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イベントレポート

2019/9/19
令和元年度「がん検診受診率向上推進全国大会」を開催(東京・ヤクルトホール)

令和元年度「がん検診受診率向上推進全国大会〜受診率50%を目指して〜」(主催:厚生労働省、がん対策推進企業アクション)が、東京都港区のヤクルトホールにて9月19日(木)に開催されました。

開会のあいさつは、共催した一般社団法人全国健康増進協議会の田中勝代表理事。続いて厚生労働省健康局 がん・疾病対策課課長の江浪武志氏より「国のがん対策の現状について」の説明がなされた後、がん対策推進企業アクション事務局長より同事業の活動報告がされるとともに、「がんサバイバー認定講師」である8人の方(2人欠席)が紹介・挨拶されました。その後、同事業のアドバイザリーボード議長、中川恵一氏の「両立支援のための早期発見とがん治療」と題した講演が行われました。

ホールは来場者で満員、がん検診受診率向上のイメージキャラクター「けんしんくん」も訪れ、熱気ある大会となりました。

講演風景
▲講演風景
「国のがん対策の現状について」

江浪武志氏(厚生労働省健康局 がん・疾病対策課課長)

我が国において、がんは1981年から死因の第1位となっております。生涯では2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなっており、依然として国民の生命と健康にとって非常に重大な問題です。

がんの予防では、がん検診が早期発見・早期治療のために大変に有効です。がんへの関心を高め、できる限り多くの方にがん検診を受診していただくとともに、再検査が必要な方には積極的に精密検査を受けていただくことが重要だと考えています。このため、毎年10月を“がん検診受診率50%達成”に向けた、集中キャンペーン月間としています。

企業・団体とともに、がん検診受診率50%以上への引き上げと、がんになっても働き続けられる社会の構築を目的とした、がん対策推進企業アクションは2009年にスタートして今年11年目を迎えました。推進パートナー数は7月に3000社を突破するまでに成長しています。

国のがん対策を振り返ると、平成18年にがん対策基本法が成立したのち、がん対策推進基本計画が第1期・第2期と策定され、現在では平成28年のがん対策基本法の改正を受けて、昨年3月に第3期のがん対策推進基本計画が策定されています。

平成28年に改正されたがん対策基本法では、がん患者の就労等、がんに関する教育の推進が盛り込まれました。この改正部分では、企業のご協力が非常に重要です。第3期がん対策推進基本計画では、がん患者を含めた国民ががんを知り、がんの克服を目指すとし「がんの予防」「がん医療の充実」「がんとの共生」を3本の柱とし、これを支えるために、がん研究、人材育成、がん教育、普及啓発の基盤の整備を進めています。

がん検診には、対象集団全体の死亡率を下げることを目的とした「対策型検診」と個人の死亡リスクを下げることを目的とした「任意型検診」があり、国として主に担当しているのは対策型検診です。

がん検診の受診率は50%を目標としていますが、関係者の努力により年々上昇傾向にあるものの、肺がん検診以外は依然50%に届いていません。国際的に見ても日本のがん検診受診率は低いのが現状です。

がん検診の受診機会は、受診者の約3〜6割が勤務先での受診となっており、受診率向上のためには職域での啓発が非常に重要です。

がん検診未受診の理由のトップ3は「受ける時間がないから」「健康状態に自信があり、必要性を感じないから」「心配な時はいつでも医療機関を受診できるから」となっています。しかし、がんは症状が出てからでは遅い病気です。発見が早ければ早いほど完治する可能性は高まりますので、早期発見のためにもがん検診を受診しやすい環境づくりと効果的な検診を目指しています。

職域におけるがん検診は、福利厚生の一環として実施されていて、検査項目や対象年齢など実施方法はさまざまで、対象者数や受診者数のデータ集約が行われておらず、受診率の算定や精度管理を行うことが困難であるといわれています。厚生労働省では職域におけるがん検診受診に関して、参考となる事項を示し、科学的根拠に基づく検診ができるよう「職域におけるがん検診マニュアル」を作成しておりますので、ぜひ活用してください。

がん患者の約3人に1人は、就労可能年齢で罹患しており、最新の2016年の統計では、約99万人のがん患者のうち20〜64歳までが全体の26%、20〜69歳まで広げると41.9%にあたります。

働くことが可能で、働く意欲のあるがん患者が働き続けられるようにするために必要な取り組みは何か、という世論調査では「病気の治療や通院のために短時間勤務が活用できること」「1時間単位の休暇や長期の休暇がとれるなど柔軟な休暇制度」「在宅勤務を取り入れること」などが求められています。

また、日本の労働人口の約3人に1人が何らかの疾病を抱えながら働いており、アンケートからも治療を続けながら働くための制度や社内の理解が必要だとわかります。

治療と仕事を両立するためには、働き方改革実行計画に基づいて、経営トップ管理職などの意識改革、両立を可能とする社内制度の整備促進、傷病手当金の支給要件の検討など、会社の意識改革と体制の整備が必要です。

働き方改革実行計画では、主治医、会社産業医、両立支援コーディネーターの3者により患者の治療と仕事の両立をサポートする「トライアングル型支援」を推進しています。

がん患者の就労に関する取り組みは、厚生労働省健康局 がん・疾病対策課、職業安定局 首席職業指導官室、労働基準局 産業保健支援室の3部局によって連携を密に取りながら進めています。

本日のこれからの講演を参考に、職場におけるがん検診受診率の向上、がん患者の治療と就労の両立支援、従業員への情報提供などの取り組みが推進されることを大いに期待しています。

厚生労働省:江浪武志氏によるご挨拶と「国のがん対策の現状について」のご説明
▲厚生労働省:江浪武志氏によるご挨拶と「国のがん対策の現状について」のご説明
「がん対策推進企業アクション 事業説明」

大石健司氏(がん対策推進企業アクション事務局 事務局長)

がん対策推進企業アクションは、職域でのがん検診受診率を向上させるための国家プロジェクトであり、厚生労働省の委託事業です。がんでもやめない、やめさせない「今年も行こう、今年は行こう、がん検診」をキャッチフレーズに、がんになっても働ける社会を目指して活動しています。

推進パートナー数は、ついに今年の7月に3100社を突破し、確実に発展を遂げています。従業員数100人未満の企業・団体が全体の46%、100〜500人未満が24%、500人以上が30%と、大企業から中小企業まで業種を問わず全国からご参加いただいています。

推進パートナーの従業員数は760万人を超えており、これは国内の就業者数の11.3%にあたります。この数字は大変意味あるものと感じており、本事業は今後も日本のがん対策の重要な一翼を担っていきます。

がん対策推進企業アクションは2009年にスタートし、今年で11年目を迎えました。設立当初は、全国大会、記者説明会、推進パートナー会議、小冊子「がん検診のススメ」の配布を行いましたが、年を重ねるごとに、推進パートナーとの勉強会、全国7ブロックでの啓発セミナー、シンポジウム、企業表彰制度、女性誌セミナー、出張講座、企業コンソーシアム、がんサバイバー公募など、発展的に活動をしてきました。

日本で1年間にがんになる人は約101万人、その1/3が働く世代であり、64歳までに何らかのがんに罹患する確率は男女ともに15%。会社員の死因の約半数ががんとなっています。このようなことから、企業のがん対策は待ったなしの状況であるといえます。

今後、企業が取り組むべきがんアクションとは、健康診断にがん検診を加えたり、検診の効果を啓発したりして受診率の向上を目指す「がん検診の受診を啓発すること」。がんは早期発見が重要だということ、がんになっても働き続けられること、高額療養費制度で治療費の負担が抑えられること、正しい生活習慣でがんになるリスクを減らせることなどの「がんについて会社全体で正しく知ること」。治療のサポート体制づくりや柔軟な休暇制度などの「がんになっても働き続けられる環境をつくること」の3つです。

また、女性の社会進出は今後ますます増えるとともに定年の延長などで、従業員のがん罹患問題は、より深刻になっていきます。本事業では、このようなことへの対応策を模索し、がんから従業員を守る、国民を守るという壮大な国家プロジェクトに進化させようとしています。

本年度の取り組みとしては、「がん検診のススメ」小冊子の配布、中央・地方でのセミナーの開催、最新情報の発信、出張講座の開催、大企業・中小企業向けのコンソーシアム活動、経営団体や自治体等との連携・推進を行います。

ポスターやパンフレットなどの啓発ツールは、パートナー企業・団体に加え、47都道府県への配布を行い、希望する市区町村にも行き渡ることができるように考えています。約1800の全国の自治体に行き渡り、活用されることを期待しております。

また、がん経験者で自身の体験を啓発活動に役立てていただける10名の「がん経験者認定講師」を昨年度採用しました。ブロックセミナー、メディアセミナー、出張講座、市民公開講座などですでに活躍されています。

「がん対策推進企業アクション」事務局長:大石より本年度の取り組みをご説明
▲「がん対策推進企業アクション」
事務局長:大石より本年度の取り組みをご説明
「がん経験者認定講師」が登壇し挨拶
▲「がん経験者認定講師」が登壇し挨拶
認定講師の挨拶

池田久美氏(京都府) 

2014年に胃がんになって、胃の2/3を切除しました。私は公立中学に勤務していますが、認定講師になって学校でのがん教育に関心を持つようになりました。児童・生徒へのがん教育は大変意義のあるものですが、なかなか進んでいかない現状もあります。例えば中学3年生の保健体育の授業では生活習慣病の予防という1時間の授業の中で、担当する教員にもよりますが「がん」について触れるのは10分くらいではないでしょうか。

外部講師の方を迎えての学習は、年間カリキュラムの中の限られた時間で、薬物の問題、禁煙教育、SNSの問題、人権問題など、生徒に学ばせたいことは山ほどあります。がん教育を進めて行くためには、一歩踏み込んだ手立てが必要だと思います。

石山美行氏(神奈川県)

2016年に乳がんが見つかり、初期ではありましたが同時に転移するような珍しいタイプでした。私は、運動による緩和などで仕事と治療を両立しました。がん治療というと、安静にするというイメージを持たれる方も多いのですが、運動効果のエビデンスもあり、海外では運動を取り入れることで抗がん剤の副作用が和らぐなどのプログラムもあります。日本でも「がんサバイバーのための運動」が楽しくできるようプロジェクトを立ち上げました。専門家とがんサバイバーとの協力体制で頑張っていきますので、よろしくお願いします。

風間沙織氏(神奈川県)

2014年にステージ1の乳がんが見つかり、手術、抗がん剤治療をしました。5歳年下の妹も同時期に乳がんになりました。彼女はパートで働いていたため乳がん検診を定期的に受けておらず、見つかった時にはステージ4で転移もあり、亡くなってしまいました。

もっと早く乳がん検診を受けていたら、今頃も私と同じくらい元気だったかもしれないと思うとやりきれません。がんは早期発見・早期治療が大切です。自分だけではなく家族のためにも、がん検診を受けて早期発見・早期治療に努めていただきたいと思います。

昆 広海氏(東京都)

昨年、生後半年の娘を保育園に預けて職場復帰した直後にステージ2の乳がんが見つかりました。抗がん剤治療と手術をして職場復帰して、はや半年が経ちます。早期発見ができたので治療が長引かず、スムーズな社会復帰につながったと感じています。

私は比較的オープンに乳がんの話を周りにしており、そのお陰かママ友が乳がん検診を受けたところ、ステージ0の乳がんが発見されました。ステージ0なので、手術だけで術後の抗がん剤治療は必要ありませんでした。育児や仕事をしながらの抗がん剤治療は大変です。また、抗がん剤治療をすると生理が止まります。そのため、子どもを考えている方は卵子の凍結などが必要になる場合もあり、費用面や体の負担が大きくなります。早期発見のため、ぜひ積極的にがん検診に行ってほしいと思います。

澤田崇史氏(岐阜県)

2年前に会社の健康診断で胃がんが発覚し、胃の部分切除をしました。今年の年明けに再発し、現在は多臓器への転移はないものの腹膜播種でお腹の中にがん細胞が広がっており、抗がん剤の治療を継続しています。

しかし、自分でもがん患者かと思うくらい元気ですし、仕事も勤務時間を減らすこともなく両立できています。がんになっても、元気に仕事をしながら治療ができるんだ、仕事をやめる必要はないということを、早期発見・早期治療とともに多くの方にお伝えできればと思っています。

鈴木信行氏(東京都)

大学3年の時に精巣がんになり、3年前の46歳の時にステージ4の甲状腺がんになって、現在加療中です。

私のようながんサバイバーとともになって産業保健スタッフの方々に考えていただきたいことが2つあります。1つは、産業保健スタッフの役割や立場が社会的に従業員の皆さんに伝わっていない現実があります。皆さんの役割・技量をもっと従業員に知ってもらうにはどうしたらいいかを考えていただきたいです。もう1つが、会社でがん対策の制度などを考える時に、ぜひ柔軟性を持たせてほしいということです。がん患者は1人1人状況が違います。がんじがらめのルールで、逆に使いづらくなってしまった事例が散見されます。制度の柔軟性についても、一緒になって考えていければと考えています。

中 美佳氏(和歌山県)

2012年に乳がんが見つかり、抗がん剤治療、手術を経て現在ホルモン治療中です。自分ががんになるまでは、自分ががんになるとは思っていませんでしたし、がんになったら仕事もできないと思っていました。

しかし、実際は仕事をしながら通院治療ができます。私は3年前に仕事に復帰しましたが、その姿を見て「がんに対するイメージが変わった」「勇気をもらった」などの声をたくさんいただくとともに、今まで検診に行くことが怖かったという同僚が検診を受診することで、2名のステージ0早期乳がんを発見することができ、治療も短期間ですみました。自分のがん体験を糧に、まずは大切な身近な人からがん検診受診をすすめ、一般の人にもがん検診の大切さを伝えていきたいと思っています。

花木裕介氏(千葉県)

一昨年に中咽頭がんになり、昨年治療と療養をし、1年前の9月に復職をしました。本日は会社の好意もあり、勤務扱いとなっています。

認定講師となりここ1年で、治療体験や告知時の心境などを講演会や企業などで話させていただいています。すると受講者の方々から、がんについてわかっているつもりだったけど、体験談を聞くことでより一層がん検診の大切さがわかり受診しようと思った、などの声を多くいただきました。

がんに対する知識やがん検診を受診しようという意識には、まだまだ格差が大きいように感じます。自分のがん体験を語ることで、そういう格差を少なくし、社会貢献ができたらと思っています。

「両立支援のための早期発見とがん治療」

中川恵一氏(東京大学医学部附属病院 放射線科 准教授/がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長)

現在、サラリーマンの死因の半分ががんで、働く世代の自殺を除く病気死亡の9割ががんといわれています。がんは、我々働く者にとっては、非常に大きな壁であるということです。

日本人全体で見ると、圧倒的に男性の方ががん患者は多いのですが、男性社員と女性社員、つまり働く世代に絞ると女性社員の方が多くなります。なぜなら若い時は乳がんや子宮頸がんなど、女性の方ががんになりやすいからです。

また、今後は女性の社会進出による働く女性のがんの増加に加え、定年延長による従業員の平均年齢のアップに伴うがん患者が増えていきますので、企業におけるがん対策は非常に重要になってきます。

現在の日本の累積がん罹患リスク、つまり一生でがんになる確率は、2014年のデータで男性が62%、女性が47%です。がん患者のデータが全例集められるようになった全国がん登録が始まったのが2016年。新規がん患者数は、2016年が約99.5万人、その前の2015年が約89.1万人、2014年が約86.7万人となっています。全国がん登録が始まった年にがん患者が急増しているデータから、実際にはその前の年にもっと新規がん患者が多かったことが予想されます。

つまり、この2014年の段階でのがんになるリスクより、現在はもっとリスクが高まっているとともに高齢化の影響もあり、正式なデータは出ていませんが2019年にはおそらく男性は3人に2人、女性は2人に1人ががんになるのではと予想されます。

ちなみに男性の方が、女性よりもがん患者が多いのは、喫煙や飲酒などの生活習慣が悪いからです。

実は、このようなことを申し上げている私自身もがんになりました。男性の3人に2人ががんになるわけですから、私がなっても何ら不思議ではないのですが、まさか自分ががんになるとは全く予想もしていませんでした。

私はお酒好きが原因で、肝臓に固まり状に脂肪が貯まるまだら脂肪肝を持っています。そこで去年の12月9日、当直の日に自分で肝臓の超音波検査をしていました。当日は尿が溜まっていたので、膀胱も検査したところ、偶然にも膀胱がんを発見しました。まさに晴天の霹靂です。

その後12月27日に入院をして翌28日に経尿道的内視鏡切除の手術、12月31日に退院し、1月4日からは通常勤務に戻れました。このように、ほとんどの早期がんであれば、仕事にも暮らしにも大きな影響は与えません。両立支援にもいろいろありますが、まずは早期に発見して治療することが、最も重要なことではないでしょうか。

私の経験から、まとめた「がんを知る7か条」をお教えしたいと思います。

  • ① 症状を出しにくい病気
  • ② リスクを減らせる病気
  • ③ 運の要素もある病気
  • ④ 早期なら95%が治る病気
  • ⑤ 生活習慣+早期発見が大事
  • ⑥ 早期発見のカギはがん検診
  • ⑦ 治療法も選べる病気
です。

私もがんを経験して痛切に感じたのは①の、がんは症状を出しにくい病気であるということです。私の膀胱がんも全く自覚症状はありませんでした。多くの人は、何か体に異変を感じたら病院にすぐに行こうと考えていますが、それは間違いです。そして、自分だけはかがんにならないと思うものです。しかし、がんという病気は症状が出てからでは遅いのです。ですから、いくら体調が絶好調でもがん検診を受診しなければなりません。

また、乳がんは自分で乳房を触る自己検診で発見することもできます。毎月触って、先月と触り心地がかわっていないかを確かめるだけですが、実際にやられている方は少ないようです。ぜひ、セルフチェックをしていただきたいと思います。

がん検診の大きな目的は、がんで亡くなる人を少なくする、死亡率を下げることです。何でもかんでもがんを発見することが“善”かといえば、そうではありません。例えば、アメリカのデータでは甲状腺がんは60代の人であれば潜在的に100%の人が持っています。日本では、年間の死亡者数は約127万人、うち甲状腺がんで亡くなる人は1700名程度です。60歳以上の人は全員が甲状腺がんを持っていてもこの数字ということは、全てのがんがどんどん成長し、全員を死に至らしめるものではないということです。ほとんどの人は甲状腺がんに気づかず、他の原因で死に至るわけですが、それでいいのです。

韓国では過去20年間で甲状腺がんの発見は15倍に増えましたが、甲状腺がんの死亡数は減っていません。なぜか。それはもともと甲状腺がんでは死なないからです。甲状腺がんの検査をし、甲状腺がんを見つけて治療するということは、検査費用、治療費、副作用など、いろんな面でマイナス面が多いといえます。

私の罹患した膀胱がんの罹患リスク要因としてわかっているものはたばこで、1.6倍にリスクを増やします。しかし、私はたばこを吸いません。したがって、なぜ私が膀胱がんになったのか。それは“運”が悪かったのです。がんになる最大の要因は、この“運”なのです。男性の場合は、6割くらいが生活習慣、残り4割が運。女性は3割が生活習慣、感染が2割、残り5割が運となります。がんは、遺伝子の経年劣化といいましたが、建物や電車や線路が年月が経てば痛むように、遺伝子も時間が経てば痛みます。しかしどこのパーツが痛むかはランダム。髪を黒くする遺伝子が痛めば白髪に、がんを抑制するような遺伝子が痛めばがんになります。つまり、どの遺伝子が痛むのかは運なのです。ですから、この偶発的な遺伝子の損傷によるがんをどう防ぐのか、それががん検診による早期発見ということになります。しかし、過剰ながん検診はその人の人生を損ねる可能性もありますので、適正ながん検診が必要です。

 

現在先進国の中で、がんによる死亡が増え続けているのは日本しかありません。10万人あたりがんの死亡数は、アメリカに対して2014年で1.6倍、最近ではついに2倍になりました。これは日本人のヘルスリテラシーが低いことが要因の1つとなっています。国別のヘルスリテラシーの平均点調査では、調査国の中で、インドネシアやベトナムよりも低く、ダントツの最下位です。

 

日本は、受動喫煙対策、HPVワクチン接種率、がん検診受診率、放射線治療利用率、緩和ケアなど、がんに関するすべてのことが遅れています。WHOの視察では、日本の受動喫煙対策は「前世紀並に遅れている」とされました。

 

ただ、学校ではがん教育が始まりましたので、今の子供たちはがんのことを学んで大人になります。問題はがんのことを知らない大人たちです。がんは、わずかな知識の差が運命を分ける病気です。がんに直面する大人たちに対して、一種の強制力を持つ企業が大人のがん教育を行うことが必要です。

 

がんは遺伝子の経年劣化が原因ですから、高齢者になるほどがんに罹患する確率は増えていきます。日本の就労人口における65歳以上の人の割合は13%。米国は5.1%、英国は3.2%、ドイツは1.9%フランスは0.9%と比べても非常に多く、その割合は世界一です。日本は高齢者になっても働き続けなければならない社会です。65歳まで働けば、6〜7人に1人はがんになる計算となります。

 

がんという病気は“運”の要素が強いといいましたが、同じ運でも交通事故や自然災害などとは異なり、自分でリスクを減らすことができます。毎年検便をすれば、大腸がんのリスクは2割まで下がります。乳がんのセルフチェックもしかり。こういった自己管理をしっかりしていくことが、がんでの不幸を減らすことにつながります。

 

「自分の体を大切にする」ということが、かっこいいことであることと思えるように世の中を変えていくことが必要です。正しい知識を得て、従業員を守っていく。そのためにもがん対策推進企業アクションを利用していただきたいと思います。

中川恵一先生による「両立支援のための早期発見とがん治療」のご講演
▲中川恵一先生による「両立支援のための早期発見とがん治療」のご講演
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