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2022/02/09

令和3年度 ブロックセミナー
/松山セミナーを開催

令和3年度のがん対策推進企業アクションのブロックセミナー「職域におけるがん対策の最新情報」を愛媛県松山市の「ピュアフル松山勤労会館」にて、会場とオンラインによる同時配信にて開催。当日は、がん対策推進企業アクションアドバイザリーボード議長の中川恵一先生、愛媛大学大学院 消化器・内分泌・代謝内科学教授 日浅 陽一先生、がんサバイバーの認定講師 和田 智子さんの講演、そして登壇者3名によるパネルディスカッションを行いました。

■ プログラム

  • ご挨拶とがん対策推進企業アクション事業説明
  • 講演① 「コロナとがん ~職域がん対策の重要性~」
    中川恵一先生(がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長/
    東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授)
  • 講演② 「肝炎ウイルスと肝がん ~職域検査の重要性と両立支援の取り組み~」
    日浅陽一先生(愛媛大学大学院 消化器・内分泌・代謝内科学 教授)
  • 講演③ 「3つのがん体験と私の精密検査受診~子宮頸がん、小児がん、パートナーのがん~」
    和田智子氏(がん対策推進企業アクション認定講師)
  • パネルディスカッション(意見交換)
    中川恵一先生、日浅陽一先生、和田智子氏
  • 質疑応答

【ご挨拶とがん対策推進企業アクション事業説明】
がん対策推進企業アクション事務局 事務局長 山田 浩章

がん対策推進企業アクション事務局 事務局長 山田 浩章
▲がん対策推進企業アクション事務局 事務局長 山田 浩章

オンラインとオフラインでのハイブリッド形式で実施しており、オンライン参加は88名、オフライン参加は8名でございます。
本事業は定年の引き上げや女性の社会進出などを背景とした職域におけるがん対策として職域(企業や団体等)へのがん検診の受診率向上と、がん患者さんの就労支援等を目的として立ち上がり、本年度で13年目を迎えました。

職域におけるがん対策の基本3箇条

  • 「がんを会社全体で正しく学び正しく知る」
  • 「早期発見のためにがん検診の受診率を上げていく」
  • 「がんになっても働き続けられる環境を作っていく」

これらの実施に向けた支援活動を行っています。

現在、登録パートナーは約3500社(団体)となり、パートナーの総従業員数は約790万人です。本事業では広報・研修・企業連携等、様々ながん対策の啓発支援を行っており、社内告知用のポスター・パンフレット、小冊子の配布やYouTubeの配信 、医師やサバイバーによる出張講座、講演イベントの運営やeラーニングコンテンツの提供など多岐にわたる活動を行っています。

【コロナとがん ~職域がん対策の重要性~】
中川 恵一氏(東京大学大学院 医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授)

新型コロナウイルスの影響で「がん対策」が遅れています。2016年からがん登録が始まり、各県の病院でがん患者の情報が管理されていますが、2020年、データ収集以来初めてがん患者が減りました。しかし、これは見かけ上の問題で、がんは検査しないと見つかりませんので、検査しない方が多いため、今は早期がんを中心に患者さんが減っていますが、今後、増加してくる見込みです。ぜひ、早期発見を心がけていただきたいと思います。また、がんの早期発見・受診勧奨を進めるために厚生労働省が動画を作成しています。

がんは簡単に言うと「細胞の老化」です。遺伝するがんは約5%しかありません。出来立てのがん細胞は免疫細胞に殺されています。しかし、免疫細胞とがん細胞の組織が近ければ見逃してしまう可能性があり、それは致し方が無いことです。遺伝子の老化と免疫力の老化によって見過ごされたがん細胞は、1つから2つ、2つから4つへ分裂していき、20年かけて診断可能な1センチとなり、 1センチから2センチのがんが見つけられる早期がんとなります。しかし、この大きさになるのは1~2年の間です。この段階で症状を出すことはないので、体調がよくても検診は必要で、この「早期がん」を早く見つけるために今後更なる啓発活動が必要となります。
先ほど、がんは「細胞の老化」とお伝えしましたが、日本は平均寿命が延びてきていることから、がんに罹患するあるいは亡くなる方が増えているのは当然です。

生涯に何らかのがんにかかる確率は、男性が3人に2人、女性が2に1人(2018年国立がん研究センター)ですが、がんは「コントロール可能な病気」で少しの知識の有無で運命が変わります。がんはひとくくりにされてしまいますが、「早期がん」と「進行がん」では全然別物です。早期がんの場合、5がんでは、5年間生存すれば、完全に治ったと言えます。ステージⅠとステージⅣで見つかるのでは生存率に大きな差があります。(例:大腸がんではステージⅠでは98.2%、ステージⅣでは16%)大腸がんの場合、便潜血検査の有無によって生存率が変わると言えます。全体で見て、がんの10年生存率は約6割で、早期であれば95%が完治する病気です。一方でがんと診断された後の自殺率は20倍となり、就労者の3人に1人が離職しています。

がんの罹患率は男性の方が多いとご説明しましたが、若い世代(50代前半まで)は女性の罹患率の方が高くなります。そのため女性は若い世代から検診に行く必要があります。女性の特有がんは特に検診受診率が低いと言われています。女性の社会進出が多くなってきて、現在就労世代の女性特有がん罹患が増えてきています。乳がん・子宮頸がん以外のがんは年齢と共に増加してくるものの、乳がんでは40代まで、子宮頸がんは30代に最も多いとされています。乳がんが40代に多い理由として女性ホルモンが分泌がされ、閉経前にピークを迎えるためです。閉経後、乳がんは減っていきます。乳がんが女性で一番多く、増加のスピードも非常に高い理由として少子化が原因と考えられます。100年前、女性の月経は85回で、1人子どもを出産授乳していくと3年間ほどは生理が止まると同時に女性ホルモンの分泌が止まります。いまは平均で450回といわれていて、個人の自由となりますが子どもを産まない人が増加してきました。また生活習慣が改善され初潮は早く、閉経は遅くなってきて女性ホルモンにさらされている期間が延びたため乳がんが増えてきているのです。

東京大学大学院 医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川 恵一氏
▲東京大学大学院 医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授
中川 恵一氏

一方、子宮頸がんは30代に多く、この年代は出産の時期を迎える方が多いため少子化の原因にもつながります。子宮頸がんはほぼ100%が性交渉に伴うウイルス感染で発症します。実際に今オープンな性行動によって若い世代の罹患が広まったと思います。

私も、月に一回超音波検査で肝臓や胆のう、その当時(2018/12/9)は膀胱も見てみようと思い確認したところ、がんが見つかりました。まさか自分ががんになるとは思ってもいませんでした。その後の12/28に内視鏡手術を受けて、1/4には仕事に復帰できました。私自身はある意味例外的な見つけ方をしましたが、乳がんは自分で見つけられるがんであり定期的なセルフチェックをどのくらいの日本人が行っているかというと7%とほとんどがやっていません。ぜひ実施していただき、まだ生理のある方は出血の止まった5日後に、閉経されている方は毎日でもやっていただきたいです。

55歳が定年のころは、若い女性はほとんど家庭にいて、男女も定年退職後にがんと診断されていましたが、女性の社会進出をきっかけに会社に勤めながらもがんと診断される、さらに定年が伸びると65歳までの方はまだ会社員という事になります。つまり職域でのがん対策は非常に重要になってきます。
がんは年間で100万人が罹患し、38万人が死亡します。新規のがん患者の3割が15歳~64歳の働く世代です。しかし、先進国でこれだけの数が亡くなるのは日本しかありません。人口10万人当たりで比較したところアメリカより1.9倍の死亡率となっています。現在、日本では大腸がんが最も多いですが、昔は胃がんが多く、この胃がんは冷蔵庫が普及したことによって減少傾向となりました。

日本は社会や個人のリテラシーにかかわる受動喫煙対策等が非常に遅れています。たばこでのがんリスクもありますが、お酒でのリスクに関して日本は特殊な状況で、日本人男性の約1割の発がん原因がお酒ですが、世界的にみると5%もありません。白人・黒人には顔が赤くなる遺伝子変異がなく、赤くなる人の深酒でアルコールががんのリスクをもたらすのです。

がんの年齢調整死亡率を見てみると愛媛県は32位で大腸がん・乳がんにしても受診率が低いです。がん検診受診率の向上のために課題を見つけて手を打っていく必要があります。

コロナで亡くなってる方は高齢者で、ほとんど平均寿命に近い年齢で亡くなっています。コロナ禍におけるがん対策の3つの問題として「在宅勤務による生活習慣の悪化」「早期発見の遅れ」「がん治療への影響」があります。このコロナ禍においてもがん検診に行っていただくよう皆さんの職場にもお伝えください。そして子どもたちが学校でがんのことを習い始めてきた今、大人たちのがん教育をどうするか、一種の強制力となる職場の中でがん教育を行う必要があると思いますので、皆さんもご協力いただけたらと思います。

【肝炎ウイルスと肝がん ~職域検査の重要性と両立支援の取り組み~】
日浅陽一先生(愛媛大学大学院 消化器・内分泌・代謝内科学 教授)

肝臓の病気と言うと、アルコールなどお酒を飲んで肝臓が悪くなるというイメージを持たれていると思いますが、多くは他の原因で肝臓は悪くなります。今日はその最大の原因である肝炎ウイルスのお話しです。
肝臓がんは、臓器別でがん死亡数が5位。罹患数に比べて死亡率が高いということで予後が悪いがんと考えられています。肝臓がんには、他のがんと異なる特徴があります。胃がんや大腸がんなどはいつ、誰に起こるか予測できないのですが、肝臓がんは、肝炎ウイルスに感染している人からかなり高い確率で肝臓がんができます。それもある日突然できるわけではなく、ウイルスがずっと感染し続けることで慢性肝炎という状態になり、それが20年、30年経って肝硬変という肝臓の機能が荒廃した状況になり、そこから多くの肝臓がんが発生します。
そのため、肝臓がんになりそうな人は肝炎ウイルスに感染しているかどうかを調べることで絞り込むことができますし、どれぐらいその危険性があるかも検査することでわかります。
肝硬変の原因は、C型肝炎が半分ぐらい、B型肝炎が1割ぐらいで、アルコールは実は2割程度です。圧倒的に頻度としては肝炎ウイルスによる肝炎、肝硬変から発生することが多いのです。肝炎ウイルスは血液を介してうつるウイルスで、C型肝炎はコロナと同じRNAウイルス、B型肝炎はDNAウイルスに分類されます。ともに血液を介して感染するものですから、握手をしたり、コップの回し飲みや会話などでは感染しません。感染している患者さんの血液が、自分の中に入るということがない限り感染しません。
C型肝炎はウイルスがわからなかった頃の輸血、それから医療行為。B型肝炎も同じように医療行為、あるいは過去の予防接種での回し打ち、あるいは出産時に母親から感染する母子感染が感染の契機になります。
C型肝炎になると42倍、B型肝炎になると9倍近く肝臓がんのリスクが上がります。ピロリ菌で胃がん、煙草で肺がんと言いますが、これらは2~3倍程度のリスクなので、圧倒的にこのウイルスはがんを起こしやすいということをご認識いただきたいと思います。

愛媛県は75歳未満年齢調整死亡率、年齢分布を補正した肝臓がん死亡率が実はワースト1位で、全国で最も肝臓がんの死亡率が高い県です。また、特に松山、今治といった都市域で死亡率が高いのが特徴です。今はC型肝炎の治療がずいぶん発達し、飲み薬でほぼ100%簡単に治ります。そういう治療効果もあり肝臓がんにおけるC型肝炎の比率は減っています。それに対して最近脂肪肝に伴う肝障害である、NASH(ナッシュ)による肝臓がんが増えてきています。
B型肝炎も核酸アナログという飲み薬が出て、治療法が大きく改善し、この薬を飲むと半年ぐらいでウイルスはほぼ検出されなくなります。その結果、発がんリスクは低くなります。B型肝炎も入院をしなくても外来で治療できます。そして薬に副作用もほとんどないため、C型肝炎と同様に、治療しながら仕事も全く問題なくできるのです。
健診で義務づけられている肝機能検査はAST、ALT、ガンマGTPの3種類で、これでは肝炎ウイルスに感染しているかわかりません。ウイルスに感染していても肝機能検査が正常な人はたくさんいます。ウイルスに感染しているかどうかは、肝炎ウイルスに対する抗原、抗体、あるいはウイルス遺伝子検査をしないといけませんが、これらはいわゆる法定外事項でオプション検査になります。しかし、これからウイルスに感染する確率はかなり低いので、入職されたらまず1回、このウイルス検査を職域で推奨して受検していただきたいと思います。感染していても自分にはわからないというのがこの病気の大きな問題点であり、そのため我々も受検の必要性を市民公開講座などで訴え、愛媛県の協力を得て検査数は増えてきました。職場の健診で実施していただくことが大切だと思います。職員を守るために、ぜひ肝炎ウイルス検査を推奨していただきたいです。

一方、1978年~1985年の肝臓がんの5年生存率は12.3%でしたが、2010年~2013年の5年生存率は73.1%と大幅に改善し、肝臓がんの治療は近年非常に進歩しています。肝臓がんになっても適切な治療で、長生きできます。治療をするときは一時的に入院の必要がありますが、長い期間は必要ありません。そのため、治療をしながら仕事が継続できます。ぜひ職場で受療を促して、肝臓がんになっても仕事ができる環境を作っていただきたいと思います。
病気になっても仕事をやめない、支援をすることで患者が仕事を持ちながら治療をするという両立支援が重要です。当科では両立支援の窓口として社会保険労務士会の方に協力いただき週1回面接をしてくださっています。相談件数は317名で、C型肝炎、B型肝炎の方が多く、肝臓がんの他にアルコールや脂肪肝の相談もあります。C型肝炎は治療の進歩から悩むことが少なくなり、両立支援の支援相談を受ける人のケースは減っていますが、肝臓がんは増えています。特にウイルス性肝炎については偏見があり、病名を告知できないで仕事場には黙っておこうという方がいらっしゃいます。この辺りをいかにサポートして個人情報を守りながら、職場から支援をしていくかが課題となります。また、これから就職しようとしている方もこの病名告知の問題が重くのしかかります。偏見に配慮した両立支援体制が、肝疾患にとっては重要です。

辰田仁美先生(和歌山労災病院 呼吸器内科 部長 働く女性健康研究センター長)
▲日浅陽一先生
(愛媛大学大学院 消化器・内分泌・代謝内科学 教授)

最近、難病患者さんの事例で、職場の人が両立支援 を認識されていて「入院するのなら両立支援というのがあるので、相談に行きなさい」と声がけされました。患者さんにとって職場の方々が治療と仕事の両立を理解をしてくれるか、そこにすごく大きなハードルがあります。この方はその職場の後押しのおかげで、うまく職場と連携をとりながら支援することができ、両立支援加算が取れました。加算が取れるような体制になると、職場の方も責任を持ってしっかりとサポートいただけるので理想と思います。加算に結びつく事例は「職場が相談をすすめてくれた」――これが非常に大きいです。それからご本人の意識や家族の協力も大きいです。控えめで仕事を続けたいと言いにくい患者さんにも、職場が後押ししてお声がけいただくことが、両立支援のために重要ではないかと思っております。

現在、愛媛県では両立支援推進チームを結成し、私もメンバーに入れさせていただいています。チームでは情報共有の場を設けて、支援の在り方を議論するとともに、労働局と産業保健総合支援センターがパンフレットを作って配布してくださっています。啓発活動にご尽力いただいておりますが、医療の現場においてまだまだ認知度が低いという実感があります。医療側から認知度を高めようとしましてもどうしても限界があります。今日は非常にいい機会でして、ぜひ職域から、この両立支援というものを啓発していただくととともに、治療を受ける患者さんに両立支援を利用するように後押ししていただきたいと思います。
愛媛大学医学部附属病院では肝臓疾患から両立支援の取り組みが始まりましたが、現在、院内の総合診療サポートセンターを介して活動の場を広げて、病院全体のすべての患者さんを対象に両立支援体制を作りました。(肝炎から始まり病院全体に広がる両立支援体制) 今後、ハローワークと連携して就職支援についても病院の中で取り組みたいと思っております。

【3つのがん体験と私の精密検査受診~子宮頸がん、小児がん、パートナーのがん~】
和田 智子氏(がん対策推進企業アクション認定講師)

和田 智子氏(がん対策推進企業アクション認定講師)
▲和田 智子氏(がん対策推進企業アクション認定講師)

本日は、家族の3つのがん体験についてお話をさせていただきます。私の子宮頸がん検診結果は2007年、37歳までは異常なしでした。翌年に初めて中等度異形成という結果が返ってきました。“異形成”という言葉にただ事ではない気がしてすぐに調べたところ「中等度・高度異形成を経て子宮頸がんになるが、異形成になったからといって、必ずしも子宮頸がんになるとは限らない」ということが書いてありました。このとき初めて、私は自分が将来子宮頚がんになるかもしれないと思い、毎年必ず検診を受けると決めました。

2011年には、要精密検査という結果が返ってきて、すぐに病院に行き、円錐切除術という検査手術を受けた結果、上皮内がんということがわかりました。不幸中の幸いで、私はこの円錐切除術で悪いところが全て取り切れていたので、追加の抗がん剤治療や放射線治療はしなくて済みました。けれども早期発見とはいえ やはりがんになると、仕事に対する影響がありました。
まず、この円錐切除術で3日間の検査入院をいたしました。その後、出血が止まるまでの1ヶ月は自宅療養という診断書が出ました。がんになって心が真っ暗になっていた上に、上司や同僚に迷惑をかける、お給料はどうなるの?と、本当にいろんな不安が駆け巡りました。
私の会社には、前年度使わなかった有給休暇を病気のときに使える積立有休制度という制度があり、治療と仕事の両立で、大変ありがたい制度だなと思いました。また、職場の上司、同僚も大変理解があり、しっかり休養して、スムーズに職場復帰もできました。治療と仕事の両立というのは制度と職場の理解のどちらかだけでも駄目だということを、強く体験しました。
また、子宮頸がんワクチンについて4月からの積極勧奨というのも再開されるようですが、子宮頸がんについての理解が進めば、もっとワクチンに対する理解も進むのではないかなと考えています。

次に家族のがんについてお話いたします。私の長女はウィルムス腫瘍という小児がんで1年半、闘病生活を送りました。このとき私は専業主婦で、看病と仕事の両立という悩みはありませんでしたが、他にも小学生の息子2人がおり、看病と健康な子供の子育ての両立では大変苦労をしました。
育児に関しては、夫と近くに住む祖母のサポートで乗り切ることができましたが、もし近くにいなかったらどんな制度や支援で仕事や育児の両立ができるだろうかと、今でも考えることがあります。
また夫は毎年、会社の健康診断を受けておりましたが、検査値異常があっても自己判断で2~3年、放置をしておりました。背中が痛くなってから病院にかかったときには既にⅣ期の肝臓がんの進行がんということがわかりました。
このときに、やはり毎年健康診断・がん検診を受けることは大切ということと共に、検査値異常になったときに、スムーズに早く医療機関にかかれるような仕組み作りやチェック体制も併せて必要だと感じました。
夫の会社も理解があり、会社を辞めずに治療ができました。また最後、夫が自宅で過ごすときに、私の会社の人事部の方から介護休暇を勧めていただき、そういう休暇が使えることを知らなかったので、家族ががんになったときにありがたい制度だなと感じました。

夫の場合は進行がんだったこともあり、周りの方にも大変心配していただきました。治療の選択に関しては、全て主治医の先生にお聞きし他の病院にセカンドオピニオンを求めるということはしませんでしたが、先生には本当に十分なインフォームドコンセント、治療を受けたと思っております。
夫は最後自宅に帰りたい意思があり準備を進めました。ただ帰ってきた時は酸素吸入をしていて、自力でトイレ等にも行ける状態ではありませんでした。夫が帰ってきた1日目の夜、これは自分が先に倒れてしまうなと感じました。在宅におけるヘルパーさんやメディカルの方たちの助け、こういったものは本当に必要だとも感じました。自分のためだけではなく、家族や社会のためにもがん検診を受診していただきたいと思っています。健康なときから病気について知っておくことが必要ではないかと思います。ワクチンを打ってがんを予防したり、あるいは私のように早期発見で抗がん剤や放射線治療の医療費がかからないようにする、こうしたことは、私達一人一人が社会貢献できるアクションの一つではないかなと思います。また、長女が入院しているとき自家移植を2回して、大変輸血のお世話になりました。今コロナで献血もなかなかしづらい状況ではありますが、やはりがん治療を支える仕組みの一つとして、献血制度のありがたさも考えさせられました。

要精密検査という結果をもらってもなかなか怖くて病院に行けないという声を聞くことがあります。でも私の場合は大腸がん検診、乳がん検診で4回引っかかりましたが、全て異常なしという結果が返ってきました。要精密検査になったからといって必ずしもがんというわけではありません。必ず、すぐに医療機関を受けて安心を確認していただきたいと思います。

【パネルディスカッション】
中川恵一先生、日浅陽一先生、和田智子氏

パネルディスカッションでは、中川先生を進行役に若年層のがんについて、がん罹患とストレスの関係性、肝炎ウィルス検査項目、再発についてなどオンラインで寄せられた質問に対しディスカッションしながら回答しました。

パネルディスカッションの様子
▲パネルディスカッションの様子
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