2024/02/14
令和5年度
香川県ブロックセミナー「職域におけるがん対策の最新情報」を開催しました
12月1日に香川県庁舎で、WEB配信を併用したハイブリッド形式にて香川県ブロックセミナーを開催しました。
主催者挨拶
厚生労働省 健康・生活衛生局 がん・疾病対策課長補佐 磯 高徳氏
我が国のがん対策は、平成18年にがん対策基本法が制定されたことで一気に加速し、平成28年の改正ではがん患者の雇用の継続やがんに関する教育の推進など新たな政策が盛り込まれました。
そして今年度から施行しました第4期のがん対策推進基本計画では誰ひとり取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指すことを全体目標とします。がん予防、がん医療の充実、がんとの共生の3本を柱とし、これらを支える基盤の整備として、がんの研究や人材育成、がん教育の普及啓発等を進めることとしています。
このようにがん対策を着実に進めているところではありますが、依然として我が国では昭和56年からがんが死因の第1位であり続けまして、毎年約100万人ががんにかかり、38万人を超える方ががんで亡くなっているという実態があります。
また医療の進歩などにより、がんは多くの場合早期発見・早期治療により治る病気となりましたが、依然として基本計画で今年度に目標として掲げているがん検診の受診率の60%にはまだ届いておりません。国際的なデータと比較をしても日本のがん検診の受診率が低いという現状になっております。
がんを予防するためには、たばこなどのリスク要因を避け適度に運動するといった生活習慣の改善も効果的ではありますが、がんを完全に予防することはできません。そのため、ひとりでも多くのみなさまががん検診を受診し、早期発見・早期治療に繋げることが非常に有効となっています。
がん検診の受診機会は、受診者の約3割から6割が職域での受診と言われており、受診率向上のためには職域での啓発が非常に重要であることから、厚生労働省では職域において科学的根拠に基づくがん検診ができるよう、平成30年に「職域におけるがん検診に関するマニュアル」をお示ししております。厚生労働省のホームページや企業アクションのホームページに掲載していますので、見たことがないという方はぜひご覧いただき、ご活用いただければと考えています。
またこの企業アクションでは、職域におけるがん検診の受診率の向上や、がんになっても働き続けられる社会の構築を主な目的として、平成21年から15年間活動をして参りました。
現在では約5,000社の企業・団体様がパートナーとして登録されております。企業アクションではそのがん対策に関する様々な情報をわかりやすくご提供しますので、こちらも積極的にご活用いただき、職場でのがん対策に役立てていただければと思います。
最後になりますが、本日のセミナーがみなさまのがん対策に関する知識を深め、それぞれの職場でがん対策を充実させる契機となることを期待しますとともに、みなさまの今後の益々のご発展とご健勝をお祈りいたしまして、私からの挨拶とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いします。
挨拶・がん対策推進企業アクション事業説明
がん対策推進企業アクション事務局 藤田 武氏
日本では男性の3人に2人、女性の2人に1人ががんに罹患する時代です。企業では人材を守るために、がん検診の受診率の向上、治療と仕事の両立支援などのがん対策が必要になってきます。私たちは企業での「がんアクション」をサポートする活動を行っております。
企業が取り組める「がんアクション」を3つ挙げます。1つ目、がん検診の受診を啓発すること。2つ目、がんについて会社全体で正しく知ること。3つ目、がんになっても働き続けられる環境を作ることです。人材を守るためにがんの早期発見・早期治療、そして従業員ががんになっても働き続けられる環境が必要になってきます。
このような「がんアクション」をされる企業様をサポートするために、我々がん対策推進企業アクションは次の3つの活動を実施します。1つ目、推進パートナー企業・団体数の拡大。2つ目、がん対策を啓発するコンテンツ制作と情報発信の推進。3つ目、がん検診受診の現状把握と課題の整理です。
続きまして、令和5年度の活動を具体的にご紹介できればと思います。発信・広報、イベント、企業連携の、主に3つの内容についてご説明いたします。
最初に発信・広報に関するものをいくつかご紹介します。まずは小冊子、ポスター、ニュースレターです。小冊子は今回ご来場いただいたみなさまにお配りさせていただきましたが、パートナーにご登録をいただければ無料で配布しています。がんについて非常にわかりやすく記載しておりますので、ご自身が読み終わった後には、ぜひご家族、同僚の方にもおすすめください。
ニュースレターではがんについて最新の情報をわかりやすく発信し、メールマガジンもがんに関する様々な情報を月2回お届けしています。パンフレットも作成しています。中川先生からのメッセージをはじめ、アドバイザリーボードメンバーの紹介や、各施策の代表者の挨拶も掲載しております。
YouTubeとe-ラーニングです。YouTubeは中川先生ががんについてわかりやすく教えてくれます。月1回更新し、本日ご登壇いただく認定講師の阿南様との対談動画もございます。e-ラーニングは今年度新たに修了証書を作成しました。従業員のみなさまだけではなく家族の方も受講でき、がんのことを知ってもらえるきっかけになります。
続いてイベントです。今年度は秋田県、香川県、宮崎県の3つの地域でセミナーを実施します。秋田県は既に10月末に実施しまして、本日は香川県、後日宮崎県と実施してまいります。県庁と協力し共催することで、開催地域でがん対策が根付いていくことを目標としております。この後、池田知事にもご挨拶を頂戴します。
続いて企業連携についてです。ここでは企業コンソーシアム、Working RIBBON、中小企業コンソーシアムの3つの柱がございます。企業コンソーシアムでは約40社の企業を中心に、企業のためのがん対策を推進する活動を実施しています。
Working RIBBONでは、女性特有の乳がん、子宮頸がんの対策にフォーカスし、働く女性のがん検診やがん対策について議論、取材などを実施しています。今年度は特に子宮頸がんについての話題が多く、子宮頸がんにフォーカスしたチラシも作成し、本日会場にお越しの方へお配りしています。
中小企業コンソーシアムは、中小企業のがん対策について考えています。経営者の関心やリテラシーが高いほど従業員の検診受診率は向上します。本日ご来場いただいた方はお手元にあるかと思いますが、経営者や働く従業員の方へ向けたチラシも作成しました。
その他にもセミナーのご紹介、企業への出張講座、パートナー企業の取り組みのご紹介なども公開しています。出張講座のチラシも本日ご来場いただいた方はお手元にございますのでご確認ください。最後になりますが、今後もがんに関する様々なことを発信し、企業のがん対策を全力で応援できればと思っています。ぜひ一度ホームページをご覧いただければと思います。最後までご清聴、ご視聴ありがとうございました。
挨拶
香川県知事 池田 豊人氏
本日はお寒い中、セミナーにご参加いただきましてありがとうございます。またオンライン配信でご視聴いただいている方もたくさんおられると聞いております。ご参加いただきまして本当にありがとうございます。また今日のセミナーは厚生労働省の主催で開いていただき、香川県を選んで開催していただいていることに、改めて感謝を申し上げたいと思います。
また日頃から、厚生労働省をはじめ、このがん対策の推進にいろんな形で携わっておられる関係者のみなさん、また企業の立場でがん対策にいろいろご尽力いただいているみなさまにも、日頃のご努力に感謝申し上げたいと思います。みなさまのいろいろなご努力のおかげで、がんの受診率も上がります。また治療法も、医療のいろいろな進歩があり、早期受診、治療といった実績もたくさん上がってきているところであります。
一方、香川県でもまだ死亡の原因の第1位ががんということで、県民の命にとって重要な課題であるということに変わりはありません。これからも行政、医療機関、企業のみなさま、ひとりひとりのみなさまが力を合わせ、このがんというものに対し克服できるように取り組んでいく必要があると思います。このような状況の中で、このがん対策に関しての知識を深めることができるこのセミナーは、みなさんと一緒にまた次の行動に向けて考える機会となる非常に有意義なセミナーであると思います。
この後、中川先生のご講演もありますし、企業様のご発表もあると聞いています。ぜひご参考にしていただき、それぞれの立場で新しい取り組みを考えていただければと思います。このセミナーが実り多いものになりますことを心よりお祈り申し上げまして、ご挨拶にさせていただきます。
がん対策の現状と今後の方針について
香川県 健康福祉部 健康福祉総務課 課長 和田 朝子氏
本日は香川県のがんの現状、香川県の主な取り組み、そして今後の方向性についてお話をさせていただきます。
まず、最初はがんの現状ということで、令和4年に香川県で亡くなられた方々の死亡数の割合をグラフに表しております。先程知事のお話もありましたが、やはり死亡原因の第1位ががんです。これは昭和52年からずっと変わっておらず、男性がちょうど4人に1人の26.5%で1,762人、そして女性が18%でおよそ5人に1人の1,245人の方ががんで亡くなっているという状況です。
次はがんで亡くなった方の部位別の割合のグラフです。男性は肺がん、胃がん、大腸がんの順でこの3部位でおよそ半分を占めています。女性は大腸がん、肺がん、膵がん、そして胃がん、こちらでおよそ半分を占めています。
続いてがんの部位別の罹患数のグラフです。香川県において、令和元年にがんと診断された方は男女合わせて8,375人です。部位別の割合を見てみますと、男性が前立腺がん、胃がん、肺がん、大腸がんの順。こちらで大体6割を占めています。そして女性が乳がん、大腸がん、肺がん、胃がん、この順番でこの4部位で6割を占めています。
こちらは令和元年の香川県のがんの年齢階級別の罹患数、人口10万人あたりでどのぐらいの方ががんになっているかのグラフです。男性は50歳を過ぎたあたりから、女性は45歳くらいから罹患率が増加しており、女性は男性に比べると増加の始まりがやや早く35歳ぐらいから増え始めます。これは女性特有の乳がんや子宮頸がんの影響が考えられます。しかしながら55歳以降は逆転し、男性の方が多くなっていまして、これは前立腺がんや胃がん、肺がんなどが影響していると考えられます。
香川県の主な取り組みについてご説明させていただきます。まずがん予防です。本県ではがん予防として、たばこの禁煙、受動喫煙対策に取り組んでいます。喫煙による健康リスクに関する知識の普及ということで、たばこの害に関する教育資材を小中学校へ配布するとともに、学校に出向きまして児童生徒への教育を行っています。
禁煙の推進といたしましては、禁煙指導が受けられる専門医療機関の情報を提供する他、施設内禁煙に取り組む施設を禁煙施設として認定する制度を設けています。また市や町の妊婦健診の機会を利用して、受動喫煙対策の推進として健康への影響による普及啓発を行っているところです。
続いて、がん検診の取り組みです。先程のお話にもありましたが、市や町が実施する住民検診と、企業が実施する職域検診の2種類があり、国が推奨しているがん検診には胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がんの5種類があります。
香川県の状況は、令和4年のがん検診受診率はいずれも少しだけ全国平均よりは高いのですが、胃がん、肺がん、乳がんは50%を超えている一方で、大腸がん、子宮頸がんについてはまだ50%に届いていない状況でございます。
そこで、がん検診をみなさまにもっと受けていただこうと、私どもはがん検診の受診率向上対策に力を入れています。まず「かがわマンモグラフィサンデー」と称し、働く世代の女性の方々に乳がんや子宮頸がんの検診を気軽に受けてもらうため、乳がん月間である10月の休日に検診を実施するという取り組みを行っています。
こちらは「香川県がん検診受診率向上プロジェクト」です。これは県内の企業さんと協定を結び、企業グループのみなさまとともに、企業の社員さんやお客様にがん検診の受診を呼びかけるという取り組みです。この後事例発表をしていただきます香川ヤクルトさんも、「香川県がん検診受診率向上プロジェクト」の参画企業さんとしてご協力をいただいているところです。
受診率向上のため、市や町のがん検診に住民の方々を呼び込むため、香川県では市や町の担当者の方々をお呼びし、人の癖をうまく利用して行動に繋げる方法「ナッジ理論」を活用して、例えば「限定何名様まで」や「お誕生日月に検診しませんか」というご案内など、工夫を取り入れるような研修会を開催しています。
また、がんに関する正しい知識の普及啓発も大切です。特に若い女性に多い子宮頸がんに対する啓発としてターゲットとなる県内の学生さんにご参加いただき、この動画を作成しました。会場の入口にソウキくんがあったかと思います。香川県のがん征圧イメージキャラクターのソウキくんが子宮頸がんの検診を体験したり、学生さんと一緒にドクターからお話を伺ったりするような楽しい動画になっていますので、ぜひホームページから見ていただければと思います。
続いてがん医療です。香川県内では香川大学医学部附属病院を中心に、香川県立中央病院、高松赤十字病院、香川労災病院、三豊総合病院の5つのがん診療連携拠点病院を整備しております。また小児がんにつきましては、香川大学医学部附属病院と四国こどもとおとなの医療センターの方が中心となって、小児のがん医療を提供しています。これらの拠点病院では国の整備指針に基づき、標準的な治療法、手術療法、放射線や薬物療法、そして緩和ケアの提供やがん相談支援センターによる患者さんの支援、ドクターや看護師さんなど他職種連携によるチーム医療ということが提供されています。
次に、がん患者さんに対する支援としての取り組みをご紹介します。まず、がんの治療によって毛髪の脱毛や手術による体の棄損など、外見が変わってしまうことがあります。そうしたことに対し、医療用のウィッグや乳房補正具の費用を一部助成するアピアランスケアへの支援を行っています。
妊娠するための力を妊孕力、妊孕性と申しますが、がん治療によってこの妊孕性が低下したり失われたりすることがあります。将来子どもを望むがん患者さんに対する治療費助成を行っています。
またこの補助事業以外にも患者さんやそのご家族の療養生活への支援として、拠点病院に美容師や折り紙講師などの専門家を派遣する事業、そしてがんを経験された方がその体験や当時の悩み、生活の知恵などについて今悩まれているがん患者さんやご家族に寄り添い支援していただく「ピアサポーター」という事業があります。ピアというのは仲間という意味で、このピアサポーターを養成する研修や、ピアサポーターをがん診療連携拠点病院のがんサロンに派遣する事業にも取り組んでいます。
最後になりますが、今後の方向性についてです。香川県ではがん対策推進基本法はもとより、平成23年に香川県議会の会派を超えた先生方からの議員提案で制定された「香川県がん対策推進条例」に基づき、総合的にがん対策を進めていくためがん対策推進計画を策定し、現在は第4次のがん計画を策定しているところです。
今回策定予定の第4次計画は「県民一人ひとりが、がんを知り、お互いに手をたずさえて、がんの克服を目指す」という基本理念のもと、がん予防・がん検診の充実、がん医療の提供、安心して暮らせる社会の構築、この3つを柱に全体目標とし、これらを支える基盤の整備も含め総合的ながん対策に取り組むとしています。
県といたしましては今後とも県民をはじめ企業のみなさま、関係者のみなさまにご協力をいただきながら、がん対策に積極的に取り組んでまいりたいと考えています。
職域がん対策の進化
東京大学大学院医学系研究科
総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川 恵一先生
職域がん対策の進化ということで、40分お話させていただきます。そもそも日本は世界で最もがんが多い国でして、生涯に何らかのがんになる確率が男性で65.5%、女性で51.2%、つまり日本の男性の3人に2人ががんになり、女性は2人に1人ががんになる。そして大事なことはがんとは備えることができる病気ということです。多くの難病があり、例えばALSという病気は全身の筋肉が麻痺していき、最後は呼吸もできなくなり、目の筋肉だけが残るという病気で、これは発症原因もほとんどわかっておらずいい治療法も存在しない。そういう運命みたいな病気というものは確かにあります。しかしがんは備えられます。非常に重要なことで台風とは違います。香川県は比較的台風は来ないですが、東京はよく来ますし地震なども怖い。このような天災はある意味どうしようもないです。本当に受身です。
しかし、がんという病気は全てではありませんが、制御可能な病気です。積極的にコントロールできる病気。そのようなイメージを多くの方に持っていただいて、実践していただきたいです。がんを知ることで、がんはコントロールできる病気です。
実は今日お越しいただいていますが、宇多津町の谷川町長にはもう10年以上にわたってお世話になり、気がついたら毎年、今年も9月に寄せていただきました。
がん教育を平成25年からやらせていただいていますが、実はこれによって宇多津町のがん検診受診率が急増しました。子どもたちが保護者に話すのです。これは非常に重要なことで、そのような意味では少し私も宇多津町にお役に立ったのかもしれません。アドバイザーをやらせていただきました。
みなさんにお尋ねしますが、遺伝はがんの原因のどれぐらいを占めると思いますか? 3択でどれかに手を挙げていただきたいです。半分くらいだと思う方は挙手をお願いします。2割ぐらいだと思う方。5%ぐらいだと思う方。答えは5%です。2割に一番手が挙がりましたが、これが2割だと少し辛いです。耐えられないです。生まれ持った運命ということになりますよね。50%だったら最悪です。本当にどうしようもない。しかしゼロではないが5%ということは、ほとんどないということになります。
がんとは遺伝子の病気です。ただし、それはオギャーと生まれてから遺伝子が傷ついていくのです。確かに小児がんというものがありまして、これはまた今日お話している大人のがんとは別です。遺伝的な要因も大きいです。それから発症原因がわからないものも多い。ただ、大人のがんというのは遺伝は5%であって、要するに我々の日々の生活と運です。これは非常に重要なことです。がんとは運の要素が非常にある。
今日はあまりお話するつもりはなかったのですが私も膀胱がんの経験者で、経験者というよりまだ5年経っていないので患者というべきですが、自分で見つけました。自分でがんを見つけるというのは珍しいので、少しみなさんにご紹介します。私は酒飲みでありまして、みなさんと一緒です。自分で定期的にがんの検査をしていました。たまたまある日、検査のときに尿が溜まっていたのです。膀胱の検査は尿が溜まっていないとうまくできないのです。この日は2018年12月9日で、当直室に超音波の機械があり、この日たまたま尿が溜まっていたので検査をやってみたらがんが見つかったのです。これには相当びっくりしました。
男性の3人に2人ががんになると今日も言っていますが、私は自分ががんになるとは思っていませんでした。極めて間の抜けた話ですね。ちなみにがんは臓器の一番表面から発生します。これは上皮と言い、上皮内がんという言葉があります。これは最も早期で、その上皮というのは外界と臓器との境目です。例えば膀胱というのは尿道を通して外界に繋がっています。胃というのは口から食道を通って繋がるので、外界に接するのが胃の上皮です。外界との刺激に常にさらされているので、そこに実はがんができやすいということでありますが、膀胱の場合排尿しているとぺちゃんこになって表面がわからないのです。それで尿が溜まりいい機会だと思って検査をしてみたら、たまたまがんが見つかりました。
膀胱がんの原因としてわかっているのはたばこだけです。お酒では増えるというデータはありません。じゃあなぜ私が膀胱がんになったのかというと、たまたまです。
例えば男性の場合わかっている発がん原因は大体半分しかありません。これ以上増えないです。つまり生活習慣を良くすると男のがんは半分になります。しかし、たかだか半分にしかならない。だからこそ運悪くがんになった場合に備える必要があって、それががん検診ということになります。
今、学校でがんの教育が始まっており、宇多津町はその先駆けです。平成25年からやってきたわけです。では、学校でがんの教育が始まっていると聞いたことがある、知っている方は挙手をお願いします。半分ぐらいですね。なぜかあまり報道されないのです。これは非常に重要なことです。先程申し上げたように、宇多津町ではがん教育によってがん検診受診率が上がっています。要するに子どもたちが保護者に話すのです。ですから非常に重要なことなのですが、もう少し報道されるべきです。例えば子どもたちが学校でがんのことを習うと親の世代が知ったら、それがどういうことになっているのかとか、教科書を見せてくれとかそういうことになるに決まっているのです。でもそのこと自体が知られていないのはちょっと残念です。
これは中学生の教科書です。たったひとつのがん細胞が、20年かけて1センチになるのです。1センチにならないと、私のようながんの専門医でもがんを見つけることはできません。早期がんって何かというと、2センチまでです。厳密に言うと膀胱がんと肺がんでは、早期がんの定義は違います。しかし簡単に言うと2センチまでです。私の場合14ミリで自分で見つけましたが、つまり発見可能な早期がんは1センチから2センチの間のがんということになります。これは非常に重要です。がんになっても1センチから2センチで見つけましょうということです。これをみなさん、そしてみなさんの周り、あるいは会社の方に共有していただく。
そしてもうひとつ、がんは症状を出しにくい病気です。これも非常に重要なことです。なにか日本人って、がんは痛い病気、苦しい病気というイメージを持っているじゃないですか。それは亡くなる2~3ヶ月前以内の話であって、がんはよほど進行しても症状を出しません。私の場合も一切ないです。なんで検査したかというと、尿が溜まっているからたまには膀胱見てやろうということでした。1センチから2センチで症状を出すことはほぼ絶対にないです。そんな例は見たことがありません。じゃあどうしたらいいのか。
絶好調であっても検査をするしかないわけです。どの間隔でやるかというと1センチが2センチになるこの時間というのは、実は多くのがんで2年、早いものは1年です。もう少し細かく言いますと、一辺1センチの立方体、角砂糖の中にはがん細胞が10億個入っています。10億って2の30乗なのですね。だから、1個が1センチになるには30回分裂する必要があります。一辺1センチの立方体が一辺2センチの立方体になるには何回の分裂でしょうか。3回ですね。というのは、これ1ccと8ccじゃないですか、一辺2センチだったら。つまり1ccが8ccということは細胞の数が8倍でしょう。8は2の3乗なので。1センチになるのに30回分裂する必要があるのに、1センチから2センチってたった3回です。最初の時間の10分の1、つまり1年です。簡単に言うと絶好調であっても2年に1回、あるいは1年に1回検査をするしか見つけようがないという割とシンプルな話です。こういうことを子どもたちが習っていくのです。
だから大人の問題ということになります。がんに備える基本は非常に簡単で、ここは難病と違います。がんは備えることが簡単にできるのです。それはがんにならない生活習慣、そしてプラスがん検診による早期発見。この2つしか基本的にはやれることはないと思います。生活習慣の中にはワクチン接種なんてこともあるかもしれませんが、1次予防と2次予防をする。ただ確かにそれをすれば完璧というわけではないとしても、おそらくがんで死ぬリスクっていうのは1~2割以下になると思います。
既にお話が出たように、がんによる死亡が増え続けています。毎年100万人が新たにがんと診断され、38万人が亡くなっているわけですが、ざっくり言うならば6割以上は治っています。不治の病ではないし、検診によって早期発見されれば95%近くが完治します。こちらは日本人の死因の移り変わりです。戦前戦中は結核が死因のトップで、高度成長期は脳卒中、しかし多くの病気が克服されていく中で、がんだけが増え続けているということです。この100万人のうち約3割が働く世代だということです。特に定年が延長されるとこの3割が4割、あるいはそれ以上になってくるわけです。
そして、サラリーマンの死因の半分ががんですから、働く人にとって非常に重要な病気になると思います。10月に内閣府の最新の世論調査が発表され、大変残念ながらがん治療と仕事の両立が困難だという回答が半分以上で、検診率も低下したという報道がなされていました。ただ一方で、がんの治療はもう通院が基本です。入院はどんどん減って通院が増えています。在院日数も減っています。
こちらは「がん社会を診る」という日経の連載で、もう10年やっています。来年の4月で11年目です。日経の連載がこんなに続くのは極めて稀のようで、やはり読まれているようです。日経オンラインでも見られますのでぜひ見ていただき、本当にいいと思った場合は日本経済新聞の「がん社会を診る」係に、いいねとハガキを送ってください。新聞社は未だにハガキで、FAXもメールもだめなのです。
それはさておき、この記事に放射線治療のことを書いていまして、早期の肺がんでは4回の通院、前立腺がんでは手術ができないほど進行していても5回の通院治療で済みます。
こちらは実際の患者さんです。治療室の様子でご覧のように服も着替えません。入室から6分30秒ぐらいで治療終了してお疲れ様でしたと、7分程で退室です。
よく放射線で「焼く」と言いますがこれも間違いで、患部の温度は500分の1℃ぐらいで感じることはできません。これを5回通院していただき7分の治療を行う。それが入院して全身麻酔をかけ、お腹を開ける手術と同じ効力があります。ただし、知られていません。泌尿器科の先生が組織の生検をするのです。結果が出た日に、いつ入院しますか、いつ手術しますかという話が行われる。
よく私は言うのですが「車がA社でしか売っていないと心の底から確信している人には絶対にB社の車は買えない」と。だってB社のショールームに行くはずがないからです。放射線治療が行われていないっていうのはこういうことです。
実際欧米では手術より放射線治療の方が人気があり、6割ぐらいが受けています。しかし日本では半分です。やはり知ることによって変えることができる、知ることによって備えるということができる病気だということ、しかもわずかです。つまりB社で車が売っていることを知るというそういうレベルです。ぜひそのことを多くの方が知っていただきたいなと思います。
こちらは日本人の年代とがんの患者さんの数との関係です。55歳までは女性の方が罹患者数が多い。これは先程課長にもお話しいただきました。55歳で男性が追い抜いて一気に増えていくので、生涯を通して見ると男性に多い病気です。しかし働く世代に限ると女性が多い、これも非常に重要なことです。
男性のこの上がり方の理由は老化です。指数関数的に増えるという言い方なのですが、傷が積み重なりどんどん年齢が上がると急増します。しかし女性の方はそもそも20代から増えます。要するに老化以外のファクターがかなり効いているということです。なぜかというと、子宮頸がんと乳がんという女性特有のがんが老化とは違う要因で増えるのです。
子宮頸がんは性交渉に伴うウイルス感染で、このウイルスは女性の7~8割が一度は感染経験を持つありふれた風邪みたいなウイルスです。ただ、この感染がなければ子宮頸がんはまずできないということです。性的に最も活発な20代などに感染したウイルスが10年20年かけて子宮頸がんになっていくので、30代後半から40代前半あたりがピークということです。乳がんの方はもっとある意味ボリュームが大きく、日本女性の9人に1人、女性のがんで一番多いのが乳がんです。
これは女性のがんだけ見ていますが、大腸がん、胃がん、肺がん、そして乳がん、これは先程のグラフの男性のラインにそっくりです。大体ほとんどのがんは、このパターンをとります。要するに老化パターンです。しかしその中で、乳がんは40代後半に1つピークがあります。これは乳がんを増やす最大の要因は、女性ホルモンによる刺激だからです。男性ホルモンで増えるがんは前立腺がんです。男性ホルモンは生涯分泌されるから、80歳を過ぎた役者が子どもを作ったりするわけです。しかし、女性ホルモンは50歳過ぎて更年期を迎えると分泌が止まり、閉経を迎えます。そうなると乳がんのリスクが減る。つまり閉経の直前がピークで、それが40代後半です。ともかく、乳がんと子宮頸がんというこの女性の2大がんが、老化とは違う要因で若い頃から増える。これは非常に重要なことです。
子宮頸がんは特に若い30代後半がピークで、このウイルスはヒトパピローマウイルス、HPVと略されます。性交渉を始める前の小6から高1の女子生徒に対して、無料で打てる法定接種が始まっています。ただ、副反応を巡る報道などによって、一時8割あった接種率がほぼゼロになりました。これも大きな問題で国際的に見て日本でだけ打たれていないという現状があります。結果的には先進国の中ではどんどんと子宮頸がんの罹患率が下がっていく中、日本でだけ増えている。そしてそのピークが30代後半にあるということ。これらをもっと多くの方に知っていただきたいなと思います。
積極的な勧奨の一時的差し控えと言われますが、結果的に9年も積極的勧奨が止まりました。対象の小6から高1の女子のお宅に、受診接種の案内を送ることをやめたのです。そしたら打つはずないですね。その結果8割がゼロになりました。この積極的な勧奨を差し控えた9年間の対象者で、具体的には1997年4月2日から2007年4月1日までに生まれた方々の16歳以上26歳以下の世代に対しては、キャッチアップ接種といって本来の接種対象年齢ではないけれども、無料で打てるような環境があります。ただ、これは2025年の3月までで、3回接種しなきゃいけないので半年かかります。ということは2025年の3月ではだめで、2024年の9月までに始めないといけない。これは26歳までですから、会社にかなりいるはずです。しかしこのこともあまり知られていないというのが問題だと思います。
いずれにしても乳がんが40代後半、子宮頸がんが30代後半にピークがある。従って若い頃は女性の方ががんが多いということです。ということは女性が働き、そして定年が延びることによって会社にがんの患者さんが増えことになるわけです。これががん社会ということで、専業主婦あるいは年金生活者の病気だったがんが、今や働く人の病気になったということです。
がんに罹患する確率というのは、70歳まで女性の方が高いです。女性と男性のがんになる確率は70歳まではイーブンで、それまでずっと女性が多いです。ですので、実は職場でのがん対策は本来女性中心にあるべきです。ただ、これまで日本の会社は男性社会でした。例えば55歳が定年だった頃、そして男性中心とすると、55歳までに男性ががんになる確率はおよそ5%で、例外的だったのです。つまり、昔の会社にはがん対策がほとんど必要なかったということです。
しかし女性が当たり前に働き、そして男女とも長く働けば、例えば65歳までになる確率は男女とも15%です。男女とも65歳まで働けば、6人に1人ががんになるということです。この辺のことをきちんと認識していただくのが第一歩かという気がします。
しかし、元々日本のがん検診受診率は国際的に低いという話も既に出ています。がん対策推進企業アクションの中で、約5,000社あるパートナー企業を対象に毎年アンケート調査をしています。その企業アクションの受診率、これは日本の会社の中でもがん対策に関心がある企業さんですから少しバイアスがかかっていますが、結果的には肺がんは令和3年と令和4年で8割近く、大腸がんでも7割近く受診しています。
しかし乳がん、子宮頸がんはやはり低いです。まだまだこうしたパートナー企業の中でも、女性のがん検診がどうしても後回しになっていることかと思います。既に厚生労働省の磯様からお話がありましたが、がん検診の受診機会はやはり職場、特に男性女性両方のがんというのは職場での受診が多いです。これも非常に重要なことで、どういうがん検診を受けるべきかというのは答えがありまして、健康増進法で指針を定めているがん検診をきちっと受けることが非常に大事です。健康増進法によるがん検診が、科学的なエビデンスが最もあります。
例えば高松市の個人負担がどれだけか数字はわかりませんが、東京都の千代田区は5つのがん検診の自己負担は全部ゼロです。それは税収が高いからです。いずれにしてもどの自治体においてもそう高くはない。なぜ高くないかと言ったら法律で指定して、そして公金を投入しているからです。なぜ法律で指定して公金を投入できるかというと、科学的なエビデンスがあるからです。
つまり、安かろう悪かろうではなくて、良いから法律で定め公金を投入している。良いから安いということ。この辺も認識していただきたいと思いますし、中小企業の場合には多くの会社が協会けんぽに所属しているのではないかと思いますが、協会けんぽの生活習慣病予防検診の中にがん検診もあります。ただ、子宮頸がん、乳がんに関してはオプションです。なので中小企業におかれてはこの協会けんぽの生活習慣病予防検診をきちんとやっていただき、そして子宮頸がん、乳がんのオプションも女子社員にはつけるということが望ましいと思います。
定年の延長と女性の社会進出を受け職域でのがん対策の重要性が増している、そしてがん検診の受診者の多くが職域でのがん検診を受けているということで、このがん対策推進企業アクションが15年間続いています。15年間続いていることをどう考えるか、恒久予算ではないこの事業が必要とされているのか、あるいはまだ達成できていないから続けるべきなのかはわかりません。いずれにしても大きな課題があることは間違いありません。3つの課題があり、がん検診の受診、仕事との両立支援、そしてがんのことを職場で知っていただく。こういう取り組みをしています。
様々な事業が多くなってきています。これは先程藤田事務局長からお話もありました。大臣表彰などもしていて、伊藤忠さんなどは非常に優れたがん対策をしています。私も深く関わりましたが、少し面白いデータをご紹介します。
伊藤忠さんもがんと仕事の両立支援に取り組まれています。これは岡藤会長が旗振りをして、経営者ががん対策をやるんだということを会社社員にはっきり言う。伊藤忠さんの場合そのメッセージが非常に強かったですが、2017年度にがんと仕事の両立支援をやると決めて、これによって実は労働生産性が5倍以上になりました。そしてこのがん対策を始めることによって出生率が上がったのです。元々出生率は0.6でした。こんなに低かったものが2.0近くまで上がりました。がん対策をやるということが大きなきっかけになり、労働生産性が上がり社員の出生率まで上がりました。健康経営というのは、実はコストではなくてむしろベネフィットをもたらすものだということがわかると思います。多くの経営者がこういうことに関心を持っていただきたいなと思います。
磯補佐から話がありましたが、現在約5,000社にパートナー登録をしていただいております。東京都が多いのはしょうがないですが、香川県が26社あり、ここをぜひ50社は増やしていただきたい。これは国の事業ですから経済的な負担など一切ありません。
例えばみなさんのお手元に「働く人ががんを知る本」がありますね。これも藤田事務局長からご紹介いただきましたが、社員数分だけ無料で差し上げています。情報提供も、最新のがん対策情報などが定期的に届きます。これを社員さんにそのまま転送していただくだけでも、本当に大人のがん教育が進むと思います。がんはわずかな知識の有無で運命が変わるので、知ることによって備えられます。それなら学校で教えましょうという当たり前の話です。
この中で、学校でがんのことを習ったっていう方は挙手をお願いします。これ本当に矛盾に満ちた話ですよね。がんってわずかな知識で運命が変わる。しかしそれを我が国では学校で教えてこなかったのです。そうした本当に大きな矛盾があり、私も15年近く前から学校でがんの授業をしてまいりました。その先駆けが香川県宇多津町ということはご紹介しました。ちなみに日本では体育会系の先生が保健を教えるという極めて稀な仕組みですが、欧米では体育会系の先生が教えるのはスポーツという教科です。保健というのはむしろ理科の中にあるのです。理科・物理・化学・生物・保健です。
結果的にはヘルスリテラシーというものがあり、国際的に評価しますと日本が最低です。例えば先程少しご紹介した、10月21日に出たがん対策に関する最新世論調査です。平成21年に「がんを予防するための実践」という調査をしています。がんにならないために、生活習慣上でどんなことを一番やっているのか。そのトップは「焦げた部分は避ける」です。焦げでがんができるのか。もちろん疫学情報はないです。これはありえないです。おそらくトン単位で焦げだけ食べてもできるかできないか。誤解ですね。噂の始まりは、これを大腸菌に振りかけたら突然変異が起こったという報道のようです。
結局、健康に関する知識や意識、もっと言うなら情報判断する能力、あるいはトレーニングができていないです。例えば「医者から言われたことを理解するのは難しい」という割合を日本とEUとオランダで比べていますが、日本は5割近くが難しいと回答し、EU15%、オランダは10%もないです。このヘルスリテラシーの国際比較はオランダ、ドイツが高く、日本は最下位です。インドネシアやミャンマー、ベトナム以下ですから、算数とか理科でこれが起こったらまずいです。これはもう日本の技術立国の将来はないです。
では保健はいいのかというと、自分で自分の体を守るという能力がどうしても身につかないのです。特にがんがわずかな知識の有無で運命が変わるということは、この結果が実は非常に重要な影響を与えていると私は思います。
用意していた話とかなりずれましたが、そんな中学校での授業が始まり、中学校と高校の学習指導要領の中にがん教育が明記されているということ。ただし保健体育という問題がありますが、教科書も変わり先程の自治体が行っている住民検診も中学校の教科書に載っています。女子生徒は20歳から受診しないといけないのです。20歳からということは、中学生、高校生の女子生徒にとってはもう本当に数年先の話ということです。がんができるメカニズムや、身近な大人に向けてがんに対してどのように行動すればよいのかアドバイスを考えましょう。
実は宇多津町では、生徒に「今日帰ったら今日の話をお父さん、お母さんにしてくださいね。そしてアドバイスをしてくださいね」と言っていて、それをしているのです。これも非常に重要なことで、例えばこの宇多津町でがんの授業をする前に生徒にアンケートをしており、「家庭でがんのことを話したことがあるか」と質問をすると、ほとんどないわけです。そして授業の直後に「がんのことを話すか、がん検診に行くように言うか」と質問をすると、8割以上がそのように話したいと思うと回答しています。6ヶ月後に実際話したかというと、半分がお父さんお母さんに話したということです。だからこそ宇多津町では、がん教育によって親世代のがん検診受診率が上がるということが起こっています。
高校ではがんの治療について、例えば高精度放射線治療など、このようなことも習っていくわけです。今後やはり重要なのが大人のがん教育だと思います。そして会社の中ではとりわけ経営者の理解と関心が重要です。
これは企業アクションの中で実施したアンケートです。このアンケートは大体約1,000社が答えてくれています。先程ご紹介したように受診率はいいのですが、乳がんと子宮頸がんがやはり低いです。なにせ55歳まで女性の罹患数が多いので、乳がん、子宮頸がん検診が最も必要です。ところが企業アクションのパートナー企業はエリートですが、やはり足りていません。
経営者の方々に、がんに関する関心がどれだけあるかをまず聞いています。大いに関心がある、関心がある、あまり関心がないなどです。そしてこの経営者の関心によって会社でのがん検診の実施率が見事に左右されるのです。
経営者ががんを知ることが大事で、両立支援に関しても同様です。経営者のがんに関する関心、知識が非常に重要だとわかります。
それから今、がんの治療が非常に高額になっています。例えば私の義理の妹が大腸がんで亡くなり48歳でステージ4でした。彼女が受けた抗がん剤治療は、年間750万円かかりました。一方、内視鏡切除をすると40万円です。これだけ違います。これは富士通と一緒にやったデータです。
大腸がん検診をやりますと、そもそも検便の費用がかかり、そして検査に引っかかった方が内視鏡をやります。結果的にはほとんど白です。ですからその部分は少し言葉が悪いですが、結果的に死に金なのです。
ただしやはり検査をやることによって早期発見されるので、その検診のコストを含めても実は結果的には受診をされた人の方は医療費が少なくてすみ、その差が年々上がってきているのです。
確かにがん検診をやるとコストがかかる。しかし早期で見つかれば、結果的には医療費が少なくてすむということです。国のレベルで考えてもがんの経済負担は、2兆8,600万円ぐらいです。そのうちの1兆円は予防できました。これは生活習慣や早期発見などですから、このがん対策は経済的メリットももたらすということを経営者が知っていただきたいと思います。
今日はがん教育が親世代に及ぼす影響、そして会社でのがん教育を進める、経営者の方ががんに関心を持ってもらうことが非常に重要で、結果的にはそのことが経済的メリットをもたらすし、経営的なプラスにもなるというお話をしました。ご清聴ありがとうございました。
企業事例発表
香川ヤクルト販売株式会社 取締役 前田 知恵美氏
当社のがん検診受診率向上のための取り組みについてお話しさせていただきます。私たち香川ヤクルト販売は、香川県内を商圏にヤクルトやジョアなど、主に乳酸菌飲料の販売を行っています。社員数は79名、宅配を担うヤクルトレディが235名所属しています。ヤクルトといえばスーパーのイメージがあると思いますが、学校や病院などの給食、また県下18の拠点からヤクルトレディが個人宅やオフィスに、今話題のヤクルト1000などの乳酸菌飲料やヤクルト化粧品のお届けを行っています。
本題に入る前に、私たちヤクルトグループには、創業者の思いでもある「代田イズム」という理念があります。話すと長くなるので今日は割愛させていただきますが、その中に病気にかからないための予防医学、腸を丈夫にすることで長生きに繋がる「健腸長寿」という考えがあります。
我々の仕事はただ商品を販売する、納品するだけの仕事ではありません。日々お客様とお話しながら、お客様の健康状況をお聞きしています。その中で、商品を通して予防医学や腸を大事にすることの大切さを伝え、お客様の健康にお役立ちすることが私たちの仕事なのです。
ですから、お客様の健康のためには、まずは自分たちが健康でないと説得力がありません。ゆえに、社員やスタッフの健康維持は大変重要な問題です。今年度からは健康優良法人として、健康経営、がん検診受診率向上に取り組んでいますので、今日は何点か弊社の取り組みについてご紹介させていただきます。
取り組みの1つ目として、弊社では毎年9月から11月の3ヶ月間「ヤクルト健康21」という健康強化月間を設けています。社員は体力作り運動コース、食生活見直しコースのどちらかを選択し、記録表にチェックしていきます。食生活見直しコースであれば、朝食をきちんと食べた日には丸をつけるといった形です。ちなみに私は体力作りコースで毎日5000歩を目標にしていますので、サンポート高松周辺を歩いています。
2つ目は、毎日定時にリフレッシュを兼ねたストレッチ体操、その名も「ヤクルトストレッチ」を行っています。眠気や疲れが出てきやすい14時30分に自動再生設定をしています。こちらはパソコン業務が多い本社、事務社員を中心に行っています。
3つ目は、健康診断で再検査が必要な方への連絡の強化です。再検査に行っていない社員に対して、総務部から再度連絡をする仕組みにしています。
そして4つ目が、社内のがん検診受診率向上です。弊社でがん予防の機運が高まったのは数年前。乳酸菌やイソフラボンを継続摂取することで、乳がん発症リスクを低減させるエビデンスを社内勉強会で共有したことが始まりかと思います。その中に、乳がん、子宮頸がんが子育て世代の若い女性に多く、身近な病であることを学びました。弊社はヤクルトレディも入れると、従事者の9割以上が女性の職場です。子育て中のスタッフも多い中、職場でも家庭でも役割が大きい。お母さんが病気になるということは、とても大変なことです。そこで、私たちは社会の中心であるお母さんの命を守るために何かできないか、社内社外問わず考えてきました。そして今、プロジェクトに参画させていただいています。
弊社はこちらの香川県がん検診受診率向上プロジェクトに参画させていただき、お客様に検診の重要性をお伝えしています。香川県のがん罹患状況はもちろんのこと、早期のがんであれば治せる可能性が高いことや、がん検診で早期発見の確率が高くなることをお伝えしています。
毎年8月からは、県下約2万人の宅配のお客様に、「かがわマンモグラフィサンデー」のチラシをお配りし、10月は土曜日や日曜日の休日でも検診していただける病院があることをお知らせしています。
検診を呼びかける中で、がんの体験談をお話してくれるお客様がいました。また、検診を定期的にきちんと受診されている方もたくさんいらっしゃいました。お客様からいろいろなお話をお聞きすることができ、伝える側であるヤクルトレディの検診に対する意識は、飛躍的に高まったと思います。
こちらは弊社のヤクルトレディ約200名を対象にしたがん検診受診率です。2017年、2018年では、子宮頸がんが約40%、乳がんが30%の検診受診率でした。それが、香川県がん検診受診率向上プロジェクトに参加しお客様にお伝えすることで、検診意識も高まり、2022年の検診受診率は50%を超えるようになりました。
また、ヤクルトレディの多くは個人事業主のため、保険組合のがん検診助成のようなものはありません。そこで、弊社ががん検診費用を全額会社負担で助成したことで、相乗効果が生まれ、受診率がアップしたと考えられます。
香川県がん検診受診率向上プロジェクトでは、今後60%の受診率を目指していくということなので、弊社もそこはぜひ達成していきたいと思います。プロジェクトの参加、費用助成以外にも、がん予防やがん検診について、社内で意識付けをしておりますので少し紹介させてください。
意識付けの1つ目としましては、社内研修の実施です。弊社は3名の管理栄養士が従事していまして、学校や地域の施設、企業様向けに、無料の健康教室を開催しています。主には腸やお通じの大切さを知っていただくような内容です。
大変好評で年に100回以上、通算で1,200回、約6万5,000人の方に参加していただいております。社内で定期的に開催される勉強会の中で、先程の健康教室を応用して社内向けの研修を行っています。月に一度、1時間弱くらいの時間ではありますが、がん予防、アレルギー感染症、食事のバランスなど、健康にまつわる知識に触れることで社員の健康に対する関心を高く保つことができていると思います。
2つ目ですが、外部講師による講演の依頼です。講師が身内ではないので、先程の社内研修をしのぐ影響力を感じます。より多くの人に、そういった体験をしていただきたいので、社内でも一番多くの人が集うヤクルトレディの表彰式典で講演をお願いしています。過去の式典では、がん治療を専門にされているお医者様に講演していただきました。がんにならないための生活習慣や食生活のお話をしていただいたのですが、普段の生活から実践できそうなことばかりだったのでみんな熱心に耳を傾けていました。昨年の式典では幼い頃にがんで母を亡くし、がん検診の啓発を行っている女性に講演していただきました。参加したスタッフのほとんどが子を持つ母であったので、娘を置いて旅立たざるを得ないお母さんの心境を考えると、いたたまれないものがありました。もし早期発見ができていれば…。やはり検診は大切だ、そう実感させられるものでした。
3つ目の意識付けは、こちらの「まめにチェック」です。ご存知の方はいらっしゃいますか。えんどう豆型の布製のストラップなのですが、実は豆の部分に乳がんのしこりを模した豆が入っています。こちらの「まめにチェック」は、ピンクリボンかがわ県協議会の方が手作りされているそうです。こんなふうにヤクルトバージョンも作っていただきました。かわいい見た目と気軽にチェックできるので、スタッフからもお客様からも大変好評でした。このことがきっかけでセルフチェックを初めて実施してみたとのお声や、実際に早期発見できた方もいらっしゃいます。
乳がんの検診は40歳以上の女性が対象となっており、2年に1回の受診が推奨されていますが、30代で発症する方や、男性も罹患するリスクがあります。セルフチェックすることで早期発見の確率も高くなります。
4つ目は、イベントの参加です。コロナ前は「ピンクリボンいくしまウォーク」に企業ブースで参加させていただきました。県総合運動公園(高松市生島町)を発着する約10キロの道のりを歩くウォークコースと、同公園内に設置した。4ヶ所のチェックポイントを巡る約4キロのラリーコースがあり、2019年は子どもからお年寄りまで約600人が参加したそうです。
現在はピンクリボンポスターデザインコンテストに協賛させていただいております。年度ごとに違う社員スタッフが参加することにより、社内でのピンクリボンや検診意識の広がりを感じることができました。また、ピンクリボン協会への寄付も今年で9年目になりました。毎年お渡しさせていただく際、医師会会長様より、子宮頸がんワクチンのお話など最新の予防のお話をしていただき、私たちの活動の励みにさせていただいております。これらの4つの意識付けは少しずつではありますが浸透し、社内の検診意識を高めてきました。
課題もあります。こちらはヤクルトレディではなく昨年度の社員のがん検診の結果です。胃がん、大腸がん、肺がんなどは、会社の定期健康診断でほぼ全員が受診していますが、先程ヤクルトレディでは改善した乳がん、子宮頸がん検診の受診率が2022年度はコロナ禍の影響もあってか低迷してしまいました。
そこで、コロナの影響以外の原因がないか社員から聞き取りをしました。聞き取りした結果2つの問題点が出てきました。1つ目は、土曜に検診できる病院もあるが、休日は子どもの面倒を見るのでなかなか検診に足を運びにくいという意見。2つ目は、平日は時間的な余裕はなく、有休休暇を使うにも子育て世代は学校行事などで有給休暇があまり残っていないことがわかりました。そこで、土日ではなくしかも有休休暇を使わずに、平日に検診に行ってもらうために何ができるかを考えました。
その結果、今年度より乳がん、子宮頸がん検診受診時に特別休暇制度を設け、有休休暇を使わず受診できるようになりました。また、男性社員は奥さんが検診の際に特別休暇とし、子どもの面倒を見たり家事を手伝ったり、奥さんが検診に行きやすいような制度にしており、家族にも検診受診者が広がることを期待しております。
そして最後に、まさにこれから取りかかろうとしているのがこちらの喫煙についてです。現在、喫煙所は本社と出張所の屋外にあり、午前中は禁煙にしています。弊社でも喫煙者の数は時代の流れと同様に減ってきたイメージはあったのですが、初めて喫煙について聞き取りをしてみました。
聞き取りをしたところ本当は午前中も吸いたいという方がいれば、仕事中は吸わずに自宅のみで喫煙される方もいるようです。また、喫煙をやめたいと思っている人もいました。国のある統計では、喫煙者の約4分の1がタバコをやめたいと感じているそうです。ある程度対策を行ってきた今、喫煙者全員に禁煙を呼びかけるよりも、まずはやめたいと感じている人に呼びかけた方が、効果がありそうな気がしませんか。そういった禁煙に前向きな社員に対して禁煙外来費用を助成し、希望者の支援をしたいと考えています。来年度からの実行予定なのでまだ効果のほどはわかりませんが、こういった取り組みが少しでもがんなどの病気の予防に繋がれば幸いです。
最後にまとめです。私は昨年大切な仲間を乳がんで亡くしました。彼女のがんが見つかったのは、香川ヤクルトとして受診率向上に取り組みだした頃でした。もっと早くこのような取り組みをスタートしていれば、何かが変わっていたのではないかと今でも考えることがあります。いつも笑顔を絶やさず明るく前向きな人でした。再発して再度在宅での抗がん剤投与が始まるとき、私は彼女に休養をすすめました。そのとき初めて彼女の涙を見ました。会社に迷惑をかけたり、取締役に心配もかけたりするけど、待ってくれているお客様のところに行かせて欲しいと懇願され、主治医の先生の意見をお聞きしながらお届けを続けていただきました。最後までお客様の健康を願い、お届けを継続してくれた彼女の思いに応えるためにも、まずは私たち従事者の健康が大切です。
私の仕事は社員とヤクルトレディさんの管理です。従事者の健康管理も私自身の役割だと思っています。冒頭でも少しお話させていただきましたが、ヤクルトレディさんは子育て世代のママたちが多いので、私はたくさんの子どもたちから大好きなママをお預かりしているのです。これからもプロジェクトや研修などを通して、今まで以上の意識付けと環境整備に取り組み、企業としての責任を果たしていきます。
また、全従事者が一丸となって、香川県民の方々の健康作りのお役に立てるよう努力してまいります。本日はご清聴ありがとうございました。
働くがんサバイバーの気持ちの変化
がん対策推進企業アクション 認定講師 阿南 里恵氏
本日は講演タイトル「働くがんサバイバーの気持ちの変化」を中心に、お話していきたいと思います。
この写真どこかわかりますか。左は東京のシンボルがあるので東京ですよね。右はイタリアの写真なのです。左の東京というのは私が就職してから13年間、がんも東京でわかって私の人生が凝縮された思い出のつまった町です。この右手のイタリアは日本でがんになってからなんとか人生を立て直そうといろいろ頑張ったのですが、うまくいかず、38歳の時に少し日本を離れようと思って海外に留学することにしました。イタリアに留学をして、そのままイタリアで結婚しました。夫がイタリア人です。現在は京都の日本語学校で外国人を相手に毎日働いています。
私は23歳の時に突然の出血がきっかけで子宮頸がんを見つけました。その経緯は後程ご説明しますけれども、その子宮頸がんの治療によってこのリンパ浮腫という足がむくむ後遺症を発症しました。これは足が腫れるだけではなく、足が腫れるというのは炎症なので高熱が出ます。突発的に毎月この後遺症によって会社を休まなければいけなくなることがあり、残業や休日出勤は無しにしてもらっていました。それから体力もがん治療によって低下してしまいました。
がん治療の後遺症によって以前と同じように働けなくなったときに、私はこんなことを思いました。職場のみなさんに申し訳ない、こんな自分が情けない、恥ずかしい、かわいそうな人だと同情されたくない、誰かにサポートされる立場になりたくない…。なんとなくわかっていただける方もいらっしゃるかもしれません。その背景には、みなさんに迷惑をかけているというプレッシャーを感じていたり、以前のように働けず、できない自分が許せない、かわいそうな人だと同情されたくない、周りからの評価が以前より落ちるのが怖い、自立した大人として生活してきたのに突然誰かにサポートされる立場が受け入れられないなど、心の底にはいろいろな気持ちや自分のプライドがありました。
今は外国人と関わり毎日生活をしていてその中で気づきました。なぜこんなふうに思ったのだろう。なぜこんな意識が勝手に生まれてくるのだろう。振り返ってみたところ、私は子どもの頃から人に迷惑をかけてはいけませんと言われて育ちました。あるべき自分の姿や役割を作り会社や家庭でこうあるべきだ、自分がもっと努力をしないと、頑張らないと、良い点数を取らないと…。そんなふうに自分を作って生きてきたのです。他人から見た自分の姿はこうであるという人物像を自分で作っていました。他人からこう見られたい、周りはきっと私をこういう人だと思っている。それが何かというと、やはりみなさんもこのような人に迷惑をかけてはいけませんという教育を受けたりもっと頑張って良い点数を取りなさいとか良いことを言いなさいと、そもそも日本で育つうちに自然とこうあるべきだ、こうしなければいけないという意識が根付いているわけです。その気持ちががんに罹患して以前と同じように働けないとなったときに、自分自身をすごく苦しめました。
がんの体験ですが、がんが見つかったのは最初の会社を辞めて転職した後でした。それまでずっと大阪で暮らしてきた私は21歳で就職し、配属が関東になり、単身で上京し1年半一人暮らしをしていました。最初は大企業に就職したのですが、働いてみると全然合わなくて、もっとやりがいを感じられる場所に行きたくて働き始めたところが不動産のマンションの営業の仕事でした。それがすごく楽しくて、やっと見つけたという気持ちでした。
最初に就職して1年ぐらいは会社を辞めたいと泣きながら暮らして、周りからはそんな大きな会社に入ってそれ以上何を望むのと反対されながら、でもここに私のやりたいことがない、どうしようと泣いて暮らしていたのです。それがその不動産の営業に変わってから本当に水を得た魚のように楽しくて、毎日終電まで仕事をしていました。そして家に帰って寝るときには、もう早く仕事に行きたくてたまらなくなり、わくわくして、仕事が大好きでした。ちゃんと恋愛もしていました。おしゃれもして、社会人ってなんて楽しいのだろうって思っているときでした。
転職する前、大きな会社にいたので先輩から「子宮頸がんの検診も一緒に受けときや」と言われて「わかりました」と言いつつ何もわからず、その子宮頸がんの「頸」という字が何を表すのかも知らないぐらい無知な状態でしたが、子宮頸がんの検診を受けました。それが異常なしだったのです。
転職後、わずか1ヶ月で出血が始まりました。でも検診を受けて異常なしだったので、まさか子宮頸がんなんていう言葉は浮かばずに、少し様子を見ようと思ったのです。1ヶ月ぐらい放っておくとその出血が減るどころかどんどん増えてきて、色も臭いもおかしくて、これは悪い病気かもしれないとクリニックに行きました。行くまでは忙しいから生理周期が狂っているのだろう、少し様子を見ていれば出血が止まるかもしれないと思ってました。当時23歳だったのでなるべく婦人科に行きたくなかったのです。忙しいから生理が長引いているのかなって思っていたのです。
そして病院に寄ってから出勤しますという連絡をして、その日はまず病院に行きました。女性医師ばかりのクリニックを見つけて受診したらそこで子宮頸がんが発見され「今日、明日の速さで大きな病院に行きなさい」と言われ、紹介していただいたがん専門病院を受診しました。するとやはり主治医の先生に「すぐにご両親を呼んでください」と言われ、もうその翌日に両親も仕事を休んで大阪から東京に来てくれて、3人で病院に行きました。
そこで大阪の病院に行った方がいいと言われたのです。それがものすごく嫌でした。仕事に行きたい、みんなの近くにいたい、大阪になんか行きたくないと。私の居場所はそこにしかなかったのです。苦しんでやっと転職して見つけた場所、そしてみんなに阿南は部長になるって期待されるくらいバリバリやる気満々で、本当に毎日必死で働いていました。その場所を突然離れて大阪に帰るなんて、全くイメージが湧かなかったのです。
そして、このシチュエーションっておそらく香川県の人でも起こり得ると思うのです。若い人が大学を卒業して就職しますというとき、香川県から離れた場所で就職をし一人暮らしをする。そして若い女性にがんがもし見つかった場合、おそらく地元に帰りなさいというような提案をされると思います。
私にとって、唯一自分の居場所だと思っているところを離れて、そして大好きな仕事を離れて治療に専念するというのは、ものすごくしんどかったです。だから治療の合間に1日でも時間があれば、よく新幹線で東京に戻ってみんなに会っていました。
私の知り合いで同じく若くしてがんに罹患した方がいます。東京で一人暮らしをしていた方ですが、その人の場合は家族が東京に住み込んでその人の治療をサポートしたそうです。やはり若くしてがんになると一人暮らしで自分の身の回りの世話をしながら治療するのは難しいと言われました。
でも先生にお願いしました。なんとか自分の身の回りのことは自分でやるので、東京で治療してほしい、みんなから離れたくないと。それぐらい大好きな職場だったのです。そうすると先生からそのときにも、「治療がどれぐらい長引くかわかりません。手術もあるし、一人じゃできないですよ」と言われて、それでやっと自分の置かれている状況を理解しました。そう言われて、もう治療して治るとかそういう状況ではないのだなと思いました。このがんがもしかしたら1年2年単位で、もっと長い治療が必要かもしれないと理解して、大阪で治療を受けることにしました。
本当に悲しかったです。期待されていたのに、やっと自分の居場所を見つけたのに、私の居場所はなくなってしまうのだろうか、早く戻りたい、1日も早くここに戻りたいと、不安で仕方ありませんでした。東京のアパートをそのままにして、1週間後に荷物だけを持って大阪の病院に移りました。
その仕事の最後の日、みんな営業なのでいろいろなところに出ていましたが、阿南が来たから帰ってこいという部長の一声で、みんなが事務所に戻ってきてくれました。この写真はみんな泣きはらしているときのものです。なんでお前ががんにって。絶対帰ってこいよと言ってくれました。会社はもう上場目前でした。みんなが本当に必死になっているときに自分が突然抜けなきゃいけない。「ちょっと病院寄ってから出勤します」って言ったその日から、突然仕事に行けなくなって、休まなければならなくなって、大阪に行かなきゃいけなくなりました。みんなも本当に悲しがってくれ、会社の鍵まで渡してくれました。そして「絶対戻ってこい」と言ってくれたのです。
治療は最初に抗がん剤をやり、その後手術で子宮を全摘出し、放射線治療という3つの治療を受けることになりました。治療を終えるまでの唯一の願いは、とにかくここに戻りたい、自分の居場所に戻りたい、あのみんなのところに戻りたい、その一心でした。みんなから千羽鶴をもらったり、社長から直筆の手紙もいただきました。この職場の仲間や上司が、ある日みんなで集まったときにみんな坊主頭でびっくりしました。不動産の営業職で坊主は少し問題あるじゃないですか。「どうしたんですか、頭」って言ったら「俺らも一緒に頑張ってるから」と言ってくれたのです。
もう本当にここに戻りたい、だから頑張ろう、つらい抗がん剤治療も乗り越えて、一度は家出もしたのですが、手術もなんとか乗り越えて頑張ろうと思っていました。でも全部の治療が終わってから、あまりに体力がなくなっていたことに気づきました。
毎日外で仕事をするので本当に歩き回るのです。例えば1軒1軒マンションを回ったり、マンション販売をしているので見に来てくれませんかと街角でチラシを配ります。ショールームがあるので見に来てくれませんかと声をかけたり、そんな営業が大好きでした。しかしもうそんな体力はありませんでした。
30分も歩けばもう息が切れてしまいそれがすごくショックでした。髪も一度抗がん剤で全部抜け、もう本当にツルツルの状態から髪が生えてきたばかりで、野球少年みたいな感じでした。そのことがやはり何千万という商品を売ることに対して自信を失いました。こんなでは仕事に戻れないと。そして頑張っていたからこそ、みんなにこんな私を見せたくないという気持ち、それからかわいそうだと思われたくないという気持ちはすごく大きかったです。病気が見つかってから半年間、籍を置いてもらっていましたがそのまま退職になりました。
体力の低下による復職への自信喪失、外見の変化による不安。その根底にあるのは、自分自身に突然起こった変化を、自分自身が受け入れられなかったことです。自分が変わってしまった、弱くなってしまったことを許せなかったし、それを人に見せるということができませんでした。そして退職という道を選んでしまったのです。
23歳でがんに罹患し治療が終わって退職しました。その後33歳になるまで転職を繰り返すことになりました。一つは以前の自分に早く戻らなければいけないという焦りです。とにかくこの休んだ分を取り戻さないと、みんなに追いつかないと、そう思いました。あのときの会社のみんなはもっと大きな世界で働いていて、私も早くそのステージに上らないとまた対等に会えない、そんな気持ちでした。
もっと頑張らないと、早く戻らないと、そう思って頑張ると後遺症が出たのです。もしかすると再発するかもしれない。また周りに迷惑をかけてしまうかもしれないという恐怖が何年間も続き、今でもそうです。私はいつ死ぬかわからないというこのときの恐怖をずっと意識の中に持って生きています。当時はものすごくその恐怖というのが大きくて、精神的にかなり不安定になりました。
そしてもうひとつ、残された時間がどれぐらいかわからない、生きている時間を大切に使いたいという気持ち。これはがんによってその死の恐怖、再発の恐怖というのから生まれた新たな人生観です。命に終わりがあると気づいたからこそ、今生きている時間をとにかく大切に使いたい、なんとなく使いたくないのです。私は本当に必死に生きていたいといつでも思いますが、そう思うとなかなか社会ではやっていけないです。
まず不動産のベンチャー企業で働いていました。がんに罹患し治療をしました。1年後、24歳のときに保育のベンチャー企業に入りました。ここで頑張らないと私は前の会社のみんなに顔合わせできない。そう頑張りすぎて、リンパ浮腫を発症したのです。リンパ浮腫というのは一度発症してしまうとなかなか治ることがありません。
私の場合はその後転職を繰り返すので、お金に困るということもありました。リンパ浮腫の治療というのはすごくお金がかかります。治療ができなくてどんどん悪化していくきっかけを作ってしまったのは、このとき頑張りすぎたということなのです。この後遺症は高熱が出るので突然休みになってしまいます。それをある日、もういい加減迷惑かけているからと思って上司に言いました。その上司はすごく理解のある人で「もう残業もしなくていいし、休日出勤もしなくていいからね」と言ってくれたのでそうさせてもらいました。けれど、そうするとその上司以外は全員知らないわけでなんで阿南さんだけ早く帰れるんですかという声が上がりました。それはそうだと思ったので、当時40人ぐらいの会社でしたがその全員に、詳細なメールを送りました。「子宮頸がんになって、子宮を摘出しました。今再発するかどうかわからない状況で検査を受けています。だけどみなさんと一緒に働きたいと思っています。頑張りたい、でも頑張るとどうしても後遺症が出てしまうんです」と送ったのです。すると職場の仲間のほとんどは応援や励ましのメールを返してくれました。
女性の役員の人はこんなメールを送ってくれました。「阿南、一緒に金バッチつけよ。ここまで上がっておいで。頑張れ」と言ってくれたのです。社長は「そんなことを全員に言わなきゃいけないような組織を作っているのは自分のせいだ。本当に申し訳ない」と謝ってくれたし、さあ頑張ろうと思えたのです。
けれど、年の近い先輩がただ一人「阿南さんって本当にそんな病気なんですか」と言っているというのを耳にしました。それで心が折れてしまったのです。自分はみんなに迷惑をかけている、ここにいるべきじゃない、だってみんなは私よりももっとスキルがあるのに残業もしているし、休日出勤もしている。私は若いのにスキルもないし、残業もできなければ休日出勤もできない。そんな思いでまた退職するわけです。
次は26歳のときに音楽の株式会社を自分で立ち上げました。苦労し、しんどいなと思ったから会社を作ったのです。だからあまりに計画性がなかったというのが正直なところですが、4年ぐらいは事業を続けていました。
でもやはりなかなか軌道に乗せるということができなくて、30歳のときにがんの啓発活動を全国で行う公益財団法人に就職することで、やっと安定した収入と、それから自分自身の輝ける場所というのを見つけました。ここにいる間、厚生労働省のがん対策推進協議会という国のがん対策をどうするかというプロジェクトで、中川先生と一緒に委員をやらせていただきました。このときに、若いがん患者さんの妊娠出産能力を残すという意見書を出させていただいたり、本当に自分で今まで苦労したことを全部恩返ししていこうと、それが形にできる場所でした。
楽しかったですがここでまた自分の弱さが出まして、派閥争いに巻き込まれました。大きな組織だったので、上層部には大きな会社から定年間近の人がやってくるわけです。私が慕っていた上司と後から来た管理職の争いに巻き込まれました。このときに思ったのが、自分にとって残されている時間はどのくらいかわからない、もっと毎日を大切に使いたい、この派閥争いに巻き込まれている時間は私にはない、だっていつ死ぬかわからない、みなさんと違うのだから…。という気持ちがずっとあり、これがやはり退職に結びついてしまいました。
その後も講演活動などを生活の糧として、フリーランスとして活動していました。これが自分の理想ですよね。本当に自分の講演だけで生活ができていました。放っておくとものすごく忙しくなってしまい、月に19本は講演に行っていました。そうすると、全国なので毎日どこかに移動するということが発生するのですが、飛行機って足が浮腫むのです。飛行機の席がすごく狭いというのもあるのですが、気圧の差で足がすごく浮腫みます。座っている時間が長かったり、立っている時間が長かったりすると、そのリンパ浮腫という後遺症は悪化します。このとき、せっかく自分の思い通りにできていたのにリンパ浮腫がひどく悪化してしまいました。それとともに、やはりフリーランスはすごく不安定なので、年齢と将来に対する不安というものが生まれてきました。私はきっと入院するまでこの生活を続けてしまうだろうな。自分の将来のことも考えないといけないと思い、これが転機となりました。人生の再設計が必要でした。それにやっと手をつけることができたのです。
以前の自分に早く戻らなければならないという焦り、自分自身に起こっていることを受け入れられないということを、何か違う言葉でどのように伝えたらみなさんがわかりやすいかと思い、流行りのChatGPTで入れてみたらいい答えが返ってきました。当時の状況そのままでした。
「自分に起こっていることを受け入れられない状態は否認といいます。否認は、自分自身や周りの人々、現実から逃れるために使われる防衛機制の一つです。否認は、自分自身に対する問題や状況を認めることができないため、問題を解決することができません。否認を克服するためには、自分自身に対して正直であることが重要です。自分自身に対して正直であることで、問題を解決するための最初のステップを踏み出すことができます。」完璧な回答でした。その通りでした。これをしなければならなかったのです。まず自分自身と向き合うというところ。
これまで後遺症があるから正社員の仕事は難しいだろうとか、そんなふうに思っていた自分自身の偏見をまず取り除くこと。私は本当にそうなのだろうか。チャレンジしてみてわかったことがどうなのかというところからやりました。自分自身の思い込みはどのようなことがあるのだろうかということをまず洗い出して、それが本当にそうなのだろうかと見極めるために、まずできること、できないことをきちんと知る。
例えば私は足が浮腫むので、立ちっぱなしのショールームで働くことや、何かの受付の仕事というのはできないです。足の甲も浮腫むので革靴やパンプスが履けません。パンプスが履けないということは、制服のあるような仕事や、スカートを履かなければいけないような仕事には就けません。そういうことを、今まではなんとなく見たくない、聞きたくないと思っていたのですが、きちんとここで理解しようと思いました。自分にできる仕事はなんだろうと。まずそこを洗い出しました。
そして人生を再設計します。こんな業界に興味があるし、これならできるかな、どうやったらその世界に入れるかなと。専門的な知識を学ぶために学校にも通ったり、それから国家資格も取ったりするというチャレンジをしてきました。
このとき、あれだけ私の人生に影響を及ぼしたリンパ浮腫も、がん治療から10年経つと手術療法で直接的に改善することができるようになりました。それを聞いて、すぐに手術を受けました。今まで大体5回ぐらい手術を受けています。おそらくまた来年ぐらいにこの手術を受けないといけません。かなり重症化していたので、やはり放っておくとまた悪くなってくるのです。リンパ管と静脈を結ぶ顕微鏡の手術なのですが、これを定期的にやっていかないと、どんどんまたひどくなります。この繰り返しですが、この手術によってものすごく良くなりました。
私はインテリアに元々すごく興味がありました。不動産のベンチャー企業のときからそうでしたが、建物や建物の中のデザインにすごく関心があったので、そちらの世界に行きたいと思いまずインテリアコーディネーターの資格を取得しました。これが今までの人生の中で一番大変な試験でした。インテリアコーディネーターの資格を取って、足の手術もして、さあインテリア業界に入ろうと思ったら、インテリアコーディネーターの世界は実務経験が重視されていて、なかなか資格を取ったからといって33歳で未経験で入れるような業界ではありませんでした。そしてほとんどがショールームの仕事だったのです。
ショールームの仕事ができないとわかっていたので難しいとなり、就職活動をしても本当に毎日毎日不採用の連絡ばかり届き、もう精神的に参っていました。建設会社に視野を広げて受けたところ営業の仕事ならと採用していただきました。
そこで頑張らなければいけないという気持ちから、宅地建物取引士の資格を取得しました。それでも元々は建設の営業がしたかったわけではありません。そしていろいろなことが子宮頸がんの治療によってできなくなりました。簡単に言うと、大好きだったおしゃれがまず難しくなり、足が浮腫むことで旅行も難しくなりました。仕事にも影響が出ます。でも、それだけではないのです。
子どもが産めなくなったことで、恋愛、結婚、出産にも影響が出ました。頑張って日本で婚活もしました。それでもやはり子どもが産めないということが原因で、婚活もうまくいきませんでした。どんなに私が前向きに国家資格を取って知識を得たり、メンタルも前向きになったりしても、この国が変わらなければ私を受け入れてもらえる場所が少ないというのが、このときの正直な気持ちでした。
このまま人生を諦めて生きていくべきなのだろうかと悩んだとき、父が亡くなりました。最後の1週間、父の病室に2人きりでずっと一緒にいました。その中で私は、いかに父に愛されていたかを知りました。最後、父がその医療用麻薬を使うというときも私に聞きました。母ではなく私に聞いたのです。「家に、そばにおってほしい」と言ったのです。
父を看取るということをさせてもらい、どんなに私の人生と私の命が父にとって大切だったのかを思い知らされて、諦めてはいけないと思い、日本を出てみようと思いました。父が残してくれた本当にわずかな遺産でしたが、それを使って海外に行きました。インテリアの興味からイタリアに留学をして、国際結婚もすることができました。
本当はイタリアでそのまま暮らす予定でしたが、コロナで2人とも仕事を失い、完全なロックダウンだったので仕事もいつ再開するかわからないという状況がずっと続きました。もう本当に生活が難しい中、日本はロックダウンが厳しくないと知っていたので、帰国すればきっと仕事を見つけられると思い、日本に帰ってきました。留学で語学力もついたので、旅行業を立ち上げ仕事をさせてもらいました。
今までいろいろなことがあり、そのたびに心が折れたり、誰かの一言で心が折れたり、それから自分自身が許せなくて仕事を手放したり、本当にいろいろな業界を渡り歩くことになりました。しかし元々私の中にあり、すごく優先順位が高かったのはこういうことだったのです。多くの日本人の方が大切にしている謙虚であることや、努力家であること、礼儀正しいこと、思いやりがあること、誠実であること。私も本当にそれを大事にして生きてきましたし、こうあるべきだと思って自分の像を作って生きてきました。でもそれががん治療によってこの通りにできない部分が出てきました。そうなったときに、自分自身をものすごく締め付けました。自分自身が自分を否定し受け入れられませんでした。
そんなときにイタリアに行きました。イタリア人が大切にしていることは日本人と全然違います。まず家族を大事にすること、人生を楽しむこと。コロナのロックダウンの間でもベランダでお互いに歌を歌い合って乾杯している姿がありました。彼らは本当にどんなときでも人生を楽しむことがすごく大事なのです。自分自身に正直であること。いい人ぶらないというか、優秀ぶらないというか。自分はすごく不器用だけど、これが自分だということが本当に通る国で、人との繋がりを大切にします。今、私の人生観というのはこれがベースにあって、以前とはガラッと変わりました。
私がその意識を変えるために最も重要だったと思う目線というものがあります。自分のことを否定し続けたという何年間があって、ある時ふと思いました。私がもしがんではなくて、私の家族や大切な人ががんになったときに、その人にどんな声をかけるだろうか。「もっと頑張れ」と言うでしょうか。私は自分にその言葉をずっとかけていたのです。「もっと頑張れ」と。でもきっと私が私の母や大切な人がもしがん治療をしているとしたら、こんな言葉をかけると思うのです。「無理をしなくていいから、そんなに焦らないで」「いつでもそばについているから」「私にできることならなんでもするから安心して」「今は好きなだけ泣いてもいいけど笑えるようになってほしい」「あなたなら乗り越えられる。十分頑張っているよ」と。きっとこんな言葉をかけると思います。
「私、頑張ってるやん。もうそんなに焦らなくていいよ。」自分に対してこの言葉をかけられるようになってから、自分の視野が広がりました。もしかするとこの中にも、今がん治療をされている方がいらっしゃるかもしれません。ぜひ一度考えてみてほしいです。あなたの大切な人がもしがんに罹患したら、どのような言葉をかけますか。その言葉をそのまま、あなた自身にかけてあげてほしい。
以上で終わりますが、いろいろ私の体験を通じて気持ちの移り変わりというものをお伝えしました。今日伝えたかったことです。やはりがん患者さんはいろいろな場面でうまくいかないことや、誰かの力や協力を得ないといけないときというのが発生します。そのときに、勝手にプレッシャーや重荷を感じたりすると、そういう気持ちが行動や判断に繋がってしまいます。
この気持ちの変化というのはたった1日でも変わると思っていてほしいです。今日すごく元気そうで前向きだとしても、次の日にはもういつ死ぬかわからないという恐怖が襲ってきて、ものすごくネガティブになったりもします。
企業の中で、もしがんになった従業員の方の面談をする場合は、本当に頻繁に情報交換をする、話をする、ただ挨拶をするだけでもいいと思います。「今日は調子はどうか」「最近何かあったか」と聞くと、何か不安や負担になっていることが出てくるかもしれません。そのときに話を聞くだけでもかなり違います。具体的な解決策がなかったとしても、一緒にそれを解決しようと考えてくれる人がいるというだけで、ものすごく前に向く力が湧いてきます。
だから例えば休職中のがん患者さんがいらっしゃるなら、細目に連絡を取ってあげてほしいです。それが職場復帰に繋がります。ここでもし治療に専念してもらうためにと言って連絡を取らないと、その人は退職してしまう可能性が高くなると思っていただければいいと思います。
トークセッション
中川 恵一先生、和田 朝子様、阿南 里恵様、前田 知恵美様(香川ヤクルト販売株式会社)
ここまでご登壇いただいたみなさまでトークセッションを行いました。地元企業である香川ヤクルト販売株式会社様の社員やお客様に向けたがんに関する取り組みや、職域でのご家族に対するがん検診の受診勧奨についてなど、意見交換を行いました。また日本人はヘルスリテラシーが低い傾向にあり、がんは知ること、情報を得ることの大切さを中川先生に教えていただきました。