2018/1/17
がん対策推進企業アクション「神戸セミナー」を開催しました
▲受付の様子 |
▲会場内の様子 |
「我が国におけるがん対策について」
最初に、厚生労働省健康局の久保田陽介課長補佐より、がん対策推進企業アクションについて、がんになっても安心して暮らせる社会を目指して普及啓発を行っていると話しました。
次に日本のがんの現状について説明がありました。 1981年にがんは死亡率の第一位になりその後も増加を続け、現在は3人に1人ががんで亡くなる時代であると説明しました。それを踏まえて平成18年にがん対策基本法が成立し、がん対策の歩みが始まりました。そして、現在第3期がん対策推進基本計画が実行されており、特にがん予防の面で力をいれていることを解説しました。
さらにがん検診の種類と動向について話し、対策型検診と任意型検診の違いを説明しました。現在、がん検診受診率は肺がん健診以外は50%を下回り、国際的に見て検診受診率が低い現状の中において職場でのがん健診というのは重要な役割を担っていると話しました。
がん患者の就労支援の問題としては、現在は罹患しても働きながら通院治療が可能であること、また、企業でも治療しながら働ける環境作りが求められることを話しました。特に、治療と仕事の両立には医療機関や企業(産業医)、両立支援コーディネーターの三者によるトライアングル型サポートの構築・支援が重要であると訴えました。
最後に現在進めているがん対策推進企業アクションについて触れ、推進パートナー企業は2000社を超え、がんになっても安心して暮らせる社会を目指すために、企業の皆様のお力添えをぜひお願いしたいと挨拶を終えました。
健康局 がん・疾病対策課 久保田陽介課長補佐
「がん対策推進企業アクション事業説明」
がん対策推進企業アクション事務局の飯塚威文事務局長から、がん対策推進企業アクションの事業内容を説明しました。
働く人の7人に1人ががんに罹患し年間37万人が亡くなっている現状の中、職域におけるがん検診受診率の向上とがんへの理解を企業連携で推進していくことをサポートするための事業であることを説明しました。
2017年11月現在、推進パートナー企業は2402社、その従業員は641万人を数え、日本の就業人口の1割を超えています。兵庫県では61社が参加しているが、まだまだ少ないため当日参加されている推進パートナー未登録の企業・団体へ、積極的な登録を呼びかけました。
飯塚威文 事務局長
講演①「職域におけるがん教育の重要性」
東京大学医学部附属病院放射線科准教授の中川恵一先生による講演が行われました。
冒頭、働く人が病気で亡くなる原因の9割はがんであることを示し、いかに企業の中でがん対策が必要であるかを参加者に納得してもらい、がんのことを経営層にぜひ伝えてほしいと呼びかけました。
日本人の男性の3人に2人、女性の2人に1人が生涯のうちにがんに罹患するとしたデータをあげ、日本は世界一のがん大国であることを説明しました。また日本は世界一長く働く国であることと、先進国でがんが増えているの日本だけであるということから、働く世代ががんになる時代になってきたと語りました。
また、がんの原因のうち、遺伝は5%にすぎず、たばこが3分の1、たばこ以外の生活習慣が3分の1によるもので、生活習慣の改善で半分くらいはがんを予防できると話しました。それに加えて二次予防のがん健診で早期にがんを発見することが大切であることを話し、がんになってから情報を得ても冷静な判断ができないので、がんになる前にがんのことを知ることの重要性を訴えました。
そして、学校での保健教育で「がん」が取り上げられてこなかった問題を上げ、今年の4月から学校でがん教育が始まったことに触れるとともに、大人にはその機会がないという問題を示しました。だからこそがんを知るためのセミナーに従業員を参加させるなど、大人のがん教育の重要性と、企業が積極的に従業員にがん検診の受診を促進し、現役世代のがんを防ぐ意識が大切であることを強調しました。
最後に、日本は世界一がんが多い国でありながら、がんをよく知らない国であることから、今がんに直面している大人たちへ職場を通じてがん教育をしていくためには、企業におけるがん対策がとても重要であると訴え、講演を締めくくりました。
中川恵一先生
講演②「がんと就労~自身のがんと家族のがんを経験して」
休憩を挟んで、壇上に立ったのは阿南里恵さんです。がん対策推進企業アクションのアドバイザリーボードメンバーでもある阿南さんは、23歳の時、子宮頸がんに罹患し、子宮を全摘出しました。
治療にどれくらい時間がかかるかわからない中で仕事を失い、その後再就職した際の失敗について次のように語りました。
①人間関係ができていた職場を自分のプライドのためにやめてしまった②就職試験でがんに罹患したこと、後遺症のことを言わなかった③以前と同じ感覚で仕事を頑張ってしまった④職場の皆さんに迷惑をかけていると思い込み、退職してしまった⑤講演活動を続けたが、誰かのためにという気持ちが強すぎたと話しました。
その後、自分の体調を考えながら人生の再設計をしたという阿南さん。現在は病気を隠さずに入社した建設会社で、インテリアコーディネーターとして活躍しています。ありのままの自分を受け入れてくれる会社は、がん以外のことにも理解のある会社でした。
実は今年3月に阿南さんは父親の看取りをしました。その時も社長から無期限の有給休暇をもらうなど、会社からのバックアップ体制があったからこそ看取りをすることができたと述べ、講演を終えました。
地元企業様によるがん対策の取り組み紹介 三菱重工業株式会社 神戸造船所
最後に、三菱重工業株式会社 神戸造船所 産業医 田代充生先生が登壇しました。
神戸造船所では、がん予防の取り組みを1994年より生活習慣病についての40~50代の健康教育から始めました。そして2001年より45才以上の社員に禁煙教育を含むがん予防教育をスタートし、2008年以降はがんに造詣の深い講師や企業立病院の医師からご講演いただいているそうです。
続いてがんの早期発見につなげる健診では、人間ドック健診を行っています。健保による人間ドック補助対象が以前は35歳以上だったのを、2012年からは全年齢に拡大したと話しました。しかし人間ドックの受検率は平均30%程度なので、これを上げる必要があると語りました。
またがん治療と就労の両立支援は、主治医と会社と産業医が連携して行っているそうです。復職手続も明文化されたものがあるので、もしそのような決まりがない企業があれば、なんらかの決まりを作っておくとよいというアドバイスがありました。
講演の最後に神戸造船所の今後のがん対策の課題として、①禁煙率のさらなる低下②人間ドッグ受検者のさらなる上昇(特に女性、高齢者)③がん治療と就労の両立支援(特に高齢者)④経営環境の変化への対応があると述べました。産業保健の立場として、企業の実態やニーズに応じて各事業所で考えていくべきと話し、講演を締めくくりました。
質疑応答が10分ほどあった後、神戸セミナーは盛況のうちに終了しました。