2024/11/29
令和6年度
函館ブロックセミナー「職域におけるがん対策の最新情報」を開催しました
10月4日(金)に北海道ブロックセミナーを開催しました。
主催者挨拶
厚生労働省 健康・生活衛生局 がん・疾病対策課長補佐 磯 高徳 氏
日本のがん対策は「がん対策基本法」に基づき、第4期がん対策推進基本計画のもと、「誰ひとり取り残さないがん対策」を目標に、がんの予防・がん医療の充実・がんとの共生を柱としています。がんの早期発見・早期治療には検診が重要で、職場での受診率向上が鍵です。そのため「がん対策推進企業アクション」が企業に働きかけ、現在5,500社が協力しています。本セミナーを通じ、がん対策の情報を職場に活かしていただければ幸いです。
挨拶・ビデオメッセージ
北海道知事 鈴木 直道 氏
本日は「がん対策推進企業アクション北海道ブロックセミナー」にご参加いただきありがとうございます。がんは早期発見・早期治療が重要ですが、北海道は罹患率や死亡率が高い一方で、検診受診率は低いことが課題です。関係者が一丸となり、検診受診率向上などに取り組まなければなりません。安心して長く働き続ける職場づくりを進めていくためには、多くの皆様が、がんについて正しく理解することが重要です。本日の講演を通じ、がんに対する理解を深めていただき、職場における理解促進にお役立ていただければ幸いです。道としましては、北海道がん対策推進計画に基づき、様々な取組を推進してまいりますので。お力添え賜りますようお願い申し上げます。
ご挨拶
函館市長 大泉 潤 氏
がん対策推進企業アクション北海道ブロックセミナーのご盛会をお喜び申し上げます。
中川先生をはじめ関係者の皆様におかれましては、日頃より、がんに関する正しい理解の普及・啓発活動をはじめ、がんとの共生社会の実現に向けて、様々な取り組みを進められておりますことに、深く敬意を表する次第であります。
また、本セミナーの函館開催にあたり、ご尽力いただきました厚生労働省の皆様および講師の皆様をはじめとする関係者の皆様に、厚く御礼申し上げます。
本市の人口は昭和55年の34万5,000人をピークに減少が続き、今年8月末時点では23万7,509人と極めて深刻な状況です。若者の転出超過などによる社会的な要因もありますが、少子高齢化に伴い、死亡数が出生数を上回る自然減が進んでいることも大きな要因となっております。
中でもがんで亡くなる方が多く、令和4年度の統計では年間死亡数約4,300人のうち28.3%にあたる約1,200人が、がんで亡くなっており、死亡原因のトップとなっております。
市といたしましても、がんの早期発見・早期治療の取り組みを進めることは、非常に重要であると認識しており、40代を対象としたがん検診の無料クーポン券の配付をはじめ、様々な事業を推進しているところであります。
また、本市では「健康寿命日本一」を目指し、市民の健康寿命の延伸に力を入れており、10月19日には、パリ・パラリンピックの車いすラグビーで金メダルを獲得した函館出身の池崎大輔選手もお招きして、健康と運動をテーマとしたイベント「ウェルネススタジアム」を開催する予定となっておりますが、こうした事業を通じて幅広い世代に向けたさらなる健康意識の醸成を図ってまいりたいと考えております。
本市では、障がいや病気があっても地域の一員として尊厳を持って活躍できる社会の実現に向けて、インクルージョンの理念の普及・啓発に努めており、がん対策企業アクションの目的でもある「がんになっても働き続けられる社会」の構築に通ずるものがあり、その理念に深く共感しております。
市といたしましても、がん治療による療養生活が向上するよう、ウィッグの購入費用を助成しているほか、膀胱がんや前立腺がんの手術を受けられた方などが安心して外出できるよう、男性用トイレへのサニタリーボックス設置・普及などに取り組んでいるところであります。
今後におきましても、市民が安心して健やかに生き生きと暮らせるまちの実現に向けて、様々な施策に取り組んでまいりますので、皆様のご支援・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
がん対策推進企業アクションセミナーの今後ますますのご発展と、関係者の皆様のご健勝、ご多幸を祈念申し上げ、ご挨拶といたします。
本日は誠にありがとうございます。
がん対策推進企業アクション事業説明
がん対策推進企業アクション事務局長 山田 浩章 氏
日本では多くの人ががんになるリスクが高まっており、がん対策推進企業アクションでは企業へのがん検診啓発に取り組んでいますが、受診率はまだ目標に達していません。職域でのがん対策として、検診受診の啓発、正しい知識の普及、がん患者が働き続けられる環境作りを進めています。5,500社以上が参加し、中小企業の関心も高まっています。女性向けの「Working RIBBON」活動も実施しており、北海道の参加企業増加を目指しています。
がん対策の現状と今後の方針について
北海道保健福祉部 健康安全局 地域保健課 がん対策等担当課長 角井 正純 様
北海道のがん対策の現状をご紹介します。本道では、がんは昭和52年以降、死亡原因の第1位であり、令和4年のがんによる死亡率は男性30.7%、女性24.0%、全体で27.3%となっています。特に肺がんの死亡率が高く、本道の喫煙率の高さが影響していると考えられます。本道では平成24年に「がん対策推進条例」を制定し、法に基づくがん対策推進計画とともに対策を進めており、今年度から「がんの予防」「がん医療」「がんとの共生」を柱とする第4期計画により推進しています。また、たばこ対策推進計画の策定のほか、受動喫煙防止条例の制定や対策プランの策定など、たばこ対策の取組も進めています。本道のがん検診受診率は全国と比べ低く、がん検診の受診率向上に向けて、検診啓発動画の作成など企業や教育機関と連携した啓発活動を実施し、がん教育にも活用しています。がん医療については、国の拠点病院等とこれに準ずる道独自の指定病院を中心に提供体制の確保を図っており、がん相談支援センターにおける支援体制の充実に努め、サポートハンドブックの提供も行っています。また、平成27年にがん対策基金を設立し、啓発資材の作成や患者団体への助成を行っており、10周年を迎え12月に記念フォーラムも開催予定です。道では新たな計画のもと様々な取組を進め、がん対策に取り組んでまいりたいと考えていますので、今後とも皆様のご協力をよろしくお願いいたします。
職域がん対策の進化
東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川 恵一 氏
日本は高齢化により、世界で最もがん患者が多い「がん大国」となっており、男性の3人に2人、女性の半数以上が生涯でがんにかかる可能性があります。がんは日本人の主要な死因であり、毎年約100万人が罹患し、38万人以上が命を落としています。この背景には、加齢による遺伝子の自然な損傷や免疫力の低下があり、高齢化が急速に進んだ日本では、がんによる影響が顕著になっています。
がんは特に初期段階で症状が出にくいため、定期的ながん検診が非常に重要です。私も自ら膀胱がんを早期に発見し治療を受けた経験から、早期発見と予防が命を守る鍵であると強く感じています。しかし、がん検診の受診率は依然として低く、特に女性の受診率が課題です。がん検診を受けることで、命に関わる進行がんを未然に防げることが多く、検診の重要性が改めて認識されています。
また、がんと診断された人が働き続けられる環境作りも急務です。日本ではがん患者の3割が治療前に離職しており、その多くが診断を受けた時点で仕事を辞めることを決断しています。これを改善するためには、企業が治療と仕事の両立を支援する体制を整えることが求められます。両立支援の基本は早期発見であり、早期発見により治療の負担を軽減し、短期間の入院や短時間勤務など柔軟な対応が可能になります。
がん対策推進企業アクションは、企業ががん患者の両立支援やがん検診の充実を進めるための支援を提供しています。企業にとっても、従業員の健康を守ることは重要な経営課題です。経営者の理解が深まることで、がん検診の実施率や両立支援の取り組みも向上し、社員が安心して働ける環境が整備されます。日本はがん教育の普及も進めており、職場や学校でのがんに関する啓発活動が必要です。
企業でのがん対策が進むことは、社員の健康を守るだけでなく、職場全体の働きやすい環境を整え、離職率低下にもつながります。がんは予防と早期発見によってかなりの割合で克服できる病気です。職場が積極的にがん対策に取り組むことで、がんに対する理解が深まり、働きながら治療を続けられる社会の実現に一歩近づくでしょう。
命を救う早期発見 ~乳がんを経験して~
がん対策推進企業アクション認定講師 大西 幸子 氏
私は労働衛生機関に勤め、健康診断などを通して人々の健康を支える仕事をしています。
9年前47歳の時に乳がんと診断され、右胸を全摘し、5年間ホルモン治療を受け、現在も経過観察中です。当初は、がんに対して「完治しない」「死に直結する」と恐れていましたが、早期発見で救われたと感じています。
職場復帰後、がんの経験を話すことはためらいましたが、「がんになったのには運も関係する」と知り、運が悪かったのだと気持ちが軽くなりました。反対に早期発見で見つかったのは運が良かったと思います。がんは早期発見で治せる病気です。がん検診を推進し、従業員の命を守る重要性を感じています。
子宮を失って想うこと 家族への想い
がん対策推進企業アクション認定講師 久家 麻美 氏
この話が皆様やご家族のがん検診のきっかけになれば幸いです。私は保健師としてがん検診に携わってきましたが、父と友人をがんで亡くし、33歳で自分も子宮頸がんと診断されました。夫や母に支えられ治療を進め、HPVワクチンの啓発活動を始めました。今後、若い世代に子宮頸がん予防や検診の重要性を伝えたいと思います。検診で早期発見できたことに後悔はありません。職場でも女性がん検診が推奨されることを願っています。
トークセッション
中川 恵一 氏、大西 幸子 氏、久家 麻美 氏、角井 正純 氏
ここまでご講演いただいた講師のみなさまでトークセッションを行いました。子宮頸がんワクチン接種率の低迷についてや、北海道の高い喫煙率について、北海道保健福祉部の角井様に考えられる原因を伺うなど活発な意見交換が行われました。