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2026/03/23

令和7年度 統括セミナーを開催しました

(ページの最終更新日:2026年3月23日)

参加者集合写真

以下は本セミナーの概要報告です。

厚生労働省よりご挨拶
厚生労働省健康・生活衛生局 がん・疾病対策課 課長補佐 栢沼 優二氏

厚生労働省健康・生活衛生局 がん・疾病対策課 課長補佐 栢沼 優二氏

わが国では、がんは1981年以降死因の第1位であり、生涯で2人に1人が罹患し、4人に1人ががんで亡くなる重大な課題です。令和5年3月に閣議決定された第4期がん対策推進基本計画では、「誰一人取り残さないがん対策」のもと、「がん予防」「がん医療」「がんとの共生」を柱に総合的な施策を進めています。がん予防では、受診率向上と科学的根拠に基づくがん検診の推進により早期発見・早期治療につなげることが重要です。また、がんとの共生では、治療と仕事の両立を支える環境整備が求められています。我が国のがん検診受診率や精密検査受診率は目標に届いておらず、健康状態への過信や経済的負担感などから未受診も生じているため、職域での受診機会の充実と周知啓発が重要です。企業アクションは、普及啓発やセミナー、eラーニング等を通じて、職域におけるがん検診受診率向上と、がんになっても働き続けられる社会の構築を支える重要な取り組みとなっています。

企業アクション事務局報告
がん対策推進企業アクション事務局 山田浩章

がん対策推進企業アクション事務局 山田浩章

企業アクションは2009年に開始し、今年で17年目を迎える事業で、パートナー企業は約8000社を超え、直近も年間1000社超の新規登録が続いています。目的は、がんで亡くなる日本人を減らすことであり、国の目標60%超を見据えたがん検診受診率向上、科学的根拠に基づく情報提供、治療と仕事の両立支援の3本柱で、職域におけるがん対策の普及啓発を進めています。活動は、情報発信・イベント・企業連携を軸に展開しており、メールマガジンや東京大学中川先生によるニュースレター、YouTube・SNSでの発信、全国大会や青森県・埼玉県・宮崎県でのブロックセミナー、企業コンソーシアムやWorking RIBBON、無料で実施可能なe-ラーニング・出張講座等を通じて幅広くがん対策の啓発を推進しています。本日は表彰式ということで厚生労働大臣表彰最優秀賞やパートナー表彰各賞が発表されます。

令和7年度 がん対策推進企業 表彰式

  • 厚生労働大臣表彰[最優秀賞]
    (プレゼンター:厚生労働省健康・生活衛生局 がん・疾病対策課 課長補佐 栢沼 優二氏)

大東建託株式会社

プレゼンター:栢沼優二氏と大東建託株式会社

受賞理由:
がん検診を定期健康診断に組み込み、胃がん90%、肺がん99%という高い受診率を実現するとともに、要精密検査者についても受診率100%を達成している。要精密検査者の進捗管理を人事部門が担うほか、特別休暇や会社負担のがん保険を整備し、治療と仕事の両立を力強く支援している。さらに、経営層からの発信や必須研修を通じて、がん対策を全社に浸透させ、職域がん対策を総合的に推進している点が高く評価された。

  • がん対策推進パートナー賞
    (プレゼンター:がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長 中川 恵一 氏)

[検診部門]
大分銀行

プレゼンター:中川恵一氏と大分銀行

受賞理由:
推奨されるがん検診を人間ドックなどに組み込み、子宮頸がん検診については巡回検診も実施するなど、受診しやすい環境整備を進めている。その結果、胃がん97%、肺がん100%をはじめ、各部位で極めて高い受診率を達成した。また、銀行と健康保険組合による費用補助を通じて受診機会を着実に確保し、がん検診受診率の大幅な向上につなげた点が評価された。

[検診部門]
花王株式会社

プレゼンター:中川恵一氏と花王株式会社

受賞理由:
会社が実施する定期健診にがん検診を組み込み、定期健診と同日に従業員が自己負担なく受診できる仕組みを整備している。こうした受診しやすい環境づくりにより、肺がん99%、乳がん94%など、各がん検診で極めて高い受診率を実現した。受診に伴う金銭面・手続き面の負担を制度面から徹底して引き下げ、確実な受診行動を後押ししている点、高い受診率につながる優れた仕組みを構築している点が評価された。

[検診部門]
大東建託リーシング株式会社

プレゼンター:中川恵一氏と大東建託リーシング株式会社

受賞理由:
定期健診とがん検診をワンストップで受診できる体制を整え、就業時間内での受診や交通費の会社負担により、受診に伴う負担や心理的ハードルを大きく低減している。その結果、胃がん89%、肺がん99%など高水準の受診率を実現した。さらに、健康保険組合と連携した上限5万円の費用補助により、五大がん以外の検査についても選択の幅を広げ、一人ひとりの状況に応じた受診を後押ししている点が高く評価された。

[治療と仕事の両立部門]
葵機工株式会社

プレゼンター:中川恵一氏と葵機工株式会社

受賞理由:
両立支援コーディネーターが中心となり、主治医、産業医、会社が連携する三者体制のもとで、治療状況や本人の体調に応じた就業条件の調整を行っている。治療を継続しながら安心して働けるよう、勤務上の配慮や職場環境の整備を一人ひとりの状況に応じて丁寧に進めている。さらに、相談開始時から復職し職場定着に至るまで、各段階に応じた支援を切れ目なく行う体制を整えており、治療と仕事の両立を継続的に支える仕組みを構築している点が高く評価された。

[情報提供部門]
サントリー食品インターナショナル株式会社

プレゼンター:中川恵一氏とサントリー食品インターナショナル株式会社

受賞理由:
肺がんセミナーなどを通じて、がんに関する基礎知識や受診の必要性をわかりやすく伝え、従業員一人ひとりがそれを自分自身の課題として捉えられるよう、丁寧な情報提供を行っている。また、受動喫煙ゼロを目指し、敷地内禁煙や就業時間内禁煙を徹底するなど、職場環境の整備にも着実に取り組んでいる。知識の提供による意識向上と、職場ルールの整備による行動変容の促進を両立させながら、多角的な情報提供の手法を組み合わせている点が高く評価された。

[中小企業部門]
株式会社古川

プレゼンター:中川恵一氏と株式会社古川

受賞理由:
徒歩圏内の医療機関において勤務時間内に受診できる体制を整えることで、従業員が無理なく検診を受けられる環境づくりを進めている。また、繁忙期を避けながら担当者が日程調整をきめ細かく行うことで受診機会を確実に確保し、受診率100%を達成している。さらに、社長からのメッセージ発信など、従業員にとって身近で伝わりやすい啓発を重ねながら受診行動を着実に後押ししている。限られた体制の中でも、独自の工夫と細やかな運用によって確実に取り組みを回している点が高く評価された。

令和7年度 表彰企業 事例コメント

  • 厚生労働大臣表彰[最優秀賞]
    大東建託株式会社
大東建託株式会社

がん対策を「社員にとっては働き続けられる安心感であり、会社にとっては離職防止・人材流出抑制・生産性向上・社会的信頼性向上につながる重要課題」と位置づけています。

取り組みの柱は、
①徹底した受診管理による早期発見・早期治療
②充実した支援体制による治療と仕事の両立
③ヘルスリテラシー向上によるがん教育、の三つでございます。

受診面では、年齢に応じて定期健康診断の基本項目に、あらかじめがん検診を組み込み、就業時間内に会社負担で受診できる仕組みにしています。2025年度の受診率は、胃がん90.5%、肺がん99.7%、大腸がん96.7%、乳がん96.2%、前立腺がん85.4%と高水準であり、2022年度以降は健康診断受診率100%、二次検査受診率100%を維持しています。二次検査についても、対象項目の明記や結果提出用紙の同封、健康管理システムでの一元管理、本社・保健師・各部門の連携により、受診完了まで確実にフォローしています。
両立支援では、会社負担のがん保険による診断時一時金100万円の支給、時間単位で取得できる特別有給休暇、最大24か月まで休職期間を延長可能とする制度などを整えています。保健師は、がんが判明した社員に対して産業医・主治医・職場との調整や制度案内を行い、状況に応じて伴走支援を実施しています。
教育面では、全社員対象の研修、社員家族向けの社内報、年5万円までのオプション検査補助金を通じて、知識提供と自主的な受診促進を図っております。アンケートでは「がんになっても仕事を続けることが可能だと理解できた」「両立支援があることは心強い」といった声が寄せられ、会社からの"がんになっても一緒に働きましょう"というメッセージが社員に伝わっている状況でございます。

  • がん対策推進パートナー賞[検診部門]
    大分銀行
大分銀行

弊社は、頭取を最高健康責任者とし、人財開発部、労働組合、健康保険組合、産業医、外部専門機関が連携して健康経営を推進しています。疾病の早期発見・早期治療と従業員の働きがいを基盤に、従業員エンゲージメントと職場活力の向上を目指しており、健康経営優良法人ホワイト500を8年連続で取得しています。
がん検診受診率向上では、2018年度から人間ドックを3年に1回から2年に1回へ見直し、子宮頸がん検診も20歳以上は2年に1度の受診を必須化いたしましたほか、巡回バス検診を導入いたしました。その結果、一次検診受診率は2019年度以降90%以上を維持しています。一方、一次検診受診者の増加に伴って二次検診対象者も増えましたため、2021年度からは保健師と人材開発部管理職による受診フォローを強化し、60~70%台だった二次検診受診率も2022年度以降は90%以上を維持するようになりました。
現在は、正規従業員に加えてフルタイム勤務のパートタイマーにも人間ドック対象を拡大し、今後は被扶養者にも広げる予定でございます。さらに、2026年度からは二次検診受診に利用できる制度休暇の導入も予定しております。啓発面では、セミナー、動画配信、ニュースレター、保健指導に加え、建物内禁煙・就業時間内禁煙や禁煙支援費用補助も行っており、受診機会の整備と二次検診フォローの両面を強化しています。

  • がん対策推進パートナー賞[検診部門]
    花王株式会社
花王株式会社

中期経営計画の基本方針の一つである「社員活力の最大化」を土台から支える取り組みとして健康づくりを位置づけています。トップメッセージとして「花王グループ健康宣言」を社内外に発信し、ウェルビーイングを六つのテーマで推進。その中にがん対策を置き取組みを進めてきました。
健診制度の最大の特徴は、会社の健康診断にがん検診を組み込み、同日に自己負担なく受診できる点です。年齢に応じて必要な項目を選択でき、婦人科検診については一般健診対象者でも乳がん・子宮頸がん検診の受診が可能で、偶数年度ごとに受けられる仕組みになっています。二次検査受診に要した時間は勤務免除扱い、交通費も会社負担としており、受診障壁を制度面で下げています。
受診勧奨では、四半期に1回発信する「ウィメンズヘルスニュース」で、偶数年度には女性特有のがん検診の重要性を産業医執筆の記事で特集しているほか、安全衛生委員会での講話や産業医作成の受診促進動画を公開しています。また、2024年度に新規把握したがんのうち65%が健康診断を契機に発見されており、健診による早期発見効果があらわれています。二次検査対象者には結果通知に対象案内を封入し、1か月以内の受診を明記、結果はWebで申請できる仕組みにしまして、個人情報保護と提出しやすさを両立しています。全国の産業保健スタッフが"顔の見える看護職・保健師"として受診勧奨を行い、二次検査受診率97.5%を達成しています。

  • がん対策推進パートナー賞[検診部門]
    大東建託リーシング株式会社
大東建託リーシング株式会社

弊社は、社員1,801名、全国237店舗を展開する企業です。健康診断・二次検査受診100%を支える三つの柱として、①受診しやすい仕組みづくり、②進捗管理の仕組み、③受診風土の醸成を掲げています。
受診しやすい仕組みとしては、定期健康診断にがん検診を組み込み、就業規則の健康管理細則に法定外項目の取り扱いを明記したうえで、健康診断・二次検査ともに就業時間内に受診できるようにしております。また、提携医療機関以外で受ける検査にも最大5万円まで補助を出し、従業員が必要な検査を選べる仕組みを整えています。
進捗管理では、「二次検査完了までが健康診断完了」という考え方を明確にし、対象者には健康診断結果封筒に二次検査受診票を同封しています。保健師によるメール連絡や、RPAで毎日更新されるイントラネット上の管理表を活用し、管理職が進捗確認できる体制を整えております。さらに、取締役会や衛生委員会、全社掲示板でも状況を共有し、二次検査の締切が近づく9月には毎週メールや電話で進捗確認することで、全社をあげて二次検査100%を支えています。
受診風土の醸成では、取締役会への報告を通じて経営層の意識づけを行い、企業アクションやWorking RIBBONへの参画によって企業姿勢を明確にしています。加えて、会社負担のがん保険による罹患時100万円の支給、社内報を通じた家族への情報提供、保健師による両立支援体制の強化、独自の休暇制度の整備など、制度・運用・文化の三層で支える形をとっています。

  • がん対策推進パートナー賞[治療と仕事の両立部門]
    葵機工株式会社
葵機工株式会社

弊社は、香川県高松市と愛媛県大洲市を拠点に、金属精密部品の切削加工を行う企業でございます。2022年の50周年を機に健康経営優良法人の認定取得に取り組み、女性役職者を中心とした7名の「健康づくり推進プロジェクトチーム」が、発案から実施、報告までを一体で担っています。経営と現場が一体で動く体制を作り、外部専門家とも連携しながら、いざという時に相談できる環境を整えています。
取り組みの出発点は、社員のヘルスリテラシー向上でございます。正しい知識を持つことが第一歩と位置づけ、年間を通じて継続的な学びの機会を設けています。手で確かめる体験型のイベントも行い、知識を行動につなげる工夫を重ねています。健診面では、年1回の健康診断の中でがん検診につながる五つの項目を全額会社負担で実施し、2025年度はほぼ100%の受診率を達成いたしました。胃がん検診のみ、コロナ禍以降の検査実施条件の影響で一部未達がございました。検査方法についても、従業員の要望を踏まえてCT検査への変更やエコー検査の追加を行い、精度向上を図っています。要精密検査者には再検査指示書を発行し、3か月以内の受診を義務づけています。
両立支援では、「治療と仕事の両立支援ガイドブック」を作成・配布し、説明会を実施して制度理解を進めています。失効した年次有給休暇を活用できる仕組みや、会社負担による三大疾病保険契約など、安心して治療に専念できる制度を整備しています。さらに、両立支援コーディネーター資格を持つ社員が、仕事内容や職場環境を踏まえて個別の両立支援プランを作成し、お試し出勤から本復帰まで無理なく戻れるよう伴走しています。紹介された事例では、転職後間もなくがんが見つかった社員が試し出勤制度を活用して復職したケース、再発を繰り返しながらも働く希望を持ち続けた社員とその家族から感謝が寄せられたケースが共有されました。これらの事例に共通するのは、社員を孤立させないことを両立支援の根幹に置いているという同社の姿勢であり、その点が高く評価されました。

  • がん対策推進パートナー賞[情報提供部門]
    サントリー食品インターナショナル株式会社
サントリー食品インターナショナル株式会社

サントリーグループでは、従業員・家族の健康を挑戦と革新の源と位置づけ、がん対策を一次予防・二次予防・三次予防を推進しています。サントリー食品インターナショナルを中心に、サントリーホールディングスと一体で取り組みを進めています。
一次予防では、サントリーでは担当看護職制をとっており、担当看護職から全社員へ毎月「ヘルスマ通信」を発信し、2月はワールドキャンサーデーのタイミングで肺がん情報を届けるなど、継続的な情報提供を行っています。また、「サントリー大学 ウェルビーイング学部」で学習コンテンツを提供し、各職場には健康ポスターを掲示して習慣化や気づきを促しています。さらに産業医による肺がんセミナーを開催し、受動喫煙ゼロに向けて、①就業時間内禁煙、②敷地内禁煙、③喫煙後45分間は職場に戻らない、という三つのルールを開始しています。禁煙希望者へは看護職による禁煙支援も実施しています。
二次予防では、40歳以上は人間ドックで高い受診率を確保している一方、若年層の子宮がんや乳がん検診は50%前後であり、今後の課題と位置づけています。健康ダッシュボードを導入し、人事担当者・健康担当者が組織の健康データを見ながら施策を進めています。二次検査受診勧奨については、担当産業医・看護職が、2か月経っても受診がない場合は上司を巻き込んで勧奨を強化し、現在受診率は90%超となっています。健康保険組合と連携し、レセプト情報も活用しながら未受診者をフォローする仕組みも開始しています。
三次予防では、「両立支援ハンドブック」を作成し、がんに限らず慢性疾患も含めた休職制度や復職支援サポートを行っています。休職中は上司が定期的に連絡を取り、復職が見えてきた段階では看護職・産業医が本人の病状に応じて就業調整を行います。本人の気持ちに寄り添いながら、安心して働き続けられる環境整備を行っています。
サントリーでは1次2次3次予防の強化で、引き続き従業員の健康維持、働きやすい環境づくりを支え、がん対策・健康経営を推進していきます!

  • がん対策推進パートナー賞[中小企業部門]
    株式会社古川
株式会社古川

弊社は、神奈川県小田原市に本社を置き、LPガスや住宅設備、リフォームなど、地域の生活インフラを総合的に支える事業を展開する、従業員約90名の企業でございます。
当社では、『社員こそが最大の財産である』という社長の強い想いのもと、地域のインフラを支える中小企業として、まずは社員の命と健康を守ることを起点に、健康経営の取り組みを進めております。
 取り組みのきっかけは、若く鍛え上げられたスポーツ選手ががんに罹患した事例に触れ、がんは決して高齢者だけのものではなく、誰にでも起こり得る病気であると痛感したことでございました。
企業アクションを通じて学ぶ中で、「早期発見こそ最大の防御であること」「正しく学び、正しく治療すれば、がんになっても仕事を辞めなくてよいこと」を深く理解し、弊社ではがん検診費用の全額会社負担を決断いたしました。さらに、社員本人だけでなく、その配偶者の検診費用も会社で負担しております。配偶者ががんに罹患することは、社員本人の就業継続にも直結いたします。「規模の小さな企業だからこそ、社員の家庭も含めて丸ごと支える必要がある」という発想に基づくものです。
 加えて、若い世代にも健診の意義がしっかりと伝わるよう、がんに関する啓発の機会を継続的に設けた結果、現在では全社員の受診率100%を達成いたしました。 今後は自社にとどまらず、地域の他企業様にもこの輪を広げ、がん検診の重要性を発信していきたいと考えております。

中川先生よりご講演と総括

がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード 議長 東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川 恵一 氏

日本は世界一がんが多い国であり、男性は3人に2人近く、女性でも2人に1人ががんになります。働く人にとってもがんは極めて大きな課題であり、専属産業医がいる規模の事業場では、働く人の死因の半分、あるいは現在なら6割近くをがんが占めるものだと推測します。
そもそもがんとは、細胞の老化であり年を重ねるごとに増えていくものです。細胞分裂のたびに遺伝子のコピーミスが起こり、そこに喫煙、飲酒、ウイルス感染、放射線などの要因が重なることでがんが発生します。しかし、そうした外的要因がなくても、遺伝子の経年劣化による自然発生は避けられず、原因の6割は"運"とも言えます。だからこそ、生活習慣の改善だけでは不十分で、早期発見が極めて重要となります。
また、がんは1個の細胞から1cmになるまでに20年程度かかる一方、1cmから2cmになる時間はその10分の1程度であり、検診で見つけられる"早期がん"の期間は意外に短いのです。さらに、がんは症状を出しにくい病気であり、1~2cm程度の早期がんではほとんど症状が出ないため、「症状がないから大丈夫」という考えは危険であります。このため、住民検診や職域検診で定期的に受けることが重要であり、胃がん・子宮頸がん・乳がんなどは2年に1度、肺がんは毎年という国の方針もあるのでぜひ検診には行っていただきたいです。
働く世代のがんの特徴として、55歳までは女性の患者数が男性より多く、これは子宮頸がんと乳がんという二つのがんが若い年代で増えるからです。女性の社会進出と定年延長により、職場でがんと向き合う人は今後さらに増え、定年が70歳になる社会では、男女とも2割以上が退職前にがんになる可能性があり、「会社員の5人に1人以上ががん」という社会を前提に職域がん対策を考えなければなりません。
予防については、交通事故に例えて「安全運転+シートベルト」と同じく、がんも「生活習慣の改善+がん検診」の二段構えで備えるべきであります。生活習慣面では、禁煙と受動喫煙対策、飲酒を控えること、ウイルス感染対策、糖尿病管理、長時間座位を減らすことなどが重要です。特に長時間座ることは見過ごされがちだが、座らない人より82%がんで死にやすいというデータも紹介され、在宅勤務が増える中での注意すべき点であります。また、ピロリ菌や肝炎ウイルスは一生に一度のチェックでよく、若い社員への導入も考えられること、子宮頸がんについてはHPVワクチンの接種が極めて重要であります。
検診制度については、住民検診は健康増進法に裏付けられ、国の指針と自治体の受診勧奨がある一方、職域検診には法的裏付けがなく、福利厚生として任意で実施されているのが現状です。ただし実態としては、胃がん・大腸がん・肺がんの6~7割、乳がん・子宮頸がんでも4割程度は勤務先で受けており、職域検診こそが主戦場であります。そのうえで、職域検診の最大の弱点は精密検査につながりにくく、「要精密検査」は"がんの疑い"ではなく"早期発見のチャンス"だという認識を企業が持つ必要があります。定期健康診断と組み合わせて実施することが、受診管理上大きな意味を持つことは確かです。
さらに、企業アンケートでは、障がい者向けのわかりやすい資料整備は一定程度進んでいる一方、外国籍社員やLGBTへの対応はまだ十分ではないことが示され、多様な社員が受けやすい検診環境づくりも今後の課題となります。また、経営者の関心度が高い企業ほど、検診受診率も治療と仕事の両立支援も進んでおり、経営層の理解と関与が職域がん対策を左右するものでございます。
最後に、企業アクションが提供する動画、メールマガジン、eラーニング、コンソノート等を積極的に活用し、各企業で自社に合った形の職域がん対策を継続してほしいと思います。

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