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両立支援浸透でイキイキと働き続けられる会社に

田辺三菱製薬株式会社

田辺三菱製薬株式会社
左から、
大橋 至光 氏(人事部健康推進グループ グループマネージャー)
黒田 和美 氏(人事部健康推進グループ)
福田 洋一 氏(人事部長、健康保険組合理事長)
重松 美智子 氏(人事部健康推進グループ 保健師)

memo 2019年度のがん対策推進パートナー賞「治療と仕事の両立部門」を受賞したのが田辺三菱製薬株式会社です。
従業員数約7000人(海外含む田辺三菱グループ全体)、男女比は約8:2、平均年齢は約45歳です。
田辺三菱製薬では、2018年10月からそれまでの支援策をさらにグレードアップさせた両立支援制度を導入しました。病気や不妊治療などの事情を抱えながら、働く意欲のある従業員にとって会社からの両立支援のバックアップはとても重要です。
今回は、福田洋一氏(人事部長、健康保険組合理事長)、大橋至光氏(人事部健康推進グループ グループマネジャー)、黒田和美氏(人事部健康推進グループ)、重松美智子氏(人事部健康推進グループ 保健師)の4名にお話しを伺いました。

--田辺三菱製薬は、昨年度「治療と仕事の両立部門」でがん対策推進パートナー賞を受賞されています。両立支援のことを伺う前に、御社で行っているがん検診について教えてください。

20歳以上から乳がん、子宮頸がん、35歳以上から肺がん、胃がん、40歳以上から大腸がん、50歳以上から前立腺がんの検診を行っています。また、健康保険組合からの補助(上限あり)がありますので、例えば大腸がん検診などを35歳で受けても実質的には個人負担なしで受診することが可能です。
がん検診受診率の目標を70%に定めていますが、肺がんは99.8%の受診率、その他のがん検診も大腸がん75%超、乳がん80%超、子宮頸がん70%超と胃がんの60%超を除けば、目標はすでにクリアしており、さらに年々受診率は上昇しています。将来的には100%の受診率をめざしています。
がん検診は、健康診断や人間ドック(35歳以上)で受診でき、受診日は業務扱いとしています。

--がん対策においては、喫煙対策も重要な項目ですが、田辺三菱製薬ではどのようにお考えでしょうか?

喫煙に関しては目標値を喫煙率5%に設定して、3か年計画で進めてきました。現在はその3か年が終わり4年目となります。3か年計画の前までは22%だった喫煙率でしたが、計画後は17.6%に減少し、直近のアンケートでは13.9%という数字がでており、今後も喫煙率の減少をめざします。
まずは、社内で喫煙できる環境を作らないことが重要だと考えており、2019年度より全事業所の喫煙所をすべて廃止しました。また、禁煙治療、遠隔での禁煙治療(オンラインを活用した医師の診察による禁煙治療)の全額補助、禁煙治療薬の購入補助などを行うとともに、相談やサポートを医療職が行っています。

--2018年から、両立支援制度を導入されていますが、具体的な制度の中身はどのようなものでしょうか?

従業員に力を発揮していただくためには、治療と仕事の両立が必要不可欠だと考えて、従来から病気(がん、脳卒中、心疾患、糖尿病など)で長期のリハビリや治療が必要な従業員に対してできる限りの就業支援を行っていました。
2018年10月からは、それまでの支援制度を拡充させた「両立支援制度」を導入し、働く意欲・能力のある従業員が仕事を理由として治療機会を逃すことなく、また治療が必要であることを理由として退職を余儀なくされることがないように、適切な治療を受けながらイキイキと働き続ける環境を提供しています。
両立支援制度の対象者は、まずは労務をすることが可能であること。そして、反復継続して治療が必要な傷病や不妊治療をされている方で、治療方針が決まっていて、通院や検査を必要としている人となります。

具体的な支援の流れは、

  1. 支援を望む本人が産業医や産業保健スタッフ、上司に相談
  2. 支援制度の説明を受けて、本人が利用したいと望む
  3. 主治医に意見書・診断書を書いてもらう
  4. 産業医の面談
  5. 産業医が意見書を作成し、上司に提出
  6. 上司が部門人事と相談しながら両立支援プランを策定
  7. 両立支援プランを本人に通知

となり、まずは本人が両立支援制度を利用したいと声を上げることが前提となります。

両立支援制度ができる前にも、傷病休暇や失効年休積立休暇(最大40日)、私傷病欠勤などと、休職制度は充実していましたが、両立支援制度により、短時間勤務と治療休暇が加わり、その両方も取得可能となりました。短時間勤務は1日2時間半までの時短勤務ができ、治療休暇は無給で1ヵ月最大5日間まで取得できます。
制度の実施から、2020年3月末までで10名が利用しています。

--制度を利用するためには、まずは制度があるということを認識してもらう必要があると思います。また、がんという病気についても正しく知る必要もあります。さらに、声を上げられる環境も必要だと思いますが、そのためにしていることは何でしょうか?

「がんを知ろう!」という社内情報サイトがあります。もともとはがん検診受診率アップのために立ち上げたものですが、がんを他人事ではなく自分のこととして捉えてもらうために、がん検診受診率などのデータや補助制度の周知などをはじめ、「働く世代のがん事情」「早期発見」「がんになっても働ける」「体験インタビュー」などを掲載しています。

社内情報サイト「がんを知ろう!」

さらに健康白書という冊子を健康保険組合と協力して2017年度より作成し、さまざまな健康支援制度の紹介をするとともに、両立支援制度を利用した働き方の実例も取り上げています。これは社内イントラネット上でも閲覧することができます。

健康白書

従業員向けのがん教育セミナーも2018年度より行っており、同時配信で全国の事業所でも受講することができます。このセミナーは、アーカイブとして「がんを知ろう!」にも保存されているので、従業員は、いつでも見たい時に誰もが見ることが可能です。
「がんを知ろう!」サイトを見た社内のがん体験者が、がん対策への取り組みに共感し、自分の体験を役立てて欲しいとインタビューに応じてくれた例もあります。
また、全国の大規模事業所には医療職が常駐しており、医療職のいない支店・営業所においてもエリア管轄で担当看護職がいて、保健指導や、現場の健康スタッフの支援などを行っています。病気になっても1人で抱え込まない体制づくりをめざしています。

MTPCグループでのがん教育

--田辺三菱では、以前からテレワークを実践していらっしゃるそうですが、現在は新型コロナの影響でテレワークが全国的に広がっています。今までの経験を通して、現在のテレワークの状況は何か変化がありましたか?

テレワークについては2017年頃から実施検討をはじめ、その後実際にテレワークデイズやテレワークウィークなどを積極的に実践し、普及に努めてきました。コロナ禍の前までは、月に5日までテレワークが可能でしたが、現在はその制限も取り払い、毎日テレワークが可能です。
コロナ禍になっても、従業員のテレワークに混乱は少なくスムーズに移行しています。基本的に出勤しなければ仕事のできない、例えば製造の現場などはテレワークは難しいのですが、本社などのオフィスワーカーはコロナ禍においては、多くの従業員がテレワークを行っています。

--今後、さらにやっていきたい健康施策はありますか?

がん検診受診率100%、喫煙率0%を基本的な目標にしています。
がんに関しては、昔から健康保険組合が手厚く補助してきましたのである程度のがん検診受診率を維持していますが、その中でも何年間もがん検診を受けていない人がいます。がんは早期発見が大切ですから、連続してがん検診を受診していない人は、もしもがんになっていた場合、発見が遅れる可能性があります。今後はこのような人をいかに掘り起こしてがん検診を受けてもらえるようにするかが課題です。
また、従業員だけでなく、そのご家族のがん検診受診率も上げていきたいと思います。
喫煙率に関しては当面は5%を目標とし、喫煙率の高い部門では、部門ごとにトップ(部門長)から所属員に対し、卒煙のメッセージを発信しています。昨年度からは就業時間中の喫煙禁止について、就業規則の中に入れ込みました。

--ありがとうございました。

田辺三菱製薬株式会社 概要
■ 株式会社設立
1933年12月13日
■ 合併期日
2007年10月1日
■ 代表取締役社長
上野 裕明
■ 従業員数
約7000人(2020年3月末日)
■ 本社所在地
大阪市中央区道修町3-2-10
■ 事業内容
医薬品事業
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