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がん検診は企業にとって社員の健康確保だけでなく経営投資です

株式会社古川

株式会社古川
株式会社古川 代表取締役社長 古川 剛士さん

memo 神奈川県小田原市を中心に、神奈川県西部でLPガスの販売を主軸にミネラルウォーターの宅配、リフォーム事業などを手広く手がける株式会社古川。創業100年を迎え、地域貢献と限りあるエネルギーの有効利用、地球環境の保全に全社を挙げて取り組んでいる同社のモットーは「奉仕に明けて奉仕に暮れる」「お客様に愛されなければ発展しない」。
そんな、地元を愛する地域密着型企業である同社の代表取締役社長・古川剛士氏に、がんに対する取り組みをお伺いしました。

社長自らが健康宣言

株式会社古川が、がん対策の重要性に気付いたのは、会社としてスポンサーするとともに個人としても応援していた、地元小田原をホームタウンに持つ湘南ベルマーレフットサルクラブの選手が肺がんになったことがきっかけです。 (3年前から古川社長は、同チームの取締役エクゼクティブディレクターとして、運営・経営にも大きく関わっています)

4年前のこと。30代だったある選手がシーズン前のメディカルチェックで肺に影が認められ、精密検査をしたところ肺がんが発見されました。激しいフットサルの練習を毎日こなし、お酒もシーズン中は飲まず、タバコは吸わず、食事や睡眠など、健康に人並み以上に気を配っている若い選手ががんになってしまったことに、ものすごいショックを受けました。
彼の病状は、肺腺がんのステージ3で完治・根治はできないだろうと言われていて、まさに余命宣告の一歩手前でした。シーズンに入る直前だったため、ベンチにも入れないことから彼の病状を公表するしかありませんでした。
その時のサポーターたちからの応援は素晴らしいもので、激励はもちろんのこと、募金などもたくさん集まりました。彼はそのような状況を見て感激し、治療とフットサル選手との両立をすることを決め、現在でもフットサル選手として頑張っています。また、彼は現在小児がんをはじめとする、がんの啓蒙活動をライフワークとして取り組んでいます。

当時私は、がんは高齢者のなる病気で、がんになると死んでしまうというイメージを持っていました。
しかし、その選手とのやりとりや選手の周りのがんサバイバーの方との交流を通じて、がん検診の大切さ、早期発見・早期治療の重要性に気付かされました。乳がんや子宮頸がんなど、若いうちにもがんになるということも学びました。
そこで改めて自分でできることは何だろうと考えた時に、まずは自分の会社の従業員をがんから守るということだと思いました。

このようなことをきっかけに、2014年末にがん対策推進企業アクションに加盟するとともに、会社で行っていた健康診断に、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんのがん検診を会社の全額負担で付け加えました。
そして、奥様が働いている方はまだしも、専業主婦の方はほとんどががん検診を受診していないと思いますので、社員の配偶者もがん検診を会社全額負担で受診できる制度を作りました。なぜなら、配偶者ががんになるとその夫である社員に家事や看護、育児といった負荷が増えます。うちのような中小企業は、人材が命ですので、会社としても家族をがんから守ることが、長期的な経営リスクを減らせると思ったからです。

最初は大変でした。私自身はがんのことを勉強して、がん検診や早期発見が大切だということがわかっていたのですが、従業員側からすると、急に社長ががん検診をやれといってきた、なぜだろう? となるわけです。
特に社員の奥様からは、なぜあなたの会社は家庭にまで入り込んでくるの? という疑問をお持ちになられたようです。
そこで、がん検診の大切さをわかってもらうために、会社に当該選手ともう1人女性のがんサバイバーをお呼びし、従業員や配偶者に集まってもらって講演を行いました。この講演は、とても受診勧奨に効果的だったと思います。講演はその後、女性のがんサバイバーが代わりながら毎年開催しており、検診の1〜2カ月前に行って検診受診へのモチベーションアップにつなげています。
そのほか、検診場所も会社から徒歩3分程度の近場に設定し、業務時間の中で検診を受けられるようにしています。また、健康診断の申し込み状況が一目でわかるように、タイムカードの隣に申し込み表を置き、どの従業員が検診の予約をしていて、してない人が誰かがわかるようにしています。これは、申し込みがまだできていない人の業務を周囲の人間が率先して手伝うなど、みんなで協力して検診の時間を作ってあげるといった相互協力のためのものです。
ただ、私も検診の重要性はわかっていたのですが、検診方法まではわかっていない部分がありました。特に子宮頸がんは若いうちからなるということで、新卒の女子社員にも受けてもらおうとしたのですが、検診自体が恥ずかしくストレスを感じる社員もいたようです。このあたりは、経験者や専門家の方に説明してもらうなどして、理解を深めました。
お陰様で検診率は、2016年で100%、2017年は1名を除き全員が受診、2018年は100%を達成しました。

がん検診の受診というのは、社員の健康を守るという第一義的要素もありますが、私たちは会社の投資とも考えています。
我々中小企業の人材不足は深刻で、大企業であれば分担制でやるような業務も、1人で何役もやっている場合が多いのです。また、何十年と担当しているその道のプロもおります。1人が病気で欠ければ、その負担は周りの従業員に降りかかり、業務そのものが停滞する可能性が大きいわけです。
がん検診を実施するようになってから、実際にがんに罹患した従業員も出ましたが、幸いなことに早期発見だったため、短期間の治療で職場復帰を果たしており、がん検診の有効性を実感しています。
また、がん検診ではありませんが、インフルエンザの予防接種も全額会社負担で、全社員に行っています。
冷静に考えれば、検診にかかる費用や時間は大したものではありません。もしも従業員が病気になると、人材を失うリスクが生まれ、そして人材を新たに育てる期間やコストが発生します。この方が会社のダメージは大きくなります。
ですから、がん検診は従業員の健康だけではなく会社の利益を守る手段、投資であるのです。

また、従業員の健康、あるいは自分の体に興味を持ってもらおうと、前述の湘南ベルマーレのスポーツトレーナーに、毎週1回朝礼時に来てもらい15分くらいのストレッチ体操を行っています。
さらに月に1回、16:00〜20:00の間にトレーナーに会社に来てもらい個人へのトレーニングも指導してもらっています。筋肉痛やコリなどに効くストレッチや体操、自重を使った1日5分10分でできるトレーニング方法を教わることができます。最初は、配送など肉体労働系の従業員向けと考えていましたが、実際にやってみると、事務職の女性などの眼精疲労や肩こりの予防・解消などにも評判がよかったです。1人1人のカルテを作って、毎月指導を受けられますから個人に合ったトレーニングができ、ダイエットなどの実際の効果もあってとても好評です。ある意味、産業医の指導よりも役立っているかもしれません(笑)。
今後は、従業員の禁煙対策やがん保険を全員にかけられないかなども考えています。

今は2人に1人、男性は3人に2人ががんになる時代だと言われていますから、いずれは私もがんになると覚悟しています。まずは早期に発見すること、そしてがんになった時に、うろたえることなく冷静に対応できなければなければかっこ悪いと思っています。
これからは、多くの人にがん検診を受けてもらい、早期発見・早期治療に務めることが大切だということを、地元の企業や仲間たちに伝え、1社でも1人でもがん検診受診が増えてくれれば嬉しいです。

株式会社古川 代表取締役社長 古川 剛士さん
株式会社古川 概要
■ 設立
1948年(創業1911年)
■ 代表者
代表取締役社長 古川剛士
■ 資本金
1000万円(2018年12月現在)
■ 従業員数
80名(2018年12月現在)
■ 本社所在地
神奈川県小田原市寿町1丁目2番32号
■ 事業概要
液化石油ガス(業務用・工業用・家庭用)、住宅設備機器の販売、施工、オートガス、重油、灯油、ミネラルウォーター(アクアクララ)製造、販売、製氷(卸、小売)
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