2011/02/04
「がん検診とCSR」などをテーマにトークセッション開催
1月25日、東京都渋谷区のサニーテラスで推進パートナーの勉強会が開催され、企業関係者ら約50人が出席しました。今回は、東京大学医学部附属病院放射線科准教授であり、がん検診企業アクションアドバイザリーボード議長を務める中川恵一先生、キャンサー・ソリューションズ株式会社代表取締役の桜井なおみ氏の講演の他、「がん検診とCSR」「職域における受診勧奨」をテーマに、中川先生、桜井なおみ氏、株式会社グッドバンカー代表取締役社長の筑紫みずえ氏によるトークセッションが行われました。
▲トークセッションに登場いただいた桜井氏(左)と筑紫氏(右) |
がん細胞とは「細胞分裂のコピーミス」
最初に登壇した中川先生は、「がん検診後進国・日本」と題して講演を行いました。「人の体の中では1日約6000億個の細胞が新しく生まれ変わっています。つまり毎日、約6000億回の細胞分裂が行われ、コピーされて新しい細胞が生まれます。しかし、コピーミスが起こり、死なない細胞が生まれることもあります。これががん細胞です。ミスがあるから進化も起きるわけで、誰もががんになる可能性があるということです。60歳では毎日約5000個、がん細胞ができています」と、がんのメカニズムについて分かりやすく説明しました。
30代、女性のがんは男性の3倍
「がんは年齢が高くなるとともに増えていきます。がん患者全体の人数で見ると、男性患者は女性の3倍ですが、若年層では乳がん、子宮頸(けい)がんが多く、30代では女性の罹患(りかん)率が男性の3倍になっています」と中川先生。女性の参加者の皆さんは、人ごとではない真剣な面持ちで聞き入っていました。
「この男女比は50代を境に逆転し、男性の割合が急に高まります。その要因はたばこや酒など生活習慣だと考えられています。特に30代で子育て中のお母さんや、社会に出て活躍する世代ががんで命を落とすことは、社会にとっても大きな損失ですよね。しかし乳がんであれば毎年検診を受けていれば早期発見できますし、子宮頸がんもワクチンの接種で対策ができます。日本人の6割ががんにかかる今、多くの人が検診を受けることが“当たり前”となる社会にしていくことが大切です」
「この男女比は50代を境に逆転し、男性の割合が急に高まります。その要因はたばこや酒など生活習慣だと考えられています。特に30代で子育て中のお母さんや、社会に出て活躍する世代ががんで命を落とすことは、社会にとっても大きな損失ですよね。しかし乳がんであれば毎年検診を受けていれば早期発見できますし、子宮頸がんもワクチンの接種で対策ができます。日本人の6割ががんにかかる今、多くの人が検診を受けることが“当たり前”となる社会にしていくことが大切です」
▲がんについて講演する中川先生 | ▲「日本人のがん検診受診率は、先進国でも最低です」と意識の低さを訴える |
社会の受け入れ体制、企業のCSRが重要
引き続き、キャンサー・ソリューションズ株式会社の桜井氏が「がんと働く」をテーマに講演しました。桜井氏は37歳で乳がんを患いましたが、治療しながら仕事を続けていくことの難しさを感じた自らの体験を振り返り、「がん患者となった時、どうなるのか」「がんにならないためには」や「企業のCSRの重要性」について語りました。
「まず、がん患者となったときに、身体的な痛みの他に『社会的な痛み』があります。三人に一人が会社を辞め、全体の7割の人が収入を減らし、給料は約4割減になります。そして、約1割の人が、治療方法を変更したり、治療そのものを中止したりしています。平均的な所得を400万円と考えると240万円ほどにダウンすることになりますが、初期治療に100万~130万円ほどかかりますので、残りは110万~140万円です。これで日々の生活、子どもの教育費、家のローンなどを支払っていくのはとても無理で、生活していけなくなってしまいます」とがんになると、即、経済的な問題が大きな障害となる点を挙げました。
そして、がんにならないことが大切として「がん検診」の重要性を挙げた上で、がん患者に対する社会や企業の受け入れ体制の整備の必要性について説明しました。「二人に一人ががんになる今、がんで多くの人が命を失ってしまうのは、社会にとっても、日本経済にとっても大きなマイナスです。そして、超高齢社会となり、雇用問題を考えていく上で、『がん患者』を含めた雇用対策が必要だと思います。がんになっても安心して働ける環境があれば、優秀な人が集まってきて、また優秀な人材の流出が防げ、企業にとって有意義です。雇用問題を地域貢献などと同様に考えるべきで、企業の社会的責任や貢献の意味を広げていかなければいけないと思います」と話し、がんに対する理解を深めるとともに、具体的な体制づくりを進めていく必要性を強調。そして、「病気になっても受け入れる社会、がんに負けない社会、皆が幸せに暮らせる社会にするため、皆が手をつないでいければいいと思います」と締めくくりました。
「まず、がん患者となったときに、身体的な痛みの他に『社会的な痛み』があります。三人に一人が会社を辞め、全体の7割の人が収入を減らし、給料は約4割減になります。そして、約1割の人が、治療方法を変更したり、治療そのものを中止したりしています。平均的な所得を400万円と考えると240万円ほどにダウンすることになりますが、初期治療に100万~130万円ほどかかりますので、残りは110万~140万円です。これで日々の生活、子どもの教育費、家のローンなどを支払っていくのはとても無理で、生活していけなくなってしまいます」とがんになると、即、経済的な問題が大きな障害となる点を挙げました。
そして、がんにならないことが大切として「がん検診」の重要性を挙げた上で、がん患者に対する社会や企業の受け入れ体制の整備の必要性について説明しました。「二人に一人ががんになる今、がんで多くの人が命を失ってしまうのは、社会にとっても、日本経済にとっても大きなマイナスです。そして、超高齢社会となり、雇用問題を考えていく上で、『がん患者』を含めた雇用対策が必要だと思います。がんになっても安心して働ける環境があれば、優秀な人が集まってきて、また優秀な人材の流出が防げ、企業にとって有意義です。雇用問題を地域貢献などと同様に考えるべきで、企業の社会的責任や貢献の意味を広げていかなければいけないと思います」と話し、がんに対する理解を深めるとともに、具体的な体制づくりを進めていく必要性を強調。そして、「病気になっても受け入れる社会、がんに負けない社会、皆が幸せに暮らせる社会にするため、皆が手をつないでいければいいと思います」と締めくくりました。
▲キャンサー・ソリューションズの桜井なおみ氏 | ▲自らの闘病や仕事の体験を語る |
人材やCSR面で、企業の対策は不可欠
続いて、中川先生、キャンサー・ソリューションズの桜井なおみ氏、そして桜井氏と同じく、自らがんを罹患(りかん)しながら経営者として活躍中の株式会社グッドバンカーの筑紫みずえ氏によるトークセッションが行われました。
中川先生はお二人それぞれにがんが分かった時の状況や検診について質問したり、解説したりした後、「企業のCSRはどうあるべきか」について尋ねました。
筑紫氏は「日本が海外と大きく違うのは、市場に回っている資金の量です。日本では個人資産は預貯金が多いのですが、こうした資金が投資に回り、企業の活力となっていく社会に変わっていく必要があります。多様性のある働き方を認める会社や、がん検診に力を入れている会社など、CSRに力を入れている会社に投資される時代になっていかなければいけないと思います。また、短期的な利益を追うよりも『こういう会社に頑張ってほしいから投資する』という個人投資家が増えていけば、会社は安定経営が可能になります。少子高齢化など社会構造が変わる中で、柔軟な働き方、長く働き続けられる、多様な働き方ができる環境づくりをしている会社が評価されるべきです」と話しました。
筑紫氏は「日本が海外と大きく違うのは、市場に回っている資金の量です。日本では個人資産は預貯金が多いのですが、こうした資金が投資に回り、企業の活力となっていく社会に変わっていく必要があります。多様性のある働き方を認める会社や、がん検診に力を入れている会社など、CSRに力を入れている会社に投資される時代になっていかなければいけないと思います。また、短期的な利益を追うよりも『こういう会社に頑張ってほしいから投資する』という個人投資家が増えていけば、会社は安定経営が可能になります。少子高齢化など社会構造が変わる中で、柔軟な働き方、長く働き続けられる、多様な働き方ができる環境づくりをしている会社が評価されるべきです」と話しました。
▲グッドバンカーの筑紫みずえ氏(右) | ▲がん検診とCSRについて熱い議論が交わされる |
検診受診率アップのために
トークセッションは、時折ステージ近くの席に座った人に質問したり、対話したりしながら参加者を巻き込む形で進行し、企業の担当者から「女性のパートスタッフが多く働いているが、どうすれば検診率を上げられるか、また、具体的な方法があれば教えてほしい」などの質問や、逆に中川先生から「どうすればがん検診受診率を上げられるのか」などの質問を投げかけると、参加企業からは「広報誌で啓発活動を行っている」といった事例も紹介されました。
中川先生から「検診率アップには、産業医の先生をうまく巻き込むことも大事です」というアドバイスもありました。「がんになると、人は人生を深く考えるようになりますが、そのような体験から行動を起こされたことは本当に素晴らしいことだと思います。本日のお二人が力を合わせれば、きっと何か新しいものができるはずです。今後の活躍に期待しています」と感想を述べました。
中川先生から「検診率アップには、産業医の先生をうまく巻き込むことも大事です」というアドバイスもありました。「がんになると、人は人生を深く考えるようになりますが、そのような体験から行動を起こされたことは本当に素晴らしいことだと思います。本日のお二人が力を合わせれば、きっと何か新しいものができるはずです。今後の活躍に期待しています」と感想を述べました。
▲参加者も発言できる自由な雰囲気の中で進行 | ▲参加者からは二人の経営者に対し、高い評価の声が寄せられた |
最後に閉会のあいさつに立ったがん検診企業アクションの松本裕史事務局長は、「今回の勉強会では、推進パートナーでもある株式会社サニーサイドアップさまにお力添えいただき、新しい形で勉強会を開催することができました。今後もチャンスがあればこういうスタイルの勉強会も行っていきたいと思います」と話し、参加者からは「初めてがんについて知って、勉強になった」という感想が聞かれるなど、勉強会は和やかな雰囲気の中、終了しました。
▲閉会のあいさつをする松本事務局長 |