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イベントレポート

2018/9/20
出張講座9/20開催、田辺三菱製薬株式会社 大阪本社

田辺三菱製薬株式会社 (本社/大阪市中央区)において「がんを知ろうセミナー」が 9月20 日(木)、林和彦先生(東京女子医科大学 がんセンター長/化学療法・緩和ケア科 教授)と、がんサバイバーである阿南里恵氏を講師にむかえ開催。 本社の講演会場は出席者で満員、TV会議システムで全国の各事業所にも配信されました。

主な講座の内容 林和彦先生

最近私は、小学校などで子供たちへのがん教育を行っています。これは、学習指導要領に昨年からがん教育が入ったという理由だけではありません。もともと手術が本業の臨床医である私が、医療の現場ではなく学校や企業などでがんについて講演を行うのは、実際に現場でがん患者やそのご家族と接してきて、がんに対する誤解や偏見、間違った知識があふれていると感じたからです。

大半の皆さんのがんに対するイメージは「怖い」「治らない」「結局は死ぬ」といったものが多いようです。これは、ワイドショーやドラマ、週刊誌などから流れてくる情報が、そういうネガティブなものばかりだからです。

実際に、がんにかかった患者さんの多くは「なんで私ががんに」「なんてツイてないんだ」「まさか自分ががんになるなんて」と言います。このような、がんになった人の大半が抱く「精神的・社会的パニック」は、がんに対する知識や情報の不足からくる不安が原因です。また、日本人がどこで亡くなるかというデータを見てみると、1976年を境に病院で亡くなられる方が自宅で亡くなる方を上回っています。国民健康保険ができたのが1961年。この国民皆保険制度により、日本人は世界最高水準の医療を安価で受けられるようになりました。

これは非常によいことですが、ひとつ残念に感じることがあります。それは、自宅で亡くなることが減ったことで、いつの間にか「病」と「死」が非日常になってしまったことです。さらには、「病」や「死」が忌み嫌われるものになって、できれば見たくないと考えられてしまうことです。本来「病」や「死」は身近にあって、大きな人生経験を人に与えてくれるものではないでしょうか。

日本で1年間にがんにかかる人は約101万人、死亡者は約37.8万人で、死因の1位です。男性の62%、女性の46%ががんにかかります。つまりがんは、男性の3人に1人、女性の2人に1人が一生のうちにかかる可能性がある、身近な病気ということです。

がんは、人の細胞から生まれるものです。生物は細胞分裂を繰り返して成長します。正常な細胞分裂は、正しいコピーが行われるのですが、たまにミスコピーが発生し、そのミスコピーされた細胞が、がんの原因となります。人間には37兆個の細胞があるといわれています。膨大な回数の細胞分裂を行うので、どうしてもコピーミスが起こります。どんな人にも毎日たくさんのがん細胞が生じていますが、通常は人間の持つ免疫力ががん細胞を退治しているので、がんを発症することはありません。

ただ、免疫力が低下するとがん細胞の増殖を防ぎきれません。低下の原因は、加齢、体力の衰退などさまざまです。また、ミスコピーが増えすぎて、免疫力が追いつかない場合もあります。こんなときに、がんになってしまいます。がんを防ぐためには「免疫力を減らさない」「ミスコピーを増やさない」ということが大切です。

年をとればとるほど、細胞分裂の数も増えますから、ミスコピーの確率は上がり、高齢者ほどがんにかかりやすくなります。よって高齢化の進む日本の中では、さらにがんにかかる人が増えると予想されます。定年が伸びることにより、働く人のがん患者が増えていきます。また、女性のかかる乳がんや子宮頸がんなどは比較的若い世代でかかるのが特徴ですから、女性の社会進出が進むとがんになる女性従業員も増えていきます。

講演の様子

実はがんは、半分くらいが予防できます。がんになる原因は、喫煙、感染、生活習慣など。

まずは、これらを改め、がんにならない体づくりをすることが大切です。

国立がんセンターが出している「がんを防ぐための新12か条」では、
1条) たばこは吸わない
2条) 他人のたばこの煙をできるだけ避ける
3条) お酒はほどほどに
4条) バランスのとれた食生活を
5条) 塩辛い食品は控えめに
6条) 野菜や果物は不足にならないように
7条) 適度に運動
8条) 適切な体重維持
9条) ウイルスや細菌の感染予防と治療
10条) 定期的ながん検診を
11条) 身体の異常に気がついたら、すぐに受診
12条) 正しいがん情報でがんを知ることから
 詳しい説明はがん研究振興財団のホームページを参照してください
と、1〜8 条までは、正しい生活習慣を守ることとなっています。

このように、生活習慣を見直すのが一次予防ですが、正しい生活習慣を守っていてもがんになる場合があります。これはどうしようもないことです。

そこで二次予防が早期発見・早期治療です。つまり、がん検診を定期的に受けることです。

がんがCTやMRI、レントゲンなどの検診で見つかる大きさ、ステージ1の約1cm(約1g) まで育つには、約10〜20年かかります。しかし、そこからステージ4の末期ガン(約1kg)の大きさに育つのは 2〜3年とあっという間です。いかに早期のがんを発見し、治療するかで生存率は大きく異なります。

そのためには、普段から定期的に検診を受け、がんを早期に発見することが重要です。早期発見のがん(ステージ1)は、5年生存率が末期のがん(ステージ4)と比べ何倍も、がんの種類によっては何十倍も異なります。ステージ1でがんを発見すれば、ほぼ治すことが可能です。

講演の様子

がんの治療には、「手術治療」「放射線治療」「抗がん剤」の3本の柱があります。それぞれによい部分がありますし、複合して治療することもあります。技術や医療の進歩により、現在では全がんに対する5年生存率は約60%(2016年予測)で、年を追うごとに向上しています。もちろん早期がんであれば、もっと高くなります。まず自分の治療を決めるときは、病気、検査、治療について十分な説明(インフォームド・コンセント)を受けるのはもちろん、他の病院に行って相談(セカンド・オピニオン)するなどし、理解した上でどのような医療を受けるか選択することが大切です。

また、がん患者を支えるネットワークも、がん専門病院、かかりつけ医、家に近い病院、薬局、訪問看護ステーション、ケアマネージャーなど、たくさんの専門家が患者を守る体制が整っています。

そして、がん患者・がん経験者の就労支援も大切です。がんになって退職する人は30%。時期は診断確定時が32%、診断から最初の治療までが9%と、実に40%超の人が治療前に退職しています。この方たちの多くは「がん=死ぬ」と思ったり、「周りの人に迷惑をかけてしまう」と思ったりして退職してしまっています。このように考える方は、真面目な方が多いです。そして、いざ治療が終わり社会復帰しようとしても、なかなか就労できないのが実情です。がんを正しく理解し、がんにかからないよう生活習慣を改めること。そして、検診を定期的に受け、がんを早期発見し、治療を受けること。また、がんになっても働ける、支え合える社会環境を作ることが大切です。

【がんに対する病院や知りたい情報を探す、林先生がおすすめする web ページ】

国立がん研究センター がん対策情報センター
https://www.ncc.go.jp/jp/cis/index.html

自分のがん、家族のがんを経験して

阿南里恵氏(がん対策企業アクションアドバイザリーボードメンバー/特定非営利法人日本がん・生殖医療学会理事 患者ネットワーク担当)

私ががんになったのは23歳。仕事にやりがいを感じて、面白くて仕方がない時期でしたが、子宮頸がんがかなり進んでいるということで、休職し泣く泣く実家に戻りました。

まずは、抗がん剤で腫瘍を小さくして手術を行い、取りきれないがんは放射線治療をすることになりました。最初の抗がん剤の治療では、今までに経験したことのない吐き気と微熱で動けなく、病院のごはんすら取りに行けない自分が情けなく思いました。見舞いに来た父に「急に病人になったなぁ」と言われたときには、ただうなずくことしかできませんでした。なんで23歳の私には“子宮を取って生きる道”と“子宮を残して死ぬ道”の2つの選択肢しかないんだろうと、涙が出ました。子供が産めなくなるという恐怖から、手術の前には家出をして両親に大変な迷惑をかけました。しかし結局は、家出をしても、どれほど泣いても、自分の人生からは逃げ出すことができませんでした。

講演の様子

当時の唯一の私の希望は、楽しかった職場に復帰すること。仲間たちも「絶対戻ってこい!」と応援してくれ、そこに私の居場所があると思っていました。しかし、長期にわたる治療を続けていく中で、30分も歩けなくなるほど体力が落ち、大好きだった営業の仕事を続けていくことができなくなりました。事務職を勧められましたが、あれほどバリバリ働いていた自分の弱った部分を見せるのが嫌だという小さなプライドが邪魔をし、結局は退職。その希望も叶わないものとなってしまいました。

しばらく、実家に戻りアルバイトを続けて体力が回復したころ、正社員の就職を探しました。採用されましたが、自分ががん経験者で経過観察中だということを隠していました。なぜなら、がんであると言ったら、採用されないんじゃないかという恐怖があったからです。じつは私のがんには後遺症があり、短時間のアルバイトでは出なかった後遺症のリンパ浮腫が、フルタイムで働くとあっという間に発症したのです。ある日突然、足がひどくむくみ 40℃近い高熱が2日間続き、これが毎月起こるようになりました。当然休むことが多くなりました。私は意を決して上司にがんのことを打ち明けました。上司はいい方で、病気のことを理解してくれ、残業を免除してもらい定時で退勤させてもらいましたが、残業が当たり前の会社でしたから、周りからはなぜ私だけが早く帰れるのか、との疑問が当たり前のように出ました。そこで私は、会社全員にメールで自分の症状を正直に打ち明け、みんなと働きたいと訴えました。ほとんどの社員は応援してくれましたが、ひとりの先輩が私の病気を疑っていると周りから聞かされ、私の心はポキッと折れてしまいました。何よりも、あんなにバリバリ働いていた自分が残業もできないことを、自分自身が受け入れられず、退職してしまいました。

講演の様子

「がんと向き合った4054人の声」という資料によりますと、仕事を継続できなかった理由の上位2つは「仕事を続ける自信がなくなった」「会社や同僚、仕事関係の人に迷惑をかけると思った」で、全く私と同じです。本人の自信がなくなって、周りに迷惑をかけたくなくて辞めてしまうんです。一方、仕事を継続できた一番大きな理由は「上司や同僚、仕事関係の人々など周囲の理解や協力」が一番多くなっています。制度だけではなく、自分から発信して周りが受け止めてくれる環境があれば、自分の居場所を見つけることができると私は感じます。

また、私が転職をするときに感じていたことは「健常者」として十分に働けないことです。障害者でもなく、健常者でもない、少しのハンディを持った人の雇用枠があればいいのにと思っていました。

その後、私のすべてを知っても受け入れてくれるとてもよい会社と巡り会いました。困ったら助けてくれる環境が整っていました。しかし働いてみて気づくことがありました。困っていることを伝えるには、とても勇気が必要だということです。特に日常の小さなことほど言い出せませんでした。

また当時、父ががんにかかり、母も入院しました。頻繁に会社を抜けなければならなくなり、残業や休日出勤もできなくなりました。そして、父が亡くなる1週間前、「そばにいて欲しい」と言われたのです。父の最期を看取りたい、しかしこれ以上会社に迷惑は掛けられない、という葛藤が渦巻きました。このときは社長の配慮で、会社から特別に来年の有給を前借りという形で休みをもらい、父を看取ることができ、本当に感謝しています。しかし、このようにすごく応援してくれる会社がゆえに、私の中では「申し訳ない」という気持ちが毎日毎日積み上がっていきました。そして、ついには辞めてしまいました。

じつは今、私は留学に備え新しい会社でアルバイトをしています。その会社は社員も管理職も全員が18時退社。社員全員が保育園に通う子供がいて、子供が保育園に行けない日は会社に連れてくる、遠隔地で在宅勤務している社員がいる、などといった大変珍しい会社です。この会社で働いて気付いたことは、みんなが育児や介護や病気といった何かしらの事情を持っていて、それを当然と捉えて働いていて、がんの後遺症と戦う自分が「申し訳ない」という気持ちを持たずに働けることの素晴らしさです。

いろいろながんに対する就労支援がありますが、がん患者だけに対する支援だと、かえって遠慮が生まれ「申し訳ない」という気持ちを持ち続けてしまうのです。

このような「申し訳ない」という気持ちを払しょくする方法は、相談する、甘える勇気、資格やスキルアップといった本人の努力。がんだけではなく誰もが働きやすい労働環境。キャリアコンサルタントや社労士、医師などの専門家による相談窓口。新たな仕事を託す役割分担。などによる「居場所づくり」ではないかと思います。最後に、私はじつは子宮頸がんの検査をしっかり受けていました。しかし、その4か月後にかなり進んだ子宮頸がんが見つかりました。検診では見つからないがんがあるということ。そして、後遺症は一生続くということ。ですから、がん検診を定期的に受けて早期発見・早期治療はもちろんですが、生活習慣の改善など、予防できるものはしっかりと行って欲しいです。

また、がん患者だけが変わろうとしても社会が変わらなければ、実現しないことがたくさんあるということも意識していただければと思います。

会場には乳がん模型なども設置されていました。
▲会場には乳がん模型なども設置されていました。
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