• がん対策推進企業アクションとは
  • がんについて
  • がん検診について
  • 就労支援
  • パートナー企業・団体

イベントレポート

2019/7/24
令和元年度メディアセミナーを開催

東京大学医学部附属病院(東京都文京区)において、令和元年度メディアセミナー (主催:がん対策推進企業アクション)が7月24日(水)に開催されました。

セミナーに先立ち、厚生労働省健康局がん・疾病対策課課長補佐猪股研次氏からの挨拶、がん対策推進企業アクション事務局長大石健司より本セミナーの趣旨説明のあと、東京大学医学部附属病院 放射線科准教授の中川恵一氏から「がんは放射線治療の時代へ」をテーマにした講演が行われました。

講演のあとには、放射線治療でがん治療を行なった、前立腺がん経験者の大門正博氏と乳がん経験者の藤田聖子氏を交えたディスカッションが行われました。

参加メディアからの質問も相次ぎ、がんにおける放射線治療への関心度の高さが伺われました。

講演の様子

【挨拶】
猪股研次氏
(厚生労働省健康局がん・疾病対策課課長補佐)

講演の様子

今年で11年目を迎えるがん対策推進企業アクションですが、本事業はがん対策に関する様々な有識者からなるアドバイザリーボードを設け、その中から意見をいただきながら取り組みを推進しています。

7月には、がん対策推進企業アクションのパートナー企業がついに3000社を突破しました。

本日は、本事業設立当初からアドバイザリーボードの議長を務められている中川恵一先生の講演後、実際に放射線治療を経験されたがんサバイバーの2名の方とのディスカッションを予定しています。

【メディアセミナー主旨説明】
大石健司
(がん対策推進企業アクション事務局長)

講演の様子

がん対策推進企業アクションの推進パートナー企業が、ついに3000社を超えました。参加企業の従業員数は約750万人を数え、日本の総就労人口の11.1%になります。この数字は大変意味あるものと感じており、本事業は今後も日本のがん対策の重要な一翼を担っていきます。

本事業は、企業・団体等におけるがん検診の受診率向上とがんになった患者さんへの就労支援等を目的としています。年間100万人を超える新規がん患者のうち、1/3が働く世代です。64歳までに何らかのがんに罹患する確率は、男女とも約15%で、会社員の死亡原因の約半数ががんとなっています。企業側は、がん検診受診率のアップ、がんについて会社全体で正しく知ること、がんになっても働き続けられる環境づくりが待ったなしで求められています。

本事業は、正しくがんを知るための小冊子の配布やセミナー開催、最新情報の発信、出張講座の開催、コンソーシアム活動、がんサバイバーの派遣などの活動を通して、企業が取り組めるがん対策を全力で応援していきます。

パンフレット
▲2019年度のがん対策推進企業アクションポスター。
ポスターやパンフレットは全国47都道府県に配布され、希望する市町村に配られます。

【講演】
「がんは放射線治療の時代へ」
中川恵一氏
(東京大学医学部附属病院 放射線科 准教授/がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長)

講演の様子

がんは、わずかな知識の有無で運命がかわる病気です。日本は世界一のがん大国で、先進国の中でがんによる死亡数が増加しているのは日本だけです。がんの不幸を減らすためには、がんに対する知識を身に付けなくてはなりません。すでに小中高等学校では、がん教育が始まっています。しかし、今がんに直面しようとしている大人たちに、がんについて正しく教育することも重要です。

日本では今、年間約101万人の方ががんに罹患し、約37万人が亡くなっています。そして、その新規がん患者の1/3が15〜64歳の働く世代です。今後は定年の延長などにより、働く期間が長くなれば就労世代のがん患者はもっと増えていくことが予想されます。しかし、日本はヘルスリテラシーが低く、がん検診の受診率も他国と比べて低いのが現実です。

多くのがんは放射線治療で治すことができます。胃がん、大腸がん、膀胱がんなどは内視鏡手術が向いていますが、それ以外のがんでは、放射線治療も手術も基本的にはほぼ同じような有効性がありますので、放射線治療も検討するべきです。

日本ではがん治療は“切る”ことと思われています。多くの人は放射線治療は、がんを抑え込むもの、進行を遅らせるものと思っていますが、手術と同じようにがんを消すことができるのです。実際に肺がん、前立腺がん、乳がん、頭頸部がん、食道がん、子宮頸がんなどをはじめ、さまざまながんで放射線治療が行われています。また、進行したがんの場合でも、痛みや出血などのがんに伴う症状の緩和にも大きな役割を果たし、患者さんの生活レベルを維持する上で非常に効果的です。しかし、日本でのがん治療における放射線治療(併用を含む)の割合は、欧米諸国と比べると約半分しかありません。

放射線治療は、切らないので体にやさしい治療といえます。また、放射線治療の99%は保険がきくので治療費が安く、通院で行えるので体への負担が少ない治療でもあります。副作用を心配される方もいますが、照射技術は近年急速に進歩しており、病巣をピンポイントで狙い撃ちできるようになり、正常な組織を守りながら治療を行え、副作用もずっと少なくなっています。

放射線治療は、昔は“焼く”などと表現されたこともありましたが、がん細胞を免疫細胞に攻撃させやすくする治療です。

がん細胞は、正常な細胞が不死化したものです。がん細胞は毎日体の中で何千何万とできていますが、通常は免疫細胞が攻撃して退治しています。免疫細胞は、体の中の異物を攻撃しますが、がん細胞は自分の細胞に似ているため、免疫細胞ががん細胞を見逃してしまうことでがんが進行してしまいます。放射線治療は簡単にいうと、放射線を当てることでがん細胞の遺伝子2本を切断し、正常な細胞に見せかけたがん細胞を異物らしく見えさせ、免疫細胞に攻撃させて退治する治療です。

放射線治療とセカンドオピニオンに関する意識調査では、がんの種類を問わず約86%が手術を推奨され、その94%がそのまま手術を受けていました。また、治療方針に積極的に自分から関わりたい方は28.7%、医師任せは31.5%、情報はできるだけ欲しいが治療は医師の決定に委ねたいが37.5%でした。複数の治療法を知りたい患者が約7割いるのに対し、実際に医師から説明を受けた患者は4割しかいませんでした。

セカンドオピニオンに関しては、知らなかった人は6%しかいなかったにも関わらず、実際に受診したことがある人は19.7%しかいませんでした。そして、放射線治療を選択された方は、セカンドオピニオン受診率が高いことがわかりました。

また、主に受けた治療では、放射線治療は78%が満足・とても満足と答えており、手術の69%よりも多くなっています。

ぜひ、患者さんにより多くの情報が行き渡り、患者さんが望む治療を受けられるようになって欲しいと思います。

【ディスカッション】

中川恵一氏
大門正博氏(前立腺がん経験者)
藤田聖子氏(乳がん経験者)

中川氏
最初にご紹介する大門氏は、自宅近くの泌尿器科で前立腺がんが見つかり、手術をすすめられたが、ご自分で調べて放射線治療を選ばれた方です。
10日間の入院で1日おきに80秒の放射線照射を5回行いました。2年経った現在は経過観察中ですが、再発はしておらず以前と変わらず働いていらっしゃいます。

大門氏
私は近所の泌尿器科でがんが見つかり、治療法としては「手術しかない」と言われましたが、インターネットで前立腺がんに関する治療情報を調べるうち、放射線治療がもう1つの有力な治療方法であることがわかりました。
セカンドオピニオンの紹介状を書いてもらい職場近くの東大病院へ訪れたのですが、紹介状の宛先が泌尿器科になっていました。放射線治療を望んでいたのに泌尿器科に回されたため、なぜ手術をしないのか?と多少のやりとりがあったのですが、私の考えをお伝えして放射線科に廻していただきました。

講演の様子

中川氏
泌尿器科の先生が根負けしたということでしょうか(笑)。紹介状の封筒の宛先は、すごく重要です。
2人目の藤田さんは、がん対策推進企業アクションの事務局の方です。自治体の乳がん検診で異常が見つかり、精密検査したところ乳がんの診断がされました。全摘手術をすすめられましたが、セカンドオピニオンで東大病院を受診し、乳房温存療法で乳がん病巣を摘出し、術後働きながら放射線治療を16回行い、現在は外来にて経過観察を継続中です。

藤田氏
私は、乳がんを宣告された時から頭が真っ白でした。中川先生からセカンドオピニオンで来てみては?とおっしゃっていただき、いろいろと検査やお話をさせていただく中で、放射線治療を選びました。

講演の様子

中川氏
最初の病院では全摘をすすめられたということですよね。

藤田氏
部分切除ではその後に放射線治療を行わなければならないということで、放射線治療のデメリットを説明され、それでもやりますか?と言われました。

中川氏
大門さんも泌尿器科とのやりとりで、放射線治療のデメリットをかなり聞かされたのではないでしょうか?(笑)

大門氏
15年生存率だったか15年非再発率だったかを聞かされ、15年後は手術の方が絶対にいいと言われましたが、私はそうは思いませんでした。ネットで色々な論文などを調べた結果、15年後でも同等か放射線治療の方が優っているのではと考えました。

中川氏
15年生存率というのは、15年前の治療のデータになります。放射線治療は日進月歩で照射技術が上がっています。前立腺と直腸はほとんどくっついていますので、昔は前立腺がんに照射しても直腸にも放射線が当たっていましたが、今では技術の進歩により限りなく病巣だけに照射することができるようになっています。15年前の話をされると放射線治療を行う側からすると困ります。
現在は専門医制度が厳格になっていますので、手術例を重ねなければ専門医の資格が取れません。ですから、手術をすすめるということももしかしたらあるかもしれません。

中川氏
ご質問がある方はどうぞ。

メディアA
放射線治療を受けてよかったことを教えてください。
また、お二人は放射線治療の知識をお持ちだったので、放射線治療を受けられましたが、もしもその知識を持っていなかったとしたら、手術を受けられましたか?

大門氏
放射線治療を受けてよかったと思えるのは、実際の治療が80秒×5回で終わったということ。そして手術のように麻酔で自分の意識がない間に、何をされたかがわからないということがないことです。こんな簡単に済んでいいのか、と思うくらいの治療でした。隔日での治療だったため5日間の有給を取り、10日間のうち治療のない5日間は出勤していました。
もしも、放射線治療を知らなかったとしても、インターネットで調べれば前立腺がんで放射線治療を受けられた方のブログなどがたくさん出てきますので、そういう情報をいろいろ調べて、私は放射線治療を受けたと思います。

藤田氏
私の場合は、全摘するか温存手術をするかの二択でした。セカンドオピニオンで放射線治療のことをしっかりと知ることができたので、放射線治療を選びました。温存手術は3日くらいの入院ですみ、放射線治療も16回で終わりましたので、特に負担なく働きながら治療を受けることができてよかったと思います。
放射線に関しては、東日本大震災の悪いイメージしかなかったので、知らなかったら受けてなかったと思います。

メディアB
がんと診断された時のステージはどこだったのでしょうか?

大門氏
ステージはT1C、PSAは5.4の初期ですが、GSが4+4とハイリスクでした。

藤田氏
初期の初期で、ステージはT1-N0だったと思います。

中川氏
藤田さんはステージ1でリンパ節転移もなかったのですが、それでも全摘をすすめられたということですね。実際に乳房温存手術をされて、術後の仕上がりはいかがですか?

藤田氏
とても満足しています。術前に外科の先生が、術後に胸がどうなるのかを丁寧に説明してくださり、イメージトレーニングもできていたのも大きいと思います。

中川氏
お二人とも早期に発見できたということも大きいですね。

メディアC
乳がんに対して、今後放射線治療だけでできるようになるのでしょうか?
また、すい臓がんに対してはどうでしょうか?

中川氏
現在の乳がんの標準治療では、メスを入れない治療はありません。重粒子線治療では一度そういう試みが行われましたが、現在は行われていません。可能性としてはあるでしょうが、これから臨床試験が行われてエビデンスを積み重ねなければならないでしょう。
すい臓がんについては、まずは早期に見つけなければなりません。発見が遅れると潜在的な転移が進みます。また、すい臓の周りには十二指腸などの放射線に弱い臓器があること、すい臓が1〜2分の間で動いてしまうことなどが放射線治療を難しくしています。最近は治療中にMRIで病巣を追尾して必要なら放射線を照射するなどの方法が欧米では行われ、一定の効果を上げています。しかし日本では、診療報酬の問題もあり、そのような機械は1台も輸入されていません。

メディアD
放射線治療は外科の分野を犯していくのではないか、また外科と内科と放射線科のバランスが崩れるのではないかと思いますが、どうでしょうか?

中川氏
腫瘍内科がほとんどいないことが問題だと思います。欧米では、まず腫瘍内科が診断し、患者の意向を聞きながら治療法を決めていきますが、日本では最初から外科の先生が診断しますので、当然手術が多くなります。日本では患者側が学んで、治療方法を選択するしか解決法はないと思います。

ページトップ
  • 参加方法・登録申請
  • お知らせ・イベント情報
  • 調査レポート
  • がん対策スライド
  • 全国3ブロックセミナー
  • がん対策推進企業アクション公式小冊子「働く人ががんを知る本」
  • 令和4年度がん検診50%推進全国大会
  • 令和5年度がん検診50%推進全国大会
  • がん対策推進企業アクション Facebookはじめました
  • がん対策推進企業アクション Facebookはじめました
  • 両立支援の啓発動画の紹介