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“健康第一主義”を掲げ、がん対策に取り組む

キヤノン株式会社

キヤノン株式会社
人事本部 安全衛生部 副部長 矢内 美雪 氏(キヤノン株式会社)
キヤノン健康保険組合 プロジェクトマネージャー 筒井 久子 氏

memo 都内とは思えないほど、緑溢れるキヤノン本社。春には桜並木で花見が、夏には芝生の上で納涼祭が行われ、敷地内にある池にはカルガモの親子が仲良く泳ぐ姿も見られます。そんな開放的な景色を眺めながら、キヤノン株式会社の安全衛生部副部長・矢内美雪氏と、キヤノン健康保険組合のプロジェクト マネージャー筒井久子氏に、キヤノンのがんや健康に対する取り組みについてお伺いしました。両名とも労働衛生コンサルタントの資格を持つ保健師です。

緑溢れるキヤノン本社

創業者の言葉を受け継いだ“健康第一主義”

キヤノンの掲げる“健康第一主義”とは、「従業員が生涯を豊かに、幸せに」という経営哲学のもと、創業者であり医師でもあった御手洗毅氏の“我々が努力していく上に一番大事なのは健康である”という言葉を受け継いだ行動指針の1つです。
同時に、社員自身も”三自の精神”に基づき、自分の健康は自分で守る意識を持ち、会社と社員の相互作用で、「生産性向上」や「健康で働ける幸せを実感」を目指したキヤノン式の健康経営を推進しています。
年間の傷病休職制度をはじめ傷病休暇、時間単位休暇などの制度の充実や、がんを含む様々な健康課題についての情報提供や健康教育を行っています。
また、グループ全体で復職支援プログラムを標準化し、休業開始時から休職中、復職後の安定就労までを一貫した方向性で対応し、人事、職場、家族や主治医などとの連携のもと、その方の状況に合わせた両立支援を行っています。
その他、キヤノンの行動指針には、“実力主義”“国際人主義”“新家族主義”の計5つがあります。

キヤノン行動指針
人事本部 安全衛生部 副部長 矢内 美雪 氏(キヤノン株式会社)とキヤノン健康保険組合 プロジェクトマネージャー 筒井 久子 氏

がん対策の取り組みと早期発見の重要性

キヤノンの本格的ながん検診の始まりは、2004年。健康保険組合が、30歳以上の被保険者に対し、一律で年3万円(ただし、1割自己負担)までの補助を行いました。その後、2007年には自己負担を無くし、2013年には20代女性の子宮頸がん検診に年5千円までの給付を開始、さらに30代のがん検診にも年1万5千円まで補助するなど、年齢や性別を考慮した傾斜配分をつけ、より多くの社員ががん検診を受けられるように制度改正がなされました。
そして今年2018年からは、一般的ながん検診コース、さらに一歩踏み込んだがん検診コースなど、自らが受けたいがん検診を選択できる新しい制度に移行し、量より質を重視した検診を行なえるようになりました。

対象コース別 検査項目一覧

今までは、65箇所の契約機関を除いては、個人の立替で検診を受けていました。検診項目に関しては、選択の自由度はありましたが、厚生労働省によるエビデンスの低い検査項目の受診も散見していました。新しい制度では、立替払いをなくし、がんの早期発見につながる検査項目を選択して受診します。健康保険組合が準備するホームページより全国に1400以上ある指定契約医療機関から、好きな機関を選んで予約し、「キヤノンがん検診受診券」をプリントアウトして受診する流れを作りました。これにより、被保険者のがん検診受診状況が一元的に把握できるとともに、エビデンスのある5大がんの検診に誘導できようになりました。将来的には受診率や地域格差などの把握、受診結果の管理などにも役立てたいと考えているそうです。
なお、キヤノンの健康保険組合が支払う被保険者のがん治療への医療費は年々増加していますが、社員の平均年齢が上がる中、社員1人当たりの医療費は横ばい、もしくは減少傾向にあります。これはがん検診受診によるがんの早期発見により、個別にかかる医療費が抑えられているといえるのではないでしょうか。

5大がんの状況

健康意識を高めるための努力

しかし、こうした優れた制度が用意されているにも関わらず、2017年までのがん検診の受診率は、平均して50~60%程度とそれほど高くなく、事業所によって40%台から70%台とバラつきが大きいのも特徴でした。当然、事業所ごとにがん検診の予約会を開催したり、職制を通じて受診を勧奨したりしているそうですが、やはり重要なのは、社員1人1人の健康意識を高めることだそうです。
そこで、2016年秋からは、DeSCヘルスケア株式会社が運営するアプリ「KenCoM」を職場の健康管理ツールとして推奨。同アプリでは、健康状態の管理はもちろん、自身の健康診断の結果に応じた情報が得られます。さらに、アプリを利用するたびにポイントが得られ、そのポイントでさまざまな抽選にも参加できるなど、楽しみながら健康管理ができます。
また、春と秋にはウォーキングイベントを企画したり、時期を決めてがんに関する情報を配信したりしています。

健康意識を高めるための努力

このほかにも生活習慣病・受動喫煙対策としてキヤノングループの敷地内を全面禁煙に。また、フィットネスジムを併設している本社以外にも、各事業所では体育館など、社員が運動を行う施設を無料で提供しています。
さらに被保険者に限らず、被扶養者の検診も仲介業者の株式会社LSIメディエンスを通じ、全国約2100もの医療機関(施設型、巡回型含む)で実施しています。被保険者とは制度が異なりますが、毎年健康診断とセットでがん検診を行うことも可能です。
社員はもちろん、その家族を含む健康意識の向上は、キヤノンの行動指針である“新家族主義”にも通じるといえるでしょう。

受動喫煙対策
インタビューに応えてくれたお二人
キヤノン株式会社 概要
■ 設立
1937年
■ 代表者
代表取締役会長CEO 御手洗 冨士夫
■ 資本金
174,762百万円(2017年12月31日現在)
■ 従業員数
26,075人(2017年12月31日現在)
■ 本社所在地
東京都大田区下丸子3丁目30番2号
■ 事業概要
カメラやビデオなどの映像機器、プリンタや複合機などの事務機器、半導体露光装置などの産業機器、デジタルマンモグラフィなどの医療機器の製造販売。
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