。正しくがんを知る小冊子、ポスターの配布、セミナー開催、最新情報の発信、出張講座の開催、コンソーシアム活動、がんサバイバーの派遣などの活動を通して、企業が取り組めるがん対策を全力で応援していきます。

【講演】

「子宮頸がんの現状と定期検診の重要性について」

中川恵一氏(東京大学医学部附属病院 放射線科准教授 放射線治療部門長/がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長)

日本はメディアを含めて、国家全体のヘルスリテラシーが低いと思います。その象徴的なものが子宮頸がんの予防ワクチンについてです。現在では、子宮頸がんの予防ワクチンとは言わず、HPV(ヒトパピローマウイルス)予防ワクチンと呼ばれます。なぜなら、このウイルスは子宮頸がん以外にもたくさんのがんの原因となっているからです。

子宮頸がんは今若い女性に多く、ピークは30代前半、どんどん若年化しています。

子宮頸がんが進行すると、日本では子宮を全摘出する手術になり、この手術をすると、リンパ浮腫などのいろいろな副作用が心配されます。欧米では手術ではなく、放射線治療が一般的ですので、そのあたりもぜひ勉強していただければと思います。

子宮頸がんの原因のほぼ100%がヒトパピローマウイルスで、その種類は現在180くらいあります。このウイルスは性経験のある女性の7〜8割が感染経験を持つ非常にありふれたウイルスで、ほとんどの女性が一度は感染するといっていいでしょう。日本では年間1万人くらいが子宮頸がんに罹患しており、子宮頸がんの患者は増えています。これは異常事態です。欧米では子宮頸がん罹患者は減っており、もはや過去のがんと言われています。

なぜ日本で子宮頸がんが増えているのか。それは、多くの若い女性が子宮頸がんの原因や予防方法、検診、治療方法を知らないからです。

ヒトパピローマウイルスはワクチンを打てば防げます。日本ではワクチンの法定接種が始まっており、小学6年生から高校1年生まで無料で接種できますが、あまり知られていません。このワクチンを2〜3回接種すれば、子宮頸がんのリスクは3〜4割まで下がります。

ワクチンを接種しなくなった理由は、過去にワクチンを接種した後に出たごく一部の症状に対して、ワクチンの副反応ではないかと世間のイメージがあまりにも悪くなったからです。かつて7割あったワクチンの接種率は今や0.3%しかありません。しかし、名古屋スタディという名古屋市の最近の調査で、この症状とワクチンとの因果関係は一切ないという論文が発表されました。

世界を見ると、スウェーデン、イギリス、オーストラリアなどのワクチン接種率は軒並み80%を超えています。オーストラリアやアメリカでは男性にも接種しています。日本でも70%接種していた時代があり、ワクチンは7割の子宮頸がんリスクを減らしますから、その年代では子宮頸がん罹患者はそれまでの年代の約半数になると予想され、その後また接種しなくなった年代では元に戻るのではないかと、世界中の研究者が固唾を飲んで見守っています。

フィンランドのデータによると、ワクチンを接種した人は、子宮頸がんなど、ヒトパピローマウイルス関連のがんは1人も出ていません。

子宮頸がん(ステージ2)の治療では、欧米は8割が放射線治療、日本では8割が手術です。それは日本ではリテラシーが低く、そもそも放射線治療があるということを知らない人も多いからです。

ぜひ、子宮頸がんについて、その原因となるヒトパピローマウイルスのこと、予防できるワクチンがあるということ、治療には放射線があるということなど、より正しい知識を国民の皆さんに知っていただきたいと思います。

中川恵一先生によるご講演

▲中川恵一先生によるご講演

【ディスカッション】

中川恵一氏
重田かおる氏(子宮頸がん経験者)
ハヤカワ五味氏(国内フェミテック業界の第一人者)
難波美智代氏(女性の健康問題を啓発するシンクパール代表)

中川氏
重田さんは、東大病院で子宮頸がんの放射線治療をなさいました。当時のお話を聞かせてください。

重田氏
私が46歳だった2008年の秋に、初めて受けた子宮頸がんの検診で初期の子宮頸がんが見つかりました。先生から治療法は、手術、放射線、抗がん剤とあるけど、手術になりますね、病院を紹介するから決めてください、と言われました。
病院のランキングや症例数などいろいろ調べ、病院を選定しました。
組織診の結果が出たとき、夫に聞かせたくないと思い1人で病院に行きました。医師からは1B1期で広汎子宮全摘出術で、子宮だけでなく卵巣も取ると説明を受け衝撃を受けました。放射線治療でも治るのかと聞きましたが、ガイドラインでの第一選択は手術だと説明され、その時は手術が一番効果のある治療と解釈していました。
ショックだったのは、手術の後遺症として説明を受けた排尿障害と、リンパ浮腫の症例としてゾウのように2倍くらいに膨らんだ足の写真でした。その夜、私は夫に手術をしたくないと泣いて訴えました。
翌日夫が集めてきた本の中に中川先生の著書があり、その本には放射線治療も手術と同じ効果があり、しかも排尿障害やリンパ浮腫の確率も低いと書いてあったのです。
これが本当なら私も放射線治療で治したいと思い、手術日が迫る中、本に載っていた婦人科がんのサポートグループ「子宮・卵巣がんのサポートグループあいあい」へ問い合わせると、放射線治療体験者を紹介してもらい、話を聞くことができました。友人の放射線科医からも、放射線治療も手術と同じ治療効果があると聞いて、気持ちは放射線治療に大きく傾きました。
セカンドオピニオンで東大病院を受診したところ、先生にはとても丁寧に患者目線でお話をしていただいて信頼することができ、すぐに放射線治療をする決心がつきました。
治療は、放射線化学併用療法に決め、外照射28回、内照射4回、化学療法4回を行いました。幸い再発も転移もなく、現在に至っています。
私が皆さんにお伝えしたいのは、子宮頸がん検診の重要性です。そして、万が一がんが発見されても、あせらず医者任せにせず、ご自身でよく調べて納得する治療方法を選んでほしいと思います。

難波氏
先生からの手術の説明をパートナーと一緒に聞きたくなかったのは、なぜでしょうか。

重田氏
医者の口から具体的にここをこう切ってとか、これを取ってとか、そういう話を夫に聞いて欲しくなかったからです。

中川氏
そういうことを医者は、まったく考えないものなんですね。
ここで、重田さんも相談された婦人科がんの患者会「あいあい」のまつばらさんにもお話を伺いたいと思います。

パネリスト 重田かおる様
▲パネリスト 重田かおる様
婦人科がんの患者会「あいあい」まつばら様
▲婦人科がんの患者会「あいあい」まつばら様

まつばら氏
広汎子宮全摘出術を受けてまもない2B期の患者さんは、私どものところへ本当に這うようにして参加されます。一方、放射線治療を受けた方達は、ほぼ治療前と同じ生活をして仕事や趣味、スポーツなどをしていらっしゃる方が多く、こんなに治療後のQOLが違うのですが、それを治療前に知っている方はほとんどいません。放射線療法にも合併症や後遺症がありますが、患者は各々の治療法のメリット・デメリット、治療後の生活がどう変化するのかを知ることが重要だと思います。
また、私たちは性の相談も受けています。医師の方には、性も含め治療後に起こりうる後遺症の情報提供ももっとしていただければと思います。中川先生はしていらっしゃいますか。

中川氏
実は、そこは少ないんです。申し訳なく思います。

まつばら氏
患者は主治医へ性の相談もしていいのか、という葛藤があるので、診察室に「性のご相談にも応じます」などと明記していただくか、別に受け皿をつくっていただければと思います。

難波氏
ハヤカワさんは、フェミテックの第一人者であられます。

ハヤカワ氏
私自身も子宮頸がん検診で異形成の判断が出たこともあり、当事者意識を持っています。
今日の中川先生の講演でもありましたが、私と同世代の女性はセックスと子宮頸がんとの関係性をわかっていません。避妊や子宮頸がん予防について、自分で学ばなければならず、そういう機会を作って行きたいと思います。

難波氏
今まで、治療の選択、治療後の性生活における悩みなどをお伺いしましたが、やはり、セックスとの関連性は予防の観点からも重要だと思います。
私自身も子宮頸がんの経験者で、講演会などでセックスについて話をしますが、男性側からは心無い言葉を投げかけられるなどの誤った知識がまだまだ多いのが現状です。

ハヤカワ氏
だからこそ、話し出しづらいですね。生理不順や子宮がん検診で婦人科に行きたくても、親が保険証を管理していて、何かあったの?と疑われるのが嫌で婦人科にいけない人も多くいます。

難波氏
やはり、ハヤカワさんのように若い世代からの発信であったり、メディアからの情報提供が重要だと思います。
ここにお集まりのメディアの方にお伺いしたいのですが、子宮頸がんに関して発信しようとしたが、できなかったという方はいらっしゃいますか。

メディアA
子宮頸がんの絶滅に向けて、HPVワクチンの企画を何度も立ち上げていますが、いろいろな抵抗や反対があり、なかなか実現していません。

中川氏
ワクチンを接種すれば、確実に子宮頸がんは減るのだから、受けやすい環境を作っていかなければなりませんね。

難波氏
現在では、ワクチン接種に関する風向きもよい方向に変わりつつありますので、ぜひメディアの皆さんには発信をしていただきたいと思います。

ハヤカワ氏
ワクチン接種はもちろんですが、接種した人も2年に1度は子宮頸がん検診を受けてほしいですし、接種してない人であればなおさらです。子宮頸がん検診を受けやすくするための環境づくりも大切だと感じます。

中川氏
ワクチン接種と子宮頸がん検診両方をやれば、子宮頸がんで亡くなる危険は限りなくゼロになります。

ハヤカワ氏
検診に行って、子宮頸がんが見つかるのが怖いという方もよくいますが、異形成の段階で見つかるものも多いですし、他の検診と異なり20代から受けるべきものです。痛くもないですし、怖がらずに行ってほしいと思います。

難波氏
皆さん、最後に伝えたいことはありますか。

重田氏
まずは検診を受けてほしいです。初期で見つかれば治療も楽です。また、治療の選択も正しくしてほしいです。

ハヤカワ氏
がんというと、お父さんお母さん世代のものかなと思いますが、子宮頸がん検診は若いうちから受けてほしいです。また、婦人科にもっと気楽に相談や受診に行ってほしいと思います。ワクチンなどで予防し、しっかりと検診を受け、早期に発見して治療することが大切だと思います。

中川氏
メディアの方々の記事が子宮頸がんから国民を救いますので、よろしくお願いします。

パネリスト ハヤカワ五味様(株式会社ウツワ 代表取締役)
▲パネリスト ハヤカワ五味様
株式会社ウツワ 代表取締役
モデレーター 難波美智代様(がん対策推進企業アクション アドバイザリーボードメンバー)
▲モデレーター 難波美智代様
がん対策推進企業アクション アドバイザリーボードメンバー

【質疑応答】

メディアB
私は今29歳ですが、ワクチンを打ったことがありません。今、ワクチンを接種しようとすると、まずはウイルスにかかっていないかという検診を受けて、それからのワクチン接種となり、安くても6万円くらいかかります。
検診を受けて入れば大丈夫なのか、やはり接種した方がいいのか、中川先生はどうお考えでしょうか。

中川氏
会社によっては補助が出ることもあるので、調べてみてください。ワクチン接種以外にもウイルス感染のリスクを下げる方法もあります。検診を受けることで子宮頸がんの早期発見は可能ですので、2年に1回を1年ごとにするなども考えてもいいかもしれません。しかし、ワクチンは一生ものですから、経済的に余裕があるなら受けたほうがいいと思います。

メディアB
ワクチン接種率が下がったのは、過去のメディア側の報道に問題があったかもしれません。しかし、今はメディアも医療者も国も協力すべきだと思います。
ありがとうございました。

メディアC
ワクチン接種をしたくなかった人の気持ちは、どのようなものでしょうか。

ハヤカワ氏
私自身もそうだったのですが、親や周りの人がテレビを見て、こういったことが起こるらしいといったことを何度も聞かされること、そして、10代のうちに10年後20年後の先々まで考えている人は、そう多くないと思います。親の意見は、中高生世代においては大きいですから、ワクチンを接種しないという人の気持ちもわかります。当事者だけでなく親の世代にも正しい情報を届けることが重要だと思います。

講演の様子
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