トップ>>お知らせ・イベント情報>>令和6年度 統括セミナー開催報告

2025/03/24

令和6年度 統括セミナーを開催しました

(ページの最終更新日:2025年3月24日)

令和6年度「がん対策推進企業アクション統括セミナー」を、3月7日(金)、東京都千代田区の星陵会館にて開催しました。また、一般の企業様向けにはオンラインでの同時開催となりました。
当日は、今年度優れた取り組みを行ったがん対策推進パートナー賞4社の表彰とともに、厚生労働大臣表彰を行い、最優秀賞は資生堂健康保険組合 様に贈られました。
また、受賞企業の取り組み事例発表や、厚生労働省から「我が国におけるがん対策について」、南谷 優成氏(東京大学医学部附属病院 総合放射線腫瘍学講座 助教)から「令和6年度推進パートナー企業・団体向けアンケート調査結果報告」について、アドバイザリーボード議長を務める中川 恵一 氏(東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授)から「企業アクションの進化と、職域がん対策の今後」の講演が行われました。

参加者集合写真

以下は本セミナーの概要報告です。

令和6年度 がん対策推進企業 表彰式

  • 厚生労働大臣表彰[最優秀賞]
    (プレゼンター:厚生労働省 健康・生活衛生局 がん・疾病対策課長補佐 磯 高徳 氏)

資生堂健康保険組合 (理事長 兼 株式会社資生堂 ピープル&カルチャー本部 ピープルサービス&エクスペリエンス部長 渡邉 幸男 氏、常務理事 松戸 美穂 氏、保健事業担当 湯河 真 氏、保健事業担当(看護師) 佐藤 浩子 氏)

プレゼンター:磯高徳氏と資生堂健康保険組合(理事長 兼 株式会社資生堂 ピープル&カルチャー本部 ピープルサービス&エクスペリエンス部長 渡邉 幸男 氏、常務理事 松戸 美穂 氏、保健事業担当 湯河 真 氏、保健事業担当(看護師)  佐藤 浩子 氏)

受賞理由:
貴組合におけるがん検診の受診率向上(5がん平均受診率85%)および受診後の有所見者フォローに対する包括的な取り組みを高く評価しました。
がん検診を法定健診と同日に実施し、ネットワーク健診により全国一律で希望する医療機関や受診日時を選べるようにしていること、また、女性医師が対応できる検診機関が分かるように明示するなど加入者のニーズに応じた配慮を行っていることも優れています。
また「社員がいきいき働くには家族の健康は欠かせない」との考えから、被扶養者健診も社員のがん検診同様、自己負担金を廃止し、本年度受診率80%まで向上させたことも貴組合の地道な努力の成果だと評します。
検診受診後のフォロー体制も確立しており、統一判定によるデータ管理にもとづく二次受診勧奨を徹底し、検診を受けさせっぱなしにせず、有所見者に対して精密検査や治療を受けるよう真摯にはたらきかけている姿勢も素晴らしいと考えます。
一方、女性の健康に対する取り組みも高い評価に資するものだと判断しました。女性加入者が8割を占める特性を考慮し、婦人科検診に注力して全国健保平均より約40%高い受診率まで向上させている点、子宮頸がん予防のためHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種費用を公費負担年齢以上の28歳~45歳を対象に全額補助するという先進的な取り組みを行っている点は傑出しています。
以上のことから、このたび資生堂健康保険組合を最優秀賞に選定しました。

  • がん対策推進パートナー賞
    (プレゼンター:がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長 中川 恵一 氏)

[検診部門]
株式会社堀場製作所 (コーポレートオフィサー 管理本部長 山下 泰生 氏、管理本部 グループ総務センター長 堀井 愛士 氏、管理本部 グループ総務センター 安全健康環境推進部 健康管理チーム 人見 和美 氏)

プレゼンター:中川恵一氏と株式会社堀場製作所 (コーポレートオフィサー 管理本部長 山下 泰生 氏、管理本部 グループ総務センター長 堀井 愛士 氏、管理本部 グループ総務センター 安全健康環境推進部 健康管理チーム 人見 和美 氏)

受賞理由:
健康保険組合と連携し、がん検診受診の意向調査や未回答者へのフォローアップを通じて、受診率向上を図っています。特に非正規社員にも配慮し、受診時間の就業時間扱いや休暇取得の推奨など、柔軟な業務対応を実現しています。
また、健康診断と連動した禁煙啓発や、女性特有の健康課題に対するセミナー実施など、多角的なアプローチで社員の健康意識向上に取り組んでおり、胃がん検診の推奨検査方法の見直しや産業医と主治医の連携を通じた復職支援など、個別対応にも注力しています。
さらに、健康保険組合広報誌や社内サイネージを活用した啓発活動、ピンクリボン運動への協賛など、地域社会や家族への影響力も広げています。

[治療と仕事の両立部門]
P&Gグループ健康保険組合(常務理事 日野 正樹 氏)

プレゼンター:中川恵一氏とP&Gグループ健康保険組合(常務理事 日野 正樹 氏)

受賞理由:
5がん検診の受診データを詳細に管理し、未受診者への勧奨や啓発リーフレットの送付を徹底しています。これにより、5がん検診の受診率は全国平均を大きく上回り、さらにオプション検査を含む全費用を健保で負担することで、受診のハードルを下げる取り組みを実現しています。
また、社内産業医や保健師と連携した就業相談や柔軟な勤務体系の提供、Well-beingプロジェクトを通じた健康啓発セミナーや管理職へのトレーニングなど、多角的な健康支援体制を確立しています。
さらに、家族に対しても従業員同様、がん検診の受診データを管理し、未受診者には個別の受診勧奨や啓発活動を実施するなど、家庭にまで健康支援の範囲を拡大しています。このような家庭単位での取り組みは、健康意識を家庭全体で高める効果を生み出しており、同組合の先進的な姿勢を象徴しています。

[情報提供部門]
オリンパス株式会社(人事EHS健康推進マネジャー 大橋 宏樹 氏)

プレゼンター:中川恵一氏とオリンパス株式会社(人事EHS健康推進マネジャー 大橋 宏樹 氏)

受賞理由:
健康保険組合と連携ながら健康診断を運用し、大腸がん、胃がん、乳がん、子宮がん、前立腺がんなどの主要な検診の費用を全額補助し、従業員側の負担を大きく軽減しています。この取り組みにより、従業員が安心して検診を受けられる環境を整え、がんの早期発見・治療の実現を目指しています。
また、がんや心疾患などの治療に年12日の特別休暇を付与。不妊治療にも月1日の休暇を設けるなど、従業員の治療と仕事の両立支援体制を整備しています。これらの制度は、従業員が抱える治療への不安を軽減し、長期的な健康維持とキャリア形成を後押ししています。
さらに、がん検診に関するeラーニングを全従業員に実施し、がんの基礎知識、健康診断、生活習慣の改善へのアドバイスだけではなく、がんと診断された従業員の体験記なども紹介することで、がんへの理解を深めるとともに、職場全体でのフォロー体制を共有。これにより、従業員間の健康意識の向上と安心感の醸成に寄与しています。

[中小企業部門]
株式会社フジタ建設コンサルタント(代表取締役 藤田 達也 氏)

プレゼンター:中川恵一氏と株式会社フジタ建設コンサルタント(代表取締役 藤田 達也 氏)

受賞理由:
毎月定期的に、企業アクションの情報を活用し、がんに関する中川先生の動画や関連情報をグループウェアを通じて全社員に配信。がんに関する知識の普及を図り、従業員の健康意識を高めています。
また、定期健診時にはがん検診の重要性を周知し、オプション検査費用を最大5,000円まで助成することで、検診受診率100%を実現しています。
さらに、両立支援コーディネーター資格を持つ社員を配置し、治療と仕事の両立をサポートする体制を整備。「両立支援プラン」を作成し、医療関係者や家族との連携を図るなど、復職支援を実施しています。
また、年次有休とは別に時間単位で取得可能な「治療等休暇制度」を導入し、抗がん剤治療などに活用できる柔軟な休暇制度を整えています。
加えて、社内のバリアフリー化や全トイレへの手すり設置、治療中の従業員に対する経済的サポートや業務の代替要員整備など、細やかな配慮を実践。不安なく復職できる環境を提供しています。

令和6年度 表彰企業 事例コメント

  • 厚生労働大臣表彰[最優秀賞]
    資生堂健康保険組合 保健事業担当 湯河 真 氏
資生堂健康保険組合 保健事業担当 湯河 真 氏
資生堂健康保険組合 スライド内容

社員の5がん検診の受診率平均は85%で、乳がん検診は91%、子宮頸がんは80%です。当健保組合の最大の特徴は女性の加入者が8割を占めていることで、受診率は全国健保組合の平均と比較して30~40%高くなっています。検診結果が要精密検査や要医療だった方にニ次受診勧奨のご案内をお送りし、いつどこの病院に行ったかを回答していただく仕様としてしっかりフォローアップしています。また被扶養者(家族)の健診も今年ついに受診率80%の大台にのせることができました。これには2019年に家族の健診も社員のがん検診と同様に自己負担無しで受診できるようグレードアップしたことと、年間を通じて間断ない受診勧奨をあらゆる方法で実施することが奏効したと考えています。がん検診の啓発活動としては、「がん対策推進企業アクション」のツールをフルに活用しています。中川先生の名著『がん検診のススメ』も20,000部を実費購入して加入者宅へ送付したことは大好評でしたし、他にも分かりやすい図説や動画などを健保広報誌のがん啓発記事とセットで情報発信しています。加えて昨年度から、女性の多い健保ならではのがん対策として、HPVワクチン接種費用を28歳以上45歳以下の女性を対象に全額補助しており、これまでに130名以上が接種してくれています。今後も「すべては加入者の健康のために」をスローガンにがん対策をはじめとする健康づくり事業を力強くすすめてまいります。

  • がん対策推進パートナー賞[検診部門]
    株式会社堀場製作所 管理本部グループ総務センター
    安全健康環境推進部 健康管理チーム 人見 和美 氏
株式会社堀場製作所 管理本部グループ総務センター 安全健康環境推進部 健康管理チーム 人見 和美 氏
株式会社堀場製作所 スライド内容

2012年、経営トップからこころとからだの健康づくり宣言が発出されたことを機に、こころとからだの健康づくりプロジェクトを立ち上げました。当社はがん検診を定期健康診断と同時実施し、費用は会社が全額負担をしています。実施体制の見直しとして、希望制であった乳がん子宮がん検診を、推奨年齢での基本項目とし、胃がん検診では検査方法の整備を行いました。健康管理システムの導入で未受診者を確実に把握し、生産ラインの社員では特に、就業時間中の業務上配慮を部署に依頼し、受診しやすい環境を整えました。社内のイントラやサイネージ等を利用し、がん検診受診体制や禁煙の啓発をしています。今後の方針としては、がん対策推進企業アクションやがん情報サービスの情報を利用しながら、未受診者への受診促進を行うほか、安全配慮義務、自己保健義務の指導の範疇として、所属長に働きかけるような体制を構築し、誰ひとり取り残さないフォローを心がけていきたいです。

  • がん対策推進パートナー賞[治療と仕事の両立部門]
    P&Gグループ健康保険組合 常務理事 日野 正樹 氏
P&Gグループ健康保険組合 常務理事 日野 正樹 氏
P&Gグループ健康保険組合 スライド内容

私たちはP&G日本法人の健保組合の運営にあたり、「今の健康+未来の健康」「予防+早期発見」「費用対効果」という方針と施策を掲げ、長期的視点で加入員の健康推進と疾病予防を行っています。がんの予防に関しては、5がん検診の費用は被扶養者家族も含め全額補助し、受診勧奨も会社と協力して啓発活動を行っています。支援制度は、個人のニーズに合わせた柔軟な勤務体制の提供、医療費の自己負担を大きく払い戻す医療付加金の提供、全事業所へ知見を持った産業保健師を配置し様々なプログラムや個人の適正配置を行っています。人々のウェルビーイングをサポートするのが当社の使命ですので、それを提供する社員のウェルビーイングも重視し、今後もがん対策に取り組んでいきたいと思います。

  • がん対策推進パートナー賞[情報提供部門]
    オリンパス株式会社 人事EHS健康推進マネジャー 大橋 宏樹 様
オリンパス株式会社 人事EHS健康推進マネジャー 大橋 宏樹 様
オリンパス株式会社 スライド内容

当社の事業活動としては内視鏡を中心とした機械を扱っていますので、まさにがんの早期発見と治療に向けた製品をご提供しています。がん検診は従業員および被扶養者に対し内視鏡も取り入れ、幅広い診断項目を全国どこでも受診できる体制を整え、精密検査対象者の受診勧奨も強化しています。両立支援に関しては、各拠点に健康管理室を設置し、産業医と看護職が常駐して対応をしています。情報発信については、定期的なニュースレター配信、e-ラーニング実施など工夫して進めています。グローバルの取り組みとして、2024年度にキャンサー・アウェアネス・スクリーニングという活動を開始しました。海外の拠点と連携した啓蒙活動として、グローバルな掲示板に取り組みを掲載し、会社として生活習慣改善に向けた意識向上を図ることを積極的に進めているところです。

  • がん対策推進パートナー賞[中小企業部門]
    株式会社フジタ建設コンサルタント 代表取締役 藤田 達也 様
株式会社フジタ建設コンサルタント 代表取締役 藤田 達也 様
株式会社フジタ建設コンサルタント スライド内容

創業当時から「会社の健康は社員の健康から」をモットーにしてきました。がん検診は出勤扱いで定期健康診断と同日受診とし、オプション検査も助成しています。特に女性の協会けんぽがん検診非該当年は、各市町村のクーポンを利用して会社が全額負担し、毎年受診してもらっています。毎月、中川恵一先生の動画を社内のグループウェアで配信しており、がんについて正確な情報や知識を得ることによって意識を共有し、すべてのがん検診の受診率100%を実現しています。また、体だけでなく心や社会的にも健康であってほしいと、職場環境の整備や社員同士の対話の機会の提供、業界団体や地域とのイベントなどを開催しており、社内では、エレベーターを使わずに階段を利用する取り組みや、地域の清掃活動を仮想の四国遍路に見立てる取り組みなど、経費をかけずに楽しく実施できる活動に取り組んでいます。

企業アクション事務局報告
がん対策推進企業アクション事務局 事務局長 山田 浩章 氏

がん対策推進企業アクション事務局 事務局長 山田 浩章 氏
がん対策推進企業アクション事務局 事務局長 山田 浩章 氏 スライド内容

私どもは職域でのがん対策を推進する国家プロジェクトで、現在16年目を迎えています。最近は中小企業の登録が増えており、50名以下の企業が80%を超えています。
自社と他社の従業員をがんから守るという目的の企業コンソーシアムは、国の制度だけではなくどのように職域で取り組むべきかを話し合うプロジェクトです。がん検診での個人情報の取扱いについてや、治療と仕事の両立支援についてどう運用すべきか活発に議論しています。女性特有のがん検診啓発を行うWorking RIBBONというプロジェクトでは今年、株式会社サンリオエンターテイメントの小巻 亜矢 社長とのコラボレーション動画を作成し、様々な啓発活動を行っています。そのほか、各地方で地方自治体と連携したセミナー開催を行っているほか、無料で利用可能なe-ラーニングのコンテンツも非常に好評をいただいています。公式YouTubeも新たな1分動画シリーズが配信開始しておりますので、ぜひご覧いただきたいと思います。

講演 「我が国におけるがん対策について」
厚生労働省 健康・生活衛生局 がん・疾病対策課 磯 高徳 氏

厚生労働省 健康・生活衛生局 がん・疾病対策課 磯 高徳 氏
厚生労働省 健康・生活衛生局 がん・疾病対策課 磯 高徳 氏 スライド内容

平成18年にがん対策基本法が制定され、日本のがん対策が進んできました。国はがん対策推進基本計画を定め、それに沿って都道府県もがん対策推進計画を策定します。がん対策推進基本計画は現在4期を数え、「がんの予防」「がん医療」「がんとの共生」を柱としています。がん検診は主に対策型検診と任意型検診に分けられ、対策型検診は対象者全体の死亡率を下げる目的で国が行っています。国の方針で定めているのは5つのがん検診で、最近は子宮頸がんにHPV検査単独法が新たに加わりました。国のがん検診受診率は60%ですが、まだ目標値には届かない現状です。働く期間が延びる中、実際に仕事を持ちながら通院している方はおよそ50万人です。がんの診断時に仕事をしていた方が約44%、そのうち退職配慮されたという方が約6割もいます。国としても、企業・医療機関・支援機関のトライアングル型支援を提唱し、治療と仕事の両立支援のガイドラインも定めています。がん患者様が治療と仕事を両立しやすい環境の整備、離職しても再就職について相談できる環境の整備が急務となります。

講演 「令和6年度推進パートナー企業・団体向けアンケート調査結果報告」
東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 助教 南谷 優成 氏

東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 助教 南谷 優成 氏
令和5年度 推進パートナー企業・団体向けアンケート調査結果報告スライド

昨年12月から今年の1月にかけて調査を行い、今回も1,052社から回答いただきました。約3割が20名以下の小規模事業者であり、約1割以上を1,000名以上の企業が、2割くらいを健保が占めています。がん検診受診率に関しては、全体的に横ばいか上昇傾向という印象ですが、国の目標は60%ですので、胃がんや乳がん、子宮頸がん検診はそこに届いていないという結果です。がん検診の3本柱は、有効性の確立した検診を行うこと、徹底した精度管理を行うこと、その2つの基盤の上に受診率対策があるべきと言われています。今年度初めて非正規雇用社員の検診の調査結果について、1,052社のうち非正規雇用者がいない4分の1を除いた、計789社から回答が得られています。非正規社員にも実施しているが社会保険適用者のみの実施が5割ぐらい、社会保険適用者以外も含めての実施が2割ぐらいと。計7割の企業で非正規社員にも実施し、「契約社員、時短社員、パート・アルバイト全てに実施している」の割合が最も多いという結果です。社会保険適用者に限定されている事業所が多い、健康保険の生活習慣病予防検診と併せて実施されているためではないか、あるいは一般的な企業よりもパートナー企業のがん対策が進んでいることを反映していると見られています。

直近3年間で実施率が向上している取り組みには、「がん検診費用を会社、健保で補助している」――これが今年の調査の8割です。「国が推奨している内容を従業員にも推奨している」が5割弱、「管理職から従業員に受診勧奨をするように管理職に通知している」が3割超です。両立支援の取り組みも、傷病休暇や病気休暇制度を実施している企業が増加傾向にあり、短時間勤務制度の導入や人事労務担当や上司などへ情報共有のための仕組み作りなどが挙げられます。

2023年3月に「職域におけるウイルス性肝炎対策に関する協力の要請について」と題した労基署通達が出されていますが、企業規模が大きくなればなるほど、肝炎ウイルス検査を実施しているところが多くなり、企業規模が小さくなるほど通達を知らないといった結果が得られています。一生に1度で済む検査ですので、実施を検討していただければと思います。アンケート調査によると、会社・団体が重視している疾患や症状として、がん悪性腫瘍が最も多く、その理由として会社の生産性や健康寿命の延伸に対する影響が挙げられました。

講演 「企業アクションの進化と、職域がん対策の今後」
がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード 議長
東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川 恵一 氏

がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード 議長 東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川 恵一 氏
がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード 議長 東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川 恵一 氏 スライド内容

日本は事実上世界1がんが多い国でありまして、その背景には急速な高齢化があります。生活習慣で一番重要なのは、タバコは吸わない、お酒は控えること、細菌・ウイルス感染に注意することです。また、座りすぎはがんのリスクを高めるというデータもあります。がんの原因は男性が43%、女性は25%が予防可能な要因で、それほど下がらない。つまり定期的ながん検診も大切になってきます。こうした検診は国民の努力義務です。中小企業の場合には協会けんぽの生活習慣病予防検診を受け、そして女性社員に乳がんと子宮頸がんのオプションをつければ、ほぼ対策型検診に相当します。日本の放射線治療は欧米の半分程度です。放射線治療は服を着替える必要もなく、入室から退室まで7分程度、これを5回やるだけで入院して全身麻酔の外科手術と同等の効果が得られ、99%以上保険がききますので仕事との両立にも最適です。
 がん対策はやはり、経営者ががんを知ることが大切です。大同生命と企業アクションが共同で中小企業経営者8,000名に大規模調査をしたことがありますが、経営者のがんに関する関心度によりがん検診受診率も相関しますし、両立支援も同様です。経営者の理解が社員をがんから守ります。経営課題として、企業でのがん対策は今後も非常に重要になってきます。

統括セミナー閉会挨拶
がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード 議長
東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川 恵一 氏

企業アクションを16年続けてきて、急速に職域におけるがん対策が進んできました。本日の発表にありましたが、中小企業で5つのがん検診の受診率が全て100%ということもできるものなのです。がん対策が大きな経営課題であると、トップの方々まず理解していくことが大事です。皆さんのような企業が増えることを期待しています。

動画メッセージを見る 動画メッセージを見る 動画メッセージを見る