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イベントレポート

2018/10/16
出張講座10/16開催 田辺三菱製薬株式会社加島事業所

田辺三菱製薬株式会社の加島事業所(大阪市淀川区)において10月16日(火)、林和彦氏(東京女子医科大学 がんセンター長/化学療法・緩和ケア科 教授)と、がんサバイバーである阿南里恵氏を講師にむかえ、出張講座が開催されました。

田辺三菱製薬では、本社での講演に続く今年2回目の出張講演ですが今回も会場は満員、ネット中継で関東エリアの事務所に配信されました。

主な講座の内容 林和彦氏
私がなぜがんの話を皆さんにお伝えしたいかというと、今までがん患者さんやそのご家族と向き合ってきた中で、ほとんどの方ががんのことを漠然とはわかっていても正しく理解できていないと感じたからです。がんという病気は、正しく理解しないと、患者さんにとって不利になることもあります。ぜひ正しく理解してほしいと思います。
講演の様子

現在、がん教育は国策となっています。私も全国の小・中・高校の教育の現場でがんについて教えています。がん教育を子供のうちからすることで、がんに対する国民の意識を変えようとしています。ですから、今後は正しくがんの知識を得た子供たちが大人になれば、がんに対する偏見や誤解は無くなっていくと思います。しかし、すでに大人になっている人たちは、まだまだ誤解や偏見が多く見られます。ワイドショーや新聞では、有名人ががんになり、そして亡くなる劇場型のニュースが溢れています。このようなことからか、がんは多くの皆さんに「死ぬ病気」だと思われています。しかし、そうではありません。

がんは、どこの家庭にもどの人にもかかる可能性のある病気です。皆さんの家族、親類あるいは知人にもがんを経験され方がいらっしゃると思います。日本では、年間約101万人ががんになり、約37.8万人が亡くなります。そして一生のうちにがんになる可能性は、男性は62%、女性は47%。つまり男性の3人に2人、女性の2人に1人がかかる可能性がある、身近な病気ということです。こういった情報を理解できていないと、いざがんになった時に「まさか私が」「ついてない」「がん家系じゃないのに」などと思ってしまいます。しかし、データが示す通り、がんは誰でもかかる病気なのです。そして、正しい知識を持っていないと、早期がんで治療をすれば治るのに、会社を辞めたり、がん闘病の恐怖からネガティブな感情で家庭が壊れたり、ひどい時は自殺することもあります。もちろん、自分ががんにかかると思っていないのに突然告知されると、精神的・社会的パニックに陥ったり、不安に思うことは十分わかります。だからこそ、正しい知識が必要なのです。

また、日本人がどこで亡くなるかというデータを見てみると、1976年を境に病院で亡くなられる方が自宅で亡くなる方を上回っています。国民健康保険ができたのが1961年。この国民皆保険制度により、日本人は世界最高水準の医療を安価で受けられるようになりました。これは非常によいことですが、ひとつ残念に感じることがあります。それは、自宅で亡くなることが減ったことで、いつの間にか「病」と「死」が非日常になってしまったことです。さらには、「病」や「死」が忌み嫌われるものになって、できれば見たくないと考えられてしまうことです。本来「病」や「死」は身近にあって、大きな人生経験を人に与えてくれるものではないでしょうか。

がん細胞は、特殊な細胞ではありません。皆さんの体にある普通の細胞ががん細胞になります。生物は細胞分裂を繰り返して成長します。人間には37兆個の細胞があるといわれており、その37兆個が細胞分裂を行っています。正常な細胞分裂は、正しいコピーが行われるのですが、膨大な数の細胞分裂をすると、どうしてもミスコピーが起こります。このミスコピーされた細胞が、がんの原因となります。しかし、通常は人間の持つ免疫力ががん細胞を退治しているので、がんが発症することはありませんが、たまたま何らかの原因でミスコピーした細胞が、さらに細胞分裂を繰り返して増殖するとがんが発症してしまうのです。そして、免疫力が低下するとがん細胞の増殖を防ぎきれません。低下の原因は、加齢、体力の衰退などさまざまです。また、ミスコピーが増えすぎて、免疫力が追いつかない場合もあります。こんなときに、がんになってしまいます。ではどうすればがんにならずに済むか? それは「免疫力を減らさない」「ミスコピーを増やさない」ということが大切です。

また、年を取れば取るほど細胞分裂の回数も増えますから、ミスコピーの確率は上がり、免疫力は子供の頃をピークに下がっていくため、高齢者ほどがんにかかりやすくなります。よって高齢化の進む日本の中では、今よりがんにかかる人が増えると予想されます。実際に日本では、60歳を過ぎると放物線状に急激にがんにかかる人が増えています。

さらに定年が伸びることにより、働く世代のがん患者が急増します。日本は世界で一番の高齢化社会で、就労人口に占める65歳以上の割合は9.5%で世界1位、2位のアメリカは5.1%と日本の約半分しかいません(OECD調べ)。また、女性のかかる乳がんや子宮頸がんなどは比較的若い世代でかかるのが特徴ですから、女性の社会進出が進むとがんになる女性従業員も増えていきます。

がんの原因を男女別にみると、男性は喫煙が約30%で1位。この世から喫煙が無くなれば、がんにかかる人は3割減るということです。女性の場合は、ウイルス感染が17.5%で1位です。つまり、確率的なミスコピーに加え、このような原因がミスコピーを加速させているといえます。

国立がん研究センターでは、5つの健康習慣を実践することで、がんになるリスクが低くなると発表しています。それは、「禁煙」「食生活の見直し」「適正体重の維持」「運動」「節酒」。特に喫煙は、すべてのがんにかかる確率が上がり、本人だけでなく、受動喫煙により他人にも迷惑がかかります。

ウイルス感染においては、胃がんの原因となるヘリコバクター・ピロリ菌、肝臓がんの原因となるC型肝炎ウイルス、子宮頸がんなどの原因となるヒトパピローマウイルスなどがあり、それぞれに対応する薬や予防ワクチンがあります。

講演の様子

がんがCTやMRI、レントゲンなどの検診で見つかる大きさ、約1cm(1g程度)まで育つには、約10〜20年かかります。つまり、自分は健康で元気と思っていても、もしかしたら着々とがん細胞が増えているかもしれません。そしてそこから末期ガンの大きさに育つのは、数年とあっという間。いかに早期のがんを発見し、治療するかで生存率は大きく異なります。

そのためには、普段から定期的に検診を受け、がんを早期に発見することが重要です。早期発見のがん(ステージ1)は、5年生存率が末期のがん(ステージ4)と比べ何倍も、がんの種類によっては何十倍も異なります。ステージ1でがんを発見すれば、ほぼ治すことが可能です。

がんになる原因は、喫煙、感染、生活習慣などですから、まずはこれらを改め、がんにならない体づくりをすることが大切です。これが一次予防ですが、正しい生活習慣を守っていてもがんになる場合があります。これはどうしようもないことです。

そこで二次予防が早期発見・早期治療です。つまり、がん検診を定期的に受けることです。いかに早期のがんを発見し、治療するかで生存率は大きく異なります。そのためには、普段から定期的に検診を受け、がんを早期に発見することが重要です。

がんの治療には、「手術治療」「放射線治療」「抗がん剤」の3本の柱があります。それぞれによい部分がありますし、複合して治療することもあります。技術や医療の進歩により、最新のデータでは全がんに対する5年生存率は63.5%で、年を追うごとに向上しています。もちろん早期がんであれば、ほぼ100%が治るといっても過言ではありません。

まず自分の治療を決めるときは、病気、検査、治療について十分な説明(インフォームド・コンセント)を受けるのはもちろん、他の病院に行って相談(セカンド・オピニオン)するなどし、理解した上でどのような医療を受けるか選択することが大切です。

また、がん患者を支えるネットワークも、がん専門病院、かかりつけ医、家に近い病院、薬局、訪問看護ステーション、ケアマネージャーなど、たくさんの専門家が患者を守る体制が整っています。

そして、がん患者・がん経験者の就労支援も大切です。がんになって退職する人は30%。時期は診断確定時が32%、診断から最初の治療までが9%と、実に40%超の人が治療前に退職しています。この方たちの多くは「がん=死ぬ」と思ったり、「周りの人に迷惑をかけてしまう」と思ったりして退職してしまっています。このように考える方は、真面目な方が多いのです。そして、いざ治療が終わり社会復帰しようとしても、なかなか就労できないのが実情です。

がんを正しく理解し、がんにかからないよう生活習慣を改めること。そして、検診を定期的に受け、がんを早期発見し、治療を受けること。また、がんになっても働ける、支え合える社会環境を作ることが大切です。

【がんに対する病院や知りたい情報を探す、林先生がおすすめするwebページ】

国立がん研究センター がん対策情報センター
https://www.ncc.go.jp/jp/cis/index.html

自分のがん、家族のがんを経験して

阿南里恵氏(がん対策推進企業アクションアドバイザリーボードメンバー/特定非営利法人日本がん・生殖医療学会理事 患者ネットワーク担当)

私が子宮がんになったのは23歳。社会人になって1年半、東京で1人暮らしをしている時でした。体の不調からレディースクリニックに行くと、子宮頸がんがかなり進んでいるということがわかり、東京のがん専門病院を紹介されました。しかし、かなり大変な治療になるということで、楽しかった職場を休職し泣く泣く実家に戻りました。

私の子宮頸がんはかなり進行していたため、まずは抗がん剤で腫瘍を小さくしてから手術を行い、取りきれなかったがんがあれば放射線治療をすることになりました。最初の抗がん剤の治療では、今までに経験したことのない吐き気と熱で動けなく、病院のごはんすら取りに行けない自分が情けなかったのを覚えています。見舞いに来た父に「急に病人になったなぁ」と言われたときには、ただうなずくことしかできませんでした。自分ががんになったことを受け入れられず、恐怖も手伝って、手術の前には家出をして両親に大変な迷惑もかけました。しかし結局は、家出をしても、どれほど泣いても、自分の人生からは逃げ出すことができませんでした。

講演の様子

当時の唯一の私の希望は、楽しかった元の職場に復帰すること。仲間たちも「絶対戻ってこい!」と応援してくれ、そこに私の居場所があると思っていました。しかし、長期にわたる治療を続けていく中で、30分も歩けなくなるほど体力が落ち、大好きだった営業の仕事を続けていくことができなくなりました。事務職を勧められましたが、あれほどバリバリ働いていた自分の弱った部分を見せるのが嫌だという小さなプライドが邪魔をし、結局は退職。その希望も叶わないものとなってしまいました。

しばらく、実家に戻りアルバイトを続けて体力が回復したころ、東京で正社員の就職を探しました。採用されましたが、自分ががん経験者で経過観察中だということを隠していました。なぜなら、がんであると言ったら、採用されないんじゃないかという恐怖があったからです。じつは私のがんにはリンパ浮腫という後遺症があり、この後遺症が出ないように気をつけて生活しなければなりませんでした。しかし、がんのことを隠していたばっかりに、無理して他の人と同じように働いた結果、発症してしまったのです。ある日突然、足がひどくむくみ40℃近い高熱が2日間続き、これが毎月起こるようになりました。リンパ浮腫は、一度発症すると完治するのは難しい病気です。当然休むことが多くなりました。私は意を決して上司にがんのことを打ち明けました。上司はいい方で、病気のことを理解してくれ、残業も休日出勤も免除してもらい定時で退勤させてもらっていましたが、残業が当たり前の会社でしたから、周りからはなぜ私だけが早く帰れるのか、との疑問が出ました。そこで私は、職場の人全員にメールで自分の症状を正直に打ち明け、みんなと働きたいと訴えました。ほとんどの社員は応援してくれましたが、ただ1人の先輩が私の病気を疑っていると周りから聞かされ、私の心はポキッと折れてしまいました。何よりも、あんなにバリバリ働いていた自分が残業もできないことを自分自身が受け入れられず、さらに職場のみんなに迷惑をかけていると思い混んで退職してしまいました。

「がんと向き合った4054人の声」という資料によりますと、仕事を継続できなかった理由の上位2つは「仕事を続ける自信がなくなった」「会社や同僚、仕事関係の人に迷惑をかけると思った」です。その次にやっと、休みが取りづらかったなどの制度面の理由が出てきます。一方、仕事を継続できた一番大きな理由では、「上司や同僚、仕事関係の人々など周囲の理解や協力」が約44%で1位となっています。つまり制度だけではなく、自分から発信して周りが受け止めてくれる環境があれば、自分の居場所を見つけることができると私は感じます。また、私が転職をするときに感じていたことは「健常者」として十分に働けないことです。障害者でもなく、健常者でもない、少しのハンディを持った人の雇用枠があればいいのにと思っていました。

講演の様子

その後、私のすべてを知っても受け入れてくれるとてもよい会社と地元大阪で巡り会いまた。困ったら助けてくれる環境が整っていました。しかし働いてみて気づくことがありました。それは困っていることを会社や上司に伝えるには、とても勇気が必要だということです。特に日常の小さなことほど言い出せませんでした。

また当時、父ががんにかかり、母も突然病気で入院しました。頻繁に会社を抜けなければならなくなり、残業や休日出勤もできなくなりました。そして、父が亡くなる1週間前、「そばにいて欲しい」と言われたのです。父の最期を看取りたい、しかしこれ以上会社に迷惑はかけられない、という葛藤が渦巻きました。このときは社長の配慮で、会社から特別に来年の有給を前借りという形で休みをもらい、父を看取ることができ、本当に感謝しています。しかし、このようにすごく応援してくれる会社がゆえに、私の中では「申し訳ない」という気持ちが毎日毎日積み上がっていきました。そして、ついには辞めてしまったのです。

じつは今、私は留学に備え新しい会社でアルバイトをしています。その会社は社員も管理職も全員が18時退社。社員全員が保育園に通う子供がいて、子供が保育園に行けない日は会社に連れてくる、遠隔地で在宅勤務している社員がいる、などといった大変珍しい会社です。この会社で働いて気付いたことは、みんなが育児や介護や病気といった何かしらの事情を持っていて、それを当然と捉えて働いていて、がんの後遺症と戦う自分が「申し訳ない」という気持ちを持たずに働けることの素晴らしさです。

いろいろにがんに対する就労支援がありますが、がん患者だけに対する支援だと、かえって遠慮が生まれ「申し訳ない」という気持ちを持ち続けてしまうのです。

このような「申し訳ない」という気持ちを払しょくする方法は、相談する、甘える勇気、資格やスキルアップといった本人の努力。がんだけではなく誰もが働きやすい労働環境。キャリアコンサルタントや社労士、医師などの専門家による相談窓口。新たな仕事を託す役割分担。などによる「居場所づくり」ではないかと思います。

最後に、私はじつは子宮頸がんの検査をしっかり受けていました。しかし、その半年後にかなり進んだ子宮頸がんが見つかりました。検診では見つからないがんがあるということ。そして、後遺症は一生続くということ。ですから、がん検診を定期的に受けて早期発見・早期治療はもちろんですが、生活習慣の改善など、がんのリスクが減らせることはしっかりと行って欲しいと思います。

また、がん患者だけが変わろうとしても社会が変わらなければ、実現しないことがたくさんあるということも意識していただければと思います。

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