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イベントレポート

2018/10/17
「職域におけるがん対策の最新情報」北海道セミナーを開催しました。

がん対策推進企業アクションの北海道ブロックのセミナー「職域におけるがん対策の最新情報」(主催:厚生労働省、がん対策推進企業アクション)が、北海道・中標津のトーヨーグランドホテルにて10月17日(水)に開催されました。会場の大ホールには、約150名の参加者が集まり大盛況。

講演の様子

「我が国におけるがん対策について」
(厚生労働省 健康局 がん・疾病対策課 主査 安藤徳江氏)

がんの正しい知識を広めること、企業と連携して企業のがん対策を進めることを目的とした「がん対策推進企業アクション」ですが、10年目にして初めて中標津でセミナーを開催することとなりました。

我が国では1981年にがんが死因の第1位になり、それ以降も死因の1位として死亡数も上昇し続けています。2017年のがんの死亡者数は約37万人と、約3人に1人ががんで死亡しています。

平成18年にがん対策基本法が成立し、それに基づいてがん対策基本計画が策定され、現在では平成30年3月に第3期計画が策定されています。この第3期計画では、「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す」をキャッチフレーズに、「科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の実施」「患者本位のがん治療の実現」「尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築」を全体目標としています。具体的な施策としては、「がんの予防」「がん医療の充実」「がんとの共生」を3本の柱に、これらを支える基盤の整備として「がん研究」「人材育成」「がん教育、普及啓発」を進めています。特にがん対策推進企業アクションでは、がんの早期発見、がん検診等の「がんの予防」、がん患者等の就労を含めた社会的な問題の「がんとの共生」、「がん教育、普及啓発」に力を入れています。

講演の様子

がん検診の受診率は、年々上がってきていますが、国の目標とする受診率50%には男性の肺がん検診のみが該当、その他の検診はまだ50%に達していないのが現状です。またがん検診の受診率を国別に比較してみると、日本は諸外国に比べて低くなっています。

がん検診の受診機会についての統計では、受診者の3〜6割が職域でのがん検診の受診者ですが、がん検診未受診の理由の1位が「受ける時間がないから」ということからも、職域でのがん検診受診をさらに進めていくことが大切だと思われます。2位は「健康状態に自信があり、必要性を感じないから」となっていますが、これはもっとがん教育を進めていくことが重要です。

厚生労働省では、職域におけるがん検診の実施に関して参考となる事項を示し、がんの早期発見の推進を図ることで、がんの死亡率を減少させることを目的とした「職域におけるがん検診に関するガイドマニュアル(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000200734.html) 」を策定しております。

がん患者の3人に1人は就労可能な年齢での罹患といわれており、働くことが可能で、働く意欲のあるがん患者が働き続けるためには何が必要か、という世論調査では、「病気の治療や通院のための短時間勤務」「1時間単位の休暇や長期の休暇が取れるなどの柔軟な休暇制度」が求められています。

治療と仕事を両立するためには、それが実現できる環境が大切ですが、現実には困難な状況に直面している方々も多く、今後は働き方改革実行計画に基づき、経営トップ、管理職等の意識改革、両立を可能とする社内制度の整備促進、傷病手当金の支給の検討など、会社の意識改革と体制の整備を進めます。

さらに、主治医、会社・産業医、両立支援コーディネーターによる治療と仕事の両立が普通にできる「トライアングル型支援」などを推進していきます。

また、会社向けの「疾患別サポートマニュアル」、企業向けの「企業連携マニュアル」を策定しています。厚生労働省のホームページにある「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000115267.html) 」をご確認ください。

がん患者の就労に関する取り組みは、厚生労働省健康局がん・疾病対策課、職業安定局首席職業指導官室、労働基準局産業保健支援室の3部局が連携を取りながら進めていきます。

【がん対策推進企業アクション事業説明】
(がん対策推進企業アクション事務局 事務局長 大石健司)

がん対策推進企業アクションは、職域でのがん検診受診率を向上させるための国家プロジェクトであり、厚生労働省の委託事業です。「今年も行こう、今年は行こう、がん検診」をキャッチフレーズに、がんになっても働ける社会を目指して活動しています。

講演の様子

現在の日本は、女性の社会進出、定年延長などを理由に、従業員の7人に1人ががんになる可能性があります。がん対策は、いまや福利厚生ではなく経営課題です。従業員ががんになっても働き続けられる環境を整えること、そして人財(材)を守るがん対策が必要とされています。

がん対策に関する環境も変化しています。平成28年度より学習指導要領にがん教育の実施が明記され、小・中・高等学校でのがん教育がスタートするとともに、自治体の取り組みも活発化しています。加えて、がんに対する正しい知識を得ることが、今後の企業の成長にとっても大きなメリットとなることからも、職場での「大人へのがん教育」を提供することが求められています。

日本のがん検診の受診率はOECD加盟30カ国の中で最低レベルです。毎年受診率は向上してきているものの、国が目標としている受診率50%にはまだ及んでいません。日本人は、がん検診を受けている人が少ないのが現実です。

がんは早期発見であれば治癒する可能性は高くなるとともに、経済的負担や仕事と治療の両立もしやすくなります。

平成29年度にがん対策推進企業アクションで行ったアンケートの「経営者側のがんへの理解度と事業者におけるがん検診実施状況」では、がんに対する正しい知識を持っている経営者や従業員のいる企業は、がん検診受診率が高いことがわかりました。いかに「がんに対する正しい知識(教育) 」が必要かわかります。

現在は、医療も進歩し、仕事と両立しながら治療が行えるようになってきました。診断時点で勤めていた会社に、現在も勤務中あるいは休職中の人は57%と過半数を超えていますが、一方で依願退職・解雇された人も30%おり、ここでも、がんになっても仕事は両立できるという「がんに対する正しい知識」が必要です。

今後、企業が取り組むべきがんアクションとは、企業の健康診断にがん検診を加えたり、検診の効果を啓発するなどの「がん検診の受診を啓発すること」。がんは早期発見が重要だということ、がんになっても働き続けられること、正しい生活習慣でがんになるリスクを減らせることなどの「がんについて企業全体で正しく知ること」。治療のサポート体制づくりや柔軟な休暇制度などの「がんになっても働き続けられる環境をつくること」の3つです。

人材を守るためには、がんの早期発見・早期治療が必要です。がん対策推進企業アクションは、推進パートナー企業・団体(健康保険組合など)数と従業員数の拡大、がん対策を啓発するコンテンツ制作と情報発信の推進、がん検診受診の現状把握と課題の整理などを行っています。推進パートナー企業へのがん教育講師派遣や全国各地でのセミナー開催、がんに関する小冊子の配布、推進パートナーのがん対策事例の公開、各種データの提供など、企業のさまざまながん対策をサポートしていますので、ぜひご利用ください。

【治療と就労の両立を支えるがん検診】
(東京大学医学部附属病院 放射線科 准教授/がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長 中川恵一氏)

がんになるのは男性のほうが多いデータが出ています。これは、喫煙率が女性よりも高く、生活習慣が悪いことからきています。アメリカのデータですが、がんになる6割近くが喫煙と生活習慣です。生涯でがんにかかるリスクは男性が62%、女性は47%です。がんは細胞の老化といえる病気ですから、長期的に見れば高齢化によりもっと数値は上がっていきます。日本は高齢化社会で、世界的に見てもナンバー1のがん大国といえますが、ほとんどの人はがんを他人事のように考えています。

がんはあらゆる病気の中で、おそらく知識で克服できる可能性の高い病気です。逆にいえば、正しい知識がないと正しい対応が難しい病気で、がんを知っているか知らないかでその人の運命が変わります。ところが、日本人のがんに対する知識は先進国でも最低レベルです。なぜなら、学校で習ってこなかったからです。がんという病気には、共存はあり得ません。治すか死ぬかということになります。がんは正しい知識が非常に重要なのです。

講演の様子

予測値ですが、現在日本では毎年約100万人の方ががんになっており、そのうち27.1%が20〜64歳までの働く世代です。20〜69歳まで広げると44.7%となり、さらに働く期間が長くなればもっと増えます。

50歳までにがんになる人は、男性が3%、女性が5%ですが60歳までだと男性が8%、女性が11%、65歳で男女とも15%、それ以降は男性が多くなります。

また、専属産業医がいる事業所における在籍死亡調査(サンユー会QQプロジェクト/1999〜2003年)によると、会社員の死因の1位はがんで、全体の約50%。東京の伊藤忠商事が自社で調べたデータによると、同社の従業員が病気で死亡した原因の約9割ががんでした。

 がんになる要素としては、食事(生活習慣)、喫煙、その他の要因がそれぞれ1/3ずつをしめます。その他の要因は何かというと、「運」ということになります。聖人君子のような生活をしていてもがんにかかる人はいますし、ヘビースモーカーでもがんにならない人はいます。ただし、全体でみるとヘビースモーカーの人の方が、聖人君子よりもがんになる確率は圧倒的に高くなります。しかし、素晴らしい生活習慣で理想的な生活を送っていれば、例えば心筋梗塞や脳梗塞になるリスクはすごく低くなりますが、がんになるリスクは残念ながら1/3程度は残ってしまいます。では、その1/3の「運」の部分を補うのは何か?それががん検診による早期発見・早期治療です。

「がんは、よほど進行しても症状を出さない病気」です。全身に転移したがんでも、よほど末期の末期にならない限り症状は出ませんから、早期に発見されるがんにおいては、自覚症状などまったくありません。普段の生活態度がよい人も、元気で健康だと思っている人も定期的に検診を受けなければなりません。

もし検診で早期がんが見つかったら早期治療を行うことです。早期であれば入院治療も必要ないものがたくさんあります。胃がんや大腸がんは、日帰りで内視鏡手術で済みますし、放射線治療であれば私のいる病院では、前立腺がんは5回、肺がんは4回の通院治療で済みます。放射線治療の一種である重粒子線治療であれば1回で済みます。このように早期発見であれば、短期間で治療ができますし、仕事との両立も比較的簡単にできます。

がんの治療は「敗者復活戦のない一発勝負」といえます。最初に間違った選択をしないこと。正しい治療をすれば、がんは治せます。がん全体で見ても5年生存率は65%、早期がんに限れば95%が治癒します。ですから、試合に臨む前に相手(がん)のこと、ルール(治療方法)を知っておく必要があります。しかし、多くの日本人はがんは不治の病だと思っています。現実に、がんと診断された患者の1年以内の自殺率は20倍になっています。これは、がんという病気を知らないからになりません。

進行がんや末期がんになってしまうと、完全治癒が難しいだけでなく、医療費もとてつもなく高額になっていきます。

現在がんの告知率は100%です。告知されて1〜2週間は、患者の精神は混乱します。この時期に会社を辞めたり、最悪の場合は自殺したりしてしまいます。データによるとがんになって退職する人は30%。特筆すべきは辞める時期で、診断確定時が32%、診断から最初の治療までが9%と、実に40%超の人が実際に治療を開始する前に退職しています。実際に治療をしてから本当に辛くて辞めるのではなく、がん治療は大変だと予測のもとに辞めてしまう。これもがんに対する知識の無さから来るのではないでしょうか。

早期がんであれば100%仕事と両立できます。こういうことをがんになる前に頭に入れておくことが重要です。

がん細胞は、60歳であれば毎日5000個もできているといわれていますが、通常は免疫力(リンパ球)ががん細胞を殺しています。しかし、加齢とともにがん細胞が増えるとともに免疫力が衰え、がんになりやすくなります。またストレスも免疫力を減らす原因になりますから、心身ともに健康であることが重要です。

がんは、検診で発見できる大きさ(約1cm)になるまで、約20年かかりますが、そこから末期がんになるまでは数年と短いスパンです。1〜2 cmの早期がんを、いかに早く見つけるかが非常に重要です。定期的に検診を受けることががんの早期発見、早期治療につながります。

日本は世界一の高齢社会ですので、がんになる人も急激に増えていますが、がんに対する教育は進んでおらず、ヘルスリテラシーが低いのが日本の特徴です。しかし学習指導要領が変更され、去年より小中学校で、今年から高校でがん教育が行われていますので、今後は変わってくるかもしれません。

がん治療には「手術」「放射線治療」「抗がん剤」の3種類がありますが、日本では手術が一般的です。欧米では放射線治療を受けている人は6割、日本ではまだ3割です。手術なら入院が必要ですが、放射線治療なら通院で可能ですし、通院なら働きながら治療を行うことも可能です。がんの種類や病状によってはさまざまな治療の選択肢があるということを、がんになる前に知っておくことも大切です。

がんを克服するには、禁煙や生活習慣を改めるなどの予防はもちろん、元気な時でもがん検診を受けること。そして早期発見・早期治療が大切です。

地元企業による従業員のがん対策の取り組み紹介
「がんと向き合う企業目指して」
(株式会社上田組 営業部長 遠藤直人氏/標津町)

私ども上田組は、農業土木、道路・橋梁工事、河川・海岸工事、維持管理・除雪、そして外食事業などを行う会社で、従業員は137名。職業柄、ケガ人が出ると現場が止まってしまうこともあるので、「安全第一」を常に意識しています。

我が社におけるがん罹患者は、平成27年以降6名。前立腺がん、胃がん、膀胱がん、咽頭がん、縦隔腫瘍などに罹患しました。全従業員におけるがん罹患率は4.4%、社員に限れば8.3%です。

このうち2名の社員のがん事例をお話ししたいと思います。

講演の様子

1例目。工事部長代理ががんに罹患したのは、平成29年3月。同年5月に釧路の病院で手術し成功、しかし同年9月に再発、繁忙期であっため10月に再手術し成功しましたが、平成30年3月に検査でまたもや再発が発見され手術し成功、現在ではBCC治療に変更し9月で治療が終了しました。

当時弊社では、当該の工事部長代理が工程や工事の進捗管理、人員や重機の配置など、すべての工事現場を管理していました。最盛期には12〜15現場を管理しており、大変負担の多い役職でした。そのため、工事部長代理の抜けた穴を他の者が埋めることができず、病床においても携帯で現場確認や対応、指示を行っておりました。

2例目は、新入社員の佐藤(この後のパネルディスカッションに参加)です。彼は高卒で平成29年入社、入社後すぐの5月の健康診断で肺の裏に影が見つかり、検査の結果、縦隔腫瘍(セミノーマ)が発見されました。同年9月に1カ月の休職を取り釧路の病院で手術、成功しましたが同年11月に同じ場所に再発が認められ、抗がん剤治療を同年12月から平成30年2月まで札幌の病院で行い完治しました。放射線治療中の2カ月間は休職しています。入院治療が2カ月、場所も札幌ということもあり、ご両親も病気のこと、そして失職するのではないかと、大変心配なされていました。

このような状況を鑑み、弊社では残業や休日出勤を減らし、働きやすい環境を構築するための働き方改革会議を平成29年10月から始めました。

工事部長代理の場合は、責任の所在が集中しすぎていたため、病床でも仕事をせざるを得ない状況でしたので、仕事の割り振りと人員配置を見直し、より適切に細分化して管理や指導の目が行き届くようにしました。具体的には、工事部長代理を統括工事部長にし、その下に5つの工事部を作り、それぞれに部長を置くことで、万が一病気などで長期休暇を取った場合にも、簡易的な引き継ぎで現場を他の技術者に任せられる体制を整えました。同時に、原価計算、労務管理、会計などを統一のソフトで管理することとし、業務の交代がスムーズに行えるようにしました。

病気治療などで長期休暇が必要な場合の待遇については、弊社では就労規則に勤続2年未満の従業員に対し、健康保険による給与保証(60%)が5カ月以内支給されるとあります。しかし、これはあくまでも最低ラインの待遇であり、実際はケースバイケースで常務会にて決定されます。

そして、働き方改革にがん対策も盛り込みました。大切な従業員をがんから守るためには、がん検診が必要です。しかし、個人ではなかなか受診にいたらないため、会社での健康診断時に腫瘍マーカー検査を会社負担で全員に行うようにしました。人間ドックも30歳以上の社員に会社負担で隔年受診するようにしました。がん対策推進企業アクションへの参加もがん対策のひとつです。

従業員の健康も会社が管理、維持する時代です。がんの早期発見・早期治療のためのがん検診。休職による所得減の低減。スムーズな仕事の引き継ぎなどを働き方改革の第一歩として、今後も企業として働きやすい職場づくりを目指していきます。

パネルディスカッション
「がんと就労」

[パネラー]

株式会社上田組 営業部長 遠藤直人氏

株式会社上田組 佐藤一成氏(がん経験者)

阿南里恵氏(がん対策推進企業アクションアドバイザリーボードメンバー、がん経験者)

[コーディネーター]

中川恵一氏(東京大学医学部附属病院 放射線科 准教授)

中川氏
がん対策推進企業アクションは10年目を迎えますが、過去10回の北海道セミナーは札幌でしたが、今回は中標津です。なぜ中標津なのか、まずは、このセミナーのきっかけを作っていただいた阿南さんから、経緯をご説明していただきたいと思います。
阿南氏
私は現在36歳ですが、23歳の時に子宮頸がんを発症し、手術、抗がん剤治療を経験してきました。がんは治りましたが、現在でもリンパ浮腫という後遺症と戦っています。このような体験から、がん対策推進企業アクションのメンバーとして、全国で講演を行っており、北海道でも何度も行っています。その札幌での講演に、本日ご登壇されている上田組の遠藤さんが聞きに来ていただいて、講演の後お声をかけていただき、講演の話を私のいる地域のみんなに聞いてほしいと言われたのがきっかけです。
上田組さんから、この地域では病院まで2時間かかること、最新の治療を受けるには何百キロも離れた札幌まで行かなければならないことなどを伺い、がん対策推進企業アクションで啓蒙している「がん検診受診」「がんと仕事の両立」などが、地域によっては物理的に非常に難しい場合もあるということを知らされました。そこで、今回の北海道セミナーはぜひ中標津で行いたいと提案して本日にいたりました。
講演の様子
中川氏
がんは、基本的には老化の病気です。佐藤さんは18歳で縦隔腫瘍(セミノーマ)が発見されていますが、このセミノーマは子どもの頃の細胞が残っていてがん化するもので若い頃に発症します。若くしてがんを経験された佐藤さんに、お話を聞きたいと思います。
佐藤氏
私は入社してすぐの健康診断のX線検査で肺に影が見つかり、釧路病院で精密検査を受けたところ、セミノーマが発見されました。当時は18歳、大きな病気にかかるのも初めてで、驚くと同時に恐怖を覚えました。
最初に手術をしましたが、3カ月後の検査で再発が認められ抗がん剤治療を行うこととなりました。抗がん剤治療は長期にわたって治療が必要なため、会社を長期にわたって休まなければならず、入社したばかりでしたから退職も覚悟していました。しかし、副社長から給料面は心配せず、早く治療を開始してほしいと言われ、とても安心しました。
講演の様子
中川氏
がんを告知されてから2週間の間は、自殺率が20倍になるというデータも出ていますが、佐藤さんは精神的な落ち込みとかはありませんでしたか。
佐藤氏
最初に手術をして、痛い思いもしたのに再発がわかったときは、とても悲しかったです。次に抗がん剤治療をやり始めてからは、髪の毛も抜けましたし辛かったし、精神的にも落ち込みました。工藤部長をはじめ、周りの人から励ましてもらったことでずいぶん助かりました。
中川氏
同じように若い頃にがんを経験した阿南さんは、精神的にどうでしたか?
阿南氏
私は手術の前日に家出しました。それくらい、病気を受け入れられませんでした。抗がん剤治療もすごく辛かったです。
中川氏
全国には、国が指定した地域がん診察連携拠点病院があり、当地域においては市立釧路総合病院と釧路ろうさい病院です。この拠点病院に行くことが、まずはがん治療においては重要です。佐藤さんはどうされましたか。
佐藤氏
市立釧路総合病院で手術を行いました。再発したあとは、同病院の紹介で札幌の病院で抗がん剤治療を行いました。
中川氏
札幌となるとかなり遠いですが、移動とかは大変ではなかったですか。
佐藤氏
抗がん剤治療をすると白血球の数値も下がりますし、長距離の移動が辛かったです。私はバスで移動していましたので、約5時間かかりました。
中川氏
抗がん剤治療をしての長距離移動は大変ですね。これは、北海道という地域独特の問題かもしれません。
中川氏
佐藤さんは若いということもあり、ご両親は心配なさったと思いますが、会社としてご両親に対するケアはどうされましたか。
遠藤氏
お母様が来社なさり、涙ながらに息子のことをよろしくお願いします、とおっしゃいました。抗がん剤治療は、長期間会社を休むことになり、そのことについても心配されていました。私は立場上、規則に則ったことしか説明できませんでしたが、副社長に電話したところ「お金のことは心配せず、しっかりと治療して治して戻ってきてください」と伝えてくださいとのことでしたので、その言葉を伝えたところ、非常に安心していただけたと思います。
中川氏
がんになった社員を見捨てず、給料もちゃんと払うということは大変難しいことです。万が一の場合は、給料を払っても会社に戻ってこられない場合もありますから。しかし、こういったことで従業員の士気が高まったり、企業の存在意義を知らしめたり、企業価値が上げられるなど、とてもお金では計れない効果も期待できるのではないでしょうか。
阿南氏
東京など大都市では、病院もたくさんあり、がんになってもセカンドオピニオンなどが比較的容易にできますが、このような地域ではものすごく大変なことだと感じます。
中川氏
たしかに難しいかもしれません。しかしこういう地域では、がんになってからのセカンドオピニオンよりも、まずはがんにならないことが重要です。禁煙、酒量を控えるなど、生活習慣を見直すことが第一です。そしてがん検診(住民検診)を受けて早期発見・早期治療をすること。進行がんになってしまうと、治療にお金もかかりますし時間もかかります。特に中標津のような地域ですと、釧路や札幌まで長距離の移動をしなければなりませんから、負担はより大きくなります。
住民検診は、厚生労働省が長い期間知恵とお金をかけて定めた、現時点で最もおすすめできる検診です。市役所などから案内のはがきが必ず来ますので、ぜひ受診していただきたいと思います。
講演の様子
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