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「LINE」を活用して社員の配偶者等に受診勧奨の取り組み

富士通健康保険組合

富士通健康保険組合
左から、株式会社プロセシング 兼 株式会社Cien 横垣様、富士通健康保険組合 伊藤常務、出野様。

memo 富士通健康保険組合は1940年に設立され、2021年5月末現在での加入者数は、被保険者数・被扶養者数合わせて206,784名にのぼります。
今回は「LINE」を活用した先進的な取組みについて、伊藤常務、出野様、またシステム構築を担当された株式会社プロセシング 兼 株式会社Cien 横垣様にお話をうかがいました。

LINEの導入のきっかけと具体的な取り組み

――LINEの導入に至る背景を教えてください。

富士通健康保険組合の組織目標として、「OBを含む社員と家族の心とからだの健康を守り・財政基盤の安定化を図る」ということを掲げています。
特に、2021年の重点施策として
①社員と家族の健康意識・行動の向上を支える施策の推進
②富士通グループの健康推進体制・基盤の充実
③医療費を始めとする各種費用の適正化
を置いています。
これまで、様々な取組みを行ってきましたが、ここ数年、配偶者健診の受診率は60%台から伸び悩んでいました。その原因のひとつとして、健診コンタクトセンターによる電話を主体とした勧奨が、通話率・予約率共に、約10年前と比べて半減しており、2013年は通話率が3割程度はあったのに対し、2019年には半減している、ということも挙げられます。
そこで、新たなコミュニケーション手段による受診勧奨が必要だと判断し、国内シェア70%以上のコミュニケーションツールであるLINEを活用することにしました。LINEを活用し、配偶者、家族、任意継続、特退者も対象とした、新たな受診勧奨施策がスタートしました。

――これまでは、どのような取り組みをしてきましたか?

2011年に健診コンタクトセンターを開設し、その翌年、乳がん・子宮頸がんなど女性社員のがん検診を含む健診費用の無料化を実現しました。無料化の対象は健保の被扶養者、任意継続者、特例退職被保険者(特退)の方等です。これにより、取り組みの実施前は、健診受診率が11.7%だったのに対し、取組み後は55.7%まで上昇しました。
その後、被扶養者の受診率が60%程度で頭打ちになる中、2016年に託児サービスを開始し、2017年には、富士通グループとして「健康宣言」を定めた機会を捉え「社員を支えるご家族の健康は非常に重要だと考えている」旨の理事長メッセージを社内外に発信しました。メッセージには、健診が無料で受けられること、特に女性は若いうちからがん罹患率が高くなるエビデンスも記載し、ダイレクトメールを郵送しました。
2019年には国立がん研究センター様との共同施策を開始。2020年には、健診案内パンフレットを刷新しました。その他、がん対策には早期発見が重要であること、便潜血検査の受診有無による大腸がん発見時の進行度・医療費を自健保内のレセプトデータから調査し、調査結果を各種啓発資材に載せ、定期受診の勧奨を行っています。

――LINEを使った具体的な取り組みを教えてください。

これまで、eメールや紙のリーフレット、パンフレット等でがん検診の案内を行っていましたが、今ではLINE上で受診予約、健診結果閲覧まで可能です。具体的には、「健診制度に関する問い合わせ対応(チャットボット又はオペレーターによる対応)」「巡回健康診断の予約受付」「契約健診機関の検索」「受診勧奨、各種お知らせ、アンケート等のプッシュ通知」「健康診断結果の閲覧」が可能です。実際の業務は、富士通グループで、データヘルス・健康経営を推進している株式会社ベストライフ・プロモーションに委託し、LINEでの受診勧奨活動を行っています。(構築に当たっては(株)Cienが参画)
多くの方が日常的に使用し操作に慣れているLINEで、健診に関するあらゆることが完結できる点は、非常に便利に感じて頂けるのではないでしょうか。LINEを導入したことで、受診率8割を目指したいと考えていますが、予期せぬコロナ禍により、受診率が例年の60%台から50%台に減少してしまいました。まずはこの数字を元に戻したいと思います。

――LINEの友だち登録はどのように行ったのですか?

導入当初、2020年11月末時点では8,000人の登録者でしたが、サービス開始後約1ヶ月で友だち登録が10,000人を突破し、2021年5月末時点では約13,000人まで増加しています。友だち登録をしてもらうために、登録のインセンティブとしてデジタルギフトのプレゼントやDM、チラシ、ポスターなど多様な媒体を活用したPRを行なったことが奏功しました。

効果と導入後の課題について

――LINE導入の効果を教えてください。

大きな効果がありました。2021年のお正月に、2020年末時点で健診をまだ受けていない方を対象として、LINE登録者にはLINEで年賀メッセージを、LINE未登録者には年賀ハガキを郵送しました。その結果、LINE登録者は35%が受診に至ったのに対して、ハガキ郵送の方(LINE未登録者)は6%の受診に留まり、非常に大きな差が現れました。このことだけを見ても、LINEの導入は効果的であり、運用面でも効率的であると確信しています。
また、定性的な面でも、LINE登録済の被扶養者から「いつでも好きな時間に問合せできるから便利」「LINEのトーク上にやり取りのログが残るので過去の情報を遡ることができて安心」「健康診断結果の振り返りが容易ですね」など嬉しい声が届くなど成果を感じています。
ただ、LINEリリース直後に、予想以上の友だち登録のため、一時的にサーバーに負荷がかかりレスポンスが遅れる状態になってしまいました。これは嬉しい悲鳴でした。

――今回のLINE施策の導入にかかるコストはどのようなものがありますか?

LINEのチャットボットの開発など、サービスベンダーに委託する費用がかかりました。ただ、富士通グループには13年前から「ヘルスアップF@mily」という社員の健康管理ポータルサイトがあるため、LINEで何らかの情報を通知し、その詳しい内容はヘルスアップF@mily内のぺージへリンクさせる、ということが出来るため、思ったより短期間で導入できました。ヘルスアップF@milyは2021年からスマホ版アプリも提供しています。
また、削減できた費用が多数あります。例えば、既存の検診コンタクトセンターのマンパワー削減によるコスト削減、電話や郵送ダイレクトメールにかかっていた通信コスト削減、紙の啓発ツールを作成する際のマンパワー、印刷費などです。

――現在の課題は何ですか?

がん検診対象者である約50,000人を分母とすると、13,000人の友だち登録というのはまだ伸びシロがあると思っています。
また、LINEとは直接関係がないのですが、足元ではコロナ禍による受診控えで受診率が下がったことも課題です。対策として、LINEを始め、葉書やチラシを使って、受診控えによる健康リスクへの警鐘、健診機関で講じている感染対策の紹介など、ナッジ理論も取り入れて正しい情報を分かり易く伝える取り組みを進めています。(ナッジ理論とは、小さなきっかけを与えることを梃子にして、人々の行動を大きく変える戦略のこと)
そして、2021年6月からは、日本対がん協会と国立がん研究センター「希望の虹プロジェクト」において自治体向けに作成された受診控え対策資材をカスタマイズし、利用しています。

――今後の展望をお聞かせください。

これまで社員に対して、自分の健康情報をヘルスアップF@milyを通じて見える化するなど、働き方改革と連動する取り組みに注力していました。その動きが、コロナ禍により一気に加速し、現在(2021年8月時点)では在宅ワークの社員が8割以上となる中、管理職である幹部社員から「社員の健康状況が見えづらい」との声があがっています。管理職が自組織メンバーの健康状態に関心を持つことが大切だと思い、まず、各部門の本部長クラスである組織長に対して「健康通信簿」という形で自組織の健康状態を見せることを昨年から始め、今年は更により広くタイムリーに展開することを考えています。

ヘルスアップF@milyロゴ

--ありがとうございました。

富士通健康保険組合 概要
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〒211-0063 神奈川県川崎市中原区小杉町3-264-3 ユニオンビル 4階
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