2017/10/13
がん対策推進企業アクション「札幌セミナー」を開催しました
「我が国におけるがん対策について」
厚生労働省健康局 がん・疾病対策課 課長補佐 大谷剛志
健康局 がん・疾病対策課 大谷剛志 課長補佐
「がん対策推進企業アクション事業説明」
がん対策推進企業アクション事務局 事務局長 飯塚威文
飯塚威文 事務局長
「北海道労働局が行うがん患者の方への就労支援について」
厚生労働省北海道労働局 職業安定部職業安定課 課長補佐 鎌田正志
がん治療と仕事を両立するための取り組みとして、医療機関(主治医)と連携し、相談窓口を増やし充実していくことや、医療文化の抜本的改革(ガイドラインの普及、両立、支援チームの設置)、北海道労働局健康課が事務局となり推進チームの協議会を行う活動や、仕事をしながら治療をする方々へ助成金を活用とした支援も行うこと、助成金の仕組みは複数あるが、制度のひとつとして「障碍者雇用安定奨励金制度」が4月にできたことを紹介しました。また、北海道労働局では、長期療養されている方への就労支援において特に力を入れており、平成27年にハローワーク札幌東で専門の相談員を配置し、医療機関等と連携をした支援活動事業を開始したことを説明。トライアングル型サポート体制(がん患者・ハローワーク相談員・医療機関の相談員)が連携して就職活動のサポートを行っており、これまでに125名のがん患者の方が就職をした支援実績や実際に就職をされた方の事例を上げ、ハードルが高いと思われるがん患者の方の就職活動も、トライアングル型サポート体制による連携により成果が出せていると説明しました。平成29年1月からはハローワーク旭川でも相談員を配置し出張相談窓口を開設。ハローワークからは、「治療と仕事の両立をしやすい求人」として募集をしてもらえるよう企業への協力と理解を求め、パンフレット等を配布しながら積極的な活動を行い、北海道労働局としては、「治療と仕事の両立が普通にできる社会を目指す」ことを目標としていることを説明しました。
職業安定部職業安定課 鎌田正志 課長補佐
講演【1】 「職域におけるがん教育の重要性」
東京大学医学部附属病院放射線科准教授 放射線治療部門長 中川恵一氏
日本では、男性は3人に2人、女性は2人に1人ががんになり、がん患者が増えているは先進国では日本だけであることについて言及し、日本人ががんのことを知らない現状は、知る機会がなかったためであることや、がんの5年生存率は65%(早期から末期まで)で、早期であれば95%になること、がんは罹患しても2/3が治る病気であるにもかかわらず、「がん=死の病」ととらえ、がんと診断されると死を大きく意識してしまうことを解説しました。リスクの知識がないことにより平常心でいられず、がんが分かってから治療を開始するまでの間に4割以上の方が仕事を辞めてしまい、がんと診断されると、がんに罹患していない人に比べ自殺率が20倍になることを説明しましした。
年間101万人ががんと診断され37万人以上ががんで亡くなっていることや、がん患者の1/3以上が働く世代であり、働く世代のがん罹患者が増えている現状にも触れました。今後も定年延長等により、働くがん患者がさらに増えていくと予想され、治療と仕事の両立支援は大きな課題となること、従業員ががんになっても、辞めないこと・辞めさせないことがとても重要であること強調しました。
がんの治療は外来でも行っているので、仕事を続けながらでも治療はできます。放射線治療の95%以上が通院での治療が可能で、夜10時まで対応する病院もあると説明しました。またがんは手術だけではなく放射線治療もあることを知ってほしいと説明。働く世代のがん患者の支援については、企業として伊藤忠商事の取り組みも紹介し、伊藤忠商事では、経営トップの社長が治療と仕事の両立支援の活動を積極的に行っており、会社全体でがん対策の意識がとても高いことを紹介しました。
また、がんについて正しく知ることの重要性から、全国の小・中・高等学校で今年4月から始まったがん教育の授業についても紹介。そして大人ががんのことを学べるのは職域でしかないことについて言及し、学校教育と同じく、職場でがんを知る機会を強制的に作らないと、がんと向き合うことはできないと述べました。
中川恵一氏
講演【2】「5度の手術と乳房再建1800日」
女優・乳がん経験者 生稲晃子氏
2011年に発覚した乳がんについて、検診の受診動機から検査、発覚、告知を受けた時の気持ちや手術に至るまでの経緯、術後や治療中の体調や副作用、検査・手術・治療・再発と続いた不安定な時期の気持ち、考えていたこと、治療を続けながらの仕事や毎日の生活、家族との日々、暮らしのことを、ひとつひとつとても丁寧に、経験されたご本人自身の言葉で語りました。治療をしながら仕事を続けていた毎日はジェットコースターに乗っているような日々だったとも説明。副作用や精神的な不安で辛くても仕事をしている時間は少し苦しみを忘れることができたこと、仕事を終えて一人になると、とたんに大きな不安や苦しみ、悲しみが押し寄せ、気分が底まで落ちた経験を話しました。そんな不安定な毎日を支えてくれたのは、家族の存在、絆、かけがえのない時間であったと語りました。家族への感謝、そして、検診受診を勧めてくれた友人である医師や仕事仲間への感謝も述べました。
また、今年の3月まで内閣府の「働き方改革実現会議」に民間議員として参加をし、治療をしながら仕事をしている労働者の代表として発言をしていたことについても説明。
患者である労働者が治療をしながら、どうしたら幸せに仕事をして生きていけるのか、仕事場に自分の居場所があること、自分の存在や働きに期待をしてくれる人がいることが励みになること、病気と闘っている労働者が理解と共感をしてもらえる、会社がそんな気持ちになってくれる環境が大切だと話しました。
質疑応答
中川先生へ
【質問】 がんになった時の治療は、外科手術か放射線治療か抗がん剤治療か、治療の方法は医者が決めるのか?症例によって決めるのか?どうやって決めるのか? |
【回答】 現状に合わせて、標準治療を行う。治療の選択肢があることを医者が認識した上で、患者にあった最良の方法を検討する。患者側も情報を集めて選択できるようにしておく。 |
生稲さんへ
【質問】 乳がんを公表した際に、まわりから言われて嬉しかった言葉、辛かった言葉は? |
【回答】 かけて頂いた言葉はすべて嬉しかったが、自分よりも明らかに重たい状況の方々が、「辛かったね」と共感してくれた言葉が特に嬉しかった。 |
事前質問:30代女性/公務員の方より
【質問】 がんに罹患しても長く働くには? |
【回答】 時短等、就業規則の見直しを柔軟に対応できる会社にしていくことが大切。 |