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2021/12/06 仙台シルバーセンター

令和3年度 企業コンソーシアムセミナーを開催

宮城県仙台市にてオフラインとオンラインのハイブリッド形式で開催をしました。
医療法人社団同友会の理事長、髙谷典秀氏から開会の挨拶、がん対策推進企業アクション事務局長の山田より趣旨説明後、東京大学大学院 医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川 恵一氏の基調講演が開催され、質疑応答も行われました。

【ご挨拶】
医療法人社団同友会 理事長 髙谷 典秀氏

本日講演の中川 恵一氏やがん対策推進企業アクション・岩切副議長等の尽力の下、日本でも様々ながん対策が進められてきました。
その中で、大企業においては比較的がん対策が推進されている一方、中小企業においては対策がまだ充分にとられていないことを課題と捉え、今年度から中小企業対策の委員会が立ち上がり、座長を務めさせていただいております。

私が運営する医療法人では、検診や保健指導、産業保健活動を主要な事業として行っていますが、同時に企業の代表として社員に対してがん対策をしております。企業ががん対策をすることの重要性は経営者として感じていますが、自法人では70歳まで働くことができる制度となっていることもあり、がんが発見される事を多く経験しています。そういった中で、1年・2年とがんの発見が遅れると転移したり体に支障が出てきてしまうということも実感しております。昨今、定年の延長や再雇用が叫ばれる中、今回の講演は非常に参考になるものと思います。
地元企業の代表者様をはじめ、商工会議所様、協会けんぽ様、地方議員の方なども会場に足を運んでいただき、重ねて感謝を申し上げます。

医療法人社団同友会 代表 髙谷 典秀氏
▲医療法人社団同友会 代表 髙谷 典秀氏
会場風景 仙台シルバーセンター
▲会場風景 仙台シルバーセンター

【趣旨説明】
がん対策推進企業アクション事務局 事務局長 山田 浩章

本事業は企業や団体等におけるがん検診の受診率向上とがん患者さんの就労支援等を目的として立ち上がり、本年度で13年目を迎えました。
職域におけるがん対策の基本3箇条

  • 「がんを会社全体で正しく学び正しく知る」
  • 「早期発見のためにがん検診の受診率を上げていく」
  • 「がんになっても働き続けられる環境を作っていく」

これらの実施に向けた支援活動を行っています。
現在、登録パートナーは約3500社(団体)となり、パートナーの総社員数は約790万人です。
本事業では広報・研修・企業連携等、様々ながん対策の啓発支援を行っており、社内告知用のポスター・パンフレットの配布やYouTubeの配信、医師やサバイバーによる出張講座、講演の運営やeラーニングコンテンツの提供など多岐にわたる様々な活動を行っています。

【基調講演】
「がん対策は経営課題」
東京大学大学院 医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川 恵一氏

日本人ががんになる確率(累積がん罹患リスク)は、男性で65%、女性で50.2%となっています。(引用元:2018年日本対がん協会)
男性では3人に2人、女性では2人に1人となります。
がんは男性に多い病気の一方で若い世代では女性の方ががんになる人が多いことが特徴です。
職域でのがんリテラシーを高めようと企業アクションのミッションとして「職域がん検診」「両立支援」「がんを知る」という3つを掲げております。職域でのがんリテラシーという事で、中学校ではがん教育が始まりましたが、大人の教育を今度どのようにするかが課題となります。

がんの10年生存率に関して、今現在では約6割、5年生存率で7割とがんは「不治の病」ではないという事は明らかです。一方でがんと診断されると1年以内の自殺率が20倍以上。働く世代のサラリーマンががんと診断されると3分の2の方が離職をしており、自営業の場合は17%廃業しています。がんの告知を受けた時で3割以上、告知から最初の治療までの間が約1割と約4割の方が治療の前に退職を選択しています。治療に専念するため活動を控える方もいますが、放射線治療で今男性で最も多い、前立腺がんを治療する場合1回7分、5回の治療で済みます。

今回のテーマ「がん対策は経営課題」ですが、がんアクションでは経営層のヘルスリテラシーについて「高い」「低い」「中間」の三段階に分けました。
経営層の胃がん・肺がん検診にしても、一番リテラシーが高いグループが検診を行っていることがわかりました。経営者のリテラシーが高ければ高いほど、受診率が上がります。あるいは両立支援の場合も、経営層のがんへの関心や理解、知識が社員に対するがん対策に直結するので、まずは「職域がんリテラシーを高める」ために経営者から意識を変えていただく必要があります。大同生命様にご協力いただいた「大同サーベイ」は企業経営者から回答いただくもので、今年2月に1万社に対して中小企業の経営者からヒアリングを行いました。この結果を見ると、経営者のがん検診「胃がん」「大腸がん」の受診率は約半分でした。

経営者のリテラシーは「社長の命」と「社員の命」を左右します。「がん対策は経営課題」であるかどうかを中小企業の経営者に質問した結果、強い関心を持っている経営者は胃がんと大腸がん検診を受診しているという結果がわかりました。大腸がん検診に関して検診費用を加味しても全体のコストが下がると富士通健保との共同研究データで結果が出ています。例として大腸がんの一時検診で陽性になった3割の人が精密検査に行っていないという問題があります。内視鏡検査を受けても大抵が陰性です。精密検査にも内視鏡などにかかる費用を加味しても医療費が高くなります。便潜血検査を受ければ「早期がん」で見つかる傾向があります。
就職活動生が企業を選ぶ際に重視するポイントとして、企業規模や知名度よりも健康に配慮をしているかが上げられます。健康で長く務めれるかで離職率にも多大に影響を及ぼします。

がんに対する知識の有無で運命は大きく変わります。日本人にとって非常に難しい病気と考えられておりますが、がんはシンプルな病気です。がんに罹患するリスクは回避できることもあります。例えばタバコ吸わないとかお酒は控えるなど。男性の場合、生活習慣や感染症が発症原因の6割近くとなります。そこをクリアできればリスクは4割程になります。例えばALS(筋萎縮性側索硬化症)では、原因もわからなければ治療法もない難病となります。

今年は100万人が新たにがんと診断されて38万人が亡くなっています。そのうち約3割が働く世代となり、ほとんどの疾病が克服されていく中で、がんだけが増え続け、若い世代では女性が多いという事を会社でも認識されなければいけません。全体としては男性の罹患率が多いものの54歳までは女性の罹患率が高くなります。昔は会社にがん患者さんが少なかった傾向があります。男性の2倍と診断されていたがんの患者は専業主婦としてがんと診断されておりました。つまり会社にはがんの患者の影が見えなかったということになります。

コロナ禍での話ですが、今年の10月末から遡って1年間、去年の11月1日から今年の10月31日までにコロナで亡くなった方の合計は1万6497名。365日で割ると45名ということになります。がんで死亡した数は38万人、これは1日当たり1040名と桁が違います。コロナで亡くなってる人は高齢者ですが、がんに関してはそうではありません。私の義理の妹のように40代後半で亡くなるということもございます。従ってがんとコロナではリスクの大きさが全く違います。もちろんコロナを軽視しているつもりは全くありませんが、がんに対する備えが疎かになってしまっては大変なことです。

東京大学大学院 医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川 恵一氏
▲東京大学大学院 医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授
中川 恵一氏

【質疑応答】

質問:がんと告知された方の自殺率が高いとのことですが、がんと告知をされた方へのケアや対策はどのようにすればいいですか?

中川氏:一番の基本は、孤立させないということになります。
がんに対するイメージに誤解がないようにがんについて正しく理解することが大切です。
がんになった人と接する上でがんに罹患した人がどのような状態であるのかを理解することによって接し方を考えることができます。また患者やその家族の価値観を尊重することが大切です。

質問:社員へのがん教育でまず最初にやるべきなのはどんなことですか?

中川氏:「がん対策推進企業アクション」のパートナー企業に登録することではないでしょうか。
また、加入して終わりではなく入ったことを社員に伝える企業努力をして欲しいです。

質問:がんの治療方法は患者が選べるのでしょうか?

中川氏:選ぶことができます。商品を手に取るのと同じで患者さん自ら選んで良いのです。
ただし、選択を間違えると命にかかわるため、その際に企業アクションのHPや国立がん研究センター(がん情報サービス)の情報を参考にしていただきたいと思います。

質疑応答の様子
▲質疑応答の様子
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