パートナー企業・団体コンソノート
「日本で一番いい会社」にするために
先例のないがん対策を推進
伊藤忠商事株式会社

代表取締役専務執行役員・CAO(人事 総務 法務 コンプライアンス担当) 小林 文彦さん
がん対策推進企業アクションアドバイザリーボード議長・東京大学医学部附属病院 放射線科准教授 中川 惠一 先生
人事・総務部長 垣見 俊之さん
後列左より、
人事・総務部 企画統轄室長 西川 大輔さん
人事・総務部 企画統轄室 三澤 寛人さん
memo 2017年8月21日、伊藤忠商事株式会社は「がんとの両立支援について」というタイトルで、リリースを報道向けに発信しました。それを受けて、8月22日には新聞、テレビでこの内容が大きく取り上げられました。他の企業のがん対策にも役立つこの先駆的な取り組みについて詳しく教えていただくために、中川議長と事務局で早速取材にうかがいました。
社長メッセージ『がんに負けるな』
小林文彦代表取締役専務執行役員・CAO(人事 総務 法務 コンプライアンス 担当)から、1枚の紙をまず手渡されました。「社長メッセージ『がんに負けるな』」というタイトルの7月21日の日付のA4表裏に、岡藤正広社長のメッセージがびっしりと打ち込まれていました。
小林専務がにこやかに、「まずはこちらをお読みください。エッセンスはここに集約されており、これに尽きます。社長メッセージを見ていただければ、何をやろうとするかご理解いただけると思います。」と言われました。 内容の一部を紹介します。
「…本年2月と3月に発信しましたメッセージに於いて、病気で亡くなられた当社の社員が、伊藤忠のことを「日本で一番いい会社」と言ってくれ、そしてまた、私もこれからの伊藤忠を、故人が残してくれた言葉に相応しい、いっそうすばらしい会社にしよう、と改めて心に誓ったことは既にみなさんにお伝えしました。
(中略)
当社は同業他社に比較し、社員数が一番少ないだけに社員一人一人の価値は大きく、私にとっては皆が家族のようなものです。
社員ががんや重い病気に罹患したとすれば、私は自分の家族が闘病しているつもりでこれに臨むつもりです。元気な時はもとより、たとえ病気になっても、皆さんの真の居場所は現在の職場なのだと信頼してもらえるような場を私は伊藤忠で提供したいと思っています。
(後略)…」

先例のない施策をつくる
がんに罹患しても、社内に居場所があるようにして社員に心配をさせない。もし亡くなったときには、残された家族が困らないようにする。予防策も強化してほしい。社長からのメッセージを受け、人事・総務部が具体的な施策づくりに入りました。 ところが、先例がなく目標とする企業がありません。以前、厚生労働省と一緒に働き方改革の一環として朝型勤務を率先推進してきた経験もあり、厚生労働省労働基準局安全衛生部にもご相談に行き、協力を得て仕組みを作っていきました。

がん対策が組織力を高める
日本人の2人に1人はがんに罹患します。うち3割が就労世代です。伊藤忠では病気で亡くなる社員の9割ががんに因るものです。この状況を踏まえ、両立支援体制方針を、
【1】最優先事項である早期発見・治療をサポートする体制強化
【2】がんに罹患しても、安心して職場で相談し、本人の意思を尊重しながら職場の仲間が皆で支援をする体制構築
【3】現在の職場を最善の居場所として、安心して働きながら治療に専念し、活躍できる環境整備
の三つとしました。
闘病する社員も仕事を辞めることなく活躍し続け、組織全体でサポートする体制を構築することで、支え合う組織風土の醸成が組織力をさらに高め、企業競争力も向上する。「厳しくても働き甲斐がある会社。日本一強くいい会社に」を目指すこととしました。

予防、治療、共生の具体策
予防に関しては、毎年の人間ドックにおいてもがん検診項目が含まれており、網羅的にがんを早期発見するものでしたが、民間企業では初となる国立がん研究センターとの提携により、40歳以上の社員に対し定期的に国立がん研究センターの専門医による特別がん検診を行います。人間ドックで行う項目に、大腸がん、肺がん、食道がん、子宮・卵巣がん等、がん発見に特化した項目が追加され、がんの早期発見を強化します。また、既に実施している生活習慣病予備軍への個別プログラムや、禁煙治療費の全額補助、ピロリ菌除菌や、B型/C型肝炎治療の補助も引き続き推進していきます。
治療に関しては、社内でも総合病院に匹敵する非常勤専門医を健康管理室に配置していますが、国立がん研究センターとの提携により、必要に応じて即時治療に入れる体制を作ります。また、会社として保険会社と包括契約を結び、高度先進医療費の補助も行うこととしました。
共生に関しては、7つあるディビジョンカンパニー(営業本部)と管理部門それぞれの人事・総務の責任者である8名を両立支援コーディネーターとし、キーマンとなる約500名の組織長には研修を通じた啓発を行うなど、両立支援体制を強化していきます。将来の不安軽減策としては、在職中にがんで亡くなった社員の子女の育英資金の拡充や就労支援も行います。

今後の課題と目標
現在、伊藤忠に勤務するがん罹患者のうち、社内での病気に関する開示状況は、開示されていない方が若干名、「所属組織内共有可」としている罹患者は約4分の1、残りの方は「限定共有可」という状況です。罹患した社員が可能な限り社内で開示し組織全体で支える体制を構築すべく、この両立施策を浸透させていきたいと考えています。
社員にはがんに負けることなく、過度に心配をすることなく、思いっきり働いてほしい。がんに罹患した社員を会社全体、社員みんなで支えることで社員の絆が深まり、より強い組織が生まれ、企業価値を高めることができると思っています。
伊藤忠商事株式会社 概要 |
|
