2026/02/03
令和7年度「がん検診受診率向上推進全国大会」を開催しました
(ページの最終更新日:2026年2月3日)
今年度は福岡県の電気ビルみらいホールにて、WEB配信を併用したハイブリッド形式にて全国大会を開催しました。
【主催者挨拶】
厚生労働省 健康・生活衛生局 がん・疾病対策課 がん・疾病対策推進官 吉原 真吾 氏
吉原 真吾 氏
我が国において、がんは患者様ご本人やご家族の負担となっているだけではなく、社会経済的な大きな負担となっています。がんは皆様がそれぞれにがん検診を受け、早期発見・早期治療することが非常に有効です。しかしながら、我が国のがん検診の受診率は、諸外国と比較しても、依然として低い水準であり、目標としている受診率60%へ未だ達成できていないという状況です。本日お集まりの皆様方には、この大会への参加を機に、がんに関する知識を深めていただき、ご同僚、ご家族等へがん検診を受けるようお声がけいただければと思います。
【国のがん対策の現状について】
厚生労働省 健康・生活衛生局 がん・疾病対策課 がん・疾病対策推進官 吉原 真吾
氏
がんは誰でもなるもので、生活習慣や感染など様々な要因で発生します。喫煙や過度の飲酒、また食生活、太りすぎや痩せすぎ、運動不足、またウイルスや細菌への感染が主な要因です。
毎年約100万人ががんになり、38万人の方ががんで亡くなっています。生涯でがんになるリスクは男性が62%、女性が48%で、国民の2人に1人ががんになる、また継続して治療中の方が394万人という現状です。1981年以降、死因の1位ががんで、4人に1人ががんで死亡しています。がんは加齢によりリスクが上がり、社会全体の高齢化に伴い今後も増えることが予想されます。一方で、年齢調整死亡率は様々な対策の推進により減ってきており、着実に成果を上げています。特に、生活習慣の変化や検診の影響もあり、従来多かった胃がんが近年減少してきています。
国の対策として、2006年にがん対策基本法が成立し、がん登録で様々なデータの収集を進めています。がん対策基本法に基づき、国はがん対策推進基本計画を作成し6年ごとに検討を加え、令和5年3月より4期の計画を、がん対策推進協議会とともに作っています。がん対策には様々な側面があり、がんの予防、がん治療、がんになった後も生活していく就労支援など人生のサポートなどです。また、基盤的な取り組み、我々を支える機能として、人材育成や研究があります。
国は5つのがんの検診を推進しており、がん種により異なりますが、受診率が4割から5割ぐらいです。受診率は目標60%を掲げていますので、更なる推進が必要になります。検診はその後の早期治療に結びつけるために行うものですから、要精検となったら精密検査を受けることが必要です。精密検査を受ける割合の目標は4期計画で90%としていますが、7割ぐらいのものもあり、まだまだ取り組みが必要です。
がん検診は大きく分けて対策型と任意型あります。対策型検診は、対象集団全体のの死亡率を下げるのが目的ですので、国は様々なガイドラインやマニュアルを出しています。国の指針で定めるがん検診は、胃がん、子宮頸がん、肺がん、乳がん、大腸がんの5つです。なお、肺がんについては来年度の指針より喀痰細胞診は外す方向性となっています。
がん検診は3割から5割ぐらいは職域で受けるという現状です。職域で受けた検診を自治体が把握するのが難しいのですが、まずは第1歩の取り組みとして、市町村がご本人から検診状況を報告していただく形で把握するということが検討されています。将来的には自治体検診のDX化を見据えつつ、電子的なやり方で、職域での検診情報を自治体が把握できる方法を検討している次第です。がん検診未受診の理由は、健康状態に自信がある、いつでも受診できるという回答が多く、がん検診の意義というものの理解不足なので、やはり周知・啓発が重要です。がん予防という形で様々な周知資材を作っていますので、こうした資材も活用し、がん検診の普及啓発を図っていただきたいと思います。
医療の進歩により、がんの平均在院日数は短くなり、昔は入院で抗がん剤を投与していたものが今は外来で通院する、手術にしても早く退院できる時代です。仕事をしながら通院しているがん患者は49万9,000人と増えてきていますので、治療と仕事の両立は今後も引き続き重要です。しかしやはりがんを契機に休職・退職される方が一定数います。今の日本の社会は働き続けられる環境だと答える方が45%ぐらいなので、まだまだ取り組みが必要と考えています。国としては両立支援コーディネータのがん診療拠点病院等への配置や、ハローワークでの長期療養支援事業を実施しています。産業保険総合支援センターの取り組みをはじめ、治療と仕事の両立支援ガイドラインを作成し、皆様にも実践していただけるように取り組み、企業アクションでも様々な普及啓発を行っています。
【がん対策推進企業アクション事業説明】
がん対策推進企業アクション事務局長 山田 浩章 氏
この事業は、がんで亡くなる日本人をどうやって減らすかを目的とし、特に職域にフォーカスしてがん対策の普及啓発を行い、ご登録いただいたパートナー企業様や健康保険組合様に様々な情報提供等をしています。主な取り組みとしては、がん検診の受診率向上、科学的根拠に基づく情報の提供、治療と仕事の両立支援の3つです。具体的な施策はセミナーの開催、YouTubeやメルマガのツールを使った情報提供、eラーニングによる教育のシステム提供、医師やがんサバイバーによる出張講座も実施しています。また年間の中で最も優れたがん対策と評価された企業様へ、年度末に厚生労働大臣表彰という表彰制度を設けています。
17年目のこの企業アクションは登録社数6,900社となっており、直近では年間1,000社ほど新たにご参画いただいき、福岡県の方にも多くご登録いただいております。まだ登録されてない企業様がいらっしゃいましたら、ぜひ本日のセミナーをきっかけに新規のご登録をお願いしたいと思います。
【福岡県知事ビデオメッセージ】
東福岡県 服部誠太郎 知事
服部誠太郎 知事よりメッセージをいただきました。
【福岡県のがん対策の現状について】
福岡県保健医療介護部 がん感染症疾病対策課 がん対策係 主任主事 宮澤
卓也氏
本県では2021年に約4万例が新たにがんと診断されており、がんは昭和52年以降、本県の死因の第1位、本県の死亡者総数のうち約25%を占めているという現状です。
本県のがん検診受診率は、計画で策定している目標の60%に達していない、また全国を下回っています。このような現状を踏まえ、がんによる死亡者数を減らすため、がん検診の受診促進を含め、がん対策の推進が重要となってきています。
がん対策推進企業アクションということで、本日は職域におけるがん対策をメインにご説明させていただきます。ご紹介いたします本県の事業が、「福岡県
働く世代をがんから守るがん対策サポート事業」です。この事業ではがん検診の普及啓発、受診勧奨やがんの治療と仕事の両立に取り組む県内の事業所を募集し、「福岡県
働く世代をがんから守るがん対策サポート事業所」として登録しています。登録いただいた事業所の皆様におきましては、事業所内において、がん検診の推進、がんの治療と仕事の両立の推進に取り組んでいただいています。
この事業は、がん検診の重要性の理解や、がん検診を受診しやすい環境作り、がんの治療と仕事を両立しやすい環境作りに取り組んでいただくことで、全国に比べて低いがん検診受診率の向上を図り、早期発見・早期治療により、がん死亡数を減少させること、がん患者の方が治療を続けながら働くことができる環境を整備することを目的に事業を展開しております。こちらにご登録いただいた事業所については、県のホームページにお名前等を掲載させていただき、従業員の健康をサポートする体制がある事業所としてのイメージアップや人材の確保、医療費の増大など、経営問題の解決などに繋がるほか、福岡県が制作するがん啓発グッズの提供を無料で受けられるといったメリットがあります。
次に登録いただいている事業所様の取り組み事例についてご紹介いたします。「がん検診推進部門」としては、がん検診費用は全額会社で負担、検診の予約は社員とスケジュールを相談して会社が一括で予約、全社員を対象に健康作りに関する勉強会を定期的に実施といった取組があります。「がんの治療と仕事の両立推進部門」としては、在宅勤務や1時間単位での有給取得のように、就業休暇制度を整備、就業規則や休暇制度の社内での周知し、がんと診断された場合はその従業員に保険金が支払われ、治療費などをサポートするといった取組があります。
こちらの取り組みについて、登録事業所の皆様から毎年、取組報告書を提出していただき、他事業所の参考となる優良な取り組みを実施している事業所様を「福岡県がん対策よか取り組み事業所」として、知事表彰を実施しています。表彰の実施とあわせて、取り組み内容について県のホームページに掲載し、広く周知することで、他の事業所の皆様における取り組みの活性化を図っていっています。
登録についてですが、福岡県のホームページで「がん対策サポート」で検索いただければ、こちらの事業を紹介しているページがあります。そこに申し込みフォームがありますので、登録ご希望の事業所様は必要事項を入力していただき、県で内容を審査して、後日登録書が届いて登録が完了という流れになります。本日の説明でご関心をお持ちいただいた事業者の皆様については、ぜひ登録をご検討いただきお申し込みをお願いします。
その他のがん対策に関する啓発事業について説明します。まず、「福岡県がん対策推進企業等連携協定」についてです。こちらは、がん健診の受診勧奨等の推進のため、企業の皆様と連携してがん対策の推進を図る取り組みでございます。県主催のがん啓発のイベントや、県庁のロビーを活用した啓発などを企業の皆様と連携して実施しています。次に、「Cプロジェクトによるがん検診促進事業」です。CはキャンサーのCを取っています。Cプロジェクトとは、若年女性のがん検診促進事業の取り組み強化のため、令和4年度に発足した県内の大学等の学生との共同検討組織でございます。今年度からは啓発対象をさらに広げ、主にがん検診受診対象前の世代の視点を取り入れた啓発資材の共同制作、広報を実施しています。
福岡県のがん対策についての問い合わせ先は、福岡県保健医療介護部、がん感染症疾病対策課になります。
電話番号:092-643-3317
メール :gantaisaku@pref.fukuoka.lg.jp
最後に、福岡県のがん検診受診率向上イメージキャラクター「検診くん」について、紹介させてください。こちらのキャラクターは、福岡にも縁がある戦国武将の黒田氏の家臣、母里太兵衛をモチーフにしています。母里太兵衛は大酒飲みで有名な逸話がある武将ですが、検診くんはがん検診のイメージキャラクターということもあり、手に持っている杯は、下に向け、その杯には「適正飲酒」と刻まれております。ぜひ、検診くんを覚えて帰っていただき、がん検診を考えるきっかけにしていただければ嬉しく思います。
自分のため、大切な人のためにがん検診を受けましょう。
【働く人に知ってほしい「がんのすべて」】
東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川 恵一
氏
がんは知ることで克服できる病気ですが、そもそも日本は世界で最もがんが多い国です。その世界一のがん大国の中で、福岡はワースト5位となっています。がんは基本的に老化により増えるので、高齢者が多い県では死亡率は高いです。
私は臨床医でありまして、40年間がんの医者をやってきました。3万1,000名ぐらい患者を診てきましたが、ほとんどの方が、がんを突然降って湧いた災いであると考えています。しかしこれは間違いで、がんは病気の中では相当コントロール可能な病気です。早期発見できれば、95%完治します。日本を除くほとんどの先進国ではがん教育が行われていて、日本でもがんの教育が始まっています。中学高校の教科書にもがんについて記載されていますが、あまり知られておらず、マスコミも報道をしません。本来知っておくべきことを、日本の大人たちは習っていない。これは相当問題だと思っています。日本は保健の授業があまり行われてこなかったこともあり、国別のヘルスリテラシーは日本が最下位です。
私もがんの患者です。自分で超音波検査をして膀胱がんを発見しました。実はがんの最大の特徴は症状を出しにくいことです。私も全く症状がありませんでした。強い痛みが出るのは、亡くなる3ヶ月くらい前の終末期です。私の場合は3泊入院で仕事に復帰していますので、早期発見こそが治療と仕事の両立の鍵と言えます。
がんは6割が治りますし、早期発見であれば9割が治ります。まずがんにならないような生活習慣を送ることです。遺伝が原因のがんは5%程度で、ここに乳がん、卵巣がん、前立腺がん、すい臓がんが含まれます。
がんは細胞の老化です。がん細胞は毎日数千個も発生していて、全てのがんは上皮から出ます。その細胞の遺伝子が傷つくことで細胞が不死化する、これががんです。遺伝子を傷つける要因として、喫煙、飲酒、ウイルス感染、放射線などが挙げられます。しかし最大の要因は自然発生なのです。遺伝子は時間の経過とともに必ず傷むもので、要するに生活習慣が完璧でもがんはできます。一言で言うと不運です。
発見可能ながんは1cm~2cmの間です。ここで症状を出すことはまずないので、検診での発見が望ましいです。一生涯で見ると男性のがん患者が多いのですが、55歳までは女性のがん患者数が多いです。子宮頸がんと乳がんという女性特有のがんが、老化とは違う要因で若い頃から増えるからです。そして定年の延長もあることから、がんは働く人の病気になったのです。仮に定年が70歳になれば、会社員の5人に1人以上ががんになる、これは大変な話です。
したがって会社でのがん対策が必要になります。まずがんにならないような生活習慣が大切ですが、運悪くがんになった場合には、がん検診で早期に発見する。リスクに対して2段構えに対処することです。煙草は男性で8年、女性で10年寿命が縮まります。酒は百薬の長というのも今は死語で、1滴も飲まないのが健康です。また、長時間座り続けることでもがんのリスクが上がりますし、糖尿病はがんリスクを2割増やし、すい臓がんのリスクが2倍になります。有酸素運動と筋トレも大事です。
しかし、日本はがん検診の受診率が世界的に見て低いです。どのがんもそうですが、ステージ1とステージ4では、5年生存率に雲泥の差がありますので、検診での早期発見が大切です。そしてがんになっても、治療しながら働くことができます。放射線治療は通院回数も少なく、1回の治療は7分足らずです。これで手術と同等の効果がありますので、治療と仕事の両立が可能な時代です。学生時代にがん教育を受けてこなかった、今の大人にがん教育が必要で、企業アクションはそれを大きなミッションとしています。
【トークセッション】
ゲストのみなさまと中川恵一先生でトークセッションを行いました。登壇者は以下のとおり。
福岡県 保健医療介護部がん感染症疾病対策課 がん対策係 主任主事 宮澤 卓也 様
九州電力株式会社 人材活性化本部 健康推進グループ 健康推進グループ長 立花 義人 様
九州電力株式会社 人材活性化本部 健康推進グループ 保健師 添田 理沙 様
九州電力株式会社 人材活性化本部 健康推進グループ 産業医 早崎 裕美 様
九州旅客鉄道株式会社 人事部担当部長兼人事部 勤労課長 池田 裕記 様
九州旅客鉄道株式会社 人事部勤労課 健康管理室長 産業医 浅海 洋 様
九州電力や九州旅客鉄道の取り組みや現状、課題を共有されました。健康経営の重要性ついてが話題となり、働く時間が延長してきている現代で、がんを防ぐための健康推進が必要であることをお話しされました。