コンソノート 企業のがん対策事例集 コンソノート 企業のがん対策事例集

パートナー企業・団体コンソノート

社員をホリバリアンと呼び、家族的社風を持つ企業
健康施策にも経営トップの強い想いが反映

株式会社堀場製作所

株式会社堀場製作所
写真左から、
堀場製作所 健康保険組合 常務理事 山本 和也さん
堀場製作所 総務部 安全衛生チーム チームリーダー 上村 芳加さん
堀場製作所 総務部 安全衛生チーム 末川 香織さん
堀場製作所 総務部 安全衛生チーム(健康管理室)看護師 渡邊 はるかさん

memo 自動車排ガス、大気汚染、水質汚濁などの計測機器とシステムを開発・製造・販売している堀場製作所。世界27カ国に46社を展開しているグローバル企業です。全世界7000名の社員をホリバリアンと呼び、人生の大切な時期を共有するファミリーと捉えている同社。手厚い福利厚生制度をつくり、組織の垣根を越えて、様々な健康施策を展開しています。京都本社で同社の取り組みを取材しました。

社員はファミリーという意識のもと多様な健康施策を展開

社員はファミリーという意識のもと、当社はかなり以前から従業員の健康管理に力を注いできました。たとえば10年前に本社のある京都の産婦人科医と契約。「堀場特別検診」という休日の優先受診制度を設け、またメールで医師に相談できる〈HORIBAグループフェミニンサポート〉の仕組みもつくりました。製造業の当社は女性社員比率が25%。まだ男性中心といえる環境ですが、近年は新卒採用で女性を積極的に迎え入れており、その比率が急速に高まっています。今後はもちろん女性の活躍が不可欠で、働く女性へのケアが必要と考えています。この施策を開始した10年前は同様の取り組みは、国内企業ではまだ珍しく、先駆けの施策として、新聞などメディアにも取り上げられました。

▲産婦人科医を招いて女性社員にセミナーをしている様子
▲産婦人科医を招いて女性社員にセミナーをしている様子

そして2012年5月、堀場社長が「こころとからだの健康づくり」宣言を行い、全社員へ向けた健康への取り組みがさらに強化されました。連携医療機関による健康づくりに関する講習会、社内広報誌への健康コラム掲載、また毎年9月~11月を健康づくり期間とする〈ヘルスアップチャレンジ〉などの施策を拡充。ヘルスアップチャレンジでは事業所対抗のウォーキング大会などを実施しており、堀場社長もこれに参加しています。そのほか禁煙セミナー、健康セミナーも開催しています。外に向けた活動としてはピンクリボン京都に参加。協賛企業に頂けるマンモ検診のチケットを社員に支給しています。

▲ヘルスアップチャレンジの募集ポスター
▲ヘルスアップチャレンジの募集ポスター

管理栄養士と産業医を巻き込み、食を考える組織も展開

また新入社員研修の最後に食育プログラムを組み込むなど、食育施策も展開しています。ユニークなところでは給食委員会という、食を考える組織があります。これは「こころとからだの健康づくり」宣言以前、2008年に事業所と健康組合のコラボで誕生したプロジェクトです。まず当社の社員食堂で使う、お米を地元の京都産に変更。そして厨房に高級浄水器を設置しました。また管理栄養士と産業医を巻き込んで給食アセスメントへ。算出された理想的摂取カロリー1日2100kcalというデータをもとに、ランチメニュー開発の依頼を食堂業者へ依頼しました。コラボヘルスという言葉が一般的になる以前から、そういう連携が普通にできている会社だと思っています。

▲掘場製作所健康保険組合 常務理事の山本和也さん
▲掘場製作所健康保険組合 常務理事の山本和也さん
▲新入社員研修での食育教育の様子 バランスの良い食事を実際に食べて学ぶ
▲新入社員研修での食育教育の様子
バランスの良い食事を実際に食べて学ぶ

定期健診に特定検診を組込み、人間ドックの対象は全年齢

当社では定期健康診断と特定健診(メタボ検診)をセットで行っています。がん検診は人間ドックでカバー。そのメニューは胃がん(胃部X線・内視鏡・ピロリ菌)、肺がん(胸部X線+喫煙者は喀痰細胞診)、大腸がん(便潜血検査2日法)、乳がん(視触診・エコー)、子宮頸(けい)がん(頸部細胞診・HPV検査)となっています。人間ドックは何歳でも受けられます(一部自己負担)。胃がん検診83.4%、肺がん検診92.9%、大腸がん検診81.7%、子宮頸がん検診64.1%、乳がん検診61.1%(平成28年度データ)と高い受診率を示しています。35歳以下の婦人科検診では28年度から自己負担金額なしとサポートを拡充しました。

定期健診で要精密検査と診断された社員に関しては、産業医の確認を経て、産業保健スタッフから受診勧奨を行っています。健診機関の体制や施設の環境による事業所でのばらつきを無くすため、産業医が改めて堀場グループの判定基準に照らし合わせるという、ダブルチェックシステムを取っています。また、およそ30の国内事業所では、本社のように社員食堂における健康メニューの提供ができないので、安全衛生チームが各地へ出張して健康指導や、アクションの遅い社員に向けた受診勧奨などを行っています。

▲総務部 安全衛生チームリーダー の上村 芳加さん
▲総務部 安全衛生チームリーダー の上村 芳加さん

育児や介護等で家族のサポートをする必要のある社員と同様の制度になり、またがんに特化した制度ではありませんが、病気を抱える社員への就労支援では、勤務日・勤務時間の短縮や業務内容自体の変更、休暇制度としては、積立有給休暇や半日有給休暇さらには時間単位有給休暇といった制度があり、柔軟な働き方が多様に選択できる人事制度を有効活用していただいています。

こういった人事制度を導入した経緯としては、労働組合や社員からのヒアリングからで出た要望を基に、より働きやすい環境つくりと働き方においてフレキシビリティーを持たせることで、傷病によるキャリアの停滞や退職という事象を発生させることなく、社是でもある「おもしろおかしく」継続して働いてもらいたいという想いから制度を充実させました。これまで説明してきた取り組みなどが認められ、当社は京都府から平成28年度「きょうと健康づくり実践企業」に制度発足から4年連続で認定されました。また関西圏第1号として、厚生労働省の安全衛生優良企業(※)にも選ばれています。

※安全衛生優良企業とは、労働者の安全や健康を確保するための対策に積極的に取り組み、高い安全衛生水準を維持・改善しているとして、厚生労働省から認定を受けた企業。
この認定を受けるためには、過去3年間労働安全衛生関連の重大な法違反がないなどの基本事項に加え、労働者の健康保持増進対策、メンタルヘルス対策、過重労働防止対策、安全管理など、幅広い分野で積極的な取り組みを行っていることが求められる。

▲本社ロビーにて厚生労働省 安全衛生優良企業認定のパネル展示
▲本社ロビーにて厚生労働省 安全衛生優良企業認定のパネル展示

がん対策への本格的な取り組みはこれから。

ここまでの説明でご理解いただけたかと思いますが、当社の健康施策にはトップの強い想いが反映されています。そのバックボーンには経営者と社員の距離が近い職場環境、一人ひとりを大切に考える風土があると思っています。わかりやすい例でお話しすれば…私たちは毎月、誕生日パーティーを開催していますが、これは誕生月の社員を経営陣が招待するパーティーです。先端の社員がトップに本音を語ることができるフランクな交流の場となっています。

また風土を表す事例でいえばステンドグラスプロジェクトという、ダイバーシティを推進する取り組みがあります。色とりどりの個性・才能が輝くことで、新たな価値を創造するという思想のもと、障がいや病気の有る無しに関係なく、社員一人ひとりをとても大切にする風土が根付いています。

しかし、まだがん対策は十分と言えません。まず今年は、事業所内で実施する定期健康診断時に、希望者にマンモグラフィー検査が実施できる様環境設備を行う予定です。今後もその他のがん対策も推進していきたいと考えています。

▲こころとからだの健康づくりプロジェクト 人事・総務・健康保険組合・福利厚生関連会社・労働組合・産業保健スタッフ 等が メンバーとして参画している。
▲こころとからだの健康づくりプロジェクト
人事・総務・健康保険組合・福利厚生関連会社・労働組合・産業保健スタッフ 等が メンバーとして参画している。
株式会社堀場製作所 概要
■ 創業
1945年10月
■ 設立
1953年1月
■ 代表者
代表取締役会長兼社長 堀場 厚
■ 資本金
120億1100万円(2015年12月末現在)
■ 連結売上高
1708億9800万円(2015年度)
■ 従業員数
7000人(グループ)
■ 本社所在地
京都市南区吉祥院宮の東町2
■ 事業概要
世界27カ国に46グループ社を展開して、各種計測機器とシステムの開発・製造・販売を行っています。 (営業品目) 自動車計測機器、環境用計測機器、科学計測機器、医用計測機器、半導体用計測機器の製造販売。
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