2016/12/14
がん対策推進企業アクション「静岡セミナー」を開催しました
2016年12月14日、静岡県コンベンションアーツセンター・グランシップにおいて〈がん対策推進企業アクション「静岡セミナー」〉を開催しました。全国7ブロックセミナーの最後を締めくくる今回も約100名の参加があり、盛況の中、本年度最後のセミナーが開幕しました。開催概要はこちらをご覧ください。
▲会場
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▲受付
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がんに対する「国の取り組み」紹介からセミナーがスタート
セミナーの最初に登壇したのは、厚生労働省健康局がん・疾病対策課専門官の高橋宏和氏です。高橋氏は主催者としての挨拶に続いて、セミナー開催の数日前である平成28年12月9日にがん対策基本法改正案が成立したことを紹介。そして平成18年の議員立法による『がん対策基本法』成立から本格化した、がん対策のこれまでを説明しました。そこでは平成19年にがん対策推進計画(第1期)が策定され、以降、5年ごとに計画は見直されていること、現在は第2期計画に則って施策が推進されていることなどが語られました。
また第1期で定めた『10年間で年齢調整死亡率を20%下げる』という目標が難しい状況にあるため、平成27年に『がん対策加速化プラン』を打ち出し、第2期計画に上乗せする形で、取り組みを強化しているという説明もありました。そして現在まさに協議中としながら、来年度より始まる第3期計画では職域でのがん検診や就労支援への取り組み、またがん教育がより一層強化されるだろうと語りました。
そして、現在、進められている加速化プランの中から就労支援について紹介しました。ハローワーク(職業安定局)で治療と両立可能な求人紹介を開始、労働基準局は治療と職業生活の両立支援プランを策定し、今年から施策を本格化。健康局と合わせた厚生労働省の3局が積極的な施策を展開していることなどを語って、高橋氏は降壇しました。
また第1期で定めた『10年間で年齢調整死亡率を20%下げる』という目標が難しい状況にあるため、平成27年に『がん対策加速化プラン』を打ち出し、第2期計画に上乗せする形で、取り組みを強化しているという説明もありました。そして現在まさに協議中としながら、来年度より始まる第3期計画では職域でのがん検診や就労支援への取り組み、またがん教育がより一層強化されるだろうと語りました。
そして、現在、進められている加速化プランの中から就労支援について紹介しました。ハローワーク(職業安定局)で治療と両立可能な求人紹介を開始、労働基準局は治療と職業生活の両立支援プランを策定し、今年から施策を本格化。健康局と合わせた厚生労働省の3局が積極的な施策を展開していることなどを語って、高橋氏は降壇しました。
▲厚生労働省健康局がん・疾病対策課の高橋専門官
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「事業場における治療と職業生活の両立支援ガイドライン」について
その後ステージに立ったのは、静岡産業保健総合支援センター・両立支援促進員の秋山隆子先生です。秋山先生は、平成28年4月に厚労省がまとめた指針『事業場における治療と職業生活の両立支援ガイドライン』について詳細な説明を行いました。それによると、疾病を理由に1カ月以上休業している社員がいる企業はきわめて多く、メンタルヘルス38%、がん21%、脳血管疾患12%となっており、また仕事をしながら、がんで通院している人が32.5万人もいる。病を抱えて働く社員への対策は喫緊の課題であるが、一方で対応の具体的方法がわからない企業も多い。そこで従業員・医療関係者・事業者が一体となって治療と就業の両立に取り組むためのガイドラインが必要と、施策の意義を語りました。
また静岡がんセンターのデータを紹介。がんに罹患(りかん)した人が依願退職するパーセンテージは平成15年で34.4%、10年後の平成25年も34.6%と横ばいであることを示し、サポートがなければ仕事を続けるのは難しいと強調。秋山先生自身がん経験者で、病気とわかった10年前にこういうガイドラインがあれば良かったと語りました。
続いて糖尿病・メンタルヘルス・脳血管疾患・がん罹患者などへのサポートとして、企業に求められる環境整備や取り組みの現状を説明。サポートは労働者(会社員)が主治医を通じて事業所に申し出ることから始まるなど、支援が行われるフローも解説しました。また従業員・医療関係者・事業者の情報交換に使う書類の様式例も説明し、秋山先生の講演が終了しました。
また静岡がんセンターのデータを紹介。がんに罹患(りかん)した人が依願退職するパーセンテージは平成15年で34.4%、10年後の平成25年も34.6%と横ばいであることを示し、サポートがなければ仕事を続けるのは難しいと強調。秋山先生自身がん経験者で、病気とわかった10年前にこういうガイドラインがあれば良かったと語りました。
続いて糖尿病・メンタルヘルス・脳血管疾患・がん罹患者などへのサポートとして、企業に求められる環境整備や取り組みの現状を説明。サポートは労働者(会社員)が主治医を通じて事業所に申し出ることから始まるなど、支援が行われるフローも解説しました。また従業員・医療関係者・事業者の情報交換に使う書類の様式例も説明し、秋山先生の講演が終了しました。
▲静岡産業保健総合支援センター・両立支援促進員の秋山隆子先生
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がん検診対策推進企業アクションの取り組み紹介
続いて登壇したのは、がん対策推進企業アクションの川幡卓也事務局長です。事務局長はがんが増えている日本の現状をデータで示し、がん患者の3分の1は労働人口であること、約32万人というその人数は静岡市の人口半分に相当すると説明しました。そして職域における『がん検診』受診率向上を目指し、がんの基本知識を提供しているプロジェクトの活動を紹介。昨年度からスタートした表彰制度にも触れて、本年度も参考となる取り組みと企業を3月に表彰すると語りました。
そして2016年12月14日現在のデータを紹介。がん対策推進企業アクションに参画している企業は2192社で、その従業員は584万6562人以上におよぶと説明し、活動の輪が全国47都道府県に広がっていることも語りました。静岡県からは40の企業・団体が参画していると紹介。最後にプロジェクトへのさらなる参画を呼びかけて事務局長は降壇しました。
そして2016年12月14日現在のデータを紹介。がん対策推進企業アクションに参画している企業は2192社で、その従業員は584万6562人以上におよぶと説明し、活動の輪が全国47都道府県に広がっていることも語りました。静岡県からは40の企業・団体が参画していると紹介。最後にプロジェクトへのさらなる参画を呼びかけて事務局長は降壇しました。
▲がん対策推進企業アクション事務局長・川幡卓也
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中川先生の基調講演「職域におけるがん教育の必要性」
続いて東京大学医学部附属病院 放射線科准教授・中川恵一先生(がん対策推進企業アクション・アドバイザリーボード議長)が、『職域におけるがん教育の必要性』のテーマで講演を行いました。先生は冒頭でプロジェクトへ参加しているかどうか質問を投げかけ、参加することでのプラス効果は大きく、マイナスはない。参加していない企業の方は、ぜひ会社で働きかけをしてほしいと語って、本題へ進みました。
がん発生リスクの主たるものは喫煙はじめとした生活習慣、そしてウイルスですと説明。ウイルスによるがん発生の例としてピロリ菌と胃がん、輸血による肝がんなどの関係性を解説しました。そして先進国の中で、がんが増えているのは日本だけというデータに触れ、高齢化や女性の社会進出でますます働く人のがんが増えると示唆。女性の喫煙率が上がっていることも問題だと指摘し、女性の社会進出が進んでいるスウェーデンのケース(喫煙率は男女ともに25%)を例にとって、働く女性の喫煙率が高くなる傾向を示しました。
一方で「がんになっても約60%の人は治っている」と先生。ところが一度、がんと診断されると1年内に多くの人が自殺していて、がんではない人に対し、がんになった人の自殺は20倍。また治療を始める前に30%が離職、17%が廃業しているとデータで説明。これはがんに対する正しい知識を持っていないからだと語りました。そして来年4月から全国の小学校・中学校・高校で『がん教育』が始まることを紹介し、しかし大人への教育はほぼ手つかず。大人に正しいがん教育をするには、職域の努力が必要ですと呼びかけました。
その後、科学的根拠(エビデンス)に基づいた検診の重要性などが説かれ、また話題になっているオプジーボの薬価や汎用性についての説明もあり、中川先生の講演は終了しました。
がん発生リスクの主たるものは喫煙はじめとした生活習慣、そしてウイルスですと説明。ウイルスによるがん発生の例としてピロリ菌と胃がん、輸血による肝がんなどの関係性を解説しました。そして先進国の中で、がんが増えているのは日本だけというデータに触れ、高齢化や女性の社会進出でますます働く人のがんが増えると示唆。女性の喫煙率が上がっていることも問題だと指摘し、女性の社会進出が進んでいるスウェーデンのケース(喫煙率は男女ともに25%)を例にとって、働く女性の喫煙率が高くなる傾向を示しました。
一方で「がんになっても約60%の人は治っている」と先生。ところが一度、がんと診断されると1年内に多くの人が自殺していて、がんではない人に対し、がんになった人の自殺は20倍。また治療を始める前に30%が離職、17%が廃業しているとデータで説明。これはがんに対する正しい知識を持っていないからだと語りました。そして来年4月から全国の小学校・中学校・高校で『がん教育』が始まることを紹介し、しかし大人への教育はほぼ手つかず。大人に正しいがん教育をするには、職域の努力が必要ですと呼びかけました。
その後、科学的根拠(エビデンス)に基づいた検診の重要性などが説かれ、また話題になっているオプジーボの薬価や汎用性についての説明もあり、中川先生の講演は終了しました。
▲中川恵一先生
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阿南里恵さんが自身の体験を講演『失敗だらけだった!!~がんになった私の人生設計』
休憩を挟んで、次に壇上へ立ったのは阿南里恵さんです。がん対策企業アクションのアドバイザリーメンバーでもある阿南さんは、23歳で子宮頸(けい)がんに罹患。子宮を全摘出しました。抗がん剤・放射線治療と5年の経過観察の後に講演活動を開始。現在は大阪のゼネコンで活躍している阿南さんが、自身の体験を『失敗だらけだった!!~がんになった私の人生設計』というテーマで講演しました。
人生のいちばん楽しかった時に、がんが来たと語った阿南さん。自身の失敗として次の5点をあげました。〈1〉人間関係ができていた職場を(がんになった自分を見られたくないなど)プライドのために辞めた〈2〉病気を隠して再就職。リンパ浮腫の後遺症が出て隠しきれなくなった〈3〉打ち明けた上司や同僚の理解を得られたものの、迷惑をかけていると退職。生活と収入が不安定になった〈4〉ならば自分でやろうと計画不十分のまま起業。大きな借金を抱えた〈5〉講演活動を始めた後は誰かのためにという意識ばかりで、自分のキャリア設計ができなかった。気が付いたら30代半ばだった。
自ら負のスパイラルだったと語る時期を乗り越えて、現在は病気を隠さず入った建設会社で活躍している阿南さん。リンパ管静脈吻合手術によって後遺症が改善したことも語りました。そして父親や義理の姉ががんに罹患し、家族ぐるみのケア・サポートが必要になっていることも紹介。がんは今や身近な存在であり、本人だけでなく家族の大きな問題になっていると語りました。また「結婚も子育てもあきらめていません。バツイチ子持ちの男性と結婚したいと思っています」と前向きな気持ちを語って、ステージから降りました。
人生のいちばん楽しかった時に、がんが来たと語った阿南さん。自身の失敗として次の5点をあげました。〈1〉人間関係ができていた職場を(がんになった自分を見られたくないなど)プライドのために辞めた〈2〉病気を隠して再就職。リンパ浮腫の後遺症が出て隠しきれなくなった〈3〉打ち明けた上司や同僚の理解を得られたものの、迷惑をかけていると退職。生活と収入が不安定になった〈4〉ならば自分でやろうと計画不十分のまま起業。大きな借金を抱えた〈5〉講演活動を始めた後は誰かのためにという意識ばかりで、自分のキャリア設計ができなかった。気が付いたら30代半ばだった。
自ら負のスパイラルだったと語る時期を乗り越えて、現在は病気を隠さず入った建設会社で活躍している阿南さん。リンパ管静脈吻合手術によって後遺症が改善したことも語りました。そして父親や義理の姉ががんに罹患し、家族ぐるみのケア・サポートが必要になっていることも紹介。がんは今や身近な存在であり、本人だけでなく家族の大きな問題になっていると語りました。また「結婚も子育てもあきらめていません。バツイチ子持ちの男性と結婚したいと思っています」と前向きな気持ちを語って、ステージから降りました。
▲阿南里恵さん
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矢崎健康保険組合の「女性がん検診」への取り組み
セミナー最後の講演でステージに上がったのは、矢崎健康保険組合事務長の長田和美さんです。長田さんは、まず矢崎グループがワイヤーハーネス市場においてリーディングカンパニーであり、45の国と地域に事業所を展開するグローバル企業であることを紹介。国内には35事業所があり、その70%は静岡県に集中しているという特徴を説明。健保組合は1958年に設立され、現在、被保険者1万4694人。社員の平均年齢は42.01歳。男女比ほぼ7:3という現況をデータで示しながら紹介してくれました。
そして健保組合を中心とした、「女性がん検診」への取り組み説明へ移行。まず平成27年に作成したデータヘルス計画から、明らかになった分析結果を紹介しました。それによると、2009年から2012年の集計で胃がん・大腸がんは減っているのに、乳がん、子宮がんは増えている。年代別・一患者あたりの医療費で見ると35歳~45歳が突出して高額になっている。さらに細かくデータを見ると、検診を受けていた群とそうでない群では、当たり前のように受診組の早期発見率が高い。そこで働き盛りの女性に対する施策として「女性がん検診の受診率向上プロジェクト」を開始したと経緯が語られました。
具体的な施策としては、平成21年度から開始していたファミリー健診(被扶養者向け巡回型健診)をモデルとして、平成27年度に社員向け女性検診を実施。大規模事業所2カ所で、子宮頸がん(20歳以上)、乳房エコー(30代+40代以上は奇数年齢)、乳房マンモ2方向(40歳以上偶数年齢)というメニューで費用は全額健保負担。就業時間内での検診実施でした。これにより女性がん検診の受診率は、それまでの4%から40%へ飛躍的に向上しました。
この年はモデル事業でしたが、好評につき継続が決定。平成28年度は検診バスの横づけが可能な17拠点に拡大して乳がん検診は40代以上のメニューを逆にして実施したところ、乳房エコー53.87%、乳房マンモ68.83%を達成しました。今後はバスの配車が難しい事業所への補助を増やし、また社員アンケートであがってきた『スカートで行きにくい(工場は制服がスラックス)』などへの対策も考えたいと語った長田さん。失効した有給休暇を40日まで積み立てられるバックアップホリデー制度で、半日単位の取得を可能になったことも説明し、今後は時間単位の取得等制度のさらなる見直しに働きかけをしたいと意欲を語って降壇しました。
そして健保組合を中心とした、「女性がん検診」への取り組み説明へ移行。まず平成27年に作成したデータヘルス計画から、明らかになった分析結果を紹介しました。それによると、2009年から2012年の集計で胃がん・大腸がんは減っているのに、乳がん、子宮がんは増えている。年代別・一患者あたりの医療費で見ると35歳~45歳が突出して高額になっている。さらに細かくデータを見ると、検診を受けていた群とそうでない群では、当たり前のように受診組の早期発見率が高い。そこで働き盛りの女性に対する施策として「女性がん検診の受診率向上プロジェクト」を開始したと経緯が語られました。
具体的な施策としては、平成21年度から開始していたファミリー健診(被扶養者向け巡回型健診)をモデルとして、平成27年度に社員向け女性検診を実施。大規模事業所2カ所で、子宮頸がん(20歳以上)、乳房エコー(30代+40代以上は奇数年齢)、乳房マンモ2方向(40歳以上偶数年齢)というメニューで費用は全額健保負担。就業時間内での検診実施でした。これにより女性がん検診の受診率は、それまでの4%から40%へ飛躍的に向上しました。
この年はモデル事業でしたが、好評につき継続が決定。平成28年度は検診バスの横づけが可能な17拠点に拡大して乳がん検診は40代以上のメニューを逆にして実施したところ、乳房エコー53.87%、乳房マンモ68.83%を達成しました。今後はバスの配車が難しい事業所への補助を増やし、また社員アンケートであがってきた『スカートで行きにくい(工場は制服がスラックス)』などへの対策も考えたいと語った長田さん。失効した有給休暇を40日まで積み立てられるバックアップホリデー制度で、半日単位の取得を可能になったことも説明し、今後は時間単位の取得等制度のさらなる見直しに働きかけをしたいと意欲を語って降壇しました。
▲矢崎健康保険組合事務長の長田和美さん
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その後、秋山先生、阿南さん、長田さん、中川先生のパネルディスカッションがあり、静岡セミナーは終演しました。
▲パネルディスカッションの様子
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