2016/11/09
がん対策推進企業アクション「岡山セミナー」を開催しました
2016年11月9日、岡山市北区の岡山国際交流センターで〈がん対策推進企業アクション「岡山セミナー」〉を開催しました。全国7ブロックで開催されるセミナーの第三弾。約150名が参加しました。開催概要はこちらをご覧ください。
▲会場
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▲受付
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厚労省による「国の取り組み」紹介からスタート
司会者の紹介を受けて最初に登壇したのは、厚生労働省健康局がん・疾病対策課主査の橋本尚英氏です。橋本氏は『我が国におけるがん対策について』というテーマで、がんの現状や国が行ってきた施策を紹介しました。
病気による死亡原因1位であるがんへの対策として、平成18年に『がん対策基本法』が議員立法により成立。以降、がんの予防・早期発見に寄与する各種施策を行っていることが語られ、がん対策推進基本計画は5年ごとに見直され、現在は第2期計画に基づいて施策を展開していると説明がありました。そして第1期計画で定めた『10年間に年齢調整死亡率を20%下げる』目標達成が難しい状況にあるため、平成27年12 月に『がん対策加速化プラン』を打ち出し、第2期計画に上乗せする形で取り組みを強化していることも語られました。
続いて橋本氏が紹介したのは、がん患者の就労や就職支援に関する現状です。がんを告知された被雇用者が「依願退職した」「解雇された」比率が2003年と2013年ではほぼ同じで、改善されていないことは重要な問題だと指摘。がん診療連携拠点病院相談支援センターでは「仕事と治療の両立の仕方」に関する相談が増えている状況を踏まえ、厚労省ではがん患者の就労に関する取り組みを強化していることを説明しました。その一例としてハローワークで治療と両立できる求人の紹介など就職支援を平成28年度から全国展開しており、また労働基準局では治療と職業生活の両立支援プランを策定し、企業などの相談に対応していることを語り、橋本氏は降壇しました。
病気による死亡原因1位であるがんへの対策として、平成18年に『がん対策基本法』が議員立法により成立。以降、がんの予防・早期発見に寄与する各種施策を行っていることが語られ、がん対策推進基本計画は5年ごとに見直され、現在は第2期計画に基づいて施策を展開していると説明がありました。そして第1期計画で定めた『10年間に年齢調整死亡率を20%下げる』目標達成が難しい状況にあるため、平成27年12 月に『がん対策加速化プラン』を打ち出し、第2期計画に上乗せする形で取り組みを強化していることも語られました。
続いて橋本氏が紹介したのは、がん患者の就労や就職支援に関する現状です。がんを告知された被雇用者が「依願退職した」「解雇された」比率が2003年と2013年ではほぼ同じで、改善されていないことは重要な問題だと指摘。がん診療連携拠点病院相談支援センターでは「仕事と治療の両立の仕方」に関する相談が増えている状況を踏まえ、厚労省ではがん患者の就労に関する取り組みを強化していることを説明しました。その一例としてハローワークで治療と両立できる求人の紹介など就職支援を平成28年度から全国展開しており、また労働基準局では治療と職業生活の両立支援プランを策定し、企業などの相談に対応していることを語り、橋本氏は降壇しました。
▲厚生労働省健康局 がん・疾病対策課 橋本主査
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「治療と職業生活の両立支援ガイドライン」について
続いて壇上に立ったのは、岡山産業保健総合支援センター 両立支援促進員の大倉直子先生です。がん・脳卒中・心疾患・糖尿病・肝炎などの治療を要する会社員に対し、企業はどのように支援するべきか、厚労省が今年4月にまとめた指針『治療と職業生活の両立支援ガイドライン』について解説しました。
大倉先生は「仕事を持ちながら、がんで通院している人は32.5万人に上り、治療技術の進歩により、かつては“不治の病”とされていたがんも“長く付き合う病気”に変化してきている。病気になったからすぐに離職しなければならないわけでは必ずしもなくなっている。そのため、人材確保や生産性向上という観点から、会社員・企業・医療機関三位一体の就労支援が必要」と訴え、またガイドラインの意義を強調しました。
続いて取り組みの現状や企業に必要な環境整備について説明しました。両立支援は労働者(会社員)が主治医を通じて事業所に申し出ることからスタートするなど支援の進め方や、その際に必要となる書面の様式例を紹介。「治療と職業生活の両立支援を進めることは、事業者、労働者、医療関係者、そして社会全体のそれぞれにとって大きな意義がある。まずはガイドラインを参考に、できることから両立支援に取り組まれてはいかがでしょうか」と来場者に訴え、降壇しました。
大倉先生は「仕事を持ちながら、がんで通院している人は32.5万人に上り、治療技術の進歩により、かつては“不治の病”とされていたがんも“長く付き合う病気”に変化してきている。病気になったからすぐに離職しなければならないわけでは必ずしもなくなっている。そのため、人材確保や生産性向上という観点から、会社員・企業・医療機関三位一体の就労支援が必要」と訴え、またガイドラインの意義を強調しました。
続いて取り組みの現状や企業に必要な環境整備について説明しました。両立支援は労働者(会社員)が主治医を通じて事業所に申し出ることからスタートするなど支援の進め方や、その際に必要となる書面の様式例を紹介。「治療と職業生活の両立支援を進めることは、事業者、労働者、医療関係者、そして社会全体のそれぞれにとって大きな意義がある。まずはガイドラインを参考に、できることから両立支援に取り組まれてはいかがでしょうか」と来場者に訴え、降壇しました。
▲岡山産業保健総合支援センター 両立支援促進員 大倉直子先生
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がん対策推進企業アクションの取り組みと現状の紹介
次にステージに立ったのは、がん対策推進企業アクション事務局長の川幡卓也。職域における『がん検診』の受診率向上、がんに関する基本知識の提供といったプロジェクトの目的と活動内容を紹介しました。そして、事務局が実施した「平成27年度 企業におけるがん健診の実施状況」の調査結果を報告。さらに、昨年度からスタートしたがん対策に積極的な企業に対する表彰制度に触れ、積極的にがん対策を推進している企業を今年も表彰すると語りました。
そして2016年11月現在、がん対策推進企業アクションに参画している企業は2162社で、その従業員は554万人以上におよんでいること、全国47都道府県に活動の輪が広がっている現況などを説明。「職域におけるがん健診の重要性を認識いただき、まだ登録されていない企業があればぜひ参加してください」とプロジェクトへのさらなる参画を呼びかけて終了しました。
そして2016年11月現在、がん対策推進企業アクションに参画している企業は2162社で、その従業員は554万人以上におよんでいること、全国47都道府県に活動の輪が広がっている現況などを説明。「職域におけるがん健診の重要性を認識いただき、まだ登録されていない企業があればぜひ参加してください」とプロジェクトへのさらなる参画を呼びかけて終了しました。
▲がん対策推進企業アクション事務局長 川幡卓也
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中川先生の基調講演「職域におけるがん教育の重要性」
続いて東京大学医学部附属病院 放射線科准教授・中川恵一先生(がん対策推進企業アクション・アドバイザリーボード議長)が、『職域におけるがん教育の重要性』のテーマで講演を行いました。
冒頭、先生が紹介したのは、日本人ががんに罹患(りかん)する確率は男性63%・女性47%というデータです。ただし、これは2012年のもので、2016年は男性67%・女性51%と推計され、男性の3人に2人、女性の2人に1人ががんになると語りました。一方、欧米ではがんによる死亡者は減っており、がんが増え続けているのは先進国では日本だけと指摘。その背景には日本では欧米に比べてはるかに早いスピードで高齢化が進んだだめ対策が遅れ、日本人ががんのことをよく知らないことが大きく影響していると解説しました。また日本では、高齢者と女性の就労者が増えていること、働き盛りの女性に子宮頸(けい)がんや乳がんが増えていることを紹介。今後、働きながらがん治療を続ける人が増えることは間違いないと思われるため、職域での対策が重要となると強調しました。
次に先生はがん発生のメカニズムを解説。また、日本人の発がん原因のトップはタバコ、2位は感染症、3位が飲酒であること、がんの予防として最も有効なのは食事ではなくて運動であることなどを紹介しました。ただし、どんな素晴らしい生活習慣を続けていてもがんになるリスクがあるため、早期発見が大切であると指摘。さらに、がんを告知された会社員の1年内自殺率がそれ以外の20倍というデータを示し、これは、がんという病気が“死の病”という誤ったイメージを多くの人が思っているからで、がんについて正しいイメージを持つための教育の必要性を訴えました。
その啓発活動として、先生は8年前から多くの自治体の主に中学校でがん教育をしており、なかでも2013年からがんの授業を行っている香川県宇多津町では、親の世代のがん健診受診率が上がった事例を発表しました。そして2017年4月より全国の小学校・中学校・高校で本格的な『がん教育』が始まることを紹介し、これにより子供と大人のがんに関する知識の世代間格差がさらに広がると指摘。それをなくすためにも職域におけるがん教育が重要であると再び強調し、講演を終了しました。
冒頭、先生が紹介したのは、日本人ががんに罹患(りかん)する確率は男性63%・女性47%というデータです。ただし、これは2012年のもので、2016年は男性67%・女性51%と推計され、男性の3人に2人、女性の2人に1人ががんになると語りました。一方、欧米ではがんによる死亡者は減っており、がんが増え続けているのは先進国では日本だけと指摘。その背景には日本では欧米に比べてはるかに早いスピードで高齢化が進んだだめ対策が遅れ、日本人ががんのことをよく知らないことが大きく影響していると解説しました。また日本では、高齢者と女性の就労者が増えていること、働き盛りの女性に子宮頸(けい)がんや乳がんが増えていることを紹介。今後、働きながらがん治療を続ける人が増えることは間違いないと思われるため、職域での対策が重要となると強調しました。
次に先生はがん発生のメカニズムを解説。また、日本人の発がん原因のトップはタバコ、2位は感染症、3位が飲酒であること、がんの予防として最も有効なのは食事ではなくて運動であることなどを紹介しました。ただし、どんな素晴らしい生活習慣を続けていてもがんになるリスクがあるため、早期発見が大切であると指摘。さらに、がんを告知された会社員の1年内自殺率がそれ以外の20倍というデータを示し、これは、がんという病気が“死の病”という誤ったイメージを多くの人が思っているからで、がんについて正しいイメージを持つための教育の必要性を訴えました。
その啓発活動として、先生は8年前から多くの自治体の主に中学校でがん教育をしており、なかでも2013年からがんの授業を行っている香川県宇多津町では、親の世代のがん健診受診率が上がった事例を発表しました。そして2017年4月より全国の小学校・中学校・高校で本格的な『がん教育』が始まることを紹介し、これにより子供と大人のがんに関する知識の世代間格差がさらに広がると指摘。それをなくすためにも職域におけるがん教育が重要であると再び強調し、講演を終了しました。
▲中川恵一先生
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「ガンになっても安心して暮らせる社会作りへ ~ガンと就労と社会保険~」
10分の休憩を挟んで壇上に立ったのは一般社団法人Oneself 社会保険労務士の中川洋子さんでした。病気やケガで仕事ができなくなった場合に国から出る障害年金の代理人として活躍している中川さんは、まずがんが発見されたときに勤めている人の3人に一人が依願退職や解雇で職を失い、自営業などの人の13%が廃業している現状を紹介。その当時の悩みを誰にも相談しなかった人が4分の1を超える事実を示し、「告知されて2週間すると多くの人が日常生活に支障がない程度に落ち着くので、その間に一人で抱え込んで会社を辞めようと思わないでほしい」と訴えました。そのためには会社などまわりのサポート体制が大切で、休職期間や職場復帰のルールを定めるなど就業規則を見直すことが重要だと指摘しました。
次に中川さんは個人の努力ではどうにもならないときのために、社会保険があることを説明。会社では知らない人に対して人事担当者などが手続きなどを優しく教えていく必要があると述べました。そのなかでも健康保険から高額医療費、疾病手当金、障害年金の3つを取り上げ、これらを利用することによって、がんになって休職しても社会保険によって生活が守られた事例を紹介しました。
その一方で、たとえば休職して職場復帰しても、通院治療していると傷病手当金は休職期間中しか受けられないなど、がん治療と社会保険のミスマッチも起こっている事例もあることを指摘。「がんになってもより安心して暮らせる社会を実現するためには、個人も企業も国もさらなる前進が必要であり、今後も現場の声を発信し続けたい」と決意を語り、壇上を降りました。
次に中川さんは個人の努力ではどうにもならないときのために、社会保険があることを説明。会社では知らない人に対して人事担当者などが手続きなどを優しく教えていく必要があると述べました。そのなかでも健康保険から高額医療費、疾病手当金、障害年金の3つを取り上げ、これらを利用することによって、がんになって休職しても社会保険によって生活が守られた事例を紹介しました。
その一方で、たとえば休職して職場復帰しても、通院治療していると傷病手当金は休職期間中しか受けられないなど、がん治療と社会保険のミスマッチも起こっている事例もあることを指摘。「がんになってもより安心して暮らせる社会を実現するためには、個人も企業も国もさらなる前進が必要であり、今後も現場の声を発信し続けたい」と決意を語り、壇上を降りました。
▲一般社団法人Oneself 社会保険労務士 中川洋子さん
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「シスメックス株式会社」におけるがん対策を紹介
次に登壇したのは、シスメックス株式会社の人事部 労務政策課 保健師 播野雅子さんです。同社は兵庫県神戸市に本社を構え、臨床検査機器や検査用試薬・関連ソフトの開発・製造・販売・輸出入を手がけるヘルスケア企業。播野さんは、自身が中心となって2010年頃から取り組んだ健康管理制度の見直しを中心に、同社のがん対策について発表しました。
健康管理制度の見直しは「健康診断の実施内容」「メンタルヘルス体制の整備」「安全衛生体制の整備」という3つを柱として進められました。たとえば健康診断については、年1回の定期健診に加え、「35歳以上の希望者には人間ドック」、「女性の希望者には乳がん・子宮がん検診」、「50歳以上の男性の希望者にはPSA検査」を、自己負担なしで勤務時間内に受診できるように制度化しました。その結果、現在では対象者の85%~90%が人間ドックを、90%が乳がん・子宮がん検診を、95%がPSA検査を受けている状況が報告されました。
次に播野さんが紹介したのは、同社の継続就労支援制度です。使わなかった有給休暇を私傷病の時などに最大40日使える「積立有休制度」をはじめ、私傷病による「欠勤制度」は最大6ヶ月間取得可能、さらに「休職期間」が最長2年間あり、がんと診断された、あるいは長期欠勤を余儀なくされた社員に対し、充実した継続就労支援を用意していることが説明されました。また、半日有給など通院に便利な制度も整備していること、復職についても「ならし出社制度」、「就業配慮」など状況に応じて復職できる制度を設け、このような取り組みの結果、復職する人が増加していると紹介。最後に「今後も従業員に対するヘルスサポートをさらに充実させるよう努力していきたい」との言葉で発表を締めくくりました。
健康管理制度の見直しは「健康診断の実施内容」「メンタルヘルス体制の整備」「安全衛生体制の整備」という3つを柱として進められました。たとえば健康診断については、年1回の定期健診に加え、「35歳以上の希望者には人間ドック」、「女性の希望者には乳がん・子宮がん検診」、「50歳以上の男性の希望者にはPSA検査」を、自己負担なしで勤務時間内に受診できるように制度化しました。その結果、現在では対象者の85%~90%が人間ドックを、90%が乳がん・子宮がん検診を、95%がPSA検査を受けている状況が報告されました。
次に播野さんが紹介したのは、同社の継続就労支援制度です。使わなかった有給休暇を私傷病の時などに最大40日使える「積立有休制度」をはじめ、私傷病による「欠勤制度」は最大6ヶ月間取得可能、さらに「休職期間」が最長2年間あり、がんと診断された、あるいは長期欠勤を余儀なくされた社員に対し、充実した継続就労支援を用意していることが説明されました。また、半日有給など通院に便利な制度も整備していること、復職についても「ならし出社制度」、「就業配慮」など状況に応じて復職できる制度を設け、このような取り組みの結果、復職する人が増加していると紹介。最後に「今後も従業員に対するヘルスサポートをさらに充実させるよう努力していきたい」との言葉で発表を締めくくりました。
▲シスメックス株式会社 保健師 播野雅子さん
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シスメックス株式会社の取り組み説明後は、中川恵一先生、中川洋子さん、播野雅子さんのパネルディスカッションがあり、岡山セミナーは終演となりました。
▲パネルディスカッションの様子
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