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2024/03/22

令和5年度 統括セミナーを開催しました

(ページの最終更新日:2024年3月22日)

令和5年度「がん対策推進企業アクション統括セミナー」を、3月1日(金)、東京都千代田区の星陵会館にて開催しました。また、一般の企業様向けにはオンラインでの同時開催となりました。
当日は、がん対策推進企業アクション事務局事務局長 藤田 武の開会挨拶後、今年度優れた取り組みを行ったがん対策推進パートナー賞4社の表彰とともに、厚生労働大臣表彰を行い、最優秀賞は株式会社ファンケルに贈られました。
また、受賞企業の取り組み事例発表や、厚生労働省から「我が国におけるがん対策について」、真鍋 徹氏(第一生命保険株式会社 生涯設計教育部フェロー)から、「令和5年度企業コンソーシアム活動報告」、また南谷 優成氏(東京大学医学部附属病院 総合放射線腫瘍学講座 特任助教)から「令和5年度推進パートナー企業・団体向けアンケート調査結果報告」について、アドバイザリーボード議長を務める中川 恵一氏(東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授)から「職域がん対策の重要性と、企業アクションの意義」の講演が行われました。

参加者集合写真

統括セミナー開会挨拶
がん対策推進企業アクション事務局 事務局長 藤田 武

がん対策推進企業アクションは、2009年の発足から15年を迎え、現在約5,000の企業、団体様に推進パートナーとしてご参加いただいております。記載にもありますが、がんの検診の受診を啓発すること、がんについて会社全体で正しく知ること、がんになっても働き続けられる環境をつくることの3つを柱とし、職域におけるがん対策の啓発を行っております。本年度は下記の活動を実施しました。

  1. 小冊子、ポスター、ニュースレター作成。
  2. ニュースレター月2回配信
  3. パンフレット作成
  4. YouTubeとe-ラーニングの構築、e-ラーニングは、今年度新たに修了証を作成。
  5. 各種チラシ作成
  6. 国大会を大阪で実施。(大阪府知事の吉村知事からのビデオメッセージも頂戴いたしました。また、ABCラジオ様と連携をし、ゲストに麻木 久仁子様を迎え、ラジオの公開収録も実施しました。)
  7. 今年度のブロックセミナーは、秋田県、香川県、宮崎県で実施。 久仁子様を迎え、ラジオの公開収録も実施しました。)
  8. 企業連携について。(企業コンソーシアム、ワーキングリボン、中小企業のコンソの3つの柱で実施)

がん対策推進企業アクションではさまざまな活動をしておりますので、ぜひ一度ホームページをご覧ください。最後になりますが、今後もがんに関するさまざまなことを発信し、企業のがん対策を全力で応援できればと思っております。

令和5年度 がん対策推進企業 表彰式

  • 厚生労働大臣表彰[最優秀賞]
    (プレゼンター:厚生労働省健康・生活衛生局 がん・疾病対策課 課長 西嶋 康浩 氏)

株式会社ファンケル 取締役常務執行役員 管理本部長 兼 健康支援室長 炭田 康史 氏

プレゼンター:西嶋 康浩氏と株式会社ファンケル 取締役常務執行役員 管理本部長 兼 健康支援室長 炭田 康史 氏

受賞理由:
検診においては、健康診断に年齢に応じたがん検診を組み込み、健康診断と同時に就業時間内に、費用負担なしで受けられる仕組みを構築しています。また健康管理システムを使用し、全従業員にがん検診に関するアンケート調査の実施、また、全従業員がマイページを持っており、いつでも保健師へメール相談できる体制を整えています。
両立支援におきましては本人の希望する時間や日数でフレキシブルに勤務できる「アソシエイト正社員」を導入しており、正社員としての雇用を維持しながら、治療と仕事の両立ができる制度を整えています。
情報発信の分野においてはがん治療と仕事の両立支援ハンドブックを作成し、いつでも閲覧できるようイントラネット、健康管理システムに掲載しています。
また健康診断前にがん検診に関する医師のセミナーを開催し、適切な検診、検診後の対応に繋がる情報発信も行っています。ピンクリボン月間のイベントの際には、男性従業員には男性も乳がんになること、家族や友人にも検診や自己チェックについて伝えることを呼びかけました。

  • がん対策推進パートナー賞
    (プレゼンター:中川 恵一 氏)

[検診部門]
ポーラ・オルビスグループ健康保険組合 常務理事 竹中 俊明 氏

プレゼンター:中川恵一氏とポーラ・オルビスグループ健康保険組合 常務理事 竹中 俊明 氏

受賞理由:
がん検診を定期健診と同時に受診できるようにし、受診率向上を図るとともに、首都圏の婦人科検診は、優良な専門外来機関と提携し、婦人科は特に専門機関で受診したいというニーズに応えています。
また被扶養者や退職任意継続者にも、基本的に従業員と同一のがん検診を同じ補助で実施しており、その価値を伝え、受診率向上に取り組んでいます。加えて健康管理センター保健師が、本社の若年者と面談するなど、子宮がん検診の重要性を同時に伝えています。

[治療と仕事の両立部門]
ライオン株式会社 執行役員 人材開発センタ―担当 南川 圭 氏

プレゼンター:中川恵一氏とライオン株式会社 執行役員 人材開発センタ―担当 南川 圭 氏

受賞理由:
年次有給休暇・積立有給休暇を最大100日まで積み立てることを可能としており、有給範囲内で治療が可能です。
放射線照射期間中等、治療によっては診断書と産業医の判断の下、勤務時間を短縮する就業措置を講じることもあります。
また、50人未満の事業所でも全事業所に産業医・保健師または看護職が在籍しているため、本人だけではなくその上司も気軽に相談できる環境が整っています。
休業で治療をした場合も復職に向けて産業医・保健師または看護師・人事担当者・職場上司・本人で復職に向けたプログラムを作成・実施し、安心して復職が出来るよう制度を整えています。

[情報提供部門]
SOMPOひまわり生命保険株式会社 執行役員CHRO 人財開発部長 野田 美智子 氏

プレゼンター:中川恵一氏とSOMPOひまわり生命保険株式会社 執行役員CHRO 人財開発部長 野田 美智子 氏

受賞理由:
産業医や外部講師によるがんに関するセミナーを定期的に開催しています。
今年度は自分自身はもちろん、職場の誰かががんに罹患した場合に備え、病気の「予防」および罹患後の「職場理解」を目的としたセミナーを開催しました。また女性の健康課題に関するセミナーも毎年定期的に開催しており、乳がん・子宮がんの理解および検診の重要性を呼びかけています。
さらに、子宮頸がんのHPVワクチンのキャッチアップ接種についても社内周知し、対象年齢の社員には個別にメール案内を実施するなど、子宮頸がん予防に努めています。

[中小企業部門]
葵機工株式会社 常務取締役 山中 治 氏

プレゼンター:中川恵一氏と葵機工株式会社 常務取締役 山中 治 氏

受賞理由:
がん検診費用は全額会社負担とし、受診しやすい仕組みを作っています。また、肺がん検診では、40歳以上の対象者は、X線検査をより精度の高いCT検査へと変更しており、女性の子宮頸がん検診では、エコー検査の費用も全額会社が負担し、早期発見に努めています。
治療と仕事の両立支援を進めるため、まず担当者が両立支援コーディネーター基礎研修を受講し、知識を習得しています。
従業員のヘルスリテラシーの向上を目的として、禁煙に関するセミナー、女性特有の病気に関するセミナーを実施しています。

令和5年度 表彰企業 事例コメント

  • 厚生労働大臣表彰[最優秀賞]
    株式会社ファンケル 取締役常務執行役員 管理本部長 兼 健康支援室長 炭田 康史 氏
株式会社ファンケル 取締役常務執行役員 管理本部長 兼 健康支援室長 炭田 康史 氏
株式会社ファンケル スライド内容

健康経営の活動方針といたしましては、ここに掲げているとおり、大きく9つのテーマで、生活習慣病やメンタルヘルス対策、がん対策、女性の健康対策等々、これらのテーマ一つ一つに取り組んで、その年の重点テーマというものを定めております。今回はこの「がん対策」と「治療と仕事の両立支援」というところが評価されたのだと思っております。
具体的な取り組みについては、がん検診の推進として、検診が受けやすい環境を整えています。従業員の検査費用負担なし、就業時間でも問題なし。医療機関までの交通費も会社負担ですよということで、従業員たちが検診を受けやすいという環境にしています。
次に、治療と就労の両立支援の取り組みについてですが、人事施策として、アソシエイト正社員制度というものを設け、ご本人の体調であるとか、治療や入院、検査などの事情でフルタイムでは働くことができない社員がいます。そういった社員のために、正社員雇用を維持しながら、本人の希望する時間・日数でフレキシブルな就労が可能であるということにしています。週20時間以上であれば、どのような時間の取り方も可能です。
最後に、がんに対する情報の社内発信の一例です。がんに関する社内イベントを開催して、従業員のがんに関する知識やがん検診への意識向上を目指しています。
例えば、昨年10月には、ピンクリボン月間ということで、社内に体験ブースを設置しまして、乳がんモデルの体験、ブレストチェック方法の動画再生、そしてリーフレットの配布等々で、しっかりと社員に情報を発信しています。そして女性だけではなく、男性にも乳がんの罹患はあり得ますので、男性にもしっかりとした情報発信をしています。

  • がん対策推進パートナー賞[検診部門]
    ポーラ・オルビスグループ健康保険組合 常務理事 竹中 俊明 氏
ポーラ・オルビスグループ健康保険組合 常務理事 竹中 俊明 氏
伊藤忠商事株式会社 執行役員 人事・総務部長 的場 佳子氏 スライド内容

私どものがん検診に対する取り組みについてご説明させていただきます。
がん受診で工夫している点ですが、子宮に関しては、子宮細胞診に加えて、超音波、エコーを取り入れています。こちらは全年齢無料で受診ができます。エコーをすることによって、子宮頸がんだけではなく、卵巣がん、子宮内膜症といった疾患の発見に役立っています。就業時間中に交通費も支給して、しかも定期健診とワンストップで受診ができるといったようなところで利便性を図っています。また、ネットワーク検診のシステムを使うことで、まだ予約をしていない未予約の方、または受診をしていない未受診の方が瞬時にこちらで把握できますので受診督促を実施しているという、この2つが大きな部分となります。がん検診は、健康な生活をする上においては、極めて重要な手段だと認識しています。早期発見は、治療の成功だけでなく、大きな命を救うということができると思います。残念ながらまだがん検診の認識が低いというのが課題でもあり、この課題を克服するために、私ども健康保険組合と企業が一緒になって、コラボヘルスを通じて、もっともっと受診率を高くしてあげていきたいと考えております。

  • がん対策推進パートナー賞[治療と仕事の両立部門]
    ライオン株式会社 人材開発センタ― 健康サポート室長 五十嵐 章紀 氏
ライオン株式会社 人材開発センタ― 健康サポート室長 五十嵐 章紀 氏
ライオン株式会社 人材開発センタ― 健康サポート室長 五十嵐 章紀 氏 スライド内容

私どもライオン株式会社は、がん対策につきましては、予防、それから治療支援、復職支援というふうにフェーズを分けてそれぞれ取り組みを進めております。
予防についてですが、検診機会の提供ということで、40歳の方、ほぼ全員の方にABC検診を受診してもらっています。また、45歳以上の方には胃カメラ、それから50歳以上の方には胸部CTと大腸カメラの検診費用補助を進めています。
治療の支援としましては、安心して治療に取り組んでいただけるような就業制度の整備に努めています。年次有給休暇の余った分を次年度に繰り越して積み立てていく制度をつくり、最大100日まで有給休暇を使えるようになっています。また、中抜けして治療に取り組むというようなことができるように、フルフレックスの勤務体系になっています。
治療に取り組むときに気軽に相談できる体制も大切かと思っています。弊社は11の事業所があり、50人にも満たない小さな事業所もありますが、そこにも産業医と保健師を配置しています。また、各事業所の代表の者には、産業保健推進者として、職場の上司とともに復職支援ですとか、治療のサポートといったことを進めています。以上、予防、それから治療、早期発見と仕事の両立、そういったことがスムーズに進むように、今後も制度整備を進めてまいりたいと思います。

  • がん対策推進パートナー賞[情報提供部門]
    SOMPOひまわり生命保険株式会社 執行役員CHRO 人財開発部長 野田 美智子 氏
SOMPOひまわり生命保険株式会社 執行役員CHRO 人財開発部長 野田 美智子 氏
SOMPOひまわり生命保険株式会社 執行役員CHRO 人財開発部長 野田 美智子 氏 スライド内容

健康経営の取り組みの一つとして、セミナーによる情報提供を積極的に行っています。お客様の健康応援の手段の一つとして、社外セミナーなども積極的に行っています。お客様の健康を応援したい、だから自分が得た知識をまた次の人に伝えていきたいとの、思いで活躍している社員が多くいます。そんな思いも相まって、セミナーには多くの社員が参加しています。
次に、がん検診の重要性については、社内に徹底的に周知をしてきました。がんの予防に効果のある子宮頸がんワクチンの接種において、社内周知、さらに個別周知を徹底的に行い、社員にキャッチアップ接種を促しました。
また、がん検診を受診しやすいように、健康診断に組み込んで、費用補助を行っています。肝炎ウイルス検査、ピロリ菌検査等の費用補助も行い、検査を促しています。
がん検診の受診率はこちらのとおりとなります。特に乳がん検診、子宮頸がん検診の受診率においては、74.5%までアップさせることができています。
私たちは、これからも社内はもちろん、多くの方々にがんの対策として予防、早期発見、万が一の保障、治療後のケアとトータルでサポートをしていきたいと思っております。

  • がん対策推進パートナー賞[中小企業部門]
    葵機工株式会社 常務取締役 山中 治 氏
葵機工株式会社 常務取締役 山中 治 氏
葵機工株式会社 常務取締役 山中 治 氏 スライド内容

葵機工は2022年に50周年を迎え、それを機に健康経営優良法人の認定取得を行い、さらに、昨年、健康経営優良法人ブライト500の認定を受けました。これらの成果は、健康経営を継続的に進めるために、社内各部門、各工場から女性役職者中心に女性7名で健康づくり推進チームを発足し、積極的に進めてもらった成果です。
今回、賞をいただいた主な取り組みとしては、年1回の健康診断を30年以上前から全額会社負担で行っており、その中の検診内容も、胃がん検診はバリウムまたは胃カメラの選択が可能、肺がん検診は4年前ぐらいからX線検査より精度の高いCT検査に変更、子宮頸がん検診は、女性向けセミナー後、受講者からの要望でエコー検査を追加しました。これらも全て会社負担で行っています。
また、健康診断の精度アップに伴い、再検査、早期治療等が増えてきています。その方たちが治療に専念できるように始めたのが両立支援制度になります。会社として両立支援コーディネーターの資格を1名取得してもらい、関係機関と連携してもらっています。また、休職復帰がスムーズにできるように、お試し出勤制度であったり、治療スケジュールに合わせた柔軟な勤務制度であったりと、就業規則の改定も行いました。そのような取り組みもあり、現在までに2名がこの制度を活用して復帰されています。このように健康経営をベースに長く働きやすい職場環境整備を引き続き行っていきたいと思っています。

講演1 「我が国におけるがん対策について」
厚生労働省健康・生活衛生局 がん・疾病対策課 課長 西嶋 康浩 氏

厚生労働省健康・生活衛生局 がん・疾病対策課 課長 西嶋 康浩 氏
厚生労働省健康・生活衛生局 がん・疾病対策課 課長 西嶋 康浩 氏 スライド内容01

がんが死因の第1位だということは、皆さんご存知のとおりだと思います。一生涯で2人に1人ががんになるというデータもあります。一方で、どういうがんになるかは、男女でかなり差があります。男性では前立腺がんが非常に多いですが、前立腺がんは治療の効果が高いため、亡くなる方が多いのは肺がんとなります。女性では乳がんが非常に多いですが、亡くなる方が多いのは大腸がんや肺がんとなります。治療効果については、前立腺がんや乳がんは、きちんと発見をして治療すれば、治るようながんになっています。一方、すい臓がんや肺がんなどは、有効的な治療が少ない状況です。
厚生労働省では、かなりの研究費を投入し、がん治療の成績をよくしていくための取り組みを行っています。初めて疾患ごとの法律もでき、がんの治療開発や医療機関の整備、予防についての政策立案などをしています。また、表にあるとおり、様々なエビデンスに基づき、検診によりがんで亡くなる方を減らせる5つのがん(胃がん・子宮頸がん・肺がん・乳がん・大腸がん)を抽出し、市町村でのがん検診を推奨しています。

がんの中には、普段の生活が大きく関係しているものもあります。皆さんが一番わかりやすいのは喫煙だと思います。たばこと肺がんの関係は明らかであり、罹患および死亡に大きく影響することがわかっています。その次に、HPVによる子宮頸がんの罹患・死亡が多くなっています。また、アルコールについては、世界的なデータでも言われていますが、過度な飲酒はがんになりやすいということがわかっています。あとは塩分摂取も原因になります。

次に、予防できるがんのうち、子宮頸がんはHPVワクチンにより予防できます。先進国で使われている9価のワクチンは、ほとんどの子宮頸がんの原因となるウイルスを標的にしています。日本でも昨年度から公費で接種が始まっていますので、ぜひ企業の方々にも進めていただきたいと思います。いくつかの企業の方々からもお話がありましたが、いわゆるキャッチアップ接種が来年度いっぱいとなっています。基本的に3回あるいは2回、打つ必要がありますが、間隔を空けないといけないので、夏ぐらいまでには1回目を打っていただければ、フルで無料で受けていただくことができます。キャッチアップ接種も含め、HPVワクチンの接種の勧奨を行っていきたいと考えています。イギリス、オーストラリアなど先行して始まっているところは8割ぐらいの接種率で、ワクチン接種と子宮頸がんの検診をセットで行うことによって、子宮頸がんの新規の患者さんはほぼ出てきていないというデータもありますので、我々としてもこういった取り組みを進めていきたいと考えています。

最後に、がんの治療は日々変わってきています。がんが死ぬ病気だとされていたひと昔前は、がんの患者さんは入院してそのまま亡くなる方が多かったと思います。ですが今や、化学療法も含めて、外来で通いながら治療をする時代になっています。これはがんの治療自体がかなり進歩しているということです。その結果、がんサバイバーの方々が増えてきているということにもなりますので、こういった社会的な背景、そして医療の進歩により、いかにがん患者さんの生活をいいものにしていくのかという取り組みを促進しています。ガイドラインだったりマニュアルだったり、そういったものも作成していますが、基本的には各社の方々が工夫をこらしながら、社員の方々の健康を守るというのも重要ではないでしょうか。実際がんになった時に、会社にどう伝えるか悩まれている社員の方々が多いという話はよく聞きますので、最初の一報を自分の上司といった方々に言えるという環境をつくるということが非常に大事ではないかと思います。そういったことも、厚生労働省として、労働側と連携しながら、さらに進めていきたいと思っています。

講演2 「令和5年度企業コンソーシアム活動報告」
第一生命保険株式会社 生涯設計教育部 フェロー 真鍋 徹氏

第一生命保険株式会社 生涯設計教育部 フェロー 真鍋 徹氏
第一生命保険株式会社 生涯設計教育部 フェロー 真鍋 徹氏 スライド内容

本日、私からは「がん対策推進企業アクション」企業コンソーシアムの活動についてご報告させていただきます。現在、約5,000社の登録企業がありますが、企業コンソーシアムは、この中の企業同士が情報交換したり、好事例を共有したりといったことを目指す仕組みにできないかということで、自発的に立ち上げた活動になります。例えば、先ほどの推進パートナーとして表彰された企業等を中心に、先行した取り組みの研究をしたりしています。

企業コンソーシアムでは、まず、理念と役割を定めました。企業でも、65歳以降の定年制度に変わっていく中で、がんが増えていきます。また、これからは通院しながら勤めるという環境変化が間違いなく起こります。これは企業にとって大変な負担にもなりますけれども、企業がこういった従業員対策を充実させたり、がん検診を推進することによって、予防もできるし、予後も長く過ごせることは明白です。そのため、自分の会社だけでなく他社の従業員もがんから守るというコンセプトで活動しようという事ということでスタートしました。

活動の内容として具体的には、年2回の全体研修会をやっており、これは全企業が参加できます。一昨日も第2回を開催したのですが、120社余りの企業様にご参加いただきました。研修会は「学び」と「ベンチマーク」があり、「学び」は、ガイドラインやマニュアルをもとにしたり、あるいは産業医をはじめとする医師や社会保険労務士といった講師陣をお招きしたりして、制度や考え方、方向性について学ぶ場となっています。「ベンチマーク」は、先進的な企業の取り組みを共有して、自分の会社に生かせないかという仕組みの共有の場ということをコンセプトにしています。

同じがん対策といっても、企業の業種によってさまざまな取り組みがあり、また、環境にも大きく左右されることがあります。
そういったことについても、共通の課題というものを見いだして解決していこうという流れでやっております。

令和4年度も2回研修を実施しており、講師には国立がん研究センターの若尾先生、聖マリアンナ医科大学の林先生、東京都社会福祉労務士会副会長の成田先生にご登壇いただきました。今年度は、東海大学の立道先生より産業医のお立場から講演をいただいた他、がん対策推進企業アクションの議長で、企業コンソーシアムの顧問もお願いしている中川先生からもご講演をいただいております。一昨日は、がんと仕事の両立支援ということで、がんと働く応援団の吉田ゆり様にご講演をいただきました。また、研修会では、毎回2企業ずつ好事例を発表させていただいています。
このような活動を通して、先ほど申し上げた先行事例などを集める場として「コンソ40」という組織を立ち上げ、ボランティア40企業による分科会の進行もしています。「コンソ40」では、表彰企業などを中心に、さまざまな意見交換や課題の洗い出しをやっています。

来年度2024年度についても、このような取り組みを維持・発展して行ければと考えております。

講演3 「令和5年度推進パートナー企業・団体向けアンケート調査結果報告」
東京大学医学部附属病院 総合放射線腫瘍学講座 特任助教 南谷 優成 氏

令和5年度 推進パートナー企業・団体向けアンケート調査結果報告スライド01
令和5年度 推進パートナー企業・団体向けアンケート調査結果報告スライド02

今年もアドバイザリーボードメンバーのキャンサースキャン代表取締役社長の福吉様と、パートナー企業アンケート調査を担当させていただきました。その調査内容の結果について、簡単にご報告します。

昨年末に3,861社に調査依頼をし、1,089社から回答をいただきました。割合は、健保が182で2割弱となっています。その他、20名以下の企業が3割程度、1,000名以上の企業が1割強となっています。
業種に関しては、製造業、情報通信業、サービス業の順に多くなっています。今年少し変えたのは、毎年必ず聞く「がん検診受診率」、「受診率向上に向けた取り組み」、「治療と仕事の両立支援の取り組み」に加えて、各年ごとにテーマを変えて調査を行っていくということを決めた点です。

まず、毎年の継続調査項目に関して、ご説明します。昨年度、第4期のがん対策推進基本計画が始まり、検診受診率の目標が50%から60%に引き上げられています。その軸で見ますと、肺がん、大腸がんは大きく上回っていますが、胃がん、乳がん、子宮頸がんに関しては60%に届いていません。時系列で見ますと、令和3年度から令和5年度にかけて、特に肺がんや大腸がん、乳がん、子宮頸がんなどに増加傾向が見られますので、今後このような傾向が続き60%を上回るようになるといいと思っています。

各がんに関して、企業規模別に見ますと、胃がんに関しては企業規模によってあまり受診率は変わりませんが、健保は少し少なめに出ています。肺がんは企業規模が小さいほど受診率が低い結果となっています。肺がん検診は胸部レントゲンになりますので、法定検診と混在してしまうようなところがあって、そういった影響も受けているのではと考えています。

大腸がんも企業規模が小さいほど、受診率がなかなか伸びない傾向があります。乳がん、子宮頸がんに関しては、あまり企業規模の影響は受けていない結果です。
厚生労働省ないし国で進められている5つのがん検診の受診率も大きくは変わりません。やはり肺がんや大腸がんの受診率は60%以上ですが、その他3つに関しては目標値まで届いていない現状がうかがえます。

世界的に見ると、胃がんや肺がんの検診はあまり推奨されておらず、一般的には乳がん、子宮頸がん、大腸がんの3つの検診が行われています。受診の勧奨方法としては、パンフレットやニュースレターなどのスモールメディアでの勧奨、1対1の教育、手紙や電話による勧奨などが強く推奨されています。その他、費用の軽減や日程調整のしやすさなどもよいと言われています。
こちらは2年前の統括セミナーで報告した、企業アクションの調査からわかった受診率向上に効く取り組みです。

令和5年度 推進パートナー企業・団体向けアンケート調査結果報告スライド03

今回の調査では、受診費用の補助は全体で8割程度、受診日時、従業員の希望に合わせた日程調整は全体の7割弱で行われています。受診場所は、「従業員の希望に合わせて、受診したい医療機関から選択できるようにしている」が6割程度。「がん検診の項目を個人が選択できる」は6割ぐらい。受診勧奨では「受診対象者にはSNS、文書、メールなどで受診を促すお知らせをしている」が企業規模別に見ると結構差がでていまして、小さい企業ですと36%、5,000名以上になると86%とかなり大きな差が出ています。同様に未受診者に対する再勧奨も企業規模でかなり差がある結果が出ています。

啓発について「専門スタッフが主導して、がんに対する情報発信やがん検診の推進をしている」は、産業医や産業保健スタッフが常にいるというのが大企業に限られてくるので、企業規模が小さいところでは、進んでいないことがうかがえます。「企業アクションが発行する『がん検診のススメ』を読むように推奨している」は28%、「e-ラーニングをやっている」は12%となっていますが、これは両方とも無料で使えるものですので、ぜひ活用いただけるといいと思います。

健診結果の把握についての「健康情報などの取扱規程を策定している」は、やはり大企業のほうが厳しく行っていることがわかります。
「安全衛生委員会で、がん検診、がん対策について議題として取り上げて受診勧奨するように管理職に通知している」も、全体では3割程度ですが、大企業では66%となっています。
また、被扶養者の受診についても「がん検診費用を補助している」も、全体では36%程度ですが、0~20名の企業ですと8%、5,000名以上だと70%となっており、大きな企業はかなり補助していることがわかります。さらに「被扶養者の方へも受診勧奨」も、大企業ですと57%で行われていることがわかります。

今年度の追加項目では、HPVワクチンの周知率、啓発率などを調査しています。厚生労働省が、肝がんにつながるウイルス性肝炎について検査実施を要請する通達を出した「労基署通達」の周知状況なども確認しています。また、がん対策と喫煙対策についても、その関係性について調査しています。

まずHPVからです。昨年の厚生労働省のワクチン分科会で出された資料では、小学校6年生から高校1年生までの定期接種について、本人がHPVワクチンのことを知っているかどうかは50%以下でした。キャッチアップ接種を見ると、対象者の認知率は40%以下。子どもの保護者に対しての調査では75%程度なので、4分の1の保護者は、HPVワクチンについてあまりわかっていない状況がうかがえます。
我々の調査では、HPVワクチンのことを「ほとんど知らない」が12%、「プライベートに関することなので、啓発は考えていない」が36%と、半数程度を占めますので、職域でもHPVワクチンの啓発は重要なポイントだと思います。

令和5年度 推進パートナー企業・団体向けアンケート調査結果報告スライド04
令和5年度 推進パートナー企業・団体向けアンケート調査結果報告スライド05

ウイルス性肝炎は、働いている人の100人に1人がかかっており、そのうちの3人に1人ぐらいしかそのことに気づいていないと言われています。一生に1回でよい検査ですので、例えば入社時に検査を実施するといったことは重要なポイントかと思います。実際「実施している」のは26%、「通達を知らない」あるいは「知っているが実施するつもりはない」が半数を上回りますので、こちらもできる限り情報提供を行って、さまざまな事業所でできるとよいのではないかと思います。

喫煙対策は、東京オリンピックに合わせて健康増進法が改正されいろいろな制度が決まってきました。禁煙はやはりがん予防には不可欠なものになってきます。喫煙率は、全体で19%。男性が26%、女性が6%と、およそ国が出している喫煙率のデータと同じような結果になっています。企業内で行っている喫煙対策は、「喫煙率の把握」が53%となっていますが、「喫煙に関する教育」が27%、「禁煙希望者に対する費用補助」が26%と、それ以外の対策はなかなか進んでいない現状があります。
今回の調査では、改正健康増進法に合わせて喫煙対策が厳しくなりましたが、それを守っているのかといったことを中心にまとめました。

例えば、学校や病院といった第一種施設は敷地内禁煙となっており、一般的なオフィスや飲食店、あるいは工場などの第二種施設では敷地内禁煙か建物内禁煙か、しっかりした喫煙室を設けて煙の流出がないようにすることが推奨されています。
それぞれで喫煙率はどう変わるのかを見てみますと、喫煙対策をしっかりやっている企業のほうが喫煙率も低いことがはっきりデータとして出ました。全体でも、男・女それぞれでも同じです。年代別に見ると、一部20代や30代などは、しっかり喫煙対策をやっている企業のほうが喫煙率が高いような結果もありこの原因ははっきりわからないですが、いずれにしても、しっかり喫煙対策をやっていくことが重要です。

令和5年度 推進パートナー企業・団体向けアンケート調査結果報告スライド06
令和5年度 推進パートナー企業・団体向けアンケート調査結果報告スライド07

同様に、先ほどのがん検診受診率向上に向けた取り組みに関しても、遵守群と非遵守群で見てみますと、喫煙対策をしっかりやっている企業のほうが取り組みも多いといったことがわかります。「従業員のがん検診の受診状況を把握する仕組みがある」は20%以上差がありますし、「産業保健スタッフが主導して、がんに対する情報発信やがん検診の推進をしている」も20%以上の差があります。受診勧奨も結構差があることがわかりました。

がん対策と喫煙対策をまとめますと、半数程度で喫煙率を把握していて、25%以上で喫煙に関する教育を行っています。職域における喫煙対策で、改正健康保険法の順守は、残念ながら半数弱となりました。遵守群では喫煙率が5%程度低いですが、年代によっては逆転もあります。がん対策の関係を見ると、遵守群では、検診受診率も高いですし、検診受診率向上に向けた取り組みも多いということがわかりました。

令和5年度 推進パートナー企業・団体向けアンケート調査結果報告スライド08
令和5年度 推進パートナー企業・団体向けアンケート調査結果報告スライド09

今回の調査をまとめますと、がん検診受診率は上昇傾向ですが、胃がん、乳がん、子宮頸がんでは国の目標にはまだ届いておりません。検診受診率向上のための取り組みは、人数規模が大きいほど受診率が高くなっていますので、ぜひみんなでいろんな取り組みができるとよいと思います。HPVワクチンの周知は、可能でしたら職域でもやっていくことが重要だと思いますし、肝炎検査に関しても、しっかり情報提供を行って、一生に1回でいいので、受診できるような体制をつくることは重要かと思います。また、がん対策と合わせて喫煙対策も実施するのが望ましいと考えております。

講演4 「職域がん対策の重要性と、企業アクションの意義」
東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川 恵一 氏

東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川 恵一 氏
東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川 恵一 氏 スライド内容01

がん対策推進企業アクションは、今年度で15年目を迎えています。職域でのがん対策が大きな課題であること、そして皆さんに日々行っていただいていることが非常に重要であると思います。
日本の累積がん罹患リスクは、男性65.5%、女性51.2%ですから、男性の3人に2人、女性の2人に1人ががんになっていることになり、事実上世界で最もがんが多い国です。女性は20代、30代から増えていきますが、男性は55歳で追い抜いて、その後どんどん増えていきます。多くの病気が克服される中で、がんによる死亡だけが増え続けているという現状があります。これは日本が事実上、世界トップクラスの高齢社会を迎えていることも影響しています。がんは一種の老化であり、とりわけ男性のがんは、ほぼ老化に因るものです。

女性に特有な2つのがん(子宮頸がん・乳がん)は、老化とは違う要因で増えます。子宮頸がんのピークは、上皮内がんまで含めると、30代後半にあります。これは子宮頸がんの発症原因のほぼ100%が性交渉に伴うウイルス感染だからです。性的に最も活発な20代に感染したヒトパピローマウイルス(HPV)が30代後半ぐらいにがんをつくっていきます。性経験のない女性に子宮頸がんはできません。
HPVは、子宮頚部以外、とりわけ中咽頭、扁桃腺の辺りにもがんをつくります。日本の公式のデータでは、中咽頭がんの患者さんの半分がこのウイルスによるものです。アメリカでは7割となっており、おそらく日本でも、現実的には6割から7割ではないかと思います。乳がんは40代後半に1つ山があります。これは乳がんを増やす最大の要因が、女性ホルモンによる刺激だからです。女性ホルモンは、50歳過ぎの更年期に分泌が止まりますが、その直前にピークが来るため40代後半に1つ山があります。かつては専業主婦としてがんと診断されていたものが、働く女性が増えたことで、若いがん患者が会社に増えるということになっています。

更に大きな影響としては、定年延長があります。定年はかつて55歳でしたが、これが60、65となり、先般、OECDから日本の定年制度は廃止すべきだという勧告も出ていますし、おそらく70歳くらいまで働くようになるのではないでしょうか。つまり、かつて定年退職後の年金生活者としてがんと診断されていたものが、今や現役のビジネスパーソンとしてがんと診断される。つまり女性の社会進出と定年の延長というのは、会社の中に働くがん患者さんを急増させるということになります。

日本は、自然災害が多い国ですが、がんという病気を台風や地震のような突然降ってわいた自然災害のように思っている方がいまだに多いような気がします。しかし、がんは知ることによって、ある程度備えることができる病気です。生活習慣によってがんのリスクを下げたり、がん検診で早期発見したりと、自分でコントロールできる病気だということをもっと知っていただきたいと思います。

実は今、中学校と高校の学習指導要領の中に「がん教育」が明示されていて、教科書も一新されています。こちらは、文部科学省のがん教育ポータルサイトのがん教育推進の教材です。

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毎日できているがん細胞を免疫が殺していますが、がん細胞は正常な細胞と似ているので、免疫細胞が取り逃がすことがあります。そうやって1個、取り逃がされたものが分裂を繰り返して、30回ほどの分裂で1㎝になります。それにかかる時間は10年から20年とされています。30年、50年というのもあります。

早期がんの定義は実はかなり複雑ですが、ざっくり言うと1㎝から2㎝のがんが発見可能な早期がんということになります。がんの専門医でも5㎜の肺がんなど見つけることはできません。がんは発見できる大きさになるまでには10年20年かかりますが、1㎝から2㎝になるのは、たった3回の分裂で、1~2年です。ですから、この1㎝から2㎝になる間で見つけたいのです。がんは進行しても症状を出しにくいですので、症状がなくても1年から2年に1度、検査をするしかないのです。しかし、日本のがん検診受診率はアメリカの半分程度にすぎず、韓国を含めた先進国の中でも最低です。

がん対策推進企業アクションは、3つの課題を挙げています。がん検診の受診率の向上、両立支援、そして職場でもがんのことを知っていただく啓発活動です。既にパートナー企業が約5,000社となっていますが、実は社員数100人未満の企業が6割近くだということです。中小企業は大企業と比べて進んでいない部分も多いですので、企業アクションとして、あるいは議長としては、中小企業のがん対策の充実が非常に重要だと考えています。

啓発施策としては、『働く人ががんを知る本』という小冊子があります。チラシもあります。また、ホームページもかなりよくなりました。ホームページを見ていただくと、結構がんに関してのリテラシーが上がると思います。YouTubeも、かなりがんに対する理解が進むと思います。そのほか、ニュースレター、セミナー勉強会、e-ラーニングも充実しています。認定講師の方による出張講座もあります。

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企業コンソーシアムについては、先ほど真鍋座長からお話がありましたが、がん対策に積極的および実績のあるリーディングカンパニーによる運営支援組織です。今日表彰を受けられた企業様においても、ぜひお力をいただきたいと思います。運営体制は「コンソ40(ヨンゼロ)」と呼んでいます。活動内容は、研修会と分科会があります。分科会は、治療と仕事の両立支援と、職域におけるがん検診に関する情報の取扱いの2つがあります。

コンソ40の企業は、自社と他社を引っ張っていく組織ですので、がん検診受診率も、受診勧奨も、企業アクションのパートナー企業全体よりも高い数値となっています。

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次に、企業におけるがん対策の非常に大きな課題ですが、それはおそらく精検受診率の低迷です。精密検査を受ける率が住民検診より低いということです。住民健診の精密検査の受診率は、大腸がんが少し低くて7割以上、乳がんは9割ぐらいになっています。厚生労働省のちょっと古いデータでは、健保組合の被保険者の精密検査の受診率は、胃がん、肺がん、大腸がんで半分もないんです。むしろ女性の乳がん、子宮頸がんのほうが高い結果となっています。これは、忙しいせいかもしれませんが、もう一つ重要なのは、受診勧奨ができないことです。

企業アクションで令和3年度に行ったアンケートでも、要精密検査対象者に受診勧奨している比率は、全体で11%、コンソ40でも19%になっていました。これは個人情報保護法の問題があります。要精密検査というのは、がんの疑いというより早期発見のチャンスが来たと考えられますが、任意の検診である職域がん検診においては、何の同意もないまま、社員に「あなた、要精密検査になってるでしょう。受けなさい」と言うことはできません。これは法律違反ということになります。
しかしながら、これも、ここ数年で大きな動きがありました。令和5年度のコンソ40は8割に達しています。これはものすごい進歩です。パートナー全体ではまだ4割ですので、コンソ40を中心に情報提供して、この数値を上げていく必要があると思っています。

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パートナー企業アンケートについては、先ほど南谷から説明があったので省きますが、大同生命様との共同調査も4年目になっており、こちらは5人、10人といった会社規模も多いのですが、経営者のがん対策への関心を見ると、ずいぶん増えてきました。そして、その関心度とがん検診の実施率は、みごとに相関しています。当たり前のこととも言えますが、経営層に理解していただくということの重要さがこの調査でわかったと思っております。

統括セミナー閉会挨拶
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15年続いた企業アクションは、私はずっと座長でやってきましたが、パートナー企業が5,000社超えということで、本当に規模も大きくなりました。内容も充実してきています。ひとえに皆さまのサポートのおかげだと思っております。来年度以降も企業アクション頑張ってまいりますので、どうぞご協力いただければと思います。

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