長年、各事業所に健診バスが巡回する職域健診を実施しており、各種がん検診も職域健診に組み込んで実施をしていました。しかし新型コロナウイルス情勢下となり、感染リスク低減のために巡回型健診の実現が難しくなったことから、各自が提携医療機関で受診する通院型に変更となりました。そのため、長年行ってきた受診管理体制（受診状況・二次検査の把握）の見直しを余儀なくされました。

従業員の中で、『通院健診＝面倒』というイメージが先行することを避けるため、まずは通院型の健診も巡回型の健診と同等の条件で受けられるということを社内に広く周知しました。受診の際は公用外出を認め、受診にかかる交通費も会社負担であることを案内し、申請方法についてもわかりやすくするなど工夫しました。
また、全国の各営業所に衛生管理者をはじめとする「健診担当者」（以下､担当者）を任命し、これまで本社で行っていた受診勧奨を各事業所で直接行ってもらうようにしました。担当者向けの研修で受診管理について説明を行った上で、隔週で健診の予約状況や受診状況を共有しています。全体把握は本社、受診勧奨は各事業所で直接というように、本社と各事業所が協力しながら進めることで、より綿密な受診管理が可能となり、結果として受診管理体制の強化につながっています。

通院型の健診方式に変更した最初の2年間は、胃がん、乳がん、子宮頸がん検診を職域健診に組み込めず、従業員から「がん検診を一緒に受診できなくなり面倒になった」「胃がん検診、乳がん検診とそれぞれ受診するのは大変」という声が寄せられました。

まず懸念された受診率の低下ですが、各事業所の担当者のおかげで、通院型に変更になった以降も巡回型の時と同様、健診受診率100％を維持できています。『通院健診＝面倒』というイメージを抱かれがちですが、今では逆に通院型の良い点についても意見が寄せられるようになりました。
例えば｢バリウム検査後のお客様宅への訪問は抵抗があったが、仕事予定にあわせてスケジュールを立てられるので安心して受診できる｣｢自分の体の調子に合わせて日付調整ができるので、特に大腸がん検診や子宮頸がん検診は受けやすくなった｣｢巡回型の健診だと着替えのスペースも狭く不安があったが健診施設で受けるとプライバシー面もより安心｣等です。これらをもっと従業員に広めることで、がん検診の受診率の向上も期待できると考えています。
従業員の声を活かして、今ではがん検診を職域健診に組み、受診率の把握、再検査の受診勧奨も100％実施できています。がん検診を職域健診と一緒に行うことは従業員にとって大きなメリットですが、会社にとっても、受診率の把握や二次検査の未受診も防ぐことができるため、がん対策に大きな効果が期待できると感じています。

がん検診の検査項目すべてを実施できる医療機関はどうしても限定されるため、従業員が選択できる医療機関の数に地域格差が生じてしまうことです。がん検診の受診率に地域格差が出ないか、今後検証していく必要があると思っています。

これまでの取り組みの甲斐もあり、すでに各種がん検診の受診率は約80～90％と比較的高い受診率となっていますが、今後はこれを維持・さらに向上させるため、がん教育にも注力していきたいと思っています。再検査の受診勧奨も徹底して行い、早期発見・早期治療に結び付けることで、従業員がいきいきと健康に働ける職場環境を作っていきたいと考えています。