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イベントレポート

2019/9/10
企業コンソーシアムを名古屋で初開催

第1回がん対策推進企業アクション 中部地区コンソーシアムが9月10日、名古屋市のプライムセントラルタワー名古屋駅前店にて開催されました。同コンソーシアムは、中部地区で初めて開催されるもので、中部東海地域から101名の参加があり、会場は満員。大変に熱気を帯びたコンソーシアムとなりました。東京以外でコンソーシアムが開催されるのは全国でも初めての試みです。

当日は第一部で、がん対策推進企業アクション議長の中川恵一氏、女優で乳がん経験者の生稲晃子氏の講演のあと、第二部では参加企業によるグループワークが行われ、活発な意見が交わされました。

講演風景
▲講演風景

第一部

【挨拶】

伊藤嘉典氏(日本ガイシ健康保険組合 常務理事)

本日はお忙しい中、中部地区コンソーシアムにご参加いただきありがとうございます。

がん対策推進企業アクションの全国のパートナー登録数はすでに3000社を超え、中部地区ではその約1割の約260社が参加していますが、この中部地区ではパートナー企業に登録はしていても、残念ながら活動・イベント等が東京主体で行われており、事務局から案内を頂いても、時間・費用・人の問題などで簡単に参加できない。パートナーになっても何をどうしていいのかわからないと感じている人が多いのではないでしょうか。

企業でのがん治療と仕事との両立支援、がんの予防・早期発見に向けた検診・受診を行いたいなどの思いはあるものの、場所が東京から離れているという理由で、このコンソーシアムへの参加の機会を失っているのは大変に残念なことです。

今回、東京からの展開の第一として中部地区で開催されることで、中部地区の皆様にがん対策推進企業アクション参加の機会が設けられることはチャンスになると強く感じました。

各企業や健保の置かれている状況は様々ですが、この企業コンソーシアムでは、先生からはエビデンスに基づいたあるべき姿を学べ、自分たちよりも一歩先を進む先輩たちからはそのやりの方のヒントを学べます。逆に自分たちの後を追う人たちには、自分たちのやってきた間違いを繰り返させないように教えられます。会社の人事・総務安全衛生、健保、医療健診機関など、いろんな立場の方、同じ様な問題を抱える方が集まって話し合って前に進める機会になるのがこの企業コンソーシアムです。

本日の取り組みを継続し、東京と連携し、この地域・会社に合わせたがん対策、いわば「がん対策推進企業コンソーシアム中部方式」により、中部地区における住みよい街づくりに繋がる様な場として、共に考える仲間を広げて行きたいと考えています。本日の企業コンソーシアムが、今後2回、3回と続き、今後の中部地区での活動の活性化を願っています。

伊藤嘉典氏よりご挨拶
▲伊藤嘉典氏よりご挨拶
真鍋徹氏より主旨説明
▲真鍋徹氏より主旨説明

【企業コンソーシアム主旨説明】

真鍋徹(がん対策推進企業アクション アドバイザリーボードメンバー/第一生命保険株式会社 生涯設計教育部次長)

企業コンソーシアム発足の背景には、65歳定年制や継続雇用における、従業員ががんになる確率が高まっていることがあります。がんを治療しながら働かなければならない時代が訪れているのに、企業それぞれが独自で対策を練っていては無駄が多くなります。ノウハウを共有することで、よりスピード感のある対策が立てられると思います。

がん検診受診率の向上、経営者のヘルスリテラシーを上げるためのバックボーン作り、成功ノウハウの事例、がん対策のスキームなど、がん対策が企業経営に良い影響を与え、メリットが受けられるということを念頭に、いろいろな課題を解決していくのが企業コンソーシアムです。

企業コンソーシアムには3つの目標があります。1つ目は、がん検診受診率の向上、がんと就労対策などの「参加企業のがん対策推進」。2つ目は、共有した情報の発信、取り組みや提言の発表などの「情報発信による社会への貢献」。3つ目が、業種・企業規模、地域を超えた「企業がん対策の輪」づくり、コンソーシアム参加企業の増大です。

また、企業コンソーシアムに参加することによって、行政のがん対策の最新情報も早期に入手でき、企業同士の人事・採用や働き方改革などの労働関連制度の情報・意見交換が可能になるとともに、企業内がん対策に関して参加メンバーとともに学びたいことや発信したいことの企画運営もできます。発信力が高いので、日本のがん対策に企業として社会貢献もでき、ビジネス上でのつながりも期待できます。このようにメリットも企業コンソーシアムにはありますので、ぜひ参加いただきたいと思います。

【講演1】

「がんは、検診で早期に発見すれば、怖くない! 〜自身の罹患経験もふまえ〜」

中川恵一氏(がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長/東京大学医学部附属病院 放射線治療部門長)

現在、サラリーマンの死因の半分ががんで、働く世代の自殺を除く病気死亡の9割ががんと言われています。2016年の12月にがん対策基本法が改正され、企業におけるがん対策が事業者の責務であると法律として位置づけられました。これを企業規模に関わらず認識していただくことが重要です。

本日の講演テーマ「がんは、検診で早期に発見すれば、怖くない!」をもっと常識にする必要があります。がん検診を受けない理由の1つに“がんが見つかったら怖い”というものがあります。しかし、検診で見つかるがんはだいたいが早期がんです。国立がん研究センターのデータによると、がん患者の三分の二が5年以上生存をしています。早期がん(ステージ1)であれば、95%が治っています。つまり、早期であればがんは怖くありません。

現在の日本の累積がん罹患リスク、つまり一生でがんになる確率は、2014年のデータで男性が62%、女性が47%です。2016年データになればおそらく男性は3人に2人、女性は2人に1人ががんになるのではと予想されます。

がんという病気を簡単にいえば、細胞の老化です。さらにいうと遺伝子の経年劣化で、高齢化が進めばがん患者は自然に増加していきます。

これからは“がんになる”ということを想定し、それを何とか最小限の被害で食い止めるようにしなければなりません。

このようなことを申し上げている私自身もがんになりました。男性の3人に2人ががんになるわけですから何ら不思議ではないのですが、まさか自分ががんになるとは全く予想もしていませんでした。

私の場合は、お酒好きが原因でまだら脂肪肝があり、当直の日に自分で超音波検査をしていたところ、偶然にも膀胱がんを発見しました。去年の12月27日に入院をして、12月31日に退院し、1月4日からは通常勤務に戻れました。要するにほとんどの早期がんであれば、仕事にも暮らしにもあまり影響は与えません。まずは、早期に発見して治療することが、仕事との両立を容易にし、支援の必要性もほとんどなくなるということを理解してください。

私の罹患した膀胱がんの罹患リスク要因としてわかっているものはたばこですが、私はたばこを吸いません。なぜ私が膀胱がんになったのか、それは“運”が悪かったから。がんになる最大の要因は、この“運”なのです。男性の場合は、6割くらいが生活習慣、残り4割が運。女性は3割が生活習慣、感染が2割、残り5割が運です。がんは、遺伝子の経年劣化といいましたが、がんを抑制するような遺伝子が痛めばがんになります。どの遺伝子が痛むのかも運。この偶発的な遺伝子の損傷によるがんをどう防ぐのか、それががん検診による早期発見ということになります。

私の経験からまとめた「がんを知る7か条」をお教えします。

  • ① 症状を出しにくい病気
  • ② リスクを減らせる病気
  • ③ 運の要素もある病気
  • ④ 早期なら95%が治る病気
  • ⑤ 生活習慣+早期発見が大事
  • ⑥ 早期発見のカギはがん検診
  • ⑦ 治療法も選べる病気

特に①の、がんは症状を出しにくい病気であるということは重要です。私の膀胱がんも全く自覚症状はありませんでした。多くの人は、何か体に異変を感じたら病院にすぐに行こうと考えていますが、がんという病気は症状がでてからでは遅いのです。いくら体調が良くてもがん検診を受診しなければなりません。

現在先進国の中で、がんによる死亡が増え続けているのは日本しかありません。日本は、受動喫煙対策、HPVワクチン接種率、がん検診受診率、放射線治療利用率、緩和ケアなど、がんに関するすべてのことが遅れています。これは日本人のヘルスリテラシーが低いことが要因の1つとなっています。

学校ではがん教育が始まりましたので、今の子供たちはがんのことを学んで大人になります。問題はがんのことを知らない大人たちです。がんに直面する大人たちに対して、一種の強制力を持つ企業が大人のがん教育を行うことが必要で、そのためにもがん対策推進企業アクションを利用していただきたいと思います。

中川恵一先生によるご講演
▲中川恵一先生によるご講演

【講演2】

「乳がんを経験して」

生稲晃子(女優、乳がん経験者/がん対策推進企業アクション アドバイザリーボードメンバー)

私の乳がんが発覚したのは、2011年の人間ドックです。マンモグラフィーと超音波検査を受けましたが、超音波検査で再検査となり、その結果先生から「悪性である」と告げられました。

ショックでした。“不安”という文字で頭の中は埋め尽くされました。ただ早期発見できたことにより、しこりは8mmのステージ1でした。少し安心しましたが「小さくてもがんはがんですよ」という先生の言葉に緊張し、その言葉を重く受け止めるとともに、命がつながることに安堵しました。

2011年5月に乳房温存手術を受け、手術の後は放射線治療、その後ホルモン治療で最低5年間の長い治療が始まりました。

しかし、悔しいことに翌年の2012年に再発し、2回目の手術を行いました。さらに2013年に2度目の再発。3回目の手術をするという不運な道をたどってしまいました。

“再発”という言葉は、とても怖かったです。そして再発がなければ、5年間飲み続けるホルモン治療の薬も終了しているはずですが、今もまだ飲み続けています。

2度目の再発の時、主治医からその危険性と右胸全摘出の説明があった時は、初めて先生の前で泣きましたが、私は娘のために、命を優先させなければと考えました。しかし心はジェットコースターに乗っているかのように、激しく揺れていました。今振り返るとなかなか大変な毎日を送っていたと思いますが、仕事があったから、子供の世話があったから、しっかり立っていられたような気がします。

2013年暮れに、乳房全摘同時再建術という4回目の手術をし、その2年後の2015年に再建手術を行い、これが今の私にとっては最後の手術となりました。

再建によって胸の膨らみは多少戻りましたが、右胸の真ん中には今でも真一文字に傷があります。でも、悲しんでも失った右胸は戻ってこない。今ある私の全てで、明るく生きることを心がけるようにしています。

私は2017年の3月まで、内閣府の働き方改革実現会議の民間議員でした。この中で、治療をしながら仕事をしている労働者の代表として発言をさせていただきました。

自分のキャリアを失うことを恐れて、がんになっても会社には報告せず、日々仕事と治療に耐えていらっしゃる方が非常に多いということを耳にします。2人に1人ががんになるといわれているこの日本でも、がんに対する偏見がまだまだ強いことを痛感しています。

私の場合、仕事場に自分の居場所がある、自分の言葉や働きに期待をしてくれている人々がいるということが、どれだけ病と闘う励みになったかしれません。

しかし傷の痛みや倦怠感で、その時できない仕事があると、周囲からやる気がないんじゃないか、さぼっているんじゃないか、と思われてしまうかもしれないという不安感から無理をしてしまうこともありました。こういう罪悪感や不安感を持つのはよくないことだと思います。

病気と闘っている者が、会社に隠すことなく伝えられ、痛い時に痛いと言え、だるいときにだるいと言える。同情はいりません。理解と共感、その空気の中で仕事ができる。そんな職場にこそ幸せとやる気を感じることができるのではないでしょうか。そして、がんは取った後からが闘いです。治療は長年に渡りますので、会社側の長期的なフォローアップが必要です。

理解と共感と協力が、治療と仕事の両立支援につながります。そしてそれには、患者の体のことを一番わかっている医療側と、患者である労働者の働き方を一番わかっている会社側がしっかり連携することがとても重要です。

そこでその両者をつなぐ役目として、患者側の悩みを解決する専門スタッフ間のハブとして、両立支援をコーディネートするサポート体制が必要だと思い、医療側、会社側、両立支援コーディネーターの3者が患者を支援していく、トライアングル型支援を提案し、働き方改革実行計画に盛り込んでいただきました。

両立支援コーディネーターの基礎研修受講者は、平成31年3月現在全国で2316名もいらっしゃいます。このトライアングル型支援がしっかり定着して、一人歩きをし、急速に進んでいってくれることを願います。

生稲さんによるご講演
▲生稲さんによるご講演

第二部

【グループワーク】

参加企業が8つのグループに分かれ、それぞれの企業のがん対策について話し合い、問題意識を共有するとともに、成功事例の共有や今後の課題についてディスカッションを行いました。

グループワークでは、中川恵一氏、生稲晃子氏も各グループのディスカッションを見学するとともに、グループ発表時には、中川氏がアドバイスを送るなどをしました。

<発表内容一例>

(問題点)

受診率が上がらない

(提案)

社員への教育、補助制度の見直し、フレックスや時間有給を充てる、がん検診を必須にする

電話で受診勧奨をしている企業もある、予約を忘れる人がいるのでリマインドメールをする、

(問題点)

喫煙率が下がらない

(提案)

段階的禁煙、受動喫煙について社員への教育

グループディスカッションを見学される生稲さんと中川先生
▲グループディスカッションを見学される
生稲さんと中川先生
グループディスカッション風景
▲グループディスカッション風景
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