2026/02/16
令和7年度 企業コンソーシアム全体研修会 報告
(ページの最終更新日:2026年02月16日)
令和7年度 企業コンソーシアム全体研修会を実施しました。
日時:2025年11月28日(金)
形式:Zoomウェビナー
ご挨拶
厚生労働省 健康・生活衛生局 がん・疾病対策課 課長補佐 栢沼 優二 様
がん患者の3人に1人が働く世代と言われ、毎年10万人以上の働く世代の方々が罹患しています。医療の進歩で、今は発見が早ければ早いほど、通院しながら仕事を続けることができます。仕事をしながら通院される方は男性で19.1万人、女性では30.8万人です。しかし一方で、がんと診断を受けて退職・廃業してしまう人も2割近くになっており、仕事と治療の両立支援はまだまだ対策が必要な状況です。本日はがんサバイバーの実体験に基づく両立支援や、がん患者から見た職域における支援など、実例に即したお話がありますので、みなさまの職域でのがん対策の一助になれば幸いです。
特別講演①
健康診断でみつかった2つの『がん』
企業アクション認定講師 安部 文子 様
私自身が乳がんに罹患したのは2018年のときです。手術の後、「ホルモン治療が5年間続きます、そして放射線治療が週に5日、5週間続きますよ」と言われ、仕事はどうしようと思いました。そこでNPO法人J.POSHの季刊誌を再び見て、自分がいかにネットなどの情報で得た、偏った情報やエビデンスのない情報に進もうとしていたか気づくことができました。結果的に週5日間、5週間の放射線治療とホルモン治療を、仕事を続けながら受けることができました。この放射線治療自体は、本当に短時間です。お会計をして病院を出るのに、私の場合、大きな病院でしたが30分ぐらいしかかかりませんでした。会社に相談したところ、お昼休みの時間を30分長く取らせていただき、その分終業時刻を30分遅らせるという個別の措置をとっていただきました。入院は5日間、会社を休んだのは1週間だけで、あとは無理なく治療を続けられました。
しかし2023年、今度は健康診断の便潜血検査で大腸がんが見つかり、毎年検査を受けていたのですが、初めての再検査でも進行がんと診断されました。再検査をすぐに受けてよかった、再検査で見つけてくれてありがとうと、本当に感じました。大腸がんのときは10日間の入院で2週間会社を休みましたが、それだけで仕事に復帰できました。やはりいずれのがんも早く見つかったのでどちらも抗がん剤はせずに仕事に復帰することができました。
がんはどんなに早く見つかっても、命と、それから死と向き合う病気です。乳がんのホルモン治療は、最初は5年と言われましたが、今は10年になっており、3ヶ月ごとの通院、1年ごとの検査も行っています。大腸がんも3ヶ月ごとに血液検査、それからCT、内視鏡を順番に実施し、これも5年間続くと言われています。しかし自分ががんに罹患したことで、仕事について、自分の命のこと、支援について向き合うきっかけになったと考えています。
私からお伝えしたいことは3つあります。1つは「同じがんでも症状は人それぞれ」であること、その病気になって自分がどのように感じるかも人それぞれです。聞きづらいかもしれませんが、ぜひ直接話を聞いてください。2つめは「再検査の重要性」です。初めての再検査でも進行していることがあります。最後に3つめは「健康なときに持っていた情報が役に立つ」とういことです。会社が安心して相談できること、がんに関する情報などを発信してもらえると心強いです。
特別講演②
がん患者のペイシェント・ジャーニーを支える
一般社団法人全国がん患者団体連合会 理事長 天野 慎介 様
私自身は2000年の秋、27歳のときに悪性リンパ腫と診断されました。がんを告知された後の記憶がなく、頭は真っ白でした。様々な研究データがありますが、がん患者さんの概ね2割から4割程度は抑鬱状態にあると言われています。AYA世代(15~39歳)のがん患者のアンケート調査で「治療中に相談したかったこと」についての回答は、「後遺症・合併症のこと」が79.6%、「経済的なこと」が71.4%、「仕事のこと」が62.5%とあります。対して「相談したかったけどできなかったこと」の回答も、52.2%の人が「仕事のこと」と回答しています。
がん経験者が直面する痛みは大きく分けて4つ、「身体の痛み」「心の痛み」「社会的な痛み」「尊厳の痛み」です。特に女性特有のがんは若年層でも発症例が多く、働く世代の女性のがん患者をどう支えるかも重要です。がんの治療には様々な副作用もあり、私の場合は髪の毛、まつ毛や眉毛などの脱毛があり、見た目もかなり違って見えました。ほかにも吐き気や倦怠感などもありますが、現在は副作用を抑える支持療法も進歩してきています。薬物療法の新しい治療として免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤なども出てきており、仕事と治療の両立もできます。病院ではチーム医療の体制があり、がん相談支援センターもがん診療連携拠点病院には必ず設置されています。
がん患者のペイシェント・ジャーニーについてまとめますと、がんと診断され、治療・サポートを受けて次へ進みます。がん患者は病院を一歩出れば生活者です。もちろん病院が重要ですが、治療と仕事の両立など、がん患者さんを支えることは社会全体でできることなのです。
令和7年度企業コンソーシアム活動について
企業コンソーシアム座長 / 大同生命健康保険組合 常務理事 増岡 博史 様
企業コンソーシアムは「自社と他社の従業員のがんから守るために」という理念のもと、職域におけるがん対策の推進において社会に貢献することを目指しています。なかでも「コンソ40」は当活動の中核を担う組織として、講演や事例発表を行うコンソ40運営会議のほか、個別テーマを設定して分科会も開催し、これまで「職域でのがん検診に関する情報の取扱」や「企業における治療と仕事の両立支援」についてパートナー企業のみなさまへ役立てられることがないか議論を重ねています。なお、当アクションでは、がんサバイバーによる出張講座、またがん研有明病院とのコラボ企画として、がん専門医の出張講座もご用意しています。当アクションのパートナー企業・団体の皆様は低廉な料金でご利用いただけます。自社のがん対策やがん教育にご活用いただければとの思いから、この場をお借りして、ご紹介させていただきました。
総括
東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川 恵一 先生
がんは、知ることでコントロール可能な病気です。しかし私も膀胱がんの経験者ですが、偶発的な遺伝子のダメージによるものもありますので、やはり早期に発見することが大切です。学校でがん教育が必修化されていく一方、大人ががんを学ぶ機会はありませんが、企業アクションのe-ラーニングや出張講座などを利用し、社員にがんを知っていただくには職場が最適です。
がん治療には医療費の問題もありますが、高額療養費制度は大きな仕組みですので、これも適切に議論していく必要がありますし、放射線治療も両立支援に役立ちます。そうした仕組みや治療法があることを働く世代が知ることが肝要です。ぜひがん対策推進企業アクションに賛同いただき、みなさんの会社や関連企業にもこの取り組みを伝えていただければと思います。