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2021/10/26

令和3年度 第1回 企業コンソーシアム研修会を開催しました

今回は新型コロナウイルス感染拡大予防のためウェビナー配信形式で開催しました。

全国大会チラシ
真鍋徹氏 説明スライド
▲真鍋徹氏 説明スライド

<ご挨拶と趣旨説明>
第一生命保険株式会社 生涯設計教育部 マネージャー 真鍋徹氏

がん対策については、企業の目線で考えるという事が将来の持続的な取り組みに繋がるのではないかということで、好事例の共有化、あるいは情報発信という場面を共有していくことにより自発的な流れとして構成をしているのが企業コンソーシアムになります。
人事労務担当あるいは健保スタッフの皆様もいらっしゃると思いますが、自分の会社や同業あるいは周囲の地域の会社の皆様の従業員をがんから守るということは、今後とても大きな課題になってくると思います。その中でこの企業アクションの枠組みを使って自社と他社の従業員をがんから守る、これは非常に大事なテーマではないかと考えて活動しております。
実は延べ180社にのぼる参画企業の皆様と3年ほど前から手探りの状態で、企業研修会という形で、様々な先生のご講演や好事例の共有の場を設けてまいりました。
ここからさらに加速していくというのが本日の研修会の大きな目的になります。具体的には「がん対策推進企業の増加」と「新たな事例の蓄積」ということを目標に掲げております。
ここには、真のがん対策を、自発的にやっていく企業を増やしていきたいという思いがあります。
今すぐ活用できるコンテンツをがん対策推進企業アクションでは揃えており、これを広くご自身の会社だけでなく、周りの地域の皆様を含めて活用できれば、一層この取り組みも進むと思われます。例えば、議長の中川先生の「がんになっても働けますか」を含めたYouTube動画、これは27動画がもう既にアップされており、どなたでもご視聴いただける状態になっています。本日100社に近い皆様がご出席されているということで、ぜひこの活動を皆様と一緒にしっかりと広げていきたいと思います。

<特別基調講演>
健康保険組合連合会 組合サポート部保健事業グループリーダー 春木匠氏

本日は「 保険者における検診の現状等について 」と題し、主に新型コロナウィルス感染症流行前の状況、それからコロナ禍における実態・影響を踏まえた今後の課題について、健保組合における健(検)診の状況とともに講演ができればと思います。
まず、健康保険組合と協会けんぽの違いは、企業の事業主と社員の方々に、「健保組合を設立したい」といった共通の意思がないと、健保組合は法令上成立しないところと認識しております。
次に、健康予防づくりの1丁目1番地である健検診の状況ですが、健保組合の場合、現在は特定健診・特定保健指導が中心になりますので、こちらの状況をお伝え致します。
コロナ前になりますが、平成20年度の特定健診・特定保健指導の制度施行以来、全体の実施率は8割に迫っております。このうち被保険者、つまり社員の受診率が高いという内訳になっております。社員につきましては、企業における安衛法健診の受診分も含まれておりまして、保険者と企業の連携=コラボヘルスによって健保組合・企業の双方が頑張ってきた結果と言えます。
コロナによる影響につきましては、健保連本部においても調査をしている段階のため参考資料とします。緊急事態宣言が発出された直後は大幅に受診率が落ちておりましたが、年度末に近づくにつれてかなり回復傾向を見せていました。それでもまだコロナ前には戻っておらず、対前年度比で8割程度の水準という状況となります。
それから我々の方に寄せられる生の声から、受診控えが顕著であるということがわかりました。
受診勧奨についても、健診機関においてコロナ対策がとられていても受診者の心理的要因等により、難しいということも聞いております。こういった受診控えがあると発見されるべき病気等が発見されなかったり、重症化してしまったりするなど健康上のリスクを高めてしまう可能性があることから、今後注視していかなければならない課題だと思っています。
また、多くの健保組合が人間ドックを実施していますが、二次検診・要精密検査については極めて実施率が低い状況にあります。これらは検査項目も含め、プロである健診機関に一任されているのが現状となります。本会としては、加入者の健康リテラシーを上げていくと共に、健診機関で作成された感染症対策マニュアルの周知にも取り組んでいく必要があると思っております。

質疑応答

要精密検査受診勧奨が低い原因として考えられることはありますか。

春木氏
一つ言えることは、健保組合の方に医療専門職が常駐していないことです。健保組合が約1400組合ありますが、医療専門職がいる割合というのは、15%程度でございます。
健保組合の方でデータヘルス計画というものも推進していますが、やはり今後の健康予防作りには、医療専門職の知見というのは確実に必要になってきます。しかし、現実問題としては雇用体力がない場合もあり、15%程度にとどまっております。このように医療専門職がいないというところでどうしてもプロである健診機関にお任せする傾向になっているという状況であると思います。

<特別基調講演>
全国健康保険協会 本部 保健部保健第一グループ グループ長 園川太郎氏

全国健康保険協会「協会けんぽ」には、約4,000万人の皆様方にご加入いただいております。大企業や業種等で健康保険組合を作られているところもありますが、そこに加入されていない主に中小企業の皆様方がご加入いただく健康保険が、協会けんぽとなります。
協会けんぽでは、保健事業に力を入れて取り組んでおり、保険者機能強化アクションプランという3か年計画の中で、「特定健診・特定保健指導の推進」、「重症化予防の対策」、「コラボヘルスの推進」の3本柱で取り組むこととしております。
協会けんぽの健診は、被保険者と被扶養者で、健診の内容が異なっております。被保険者につきましては、35歳以上の方を対象に生活習慣病予防健診を実施しており、この内容は、特定健診や労働安全衛生法の項目に、さらにがん検診を含んだ項目を実施しております。被扶養者につきましては、40歳以上を対象に、特定健診という国で定めた項目の健診を実施しております。被扶養者を対象としたがん検診につきましては、協会けんぽでは実施していないため、市区町村で実施するがん検診を受診していただくこととなりますが、利便性の向上を図るため、市区町村と協定等を締結するなどし、特定健診とがん検診の同時実施を推進しているところです。
費用負担につきましては、被保険者は生活習慣病予防健診の一般健診を受診される場合、7,169円が自己負担の上限となります。被扶養者の方は、協会けんぽから7,150円を補助しておりますので、これを超えた部分が自己負担となります。
また、協会けんぽにおける健診の実施状況ですが、被保険者を対象とした生活習慣病予防健診の一般健診を受診されている方は、令和2年度で約827万人となり、受診率は51%という状況です。 被扶養者の健診の受診状況は、新型コロナの影響等もあり、令和2年度で約91万人、受診率は21.3%という状況となります。
協会けんぽでは、コラボヘルス(健康宣言事業)の取組を推進しており、事業所において職場の健康づくりに取り組むことを宣言していただき、従業員のための具体的な取組を実施していただきたいと考えております。その支援として、協会けんぽ各支部では、専門職による支援や啓発のための健康経営セミナー、出張講座等を実施しています。
この健康宣言の事業につきましては、支部ごとにそれぞれの地域の実情に応じて、支援の内容や宣言の実施方法など、工夫をしながら取り組んでいる状況です。実際に事業所様に取り組んでいただく上で、まず何が課題なのかを考えていただくことが重要であり、その検討の資料として、健診結果データの内容を見える化したものを事業所カルテという形でご提供しております。事業所カルテの内容を踏まえ、自社の課題を検討して実際に取り組んでいただき、1年後にこれがどう変わったのかを事業所カルテで評価をしていただくなど、PDCAサイクルを回しながら取り組んでいただけるよう、支援をしていきたいと考えております。

質疑応答

協会けんぽ加入者・被扶養者に対するがん検診の受診勧奨は、市町村のものを中心に行っているのですか。

園川氏
加入者ご本人である被保険者につきましては、協会けんぽで補助している生活習慣病予防健診にがん検診を含んでいますので、基本的にはこちらをご利用いただくよう案内しています。
被扶養者の皆様につきましては、協会けんぽではがん検診を実施しておりませんので、市区町村が実施するがん検診を受診していただくこととなります。

園川太郎氏 説明スライド
▲園川太郎氏 説明スライド

<議長挨拶>
東京大学大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座 特任教授
がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長 中川恵一氏

企業コンソーシアムの活動は非常に重要で、とりわけ今日のような講演の内容を自社の方々にご紹介するということはもちろん、さらに他社の方、あるいは地域あるいは社会に広めるという活動をしていっていただきたいと思います。
死因に関しては、病死の中でがんが占める割合が9割です。そのため働く者にとってがん対策が非常に大きなものであり、健康経営の中でも、とりわけがん対策ということが、企業にとって本当は大きな問題です。このコンソーシアム活動は、まだまだ知名度は低いですが、企業活動の中で、自社のプラスに感じて頂くためにも、引き続き、皆さんと一緒にこのコンソーシアムの仕組みを(ブランドを高めるために)一緒に作っていきたいなと思っています。

中川恵一氏(写真右)
▲中川恵一氏(写真右)

<事例発表>
テルモ株式会社人事部 人事企画チーム 津田陽子氏

弊社は1921年に体温計を作るメーカーとして、北里柴三郎博士が発起人の1人となって設立された会社です。先月の9月に100周年を迎えました。
ここからは弊社の健康経営の取り組みと、がん対策の取り組みついてお話をさせていただきます。健康経営という言葉が本日、何回か出てきておりますが、弊社は長年健康経営に非常に力を入れて、地道な活動を行っております。
まず、1点目はがん検診受診率向上に向けて、がん検診を受けやすい環境にする。また2点目は、検診費用は全額をテルモけんぽの負担として、社員が自己負担なしで検診が受けられるようにする。二次検査となってしまった場合も、テルモけんぽが費用を補助すること。3点目は、テルモでは健診を業務の一環として見なすと掲げておりますので、健康診断を全て就業時間内、業務外出などで対応する、二次検診も同様に業務として扱っております。その他、地道な活動ではありますが、ヘルスリテラシーの向上を図るための研修なども定期的に実施をしております。
それでも検診を受けていただけない方もいるため、そのような方々に関しましては、テルモ健康経営推進チームメンバーと連携をして、受診者へ丁寧にかつ積極的に呼びかけを実施しております。
そして、治療と仕事の両立支援においては、年々の高齢化に伴い、がんに罹患しながら働く社員が増えていくことが課題となっておりますので、弊社では2017年度に、がん就労支援制度を制定しました。例えば失効有休を1日単位で利用することを可能としたり、また無給休暇ということで、出勤率に影響しないように、必要日数を無給として付与しています。また制度だけではなく産業保健スタッフと連携をしながら進めております。
今後に向けては、地道な啓発活動を継続するとともに、がんに対する正しい知識や制度に対する理解や浸透がまだまだ不足しておりますので、リテラシー強化が必要だと考えております。
前述のように制度として確立することで、職場や本人の理解というものも、一部進展はしておりますが、まだまだ課題が多いというのが現状であり、地道な活動を継続することで、一人一人が生き生きとやりがいを持って仕事に取り組めるような風土をさらに促進していきたいと考えております。

質疑応答

健康経営銘柄になることで、デメリットと感じられることはありますでしょうか。

津田氏
担当をしていて、デメリットを特段感じることはないです。
申請対応が大変だというところは正直ありますが、やはり社会的な評価に繋がり、また最近は情報が開示されており、他社にとっても自社の取り組みがプラスに働くことに繋がるかと思います。

津田陽子氏 説明スライド
▲津田陽子氏 説明スライド

<事例発表>
研冷工業株式会社 取締役 総務部長 酒井明美氏

弊社は新潟県新潟市で設備工事業を営んでおります。このがん対策推進企業アクションに加入したのが平成28年でした。きっかけは『退職した社員が3年で2人もがんで亡くなった』という事実に、社長がとてもとても強く心を痛めたということでした。
それからは朝礼で社長自らが新聞でがんに関する情報があれば毎日のように発信し、チャットツールSlackの掲示板を利用し、全社員と共有し、意識の向上に努めました。また「がん検診のススメ」(冊子)を全社員に配布し読み合わせやパートナー通信をエントランスに掲示し情報を共有しました。新潟市のがん予防促進連携協定企業に加入して意見交換会や健康講座、がんについての講演会、福祉まつりなどに参加や協賛をしました。社長自らが、とにかく発信し行動することで、社員の皆さんががんという情報に関心を持ち始め、検診を受ける気持ちにも変化が現れました。
平成30年度に健康診断の受診率100%を達成しました。5大がんについては受診を進め、他の検診オプションも希望するものは全て会社負担ということで、その頃は受診をしてもらっていました。パートさんも同じように受診。このような制度を作りあげていくことで、健康面だけではなく、男性社員が3ヶ月イクメン休暇を取得することも実現することができました。社長自身、社員との対話をたくさんし、コミュニケーションが促進されたように思われます。
それから、会社負担でより効果のあるがん検診を継続していこうと決め、業務時間内での受診、総務部が中心となって受診希望日時を調整し、申込・確認、1回目の再検査も業務時間内での実施にしました。35歳以上はもちろん、35歳以下の人でも、気になる・心配だという人には受診をしてもらい、がんを未然に防いでもらおうということを心がけました。早期受診、早期発見にも努めるようにしました。5大がん検診以外の受診を強化し、腹部超音波検査の希望者も受診をしています。
新しく取り組み始めたことは、歯もがんに影響するということを知ったので事業所歯科検診を始めました。また自分だけが健康でも支えてくれる奥様も健康でなければということで、扶養者の方にも会社負担でがん検診も始めました。ここに課題として載せましたがなかなか再検査が実行できていないことが現実です。そのためこの達成率をあげるようにしていきたいと思っています。
中小企業としてやれること・できることを今後もコツコツ積み重ねて努力していくことが大切だと感じています。

質疑応答

協会けんぽさんや健診機関と連携して取り組んでいることは何かありますか。

酒井氏
健康経営宣言というものを実施したり、健康診断の後の現状調査を行い、より詳細にわかる血液検査をもっと増やした方が効果的で助言をもらったり、保健指導なども実施しております。

酒井明美氏 説明スライド
▲酒井明美氏 説明スライド
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