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2022/08/23 WEB配信

令和4年度 第1回
企業コンソーシアム研修会
を開催

今回は新型コロナウイルス感染拡大予防のためウェビナー配信形式で開催しました。
お申込みは200社を超え、参加者からも質問を多くいただき大変有意義な会議となりました。

<開催日時>
日時:8月23日(火)16:30~18:00(約90分)
形式:オンライン

企業コンソーシアム活動について
座長:第一生命保険株式会社 真鍋 徹 氏

▲真鍋 徹 氏 説明スライド
▲真鍋 徹 氏 説明スライド

<企業コンソーシアムとは>
パートナー企業や団体であればどなたでも参加できる組織です。
理念・世界観は、「自社と他社の従業員をがんから守る。」としており、企業による企業目線のがん対策を考え、具体的なアクションプランを立案・実施していくことを目標にしています。
年2回の全体研修会を実施、がんに関するさまざまな分野(研究・啓発・労務関係など)のエキスパート講師よりご講演いただくとともに、企業における「がん検診受診啓発」や「がんと就労対策」などの好事例の共有を行っています。
運営については、これまでに優れた取り組みや啓発活動を主体的に行っている企業・団体から、約40社を「コンソ40(ヨンゼロ)」として組織化し、「がん対策推進企業アクション」からの協力要請のもと「企業コンソーシアム」全体の運営にあたっています。
「企業コンソーシアム」は立ち上げから3年が経過しており、参画企業・団体数が200社を超えて拡大を続けています。
現在、「企業コンソーシアムの専用ホームページ」も稼働しており、こちらでコンソ40(ヨンゼロ)参画企業・団体の一覧や過年度の研修会の様子、がん対策における好事例を蓄積している「コンソノート」などのコンテンツをご紹介しています。
また、全パートナー共通で利用できる「eラーニング」や「がんについて解説しているYouTube教材」などのツールも是非ご活用ください。

<特別基調講演>
「企業でのがん対策に有用な情報について」
国立研究開発法人 国立がん研究センター
がん対策研究所事業統括 がん医療支援部 部長(併)若尾 文彦 氏

<わが国のがんの課題>
まず日本人の死因別の推移を見ると、1981年にがんが脳血管疾患(脳卒中や脳出血)を抜いて日本人の死因トップになり、その後も増え続け、他の疾患を大きく引き離しています。最新のデータでは、年間99万9000人ががんと診断され、37万8000人が亡くなっており、生涯のうちにがんと診断される人は、日本人の2人に1人(男性は65%、女性は50%)となっています。

▲日本人の死因の移り変わり
▲日本人の死因の移り変わり

がんの5年生存率について、2009年〜2011年地域がん登録のデータに基づく全国推計では5年生存率が64.1%、がんを中心的に診療している拠点病院の2013-2014年データでは67.5%まで上がってきています。一方、平成28年に内閣府が行った一般が対象の世論調査では、「2人に1人ががんにかかると思う」と回答した方は31%、「5年生存率が50%を超えている」と回答した方は30%を切っています。つまり、稀な不治の病と思っている方が多く、その方々が「検診でのがん疑い」や「がんと診断」を告知されると驚愕してしまうのが現状です。
がんの診断を受けた方はインターネットで見つけた自由診療(公的な医療保険が適用されない医療技術や薬剤による治療)などを選択したり、「会社に迷惑をかけたくない」という理由で離職をすることがあります。会社側も「治療に専念してほしいから仕事どころじゃないだろう」と判断し、離職を受理してしまうことがあります。まずは「正しい認識」を持つことが大切です。「いつかは自分自身や身近な人も罹患するかもしれない」という「自分ごととして考える」ことを常に意識することで、行動が変わると思います。がんになる前から全ての情報を知っておくことは非常に難しいため、信頼できる情報の在り処を知っておくことが大切です。また、情報の信頼性を判断する力も重要となります。

▲がんに関する認識不足から生じる誤解
▲がんに関する認識不足から生じる誤解

<わが国のがんの状況>
現在、日本でがんと診断される人数は、男女計で大腸、肺、胃、乳房、前立腺の順に多いですが、亡くなる方が多いがんでは、肺、大腸、胃、膵臓、肝臓の順に多くなっています。この順位の違いは治りやすいがんと、治りにくいがんがあることに起因します。例えば、膵臓がんは診断数の上位ではありませんが、死亡数では順位が高いです。がんの種類により治りやすさも違うということを知っていただきたいです。

<医療あるいは医療用語に関する確かな知識を>
がん情報の真偽を判断するためには、医療あるいは医療用語に関する最低限の正しい知識も知っておく必要があります。世の中には科学的根拠(エビデンス)に基づかない医療情報が溢れていて、医師、医療機関などでも間違った情報を出しています。誠に残念なことですが、高額な自由診療・民間療法、サプリメントに誘導し金儲けをしようという人たちが一定数いるためです。2018年の日本国内の調査データでは、5大がんの「治療」や「治癒」の言葉をGoogle検索すると、正しい情報サイトは10%のみ、明らかに間違った・害になる情報サイトは4割弱もある、どちらでもない情報サイトが50%、という結果でした。

誤解の多い用語として、「標準治療」と「最新治療」という言葉があります。皆様は、どちらを選びたいと思われますか?言葉のニュアンスから、誤解している方も多いですが、以下が正解です。
「標準治療」:有効で安全であることが科学的に確認されている最善・最良の治療
「最新治療」:新しいがゆえにまだ実験的な研究段階の治療で、最善・最良ではない。
新しい治療法が開発されると、その時点の標準治療と新しい治療法を臨床試験という厳格なルールのもとに比較し、有効性が確認された方が新しい標準治療になります。

<情報源に関する考え方>
医学論文やガイドラインなどで報道される学会発表、テレビで見かけるがん専門家の意見、口コミやネットの書き込み、YouTubeなど様々な情報がありますが、信頼できるものは論文でありガイドラインです。

▲情報源に関する考え方
▲情報源に関する考え方

学会とは、新しい意見を発表報告する場で、しっかりとチェックされていないこともあり、論文に比べると信頼度が落ちます。誰が出しているか、何を媒体しているかではなく、「情報源が何か」を確認することが大事です。
発信数・発表数が多いから信頼できるということではなく、対象群(コントロール)と比較しているなど、しっかりとエビデンスレベルが高い手法を用いている研究に基づいていることを確認することが大切です。

▲エビデンス(科学的根拠)のレベル
▲エビデンス(科学的根拠)のレベル

また、「いつ作られた情報か」も大事です。発表時点では標準治療であっても、研究が進むと更に新しい治療法に置き換わることがあるため注意が必要です。情報の目安は3年です。
さらに、公的機関の情報は営利目的などの偏りが比較的無いので、公的機関の情報を選ぶのも一つの手段とお考えください。

<頼りになる相談窓口、信頼できる情報源>
厚生労働省が定めた要件を満たし、都道府県知事が推薦し、厚生労働大臣が指定しているがん診療連携拠点病院、地域がん診療病院という病院が全国に453か所あります。拠点病院は専門的ながん診療を提供して、2次医療圏(高校学区ぐらいの広さ)で専門的ながん医療を提供し、その医療圏の医療機関と連携体制を構築しています。

▲がん診療連携拠点病院、地域がん診療病院
▲がん診療連携拠点病院、地域がん診療病院

拠点病院には、がんに関する相談窓口「がん相談支援センター」があり、その特徴は、誰でも相談できることです。つまりその病院にかかっていない方でも利用が可能です。がんに関する一般的ながん情報だけでなく、医療機関の情報、さらに療養上の相談やがんと就労の相談(お金のサポートの問題、制度の問題など)を聞くことができます。拠点病院によっては社労士が相談に入ったり、地域のハローワークと連携して相談できる場合もあり、仕事やお金の話も聞くことも可能であることを周知いただきたいです。

※がん情報サービスサポートセンターは、国立がん研究センター(以下がんセンター)が運営する電話相談で、がん相談の他、全国のがん相談支援センターを紹介することできます。全国一律の料金のナビダイヤル「0570-20-3410」をご利用ください。

<がん情報サービス(ウェブサイト)について>
がん情報サービスはがんセンターが運営しています。

▲国立がん研究センター がん情報サービス
▲国立がん研究センター がん情報サービス

情報は、がんセンターだけではなく、ガイドラインを作成している各がんの専門学会、緩和医療学会、サポーティブケア学会などの先生方の協力のもとに作成し、患者さんのチェックを経ているので分かりやすい情報となっています。
情報の見極めのポイントとして、聖路加国際大学の中山先生がまとめた以下のものは、大変分かりやすいです。

    ▼見極める5つのポイント
  • ・書いた人は誰か
  • ・違う情報と比べたか、コントロールがあるか
  • ・元は何か
  • ・何のための情報か、金儲けのための情報ではないか
  • ・いつの情報か、古くないか

この5つの頭文字を縦読みすると「価値もない」となりますので、情報を見る際は思い出してください。

<がん検診について>
がん検診とは、検診を受診するだけではなく、要精密検査の場合は精密検査を受け、がんの有無を判明するまでが全ての過程です。がんが発見されない場合でも全てが終わりではなく、疑いがなくても定期的に受診することが重要なポイントです。
がん検診にもデメリットはあることを認識しておく必要があります。
メリットとは:「早期発見、早期治療によって救命の効果がある」「前がん病変が見つかる」あるいは「異常なしで判定を受け、がんがないことを確認できる」こと。
デメリットとは:過剰診断による不必要な治療で、副作用による身体への影響を及ぼすことや、検査に伴う偶発症があること。
がん検診を受ける際は、メリットがデメリットを上回る検診だけを受けることが大切です。

がん検診の推奨レベルは、A~DとIの5段階あります。AとBは効果が科学的に確認されているもので、Cは証拠があるがまだ不利益と同等、Dは害があるというものです。Iはまだ十分な証拠がない、ただ今後証拠が出てくるかもしれないというものです。

▲がん検診の推奨のレベル
▲がん検診の推奨のレベル

国が推奨する5つのがん検診は図の通りです。

▲「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成28年度一部改正)」で定められたがん検診の内容
▲「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針
(平成28年度一部改正)」で
定められたがん検診の内容

C・D・Iとされているがん検診を示します。

▲推奨のレベルがC、D、Iとされているがん検診
▲推奨のレベルがC、D、Iとされているがん検診

この中で子宮頸がんのHPV検査は、最新の評価ではAとなり、今後は検診項目になる可能性もあります。がん検診によって、がんで亡くなる人を減らすためには、エビデンスのある検診を精度管理のもと正しい方法で行い、受診率向上の対策をすることです。何でも検診をやれば良い、受診率を上げれば良いのではなく、しっかり正しく行うことや検診の質も求められます。

▲がん検診によりがん死亡を減少させるために必要なこと
▲がん検診によりがん死亡を減少させるために必要なこと

平成30年に策定された「職域におけるがん検診に関するマニュアル」では、職域におけるがん検診においても、住民検診と同等の内容が示されました。また、「精度管理」の記載があり、厚生労働省は住民検診と同様の検診を、住民検診と同様にしっかりと精度管理をすることで効果が出ると判断しています。住民検診の精度管理を支援するツールとして、チェックリストがありますが、職域の場合は、企業が各検診を運営する市区町村用のチェックリストを使い、検診実施機関がこれらを守っているかを確認することや、検診実施機関に委託する場合に仕様書に書くべき精度管理の項目参考になると考えます。また、コロナでがん検診受診者が減ったことが話題になりましたが、検診も通院も不要不急の外出ではなく、ぜひ受診控えはしないでいただきたいと考えます。医療機関はしっかりと感染対策をしていますので、安心して受診してください。

<職域におけるがん対策について>
がん情報サービスのライフステージ別の情報の「はたらく世代の人へ」に、「がんと仕事のQ&A」や、「がんになっても安心して働ける職場作りガイド」を掲載しています。後者は人事総務向けのガイドブックで、ピンク色が中小企業向け、水色が大企業向けとなっています。本体内容はほぼ同じですが、事例や取り組みなどが一部変更されています。
ガイドブックでは、「がん対策は健全な経営に欠かせない」の中で、誰でもがんと診断される可能性がある中、人を大切にすることは時代の大前提として、貴重な人材をがん診断で失わないことの重要性を説いています。がんと診断される方のうち3割は就労世代で、この世代は女性の方ががんの診断が多いのも特徴です。また、定年延長で65歳義務化、さらに70歳までが望ましいとされているため、職場でがんと診断される方は今後さらに増えることが予測される中、経営層が「社員が、がんと診断されても安心して働ける」ことを明示し、社員が正しいがんの知識を持ち、がんのイメージを変えるとともに、気軽にコミュニケーションをとれる話しやすい職場をつくり、会社と従業員の信頼関係が作られているが大切です。また、まず管理職に相談することが多いので、管理職研修でがんの正しい知識を盛り込むのも良いでしょう。
社員ががんとなったときには、まずは本人の気持ちに寄り添い、話し合って正しい情報やガイドブックをもとに行動することが効果的です。

▲がんの支援で心がける7ヵ条
▲がんの支援で心がける7ヵ条

社員にがんの正しい知識を普及させるツールとして、がんセンターが作成したちらし「もしも、がんになったら」が有用と考えますので、是非、ご活用下さい。

▲A4サイズ3つ折りちらし「もしも、がんになったら」
▲A4サイズ3つ折りちらし「もしも、がんになったら」

<がん検診受診率向上に関するご講演>
「受診率に効く12の取り組みについて」
東京大学大学院 医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座
特任助教 南谷 優成 氏

2021年度のがん対策推進企業アクション推進パートナー調査の結果をもとにした、がん検診受診率向上に有効な取り組みに関する調査報告をさせていただきます。

日本の推奨するがん検診は、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんの5つで、検診ごとに国が推奨する年齢も定められています。検診全体の3割~6割の受診者が職域におけるがん検診と言われており、職域でどのような形でがん検診の受診率を向上させるかということが重要です。

しかし、がん検診受診率向上に繋がる取り組みの報告は様々です。国が推奨している5つのがん検診について、世界的に推奨されているがん検診受診率を上げるための有効な取り組みが、アメリカの予防医学協会から報告されています。

▲がん検診にまつわる現状
▲がん検診にまつわる現状

こちらは乳がん、子宮頚がん、大腸がんの3つの検診に対してどのような取り組みが本当に有効なのか、様々な報告や論文に掲載されていることをまとめています。例えば、スモールメディア、ビデオやパンフレット、ニュースレターなどでがん検診を推奨していくこと、あるいは電話や面談によって行う健康教育、啓発などの一対一の教育も、がん検診受診率向上に結びつくと言われています。しかし、グループ教育・講演の推奨は少々弱くなり、マスメディアのみになると効果がはっきりしないと言われています。

続いて費用面です。休日や夜間の受診、アクセスの向上によって、費用以外の障害の除去した場合の乳がんや大腸がん検診では受診率が上がることが分かりました。しかし、自己負担費用の軽減のみを行った場合は乳がん検診のみ受診率が上がったことが分かりました。また、手紙や電話による案内や受診勧奨も有効だと言われており、これらの複合的なアプローチで、それぞれ乳がん、子宮頸がん、大腸がんの受診率が上がるということがわかっています。このような調査報告がある中、企業アクションの実態調査も毎年実施しており、2021年度の「がん検診受診率の現状調査、がん検診推進の取り組みおよびがん患者の就労支援の実態調査」の結果をもとに、企業ごとに実施されている様々な取り組みから、5がん検診の受診率向上に繋がる取り組みを見つけることを目標に、調査を行いました。2021年の年末から2022年の新年にかけて調査した結果、回答数は704社(企業が562社、健保が142社)でした。

▲調査結果 がん検診の受診率
▲調査結果 がん検診の受診率

それぞれの企業ごとに対象年齢、対象人数が異なるため、人数に応じて重みを付けた加重平均です。
検診受診率は胃がんが50%程度、肺がんが75%、大腸がん65%、乳がん44%、子宮頸がんが35%です。下の表より、受診率を把握しきれていない企業も多いという結果がわかります。

また、令和3年度の企業アクションパートナーアンケートから見えた受診率に効く12の取り組みと、その取り組みをベースとしたアドバイスレポートがあります。企業ごとに様々な取り組みを実施しても、どのような取り組みががん検診の受診率向上に本当に効いているか、はっきりしていないことをお考えではないかと思います。受診勧奨がいいのか、申し込み方法を工夫すればいいのか、費用負担のことを助成していけばいいのかなど、企業アクションで提示した、36の取り組みの中から何が効くかということを調べた調査です。

▲企業規模別の取組状況
▲企業規模別の取組状況

それぞれのがん検診の受診率を企業規模ごとにまとめた表について、左から右に行くにつれて規模が大きくなっています。胃がん、乳がん、子宮頸がんは、企業の規模が大きくなればなるほど、受診率が下がる可能性があることが分かりました。一方で、企業規模が大きくなればなるほど、それぞれの取り組みに関する実施率が増えているということが示されました。例えば「がん検診費用を会社健保で補助している(全額または一部)」では、企業規模が小さいところだと6割弱ですが、規模が大きくなるにつれて実施率が8割9割に増えるということが分かります。取り組みが多くなれば多くなるほど、受診率が上がるだろうということはみなさま想像がつくかと思います。

今回の調査では「クラスタ分析」という手法を用いて、特徴や傾向に応じて、36の取り組みのほとんどを積極的に実施している企業、ある程度実施している企業、ほとんど実施していない企業の3つに群分けをしました。

1番積極的に実施している群が1番左です。クラスタ分析で1番が241社、2番が327社、3番が136社の3群に分けています。それなりに実施している群と、ほとんど実施できていない群では、受診率が大きく異なるということがわかります。つまり、クラスタ2からクラスタ1まで頑張る必要はないが、クラスタ3からクラスタ2を頑張る努力は必要です。クラスタ3をいかにクラスタ2に引き上げるか、ほとんどやっていない群を、それなりにやっている群にどう引き上げるかが重要ということがわかります。

そこで、消極群と中央群の取り組みの差はどこにあるのかという問題を分析した結果では、上から順に中央群と消極群で行っている差異が一番大きいもの、つまり上から順に実施していくと、消極群が中央群に上がる可能性が高いと言えると考えています。

▲受診率に効く12の取り組み
▲受診率に効く12の取り組み

一番効果的な取り組みとして、①費用負担を実施いただくことが有効的ですが、比較的広く浅い効果と言えます。記載内容の取り組みをまんべんなく少しずつ実施することが、消極群から中央群に上がる検診受診率向上に役立つ可能性があることが今回の調査結果から導き出されました。

<まとめ>

  • ・受診率は肺がん検診が最も高くて8割程度、子宮頸がん検診が最も低く5割以下。
  • ・規模が小さい企業では受診結果を把握している割合は低いが、検診受診率については高い傾向。
  • ・取り組みを一定程度実施している企業群は、積極的に取り組みを実施している企業群と比べて検診受診率は同程度だが、取り組みをほとんど実施していない企業群とは大きな差が見られた。
  • ・受診率の関連が見られた検診費用負担、結果把握、検診日時に関する取り組みなど一つずつ始めていくことが、効率的に受診率向上に繋がる可能性がある。

<がん対策積極推進企業による事例発表>
「がん検診受診率向上の取組み」
鶴山運送株式会社 労務安全管理 田村 克彦 氏

<がん検診受診率向上の取り組み>
弊社は、岡山県津山市に1961年創業し、従業員73名、車両台数63台の会社です。ドライバーの高齢化と運動不足からくる肥満、高血圧症、糖尿病が増えたことをきっかけに2017年の7月、「わが社の健活企業」宣言しました。今後の労働人口を考えたとき、現在の社員に健康で長く働いていただきたいという考えに至りました。そして、「我が社の健活企業宣言」の翌年、健康経営優良法人の認定がなされました。なお、健康経営の取り組みの内容が、がん検診項目と合致していただけで、がん検診に焦点を合わせていたわけではありません。

▲健康診断受診率100%に向けて
▲健康診断受診率100%に向けて

健康診断受診率100%に向けての取り組みとして、工夫したこと苦労したことですが、2ヶ月半で終わらせる予定で、1日2人をめどに、早めに日程を組み、現場に落とし込んでいます。検診日を仕事の一部として組むことで受診率を向上させることができています。しかし、その日によって運行が違うため、日程通りにいかないことも多く、配車係が苦労しております。

運輸業は、国土交通省が監督官庁であり、近年健康起因事故が増えているため、健康診断は義務化されており、100%を求められております。ここをクリアしなければ、監査の対象となり事業運営に支障をきたしてしまいます。健康診断受診率ですが、9年連続100%を達成することができております。2018年からは半日人間ドックを、全額会社負担として導入をし、さらに社員の配偶者で健康診断が受けられない方も受診可能です。社員の反応として、半日人間ドックになったことで、より健康を意識できたこと、健康診断ができていなかった配偶者も実施できるようになりに喜んでもらえております。

続いて、がん検診の受診率ですが、検診種類として、胃、大腸、肺、子宮頸がん、乳がんがあり、対象は乳がん以外全員対象となっております。受診率は100%、全て会社負担となっております。次に二次検診の受診率は、大まかに20%後半で推移をして、今年になってようやく40%を達成しました。二次検診受診率100%に向けて、1つ目は、該当者1人1人に二次検診のお知らせを手渡しすること。2つ目として、2ヶ月後に集計し、未受診の方へ社長名で受診勧奨の手紙を手渡しすることに取り組みます。

今後の課題としては、二次検診の受診率100%の達成と両立支援です。現在該当する人がいないので、制度としてできていないが、早急に作らないといけないと感じております。

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