2017/03/08
平成28年度がん対策推進企業アクション年度統括セミナーを開催しました
2017年3月8日、東京都文京区の東京大学鉄門記念講堂で『平成28年度がん対策推進企業アクション年度統括セミナー』を開催しました。今回のセミナーは「がんになっても働き続けられる社会の実現を目指す!職域におけるがん対策セミナー」という副題が付けられ、がんになった人への就労支援を多方面から考える会となりました。開催概要についてはこちらをご参照ください。
▲当日の会場受付
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▲会場内
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開会挨拶とがん対策推進企業アクション本年度の活動について
最初に、がん対策推進企業アクション事務局長の川幡卓也が登壇。開会の挨拶に続いて、2人に1人ががんに罹患(りかん)し、3人に1人ががんで亡くなっている日本の現状を説明しました。さらにがん患者の1/3は働く世代であり、職域において対する正しい知識を広めること、がん検診受診率向上に向けた施策が不可欠だとプロジェクトの意義を語りました。また平成21年から始まったプロジェクトの歩みを振り返り、当初からの大目標である検診受診率向上に加え、近年は就労支援の拡充が大きな柱になっていると話しました。そして今年度の活動について紹介。それによると2017年2月末時点でプロジェクトには2260の企業・団体が参画し、その従業員数は588万人。今年度、新たに参画したのは285社・団体。また3月に大きな健保組合の参加が決まっていて、600万人超の大きな活動になると語りました。全国7ブロックセミナーに1500名以上の参加があったことも紹介した事務局長。会場にさらなる参加を呼びかけ降壇しました。
▲がん対策企業アクション事務局長の川幡卓也
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我が国におけるがん対策について
続いて、厚生労働省 健康局 がん・疾病対策課長の渡辺真俊氏が「我が国におけるがん対策について」のタイトルで、これまでの施策について説明しました。その概要は次の通りです。
日本人の死因第一位である『がん』対策は平成18年の『がん対策基本法』成立によって本格化したが、それ以前から1962年2月に国立がんセンターを設置や1983年の老人保健法施行と同時に胃がん・子宮頚がん検診を開始、以降、子宮体部がん・肺がん・乳がん・大腸がんへ検診を拡充。そして、平成18年の議員立法による『がん対策基本法』成立で、国の施策が大きく動き出し、昨年12月の改正を踏まえ法律の更なる充実が図られたと説明しました。
現在は第2期基本計画をに基づきがん対策が進められているが、より一層のがん対策の推進のため、平成27年12月に『がん対策加速化プラン』を策定し、「がん予防」「治療・研究」「がんとの共生」の3つの柱でがん対策の加速化を図っていると語りました。具体的には「がん予防」では、がん検診受診率向上に向けたアプローチを自治体と職域に向けて行っており、また受動喫煙対策やがん教育にも注力していると説明。「治療・研究」ではゲノム医療に向けた取り組みを行い、年末に「がんゲノム医療フォーラム2016」を開催、また、「がんとの共生」では就労支援と緩和ケアの拡充に取り組んでいると説明しました。
最後に、『働き方改革実現会議』においても〈治療と仕事の両立〉が柱に据えられていると紹介。がんは治る病気になっていて、がんになった人にいかに働いてもらうかは大事な課題であり、引き続き職域での対策拡充に協力いただきたいと呼びかけました。
日本人の死因第一位である『がん』対策は平成18年の『がん対策基本法』成立によって本格化したが、それ以前から1962年2月に国立がんセンターを設置や1983年の老人保健法施行と同時に胃がん・子宮頚がん検診を開始、以降、子宮体部がん・肺がん・乳がん・大腸がんへ検診を拡充。そして、平成18年の議員立法による『がん対策基本法』成立で、国の施策が大きく動き出し、昨年12月の改正を踏まえ法律の更なる充実が図られたと説明しました。
現在は第2期基本計画をに基づきがん対策が進められているが、より一層のがん対策の推進のため、平成27年12月に『がん対策加速化プラン』を策定し、「がん予防」「治療・研究」「がんとの共生」の3つの柱でがん対策の加速化を図っていると語りました。具体的には「がん予防」では、がん検診受診率向上に向けたアプローチを自治体と職域に向けて行っており、また受動喫煙対策やがん教育にも注力していると説明。「治療・研究」ではゲノム医療に向けた取り組みを行い、年末に「がんゲノム医療フォーラム2016」を開催、また、「がんとの共生」では就労支援と緩和ケアの拡充に取り組んでいると説明しました。
最後に、『働き方改革実現会議』においても〈治療と仕事の両立〉が柱に据えられていると紹介。がんは治る病気になっていて、がんになった人にいかに働いてもらうかは大事な課題であり、引き続き職域での対策拡充に協力いただきたいと呼びかけました。
▲厚生労働省 健康局 がん・疾病対策課長の渡辺真俊氏
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平成28年度『がん対策推進企業表彰式』
続いてセミナーは企業表彰式へ移行。まずパートナー賞の発表があり、検診部門を受賞した株式会社秋田銀行 執行役員経営管理部長 兼 秋田銀行健康保険組合理事長 播磨屋寿敏氏、就労部門で受賞したヤフー株式会社 コーポレート統括本部 健康推進センター 室長 西知之氏が登壇。アドバイザリーボードの議長である中川先生から、表彰状ならびに記念の盾が贈られました。続いて厚生労働大臣賞の発表があり、受診勧奨や就労支援の取り組みが顕著な株式会社大和証券グループ本社 常務執行役CHO 望月篤氏が受賞し、がん・疾病対策課長の渡辺真俊氏から厚生労働大臣賞が贈られました。
▲検診部門を受賞した株式会社秋田銀行
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▲就労部門で受賞したヤフー株式会社
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▲厚生労働大臣賞の株式会社大和証券グループ本社
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職域がん対策のアンケート結果報告
東京大学医学部附属病院放射線科准教授で当プロジェクトのアドバイザリーボード議長でもある中川恵一先生が登壇。「全国健康保険協会(協会けんぽ)加入者を対象としたがん検診・がん対策に関する実態調査」の結果を紹介しました。2017年1月に行われたWeb調査のリポートです。協会けんぽは、加入事業所数約196万、加入者数約3800万人という日本最大の団体。加入事業所の約80%が従業員9名以下の中小企業という医療保険者です。
今回の調査のサンプル数は「加入事業者で経営者または従業員向け検診の内容を把握している人(1508人)」「被保険者(1560人)」「被扶養者(515人)」でした。調査の内容は、就労支援や被扶養者のがん検診受診状況、がんに対するリテラシーまでに踏み込んだもので、同協会でも初の試みという興味深いリサーチでした。結果の一部を紹介すると、被保険者(経営者・従業員)の部位別がん検診受診率は、胃がん42.3%、肺がん42.0%、大腸がん28.4%、子宮頸がん48.2%、乳がん53.3%。被扶養者は胃がん22.6%、肺がん28.1%、大腸がん28.4%、子宮頸がん45.7%、乳がん45.3%。このデータを踏まえ、中川先生は、やはり女性の方ががんに対する意識が高いと解説しました。
また『日本人の死因第一位はがんである』など12設問の回答から計ったリテラシー度で、事業所をH(ハイ)・M(ミドル)・L(ロウ)に3分類。リテラシーの高い(H)ところと低い(L)事業所で、それぞれのがん検診受診率を比較した結果、胃がん45.3%→25.6%、肺がん30.7%→19.6%、大腸がん37.9%→子宮頸がん23.7%→9.4%、乳がん25.2%→11.9%と顕著な差が現れました。経営者または役員に絞った調査ではこの差がさらにかい離し、また勤務時間・日数の変更や傷病休暇制度の有無など、就労支援への取り組みにも隔たりのあることが判明しました。
中川先生は「当然の結果ですが、リテラシーの高い職場ではがん対策が進んでいる。経営者の知識がいかに重要かを物語っています」と解説し、この4月から小・中・高校でがん教育が始まることを紹介。続いて会場に「そのことを知っていた人は?」と挙手を求めました。およそ半分の人が手をあげた結果を受けて、中川先生は職域におけるがん教育の重要性を語りました。昨年、がん登録が始まった日本。そのため推定だが、最新データではおよそ男性の67%、女性の51%ががんに罹患している。そして働く世代の1/3はがんになっていて、一方でがんが治る時代でもある。年間101万人ががんになり、37万人亡くなるが70%近くは治っている。だからこそ職域におけるがん対策、働きながら治療するための対策が不可欠といった主旨で、わかりやすく各種データなどを紹介。またがんと告知された人の1年内自殺率が、そうでない人の20倍にもなることを示し、そういう悲劇を避けるためにも、がんに対する正しい知識を持つことが重要と重ねて呼びかけました。
今回の調査のサンプル数は「加入事業者で経営者または従業員向け検診の内容を把握している人(1508人)」「被保険者(1560人)」「被扶養者(515人)」でした。調査の内容は、就労支援や被扶養者のがん検診受診状況、がんに対するリテラシーまでに踏み込んだもので、同協会でも初の試みという興味深いリサーチでした。結果の一部を紹介すると、被保険者(経営者・従業員)の部位別がん検診受診率は、胃がん42.3%、肺がん42.0%、大腸がん28.4%、子宮頸がん48.2%、乳がん53.3%。被扶養者は胃がん22.6%、肺がん28.1%、大腸がん28.4%、子宮頸がん45.7%、乳がん45.3%。このデータを踏まえ、中川先生は、やはり女性の方ががんに対する意識が高いと解説しました。
また『日本人の死因第一位はがんである』など12設問の回答から計ったリテラシー度で、事業所をH(ハイ)・M(ミドル)・L(ロウ)に3分類。リテラシーの高い(H)ところと低い(L)事業所で、それぞれのがん検診受診率を比較した結果、胃がん45.3%→25.6%、肺がん30.7%→19.6%、大腸がん37.9%→子宮頸がん23.7%→9.4%、乳がん25.2%→11.9%と顕著な差が現れました。経営者または役員に絞った調査ではこの差がさらにかい離し、また勤務時間・日数の変更や傷病休暇制度の有無など、就労支援への取り組みにも隔たりのあることが判明しました。
中川先生は「当然の結果ですが、リテラシーの高い職場ではがん対策が進んでいる。経営者の知識がいかに重要かを物語っています」と解説し、この4月から小・中・高校でがん教育が始まることを紹介。続いて会場に「そのことを知っていた人は?」と挙手を求めました。およそ半分の人が手をあげた結果を受けて、中川先生は職域におけるがん教育の重要性を語りました。昨年、がん登録が始まった日本。そのため推定だが、最新データではおよそ男性の67%、女性の51%ががんに罹患している。そして働く世代の1/3はがんになっていて、一方でがんが治る時代でもある。年間101万人ががんになり、37万人亡くなるが70%近くは治っている。だからこそ職域におけるがん対策、働きながら治療するための対策が不可欠といった主旨で、わかりやすく各種データなどを紹介。またがんと告知された人の1年内自殺率が、そうでない人の20倍にもなることを示し、そういう悲劇を避けるためにも、がんに対する正しい知識を持つことが重要と重ねて呼びかけました。
▲東京大学医学部附属病院放射線科准教授 中川恵一先生
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推進パートナー好事例の紹介
続いて推進パートナー企業の好事例紹介へ。まず大和証券グループ本社 常務執行役員CHO望月篤氏がステージに上がりました。望月氏は、2008年のメタボ検診開始から同社の健康施策が本格化し、まずレセプトデータで医療費の上位3位が高血圧・糖尿病・腎不全ということに着目。生活習慣病を中心とした健康施策が推進されてきたと、これまでの経緯を説明しました。また現在は事業体(人事部)+健康保険組合+産業保険スタッフの三位一体で各種施策を行っており、なかでもがん検診や健康診断で要精検とされた社員への受診勧奨を徹底して行っていることが紹介されました。
▲大和証券グループ本社 常務執行役員CHO望月篤氏
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次に登壇したのは、秋田銀行健康保険組合 常務理事 喜藤茂氏です。喜藤氏は秋田県の地域特性などを説明。そのなかでがん死亡率がきわめて高い特徴を話し、県を代表する銀行として行っている社内外への活動を紹介しました。30・35・37歳の節目と39歳以上を対象とした人間ドックによるがん検診の内容、検診受診日を特別休暇(就業扱い)にするといった手厚い制度が紹介され、また外へ向かった施策として「あきぎん長活き学校」の活動が語られました。これは高齢者へのサポート活動。「長活き」シニアの事例紹介を盛り込んだセミナーなどを開催しているとのことです。
▲秋田銀行健康保険組合 常務理事 喜藤茂氏
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事例紹介の最後はヤフー株式会社。健康推進センター 健康業務推進産業医 下方征氏が、同社の取り組みを「ヤフーにおけるがん対策・7つの知恵袋」と題して紹介しました。代表取締役社長が健康施策の旗振り役となり、同社ならではのCCO(Chief Conditioning Officer)という肩書を付けていること、社内イントラで各種健康情報を配信していること、また健康診断受診の状況も確実に把握していることなどが語られました。また健康診断とがん検診の情報に関して、前者は会社情報として、後者は個人情報として取扱いに留意しているという説明もありました。そのほか月に5日どこで仕事をしてもいい『どこでもオフィス』というユニークな制度を紹介されました。
▲ヤフー株式会社 健康推進センター 健康業務推進産業医 下方征氏
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パネルディスカッション「「職域のがん対策を推進するためには」
その後10分の休憩を挟んで中川先生、望月氏、喜藤氏、下方氏の4名によるパネルディスカッションへ。中川先生がセミナー全体を振り返り「年を追うごとに内容が充実していると思います」と語り、各企業の取り組みも素晴らしいと賛辞を送りました。そしてヤフー株式会社の情報取扱いに触れ、他の2社はどのように対応しているかを質問すると、本人の同意を取って健保組合・事業体が情報を管理し、そのうえで受診勧奨や就労支援を行っているという回答がありました。その後、事前に寄せられた会場からの質問にヤフーの下方氏などが回答。本年度の統括セミナーが終了しました。
▲パネルディスカッションの様子
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