正社員だけでなく、パートも含めた従業員(35歳以上)のがん検診受診率100%を3年連続で達成しているのが研冷工業株式会社。新潟市を拠点とし、法人・個人向けの空調機器、太陽光発電設備やLED照明などの省エネ設備の設置・保守を手がける創業46年をむかえた専門業者です。社是は「和」、社訓を「和して妥協なし」。社員を大切に思い、お客さまを満足させることが企業理念です。従業員は33名と決して多くはありませんが、従業員が1人も欠けることなく何年も連続してがん検診を受診しているのは、簡単なことではありません。
代表取締役の酒井巳喜雄氏と取締役の酒井明美氏に、健康経営の極意を伺いました。
研冷工業が、がん検診の重要性に気づいたのは、引退した元社員2名が3年たらずのうちに、肺がんと大腸がんで亡くなったことがきっかけです。
肺がんで亡くなられた方は愛煙家で、いつも煙をくゆらせていて、在職当時から咳をし続けていました。社長も禁煙を勧めていましたが、本人は「たばこをやめるくらいなら、がんになったほうがいい」とまで言っていたそうです。研冷工業のような建設業では、10時、15時の休み時間などには、一服しながら情報交換や親睦を深めることがなかば慣習化しており、世の中の禁煙の流れもなかなか届きづらい環境でした。
しかし退職後がんが判明して入院、鼻にチューブを入れられ、肩で息をしているその元社員の姿を見た社長は、咳を続けていたあの時にもっと何かすべきことがあったのではないか、と今でも強く後悔していると言います。
このような悲しい出来事があってからは、社長自らが先頭に立ち、社員の健康に気を配るようになりました。
新潟市と健康に関しての協定を結ぶとともに、がん対策推進企業アクションに加盟し、小冊子「がん検診のススメ」を従業員全員に配布、毎日行われる社内朝礼では新聞等のがんに関する記事を発表したり、健康講座に参加したりとさまざまな施策を行ってきた結果が3年連続がん検診受診率100%です。
本社勤務の従業員だけでなく、現場に直行する従業員に対しても情報を共有するためにwebでの出退の管理を含めたインフラを整備し、健康情報や社内情報などを発信。アプリを使うことで簡単に携帯電話からアクセスできるようにし、誰が情報を見たかも確認できるようにしました。
また、健康経営の一環として室内の全面禁煙、年に数回体育館を借りての有志によるスポーツ交流会なども開催するとともに、健康な食事のために会社へのお惣菜の配達(一部会社負担あり)なども考えています。
現在、研冷工業が行っているがん検診は肺がん・胃がん・大腸がん・子宮頸がん・乳がんで、これらの対策型検診すべてが受診率100%。それに加え、希望者には協会けんぽが用意している事業者向けのオプション検査(腹部超音波検査、前立腺検査、ウイルス性肝炎検査、骨粗しょう症検査など)も受けられます。すべての検査料金は会社負担で、正社員もパートも同じ待遇。配偶者の扶養に入っているパートに関しても、自己負担分をすべて会社が負担しています。オプション検査の中にはアミノインデックス(R)がんリスククリーニング検査などもあり、会社負担額は2万円を超えるものもありますが、希望者には行ったといいます。
また、がん検診自体は当然ながら業務の一環として就業時間内に行うとともに、2次検査が必要な場合も業務の一環として検査を受けられます。それ以降の通院や治療は、休日や有給を利用してもらっているとのこと。主に男性は4〜5月、女性は7月に検診を受けています。
受診率100%を達成するためには、当たり前ですが全従業員が協力する必要があります。中には検診を嫌がる従業員がいたのではないか、と聞いてみたところ、そのような従業員はいなかったと、むしろ従業員の方から受けたいとの要望もあったと答えが返ってきました。社長自らが健康の大切さを訴え、総務部をはじめとする担当部署も全力で取り組んだからこそ、従業員の健康意識も高くなり、自らすすんで受診する体制が整ったのだと感じられました。
しかしがん対策推進企業アクションに参加し、がん検査において何もかも受けることがすべて正しいとは言い切れず、やりすぎも良くないこともあるということを学んだことで、今後はより適切な検査を選んでいくことが大切だと考えているそうです。また、がん検診だけでなく人間ドックに関しても何歳からどのような検査を受けるべきかを検討中とのこと。
さらに研冷工業では、時短勤務制度をはじめ、誕生日休暇や3連続休暇を取り入れ有給休暇取得促進、男性のための育児休暇(イクメン)もあり、実際に平成30年に1名(3か月)、平成31年に1名(1か月)とイクメン制度を利用していた人もいるのだとか。
また、社長自らがん対策についてできることを模索され、新潟市医師会で取り組んでいる胃内視鏡検診研究事務局への協力にも参加しました。内視鏡での胃がん検診は確かに効果があるかどうかを調べる研究で、10年にもわたり追跡調査を行っていきます。
自社の従業員だけが健康になっても不十分だと、社長は言います。これからは業界を通して、関連する企業や小規模零細な下請けなどももっと健康に気を配らなくてはならない。健康に関する情報入手・交換などのために、企業コンソーシアムへの参加など、研冷工業ができることは何かを今後も考え、実行し続けていくことが必要だと考えています。
研冷工業株式会社 会社概要 | ||||||||||||||
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