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イベントレポート

2018/12/04
「職域におけるがん対策の最新情報」近畿セミナーを開催しました。

がん推進企業アクションの近畿ブロックのセミナー「職域におけるがん対策の最新情報」(主催:厚生労働省、がん対策推進企業アクション)が、京都府下京区のメルパルク京都にて12月4日(火)に開催され、130名ほどの参加者にご来場いただきました。

講演の様子

「我が国におけるがん対策について」
(厚生労働省 健康局 がん・疾病対策課 課長補佐 竹内文茂氏)

我が国では1981年にがんが死因の第1位になり、それ以降も右肩上がりに上昇を続けています。2017年の統計では、亡くなられる方の約3人に1人ががんとなっています。

平成18年にがん対策基本法が成立しました。以降3期に渡ってがん対策推進基本計画が定められ、各種のがん対策が行われています。平成30年3月に閣議決定された第3期計画では、「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す」を目標にし、「がんの予防」「がん医療の充実」「がんとの共生」を3本の柱に、これらを支える基盤の整備として「がん研究」「人材育成」「がん教育、普及啓発」を進めています。

講演の様子

がん検診の受診率は年々伸びてきていますが、国の目標とする受診率50%に達しているのは、男性の肺がん検診のみとなっており、まだまだ受診率の向上を目指さなければなりません。

がん検診の受診率を国際的に比較してみても、日本は諸外国に比べて低く、乳がん・子宮頸がんにおいてはアメリカの半分程度の受診率しかありません。

日本では3〜6割の人が職域でがん検診を受診しており、受診率向上には職域での啓蒙活動が重要です。

厚生労働省では、職域におけるがん検診の実施に関して参考となる事項を示し、科学的根拠に基づく検診ができるよう「職域におけるがん検診に関するガイドマニュアル(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000200734.html) 」を策定しております。

がん患者の3人に1人は就労可能な年齢での罹患といわれており、最新の2014年の統計では、86万7408人のがん患者のうち、20〜64歳の罹患者は全体の27.1%、今後定年が延長されることを考えて20〜69歳までその枠を広げてみると41.4%と、かなりの確率で就労中にがんにかかることになります。

がん治療と就労の両立という面では、「働くことが可能で、働く意欲のあるがん患者が働き続けるようにするためには、どういう取り組みが必要だと思うか」という世論調査において、「病気の治療や通院のための短時間勤務」「1時間単位の休暇や長期の休暇が取れるなどの柔軟な休暇制度」「在宅勤務を取り入れること」など、柔軟な就労制度が求められています。

国では、働き方改革実行計画を基に、治療と仕事の両立支援を開始しています。具体的には、経営トップや管理職の意識改革、柔軟な休暇制度や勤務制度など、会社の意識改革と受け入れ体制の整備をはじめ、今年度からは、新たに患者と主治医、会社・産業医をつなぐ両立支援コーディネーターを養成し始めました。そして、その両立支援コーディネーターが、治療と就労の両立のために、患者と医療機関や会社をスムーズに連携させてサポートする「トライアングル型支援」も推進しています。

がん患者の就労に関する取り組みは、厚生労働省の中で健康局がん・疾病対策課、職業安定局首席職業指導官室、労働基準局産業保健支援室の3部局が連携を密に取りながら進めています。

【がん対策推進企業アクション事業説明】
(がん対策推進企業アクション事務局 事務局長 大石健司)

がん対策推進企業アクションは、職域でのがん検診受診率を向上させるための国家プロジェクトであり、厚生労働省の委託事業です。「今年も行こう、今年は行こう、がん検診」をキャッチフレーズに、がんになっても働ける社会を目指して活動しています。

現在の日本は、女性の社会進出、定年延長などを理由に、従業員の7人に1人ががんになる時代になっています。がん対策は、いまや福利厚生ではなく経営課題といえます。従業員ががんになっても働き続けられる環境を整えること、そして人財(材)を守るがん対策が必要とされており、がん対策推進企業アクションでは、そういった企業のがん対策をサポートする事業を行っています。

がん対策に関する環境も変化しています。平成28年度より学習指導要領にがん教育の実施が明記され、小・中・高等学校でのがん教育がスタートするとともに、自治体の取り組みも活発化しています。

がんに対する正しい知識を得ることが、今後の企業の成長にとっても大きなメリットとなることからも、職場での「大人へのがん教育」を提供することが求められています。

講演の様子

日本は人口比におけるがんの死亡率が世界と比べて高く、企業にとって人財損失リスクは大きな問題となっています。

がん患者の年齢別男女比では、50代前半までは女性の方が比率は多く、特に30〜40代では女性が大きく男性を上回ります。これは乳がんや子宮頸がんが若い頃になりやすいがんだからですが、さらに定年延長により男性のがん患者は急増し、就業者におけるがん患者は増えていきます。

がん検診の受診率はOECD加盟30カ国の中で最低レベルです。毎年受診率は向上してきているものの、国が目標としている受診率50%にはまだ及んでいません。日本人は、がん検診を受けている人が少ないのが現実です。

がんは早期発見であれば治癒する可能性は高くなるとともに、経済的・心因的負担も少なく、仕事と治療の両立もしやすくなります。

平成29年度にがん対策推進企業アクションで行ったアンケートの「経営者側のがんへの理解度と事業者におけるがん検診実施状況」では、がんに対する正しい知識を持っている経営者や従業員のいる企業は、がん検診受診率が高いことがわかりました。いかに「がんに対する正しい知識(教育) 」が必要かわかります。

今後、企業が取り組むべきがんアクションとは、健康診断にがん検診を加えたり、検診の効果を啓発するなどの「がん検診の受診を啓発すること」。がんは早期発見が重要だということ、がんになっても働き続けられること、正しい生活習慣でがんになるリスクを減らせることなどの「がんについて企業全体で正しく知ること」。治療のサポート体制づくりや柔軟な休暇制度などの「がんになっても働き続けられる環境をつくること」の3つです。

人材を守るためには、がんの早期発見・早期治療が必要です。がん対策推進企業アクションは、職域でのがん検診受診率を上げるためのサポートをしています。具体的には、がん検診、がん対策の重要性を啓発し、がん対策を啓発する科学的根拠のあるコンテンツ制作とマスコミなどへのパブリシティやパートナー企業相互間での情報共有。そして、がん検診受診の現状把握と課題の整理などを行い、受診率の向上を目指しています。

今年度、がん対策推進企業アクションでは、がんを実際に体験し、治療と仕事の両立をされている方々を公募しました。多数の応募者の中から新たに加わった10名のがんサバイバーには、今後全国での講演活動やセミナーでご自身の具体的な体験談を語っていただきます。

職域でのがん検診受診率を国の目標とする50%の実現に向けて、推進パートナー企業へのがん教育講師派遣や全国各地でのセミナー開催、がんに関する知識やがん検診の大切さがまとまった小冊子「がん検診のススメ」の無料配布(上限1000部)、推進パートナーのがん対策事例の公開、各種データやツールの提供など、企業のさまざまながん対策をサポートしていますので、ぜひご利用ください。

【がん対策推進企業アクション 推進パートナー申請ページ】

https://www.gankenshin50.mhlw.go.jp/about/registration.html

【治療と就労の両立を支えるがん検診】
(東京大学医学部附属病院 放射線科 准教授/がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長 中川恵一氏)

私は33年間、臨床医としてがんと向き合ってきました。

その中で気づいたことは「がんという病気は、ほんの少しの知識の差で運命が変わる」ということです。一番大事なのはがんにならないということですが、もしもがんになってしまった場合にどうするか、がとても重要です。

日本は世界一のがん大国といっても過言ではありません。ですが、多くの人ががんに対する正しい知識を持ち合わせていません。なぜなら、学校で習ってこなかったからです。しかし、昨年より全国の小中高等学校の保健体育の授業でがん教育がスタートしました。これで日本のがんに対する誤解や恐怖といったものが、将来は減ってくると思います。問題は、がんに関する教育を受けてこなかった大人にいかにがんの正しい知識を与えるか、そのためには企業が従業員(大人)に対して、正しいがん対策を講じる必要があります。

講演の様子

先般、私は島津製作所で社員の方々に対して、がんに関するお話しをさせていただきました。社長さんにも聞いていただきました。これは非常に重要なことで、まずは企業のトップが、がんのことを知ることが大切です。働く人の死因の半分はがんです。自殺を除けば、死因の9割はがんです。ですから、がんを知らなければなりません。

がんに対して知ってほしいことは、それほど多くはありません。

がんは早期であれば95%が治るということ。がんはある程度防げる病気であるということ。しかし、運の要素もあり、100%防ぐことはできないということ。がんは症状を出しにくい病気であるということです。

つまり、がんにならないためには正しい生活習慣が必要で、禁煙や適度な運動、節度ある食事などで、がんになる確率を1/3程度まで減らすことができます。しかし、どうしても運の要素もあるため、がんになってしまった場合は、早期発見をすることが重要です。がんは痛い病気、苦しい病気というイメージがありますが、それは間違ったイメージで、実際はほとんど症状を出しません。ですから、いくら体調がよくてもがん検診を定期的に受けることが必要です。そして、がんの治療には、手術以外にも放射線治療があり、自分で選べるということを知っておくことが大事です。

こういったことを、いかに経営のトップが知るか、そして社員に伝えるかということが、大人のがん教育ともいえます。

日本は、決してがん対策が進んでいる国とはいえません。2016年になって、やっとがん登録が始まりました。

がん登録とは、がんになったすべての患者のデータを都道府県のがん登録室が集め、国立がん研究センターがデータベースとして活用するというものです。この制度により、今までは都道府県ごとに一部の病院に協力を得て独自に調査していた、がんの患者数や生存率などがより正確に見られるようになりました。今後はデータベースを活用することで、より有効な対策が取られると思います。

日本人が生涯で、なんらかのがんになるリスクは2014年の調査で男性は62%、女性は47%と、2人に1人ががんになる計算です。男性の方が数字が高いのは、喫煙や暴飲暴食など、生活習慣が男性の方が悪いからです。

また、55歳までは女性の方ががん患者は多く、30代では男性の約2.5倍多くなっています。これは乳がん、子宮頸がんが比較的若い頃になりやすいためです。がんは細胞の経年劣化による病気といえますが、女性は乳がんなら女性ホルモン、子宮頸がんならヒトパピローマウイルスなど、老化以外にもがんになる要素があるということがわかります。

つまり、女性の社会進出、そして定年の延長によって、従業員のがん罹患者は今後も増えていくと予想されます。

また、この数字は2014年のデータです。現在では男性は3人に2人、女性は2人に1人が生涯でがんにかかると予測されます。

何歳までにがんにかかるのか?データによると60歳までにがんになる人は男女ともにだいたい1割程度。55歳では男性で約5%、65歳になると男女共約15%、75歳では男性は3人に1人がかかります。中小企業などでは、経営者が元気なうちはずっと働かれますので、大企業よりもがん対策を深刻に受け止める必要があるというわけです。

がんになる原因は何か?日本では「がん家系」などという言葉があるように、遺伝が多くの理由だと思われている方が多いのですが、実は遺伝が原因のがんは5%しかありません。

アメリカの調査によると、がんになる原因は喫煙が1/3、食事(生活習慣)が1/3を占めます。とくに喫煙はNGです。残りの1/3は何かというと、残念ながら「運」ということになります。がんは遺伝子の経年劣化ですから誰にでも起こります。聖人君子のような生活をしていてもがんになる人はいますし、ヘビースモーカーでもがんにならない人はいます。ただし、全体でみるとヘビースモーカーの人の方が、聖人君子よりもがんになる確率は圧倒的に高くなります。つまり、1/3は運だとしても、残りの2/3は、禁煙をする、生活習慣を整えるということで、がんになる確率を下げられるということを理解してください。

がんは最初の治療で勝敗が決まるといっても過言ではありません。がんの治療は「敗者復活戦のない一発勝負」といえます。最初に間違った選択をしないことが重要です。正しい治療をすれば、がんは治せます。がん全体で見ても5年生存率は65%、早期がんに限れば95%が治癒します。決して不治の病ではないのです。ですから、試合に臨む前に相手(がん)のこと、ルール(治療方法)を知っておく必要があります。

がんになる前にがんのことを正しく知っておくことが大事です。

今、日本では毎年約101万人ががんになり、死亡者は約38万人、年々増え続けています。しかし、先進国の中でがんの死亡者が増えているのは日本だけです。最も多いがんは、大腸がんです。つい近年までは胃がんでしたが、ピロリ菌感染が98%の原因といわれる胃がんは、ピロリ菌保菌者の減退により10年で年齢調整死亡率は2/3にまで減りました。一方大腸がんは、日本で年間5万人強が亡くなっています。アメリカでは5万人弱で、人口はアメリカの方が2.6倍ほど多いのに、日本の方が大腸がんでなくなる人が多いのは、年齢構成人口が違うとしても大きな問題です。アメリカは、しっかりと大腸がん検診を受けている人が多いということでもあります。

この大腸がんの検診は「検便」です。大腸がんは「検便」で見つかるような早期発見であれば5年生存率98.2%に対し、進行して見つかった場合は5年生存率16%、10年生存率はほぼ0になってしまいます。1度の検査で2回、便を取るだけのわずかな手間で大腸がんを見つけられるのですから、やらない手はありません。「検便」をすれば、大腸がんの死亡率は2割まで下げられるといわれています。

がん検診でがんが見つかることは、不幸ではなく、むしろ「よかった」といえます。早期で発見できてよかったね、と意識を変えなければなりません。

がんの早期発見とは、1〜2cm程度の大きさで発見すること。いわゆるステージ1のがんです。がんは、もとは1つのがん細胞で、それが倍々に増殖して大きくなり、約20年かけて1cmほどの大きさになります。人間には毎日がん細胞が生まれ、通常はそれを免疫力で退治しているわけですが、何らかの原因で生き残ったがん細胞が大きくなるには20年かかるというわけです。そして検診では、どのような最新機器を使用しても1cmの大きになるまで、基本的には発見できません。1cmのがんが2cmになるには、早いもので肺がんは1年、乳がんで2年といわれており、1年あるいは2年ごとに検診が必要というわけです。ですから、どんなに絶好調でも検診は必要です。

国が推奨しているがん検診は5つ。年1回が胃がん、大腸がん、肺がん、2年に1回が乳がん、子宮頸がんです。

早期のがん発見は、生存率を高めることはもちろんですが、医療費も安くすみます。もしも進行がんや末期がんになってしまうと、完全治癒が難しいだけでなく、医療費もとてつもなく高額になっていきます。薬物療法が必要となり、高い薬では、年間の薬価が1000万円ちかくかかるものもあります。

がんになってしまうと自殺してしまう方がいらっしゃいます。国立がん研究センターの資料によると、がんと診断された患者の1年以内の自殺・事故死率は、他の病気の20倍になっています。

とりわけ、がんの告知を受けてから2週間くらいは、強い抑うつ状態にありますから、この2週間が大切となります。自殺だけではなく、データによるとがんになって退職する人は30%。特筆すべきは辞める時期で、診断確定時が32%、診断から最初の治療までが9%と、実に40%超の人が実際に治療を開始する前に退職しています。実際に治療をしてから本当に辛くて辞めるのではなく、がん治療は大変だと予測のもとに辞めてしまう。こういうことになる原因は、がんという病気を知らないからになりません。

現在はがんの告知率は100%ですから、がんになる前に、がんという病気を知っておかなければ、こういった不幸を減らすことは難しいと思われます。

最後にがんの治療について。日本人はがん治療は手術だと思っている人が多いですが、がん治療には「手術」以外にも「放射線治療」「抗がん剤治療」があります。欧米ではがん患者のうち6割が放射線治療を受けていますが、日本ではまだ3割。手術なら入院が必要ですが、放射線治療なら通院で可能ですし、通院なら働きながら治療を行うことも可能です。今では放射線医療機器も技術も進歩していますので、たった数回の通院で治療を終えることも可能です。がんの種類や病状によってはさまざまな治療の選択肢があるということを、がんになる前に知っておくことが大切です。

実はがんの治療方法というのは、昔と比べて革新的に進歩しているわけではありません。さまざまな新薬や放射線治療の進化、手術のAI機械化などはあっても、早期がんは完治しやすく、転移した末期がんを完治させることは難しい、これは変わりません。正しい生活習慣でがんになることを防ぐこと。そしてもしもの場合には、いかに早期に見つけるか、そのためにがん検診を受診するということが重要なのです。

正しい生活習慣は何か、というと禁煙、節酒、バランスのよい食事、適度な運動などとなりますが、もっとも重要なのは禁煙です。喫煙はがんの原因の1/3を占めます。喫煙は肺がんの原因になると知られていますが、実はほとんどのがんを増やします。咽頭がんは32.5倍、肺がんは4.5倍、食道がんは2.2倍など、全がんで平均してもリスクは1.65倍になるのです。さらには、吸っている本人だけではなく、受動喫煙により周りの人にもがんになるリスクを高めます。たばこを吸った後は、有害物質が45分間は出続けるといわれており、1日に20本以上吸う方の奥さんの肺尖がんのリスクは2倍になるといわれています。これは、会社の中でも大きな問題ですので、喫煙率を下げるということは、従業員のがんになるリスクを下げる大きな要因になります。

飲酒についても、酒は百薬の長といわれていますが、飲み過ぎはがんを増やします。咽頭がん、食道がん、大腸がん(男性)、乳がんなどは確実に高まりますので、飲み過ぎはいけません。さらに、お酒を飲んで顔が赤くなる方は、日本酒で3合以上飲むと、赤くならない方に比べて70〜100倍に食道がんのリスクが高まりますので注意が必要です。

がんを克服するには、「がんを知る」ということです。がんという病気の特性、早期発見のための検診の重要性、がんになった時の治療方法の理解、こういったがんに対する正しい知識を、子どもたちだけではなく、大人が学ぶことが、がんの死亡者を減らし、不幸を減らすことにつながります。

「がんサバイバーによる講演」
(がんサバイバー 池田久美氏/京都市立中学校 再任用教師)

私は今、京都市内の公立中学校で教師をしています。2年前に定年退職をし、現在は再任用教師として働いています。

13年前、私は膵臓がんで夫を亡くしています。私が47歳のときでした。その後、今から4年前、57歳のときには私が胃がんになり、胃を2/3切除しました。現在、治療は終わっていて、半年ごとに経過観察を行っています。日常では、毎日逆流を防ぐ薬と便を柔らかくする薬を飲んでいます。

私は子どもの頃から病気に縁がなく、どちらかといえば健康なほうでした。2人に1人ががんになると言われていますが、私はならない方の1人だと、なんの根拠もなく思っていた気がします。しかし、夫ががんになったときに、それまで他人事だったがんがぐっと身近なものに変わりました。

講演の様子

夫は私と同じ中学校の教員でした。45歳のときに引率した信州の修学旅行が終わり、しばらくすると夫が最近腰が痛いと言い出しました。本人は、修学旅行で長時間バスに座りっぱなしだったので、筋肉痛だろうと言っており、私もそんなに気に留めていませんでした。しかし、そのうち痛みが大きくなり、ついには痛みで眠れなくなりました。

最初は自宅の近くの病院で検査をしましたが、大きな病院を紹介しますと言われ、これはただ事ではないな、と不安にかられました。紹介された病院で膵臓がんが判明しましたが、すでにステージ4の末期で、半年生きられたらいいほうだと言われました。前年に健康診断を受けており、そこで異常なしだったことから、私も夫もその診断が信じられませんでした。

入院して治療を始めましたが、もはや外科手術はできない段階で、お腹を切って直接患部に放射線を当てる、術中照射という治療を行い、加えて化学療法も行いました。結局7カ月入院しましたが、その間私は介護休暇を取り、入院に付き添いました。

体調が落ち着いて退院した後は、通院しながら化学療法を続け、1年くらいは穏やかな日々を過ごしました。しかしその後、肝臓に転移が認められ、主治医からはこの段階ではできる治療はないと言われました。夫は延命治療を望んでいませんでしたので、ホスピスで最後を迎えました。

最初は余命半年と言われましたが、2年4カ月生き永らえることができました。今思えば、夫の膵臓がんが発見されてから、ずっと夢の中だったような気がします。そして初めて家族の死に直面し、私の人生観は大きく変わりました。

健康診断でも見つからないがんがあるということを初めて知り、のちに自分もがんになるのですが、自分ががんになるよりも夫ががんになったときのほうが動揺しましたし、とても辛かったです。がんは家族が第二の患者だという言葉がありますが、まさにそう感じました。

続いて私のがんの話に移ります。私は本当に健康診断とがん検診で命を救われたと思っています。

私が初めて人間ドックを受けたのは、40歳のときです。体の不調もありませんでしたが、教員の共済組合で40歳・50歳の無料人間ドックがあり、それに申し込んでみました。

その人間ドックで胃カメラをしてくださった先生から、今すぐどうということではないけれども胃炎があり、この胃炎は胃がんになる可能性もあるので毎年胃カメラをしたほうがいい、とアドバイスされ、毎年人間ドックを受けようと決めました。ついつい忙しさにかまけて受けない年もありましたが、その翌年は、必ず受けるようにしました。夫の膵臓がんが発見された後は、毎年受けるようにしました。

55歳のときの人間ドックで、ピロリ菌が陽性であることがわかり、すぐに除菌をしました。のちに、ピロリ菌を持っている人が全員胃がんになるわけではないけれども、胃がんの原因はほぼピロリ菌だということを知りました。私が胃がんになったときに、私の兄弟6人にもピロリ菌の検査をしてもらいましたが、同じ環境で育っているにもかかわらず、ピロリ菌を持っていない兄弟もいて不思議でした。

57歳の春の人間ドックで、胃カメラで胃の内壁に周囲とは色の異なる赤い部分が見つかり、生検を受けました。それまでも何回か生検は受けていましたが、毎回異常なしだったので今回も問題ないだろうと思っていました。

普段なら人間ドックの結果は郵送されてくるのに、そのときは病院から職場に電話がかかってきて、すぐに消化器内科を受診してくださいと言われ、これは何か深刻な結果が出ているのかな、ととても不安を感じました。

翌日早速病院に行き、先生から胃がんの告知がされました。そのときは、不思議なくらい動揺はしていなかったのですが、後から考えると頭の中は整理されてなかったと思います。しかし、次々と今後の検査のことや治療方法のことを説明され、私も淡々と答えました。

先生からは、検査はこれからだけど早期がんだと思われるので、標準治療は手術だと言われました。内視鏡の手術と通常の外科手術があり、内視鏡だとがんの取り残しがないかを術後も検査をしなくてはいけないので、まだ若いし外科手術のほうがいいかもしれないがどうするか、と聞かれました。

がんの告知から数分しか経っていないのに、もう治療方法を決めることと、自分で治療方法を選択するということに驚きましたが、私はその場で外科手術を選択しました。今考えると、自分で納得して治療方法を決めたことはよかったことだと思います。術後は、いろいろな後遺症が出ますが、そのとき自分で外科手術を選択したことで、それらも納得して受け入れることができました。ただそのときは、胃の大部分を切除するという大変なことよりも、がん細胞を体から全て出したいという気持ちが強かったのも事実です。

また、このときに比較的冷静でいられたのは、40歳のときの人間ドックで将来胃がんになる可能性があると言われて、心の中に何かしらの準備ができていたかもしれないこと、早期のがんだと言われて安心したということが大きいと思います。これが、末期がんであったなら、もしかしたら自分自身では判断できなかったかもしれません。

治療と後遺症については、私の手術は腹腔鏡下手術といって、おへその周りに小さな穴を4カ所開け、そこからカメラや器具をお腹の中に入れ、最後は切り取った胃を、4cmほどの切開したおへその上部から取り出す手術をしました。

最終的な確定診断は、粘膜内リンパ節転移なしの印環細胞がんのステージ1でした。胃には5つの層があり、私のがんは一番内側の粘膜部分で留まっていましたので、手術のあとは抗がん剤の治療もなく2週間ほどで退院しました。

退院をするときに先生から、これからどんどん元気になっていくが、手術をする前の体とは全く別の体になったと思うようにと言われました。とにかく胃が小さくなったので、一度に食べられる量が少なく、よく噛んでゆっくり食べなければなりませんでした。退院してすぐは、今まで1日で食べていた量を、6回に分けても食べられないくらいでした。

時間が経てば胃が伸びて元に戻るか先生に聞きましたが、死ぬまで小さいままだ、と言われそこで覚悟ができました。

ただ3年経った頃からは、だいぶ食べられるようになってきました。しかし、胃の出口を切っているので、食べたものが胃を素通りして、十二指腸や小腸に流れていってしまいます。それにより、低血糖になり冷や汗が出てきたり、げっぷが出たり、いつまで経ってもお腹が空かないなどの症状が日常的にあります。

職場復帰に際しては、退院直後は食べられなかったこともあり、私は160cmの身長で35kgくらいまで減っていました。ちょっと歩いただけで座り込んでしまうくらい、体力も本当に落ちていました。学校というのは、皆さんが思われているよりも意外と体力・精神力を使い、朝から帰るまで、座る時間やトイレに行く時間もままならないことも多い職場です。

結局、体力が追いつかないと考えた私は、8カ月休職しました。ありがたかったのは、公立学校が制度に恵まれていたことです。有給の病気休暇が普通の病気だと90日のところ、がんの場合は倍の180日取得することができます。その後も給与は8割に減額されますが、病気休職を最長3年間取ることができます。

また、休んでいる間は、代替の講師を派遣していただけます。このような制度のお陰で、安心して休むことができました。

がんを告知されて、真っ先に考えたことは仕事のことでした。告知されたのは入学式の前日で、新入生の担任を受け持つことも決まっていましたが、校長先生をはじめ周りの先生と相談して、担任を替わっていただけました。

私は本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、職場からは、仕事のことは気にせずに、しっかりと治療をして治してきてくださいと言っていただけました。

入院の前には、全教職員の前で治療に専念しますと伝えました。同様に職場復帰の際も全職員の前で、戻ってきましたということと、食事を小分けにして食べなければならないこと、17時には職場を出て自宅に帰って食事を取る必要があるということを伝えました。17時に職場を出る先生は、まずいません。17時は生徒指導や会議、部活がされている時間で、生徒が下校した18時くらいからやっと自分の時間が持てるのが教師の現場です。そんな中で私だけが帰宅するのは、心苦しかったのですが、周りの先生たちが率先して17時になると、もう時間ですから帰ってください、と私が気を使わないようにフォローしていだけましたので、本当に感謝しています。

生徒にも伝えました。「低血糖になったら、授業中でも飴を舐めることがあるよ、ごめんね」と言うと、なにぶんにも中学生ですから「先生、何の病気?」と聞いてきて、「胃がんだよ」と言うと「僕のじいちゃんも胃がんだった」と言ってきたり、明るく場が和んだこともあります。

職場の方にいろいろな配慮をいただき、その後は無事定年退職まで勤め上げることができました。

先日、当時の同僚の先生に会うことがあり、あの時の感謝を伝えると、その先生は「できることとできないこと」「やって欲しいこと」を具体的に伝えてくれたので、私たちもどうしたらいいかがわかりやすかったし、力になれて嬉しかった、と言ってもらえました。

最後に、がんから自分の命を守るには早期発見が本当に大切です。そのためには、がん検診を継続的に行うことが絶対に必要です。

職場復帰に関しては、制度を整えるということ、そして自分自身の状況を正しく、具体的に伝えるということが大切だと思います。

私は、夫と自分自身のがんを経験して、普通に生活して普通に仕事ができることが当たり前ではないということが、本当に身に沁みました。今思うのは、「元気だから働けるのではなく、働くから元気になれる」という風に思っています。

「地元企業による従業員へのがん対策の取り組み」
(一般社団法人京都工場保険会 理事 森口次郎氏)

がん治療と就労支援の具体的な事例を2例紹介します。

1例目は、中小企業にお勤めの女性で、乳がんに罹患された方です。

乳がんのステージ1で日帰り手術をされ、それ以降は月に1回のホルモン療法を行っていました。しかし、このホルモン療法の注射後の1週間は、食欲不振やめまいで勤務ができず、休まれていました。また、休むことで本人の気分も落ち込むという二重ストレスの状況でした。

さらには、人員に余剰のない中小企業の経理をされていましたから、主治医側からは就業継続の意見をもらってはいても、不安定な勤務状況に会社側も困っておられました。

このような中で、私が産業医の立場として相談されました。まずは本人と面談し、現在使用中のホルモン剤を止めて、経過を観察してみることにしました。なぜなら、主治医から本人への説明で、使用するホルモン製剤の効果は、明確に証明されていないとのお話だったからです。

以降は、体調も回復し順調に勤務されています。こういったホルモン療法や術後の投薬による副作用は、全員に同じように出るものではなく、個人差があります。同じ薬を使用していても、全く副作用を感じない方もいらっしゃいます。乳がんの場合のホルモン療法の標準治療は、5年、10年と長期にわたって続けることがありますから、就業に影響の出ないように慎重に対応することが必要だと思います。

2例目は、大企業の大手の営業の男性・40歳の方です。

大腸がんを罹患され、手術後は肝転移への化学療法が行われていました。このとき行われていた化学療法は、2週間に1度の点滴を6カ月続けるものでした。本人の感じていた副作用は、点滴後1週間の発熱、手先のしびれ。そのほか口内炎や色素沈着、不安定な便通などです。体力の低下はそれほどではありませんでした。

私が面談したところ、本人が気にされていたのは、色素沈着でお客様へ不快感を与えるのではないかということ。不安定な便通により、車での移動時のトイレの確保などです。40歳の働き盛りの営業の方ですから、担当もたくさん持たれていました。

そこで、本人だけでなく上司も加えて面談を重ね、まずは担当を半減し、移動の少ない近隣だけにしました。そして、治療のためのタイムリーな顧客訪問ができない場合には、本人の了承を得て情報を開示し、同僚の支援を受けることとしました。この会社は大企業でしたので、このような対応が可能だったともいえます。

産業医の立場からは、時間外労働は月20時間以内に、感染予防の徹底が必要なら内勤の営業補助などへの配置転換も考慮することを提案しました。結果的には、本人の希望もあって数カ月後に内勤へと移られ、今でも元気に就労されています。

講演の様子

このような事例を踏まえ、産業医の立場からみるがん治療と就労のパターンは、大きく分けて2つあります。

1つ目は、がん治療が内視鏡手術などの比較的体への負担が少なくすんだ場合です。つまり、早期がんで病巣を取りきれたような状況です。この場合は、有給休暇などを利用して数日から数週間の休みのあと、スムーズに復職できる可能性が高くなります。通院で行える放射線治療もここに入るかもしれません。

2つ目は、がん治療が手術、抗がん剤治療、放射線治療などの全身への負担が大きい場合です。術後の化学療法などでの副作用、あるいは術後の体の変化による体調不良や後遺症なども当てはまります。現段階では、治療後の復職率や療養日数の中央値などのデータが少なく、見通しが立てづらいパターンで、治療と就労の両立支援にはまだまだ課題が残ります。

がん治療と就労の両立にはさまざまなハードルがあります。一般的な就労規則では、個別のがん治療に対応しきれない部分もあり、休職制度を含め柔軟な対応が求められます。ある研究では、復職して半年から1年をうまくしのぐことが復職のポイントとされており、その期間にいかに治療と就労のバランスをとるかが大切です。特に、休職とフルタイム労働の二択しか選べないような状況では、いつまで経っても休職から抜け出せず、復職への障害となる可能性があります。

今後は、時間単位の有給休暇、傷病休暇、病気休暇、時差出勤、時短勤務、在宅勤務、試し出勤など、両立支援に関する制度や体制を整備していく必要があります。

また、復職から1〜2年間の身分保障(傷病制度)の設定や、期間限定の勤務制度など、がん患者専用の就業規則をオプションとして制定しておくのも、ひとつの手として考えられます。

また、労働衛生機関の渉外職の活用も治療と就労の両立には役立つのではと考えています。すでに一部の労働衛生機関では、労働者への個別支援や顧客へのセミナーを行っています。

労働衛生機関の渉外職は、傷病に関する専門的な人事担当者や専属産業医を持たない中小企業の身近な相談相手でもあります。今後は渉外職が関わる両立支援の好事例をわかりやすくマンガにして、渉外職の知識の向上に努めるなどの施作を取っていきたいと考えています。

また現在、病気と診断された方向けの「両立支援カード」というものが普及しつつあります。これをさらに発展させ、健診・検診者向けの「両立支援カード」を開発して、まだがんになられていない一般の方が「もしも自分ががんになったときにどうすればよいか」といった予備知識の向上も図りたいと思います。

企業における従業員のがん対策は、事例対応を中心に進みつつあります。しかし、中小企業においてはこのような取り組みがまだまだ不十分な部分もあるのが実情です。企業の大小に関わらず、企業内外の専門職との連携を図って、企業の理解向上や体制の整備に努めることが今後の両立支援の課題だと思います。

【質疑応答】

回答者

中川恵一氏(東京大学医学部附属病院 放射線科 准教授)

森口次郎氏(一般社団法人京都工場保険会 理事)

池田久美氏(がんサバイバー/京都市立中学校 再任用教師)

【質問】私の会社で、がんになった社員が復職するときに、がんになったということを周りに伏せて働きたいと言われ、大変苦労をしたのですが、このような場合はどのように対応すればよいのでしょうか?
【回答:森口氏】
自分ががんになったということを公表するのは、大変に勇気がいることです。本人からしてみれば、できれば公表はせずに復職したいという希望を持たれるのは当然だと思います。これは本人の意思ですから、尊重せざるを得ませんが、今後がんに対する偏見がなくなり、正しい知識が普及すれば、公表することで本人にもメリットが生まれることがわかってくると思います。本人だけではなく、従業員全体へのがんの教育というものが必要かもしれません。
【回答:中川氏】
先ほど登壇された池田さんのお話しにもあったように、きちんと自分の病状を伝え、できることできないことを周りに伝えて、情報を共有できることが本人に取っても周りに取ってもベストだと思います。しかし、本人の了承なしには個人情報を開示することはできません。本人自らが、情報を共有した方がメリットがあると思えるような環境を作ることが大切ではないでしょうか。
【回答:池田氏】
私の場合は、復職したときに以前と変わらず働きたいという気持ちがありました。しかし、周りのみんなに迷惑をかけるのではないかという気持ちもありました。そこで私は、すべてを打ち明けたほうが私自身もやりやすいと判断しました。がんになったことは恥ずかしいことではありませんし、言ってよかったと今でも思っています。
【質問】放射線治療のことについて、どのようながんに対して有効なのでしょうか?
【回答:中川氏】
簡単に言いますと、胃がんと大腸がんは手術がおすすめです。ただ、大腸がんにおいては、手術の前に放射線治療を行うことで、人工肛門の使用率が下がることがあります。
がん治療は、負担が少なくがん組織が根こそぎ取れればそれが一番なわけです。ですから、例えば内視鏡の手術で簡単にがんを取れるなら、わざわざ放射線治療をする意味はないと思います。
がんの種類によっては、手術に向いているもの、放射線治療に向いているもの、放射線治療と化学療法のミックスに向いているものなど、いろいろなタイプがあります。まずは、最初にこれと決めつけず、外科医と放射線専門医に相談するなど、セカンドオピニオンを利用して、納得して治療に臨むことが大切だと思います。
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