2026/02/13
令和7年度 第1回 企業コンソーシアムコンソ40運営会議開催報告
開催概要
- 日時:2025年9月9日(火)16:00~17:30
- 場所:〒102-0074 東京都千代田区九段南4-8-21 山脇ビル
※オンラインとのハイブリッド開催
ご挨拶
■厚生労働省 健康・生活衛生局 がん・疾病対策課
栢沼 優二 課長補佐
日頃からコンソ40の皆さまには、企業アクションの目指す「がん検診受診率の向上」や、「がんになっても働き続けられる社会づくり」にご協力いただいており、あらためて感謝申し上げます。本日の運営会議では、東京大学の南谷先生から「推奨されるがん検診」というテーマでご講演をいただくほか、三菱電機健康保険組合様からは、職域におけるがん検診の精度管理についてお話しいただく予定です。いずれも、職域でがん対策を進めていくうえで、非常に参考になる内容だと考えています。企業アクションの登録企業数は増えていますが、実際に取り組みが進んでいる企業との間には、まだ差があるのが現状です。ぜひコンソ40の皆さまには、その橋渡し役として、企業の行動を後押ししていただければと思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
令和7年度の企業コンソーシアム活動について
■企業コンソーシアム座長
大同生命健康保険組合 常務理事 増岡 博史 様
それでは、令和7年度のコンソ40の活動について、これまでの取り組みを振り返りながらお話しします。企業コンソーシアムは、各社の取り組みを社会に広げていくことを目的としており、コンソ40はその中心となって活動を進めています。これまで、全体研修会やコンソ40運営会議、分科会を通じて、講演や事例紹介、意見交換を重ねてきました。分科会については、ゴールも見え始め、成果物が形になりつつある段階だと感じています。今年度も引き続き、全体研修会、運営会議、分科会の3本柱で活動を進めていく予定です。研修会や会議の日程も決まっていますので、ぜひご参加いただき、企業同士の情報交換や連携をさらに深めていければと思います。
また、今年度は、新たに次の5つの企業団体様に加わっていただきました。
- 資生堂健康保険組合 様
- 日本生命保険相互会社 様
- 株式会社堀場製作所 様
- P&Gグループ健康保険組合 様
- 株式会社フジタ建設コンサルタント 様
特別講演 推奨されるがん検診 -利益と不利益-
■東京大学医学部附属病院 放射線科助教
南谷 優成 先生
まず、国が推奨するがん検診として、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの5つが示され、これらは「がんによる死亡を減らす」ことが科学的に確認されている検診であると説明された。がん検診の目的は、単なる早期発見・早期治療ではなく、「がんによる死亡を防ぐこと」にあるという点が説明された。
がん検診には大きく分けて、住民検診に代表される「対策型検診」と、人間ドックなどの「任意型検診」があり、職域検診はその中間に位置づけられる。対策型検診では、限られた医療資源の中で集団全体の死亡率を下げることが目的となるため、利益と不利益のバランスが厳密に検討されている。一方で、職域では福利厚生の一環として検診項目が増えやすく、結果として過剰な検診が行われやすい傾向があることが指摘された。
検診の「利益」としては、がんによる死亡を防ぐことが最大のものであり、それに加えて、生活の質の向上や医療費の抑制、陰性結果による安心感などが挙げられる。一方で、「不利益」も確実に存在し、検診に伴う時間的・金銭的負担、検査時の苦痛、被ばくといった身体的負担に加え、偽陰性や偽陽性による影響がある。
特に重要な不利益として、「偽陽性」と「過剰診断」が詳しく説明された。偽陽性とは、本来がんではないにもかかわらず、要精密検査と判定され、不必要な検査や精神的負担を受けることである。実際には、がん検診で要精密検査となった人の大多数はがんではなく、多くの人は結果が出るまで不安や負担を抱えることになる。
過剰診断とは、発見されたがんが、放置しても生涯症状を出さず、命に影響しないにもかかわらず、診断や治療が行われてしまうことを指す。代表例として、韓国における甲状腺がん検診が紹介され、検診導入後に患者数が大幅に増加した一方で、死亡率はほとんど変化しなかった事例が示された。このことから、「見つけすぎること」が必ずしも人を救うわけではないという点が説明された。
また、過剰診断が増えることで、「検診で多くの人が救われた」という印象が広まり、さらに検診が拡大していく「ポピュラリティ・パラドックス」についても触れられた。がん患者数が増えることで死亡率は見かけ上低下するものの、実際の死亡者数は減っていないという現象が起こり得ることが示された。
講演のまとめとして、南谷先生は、がん検診は「多ければ多いほど良いものではない」と述べ、エビデンスに基づき、利益が不利益を上回る検診を適切に提供することの重要性を説明した。職域においても、国の推奨に沿った検診を基本とし、検診の目的や限界を正しく理解したうえで実施することが、結果として従業員を守ることにつながると締めくくられた。
質疑応答 要旨
質疑応答では、職域におけるがん検診の実務に直結するテーマについて意見交換が行われた。胃がん検診に関しては、バリウム検査と内視鏡検査の位置づけの違いについて質問があり、有効性だけでなく、医療資源や人材、地域差といった現実的な制約を踏まえた上で、国の推奨が段階的に整理されていることが説明された。また、早期に発見されたがんのすべてが死亡につながるわけではなく、過剰診断のリスクも考慮する必要がある点が共有された。
肺がん検診では、低線量CTの活用について議論があり、喫煙歴のある人を対象とした場合には科学的根拠が蓄積されつつある一方、対象者を広げることには慎重な検討が必要であるとされた。さらに、企業が検診を提供する際には、従業員の判断に委ねるだけでなく、国の推奨に沿った制度設計が現実的であるとの考えが示された。全体を通じて、検診の目的を「死亡を減らすこと」に置き、効果と限界を理解したうえで運用する重要性が確認された。
健保組合におけるがん検診精度管理・事業評価の実現に向けた事業について
情報提供
■三菱電機健康保険組合 保健事業推進課 課長
鯨井 裕介 様
三菱電機健康保険組合からは、職域におけるがん検診の精度管理と事業評価を実現するための取り組みについて報告が行われた。現在の職域がん検診では、検診項目や検査方法、対象年齢、受診間隔、判定基準などが、健保組合や契約する健診機関ごとに異なっており、マニュアルとの乖離が大きいという課題があると指摘された。その結果、要精密検査者の把握や受診状況の管理が難しく、検診が「やりっぱなし」になりやすい現状が生じているという。
特に大きな課題として、検診結果の判定基準が統一されていない点が挙げられた。複数の健診機関と契約している場合、同じ検査結果であっても判定が異なるケースがあり、健保や企業が一元的に精度管理を行うことが困難になっている。このことが、精密検査受診率やがん発見率といった精度管理指標の算出や、事業評価の妨げになっていると説明された。
こうした課題を解決するため、本事業では、職域がん検診における判定結果の標準化に向けた仕組みづくりを進めている。具体的には、健診機関から提出される結果データを共通フォーマットで受け取る可能性を検討するとともに、フォーマットの統一が難しい場合には、各機関の判定基準を吸収・変換する仕組みの構築を目指している。また、検診結果とレセプトデータを統合し、要精密検査者の把握から受診状況の追跡、がん発見率の算出までを可能とする精度管理システムの試行にも取り組んでいる。
本取り組みにより、加入者にとっては検診結果が分かりやすくなり、精密検査や治療につながりやすくなること、健保や企業にとっては費用対効果の検証や説明が可能となることが期待される。さらに、判定基準や検診情報の標準化は、医療DXやデータヘルスの推進にも資するものであり、職域におけるがん検診の質を高める重要な取り組みであるとまとめられた。
意見交換 要旨
三菱電機健康保険組合からの報告を受け、職域におけるがん検診の制度設計や運用のあり方について意見交換が行われた。参加者からは、判定基準や検診項目が過剰になりやすい現状に対する共通の課題意識が示され、企業として「どこまで提供するのが適切か」という判断の難しさが語られた。特に、社員の健康を守りたいという思いから検診項目を増やした結果、かえって過剰診断やメッセージの混乱につながる可能性がある点が指摘された。
また、従業員本人に正しい選択を委ねることの限界についても議論があり、知識やリテラシーを高める取り組みとあわせて、企業側が制度として一定の線引きを行う必要性が共有された。国の推奨やエビデンスを踏まえつつ、各社の実情に応じた説明や合意形成を重ねていくことが重要であり、今後もコンソ40の場を通じて、こうした悩みや工夫を共有していく意義が確認された。
会場参加者一覧(32名)
<企業コンソーシアム座長>
大同生命健康保険組合
常務理事 増岡 博史 様
<顧問>
がん対策推進企業アクション議長
東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座
特任教授 中川 恵一 先生
<講師>
東京大学医学部附属病院 放射線科
助教 南谷 優成 先生
三菱電機健康保険組合 保健事業推進課
課長 鯨井 裕介様
<企業コンソーシアム コンソ40メンバー> ※企業名50音順
旭化成株式会社
健康経営推進室 保健師 山科 陽子 様、
健康経営推進室 企画推進グループ長 内村 彩子
様
アフラック生命保険株式会社
社会公共活動推進室長 伊藤 春香 様
伊藤忠エネクス株式会社
人事総務部 人事課 健康管理室 保健師 日野間 佳子
様
エアロトヨタ株式会社
営業統括部 渡部 俊 様
医療法人社団俊秀会エヌ・ケイ・クリニック
総合健診マネージャー がん検診推進事業部室長 診療放射線技師 梁川 晋治
様
サッポロビール株式会社
人事総務部プランニング・ディレクター 村本 高史 様
資生堂健康保険組合
保健事業担当 湯河 真 様
城北ヤクルト販売株式会社
総務部
次長 岡田
俊介 様
CSRチーム 金子 沙織 様
総務部 広報担当 松尾 はるか 様
SOMPOひまわり生命保険株式会社
人財開発部健康経営グループ 課長代理 福本 衣理
様
大東建託パートナーズ株式会社
人事部 健康経営課 担当次長 東海林 美香 様
人事部 健康経営課 課長・保健師 飯塚 祐美恵 様
大同生命保険株式会社
人事総務部
健康経営担当オフィサー 廣幡 恵 様
医療法人社団同友会
TJK運営受託本部総務部 部長補佐 東 泰弘 様
日本生命保険相互会社
新活動推進室長 河野 幸彦
様
日本電気株式会社
ピープル&カルチャー部門 エンプロイリレーション統括部 居相 隆史 様
野村ホールディングス株式会社
カルチャー&エンゲージメント部
ヘルスサポートグループ長 河野
和絵 様
富士通株式会社
健康推進本部 事業推進部 シニアマネージャー 平賀 夕子 様
株式会社堀場製作所
安全健康環境推進部 健康管理チーム 保健師 人見 和美
様
矢崎健康保険組合
芹澤 義夫 様
LINEヤフー株式会社
グッドコンディションサポート部 保健師 黒川 知子 様
株式会社ワコールホールディングス
健康開発チーム
保健師 黛 加奈子 様
<オブザーバー>
グラクソ・スミスクライン健康保険組合
常務理事 戸津 玲 様
C&Rグループ健康保険組合
事務長 川畑 知江子
様
株式会社プロセシング
代表取締役 横垣
祐仁 様
<厚生労働省>
健康・生活衛生局 がん・疾病対策課 栢沼 優二 課長補佐