スマートフォンを利用し、従業員に向けてさまざまな情報発信を行う企画です。
スタンプラリーはメールでの情報提供や医師によるオンラインセミナー、社内外のがん経験者による座談会などを開催し、提供された資料の閲覧やセミナーに参加するたびにスタンプがたまり、特典に応募できる仕組みです。

「がん」というテーマが身近ではなかったので、ただ情報発信をするだけでなく、楽しんで知って欲しいと考えた結果、ポイントを貯める感覚で継続性も期待して「正しく楽しくがんについて知ろう！」をテーマにスタンプラリーという形式で企画しました。

健康管理センターに所属する保健師が中心となって実施しました。スタンプラリーのサイトは外部システムを利用していますが、内部のアイコンやメッセージは保健師オリジナルのため工夫できる余地があり、コストを抑えることができます。スタンプのポイント数、ポイント獲得に応じた応募賞品も、関心を持ってもらいたいイベントを意識して設定しています。このような取り組みは、例えば産業医さんがいない企業様でも十分に実施できるのではないかと思います。

情報配信は3カ年計画を立てて実施しています。昨年度は「感染とがん」というテーマで実施し、本年度は「がん予防の真実～食事・運動・体重～」でした。来年度は「喫煙と飲酒」を予定しています。

情報提供手段はメールやイントラネットを活用するのですが、社員は日々多くのメールを受け取っていますので、その中で、いかに見てもらえるかがポイントになります。
ナッジ理論を活用し、クリックしたくなるような文言、例えば「見ないと損ですよ。」「みんな見ていますよ、あなたも見てね。」のような文言で注目してもらえるよう工夫しています。
結果的に、今年情報配信した三つの資料は、合計で8061名の方に見ていただきました。

スタンプラリー企画の終了後に「情報を知ることでがんへの意識が高まった」や「生活習慣への意識改革につながった」といったお声もいただきました。
「自分と同じような病気の人は社内にいるのですか？」という質問をいただいたこともありましたし、「治療しながら仕事をする選択肢がある」ということを認識した従業員が増えたように思います。

情報発信という面で、まず、１度の発信では見てくれる人が少ないため、同じ情報をメールでは２度発信し、イントラネットや掲示物など複数の媒体を通して訴求する必要がありました。
また、年代に応じて興味を持つ分野が違っており、基本的に20代~30代の方はがん対策への関心が低い傾向にあります。出来るだけ全ての年代に見て欲しいのですが、今年は40代以上をメインターゲットとしました。そのうえで、情報発信する際はナッジ理論を活用し、興味関心を引くメッセージを冒頭に入れる等の工夫をしています。
技術的な面では、過去にはWEBシステム上でスタンプをうまく貯められないというエラーが発生したこともありましたが、システムの改善に努めています。

雇用年齢の引き上げに伴い、働きながらがんにり患する人が増えることが予想されています。
検診を受ける、２次検査と判定が出たら精密検査を受ける、この流れの中で、精密検査受診率がある程度上昇してそこで頭打ちになっています。これは、まだまだがんが身近な存在ではないからでは？と考え、がんに関する知識の普及をしなければ、と考えたことが始まりです。二つの目的「従業員のがんリテラシー向上」「両立支援」を据えて、まずは情報提供から始めることにしました。
がん対策・健康経営の「最高健康経営責任者」を社長が務め、トップからの情報発信が必要な場合は直々に社員へ発信してもらっています。実務の推進は、人事部の健康管理センターと健康保険組合が主導しています。

弊社では従業員が活き活きと、さまざまな能力を発揮するために、2025年までに達成すべき長期目標「健康ブラザー2025」を定めています。各項目の中でも、がん検診受診率は95%以上を既に達成しているものの、２次検査受診率90％以上という目標にはまだ届いていません。どう向上させるか、今後の課題です。