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イベントレポート

2016/3/19
がん対策推進企業アクション「年度統括セミナー」開催概要

タイトル

『職域におけるがん対策のこれから~最新データ発表、先進事例紹介、その先の社会への提言~』

開催概要

開催日時 平成28年2月24日(水) 13:00~17:00
開催場所 日本医師会館 大講堂
〒113-8621 東京都文京区本駒込2-28-16
主催 厚生労働省、がん対策推進企業アクション
後援 公益社団法人日本医師会、公益社団法人日本看護協会、公益財団法人日本対がん協会、全国社会保険労務士会連合会、全国健康保険協会、健康保険組合連合会、一般社団法人全国健康増進協議会

プログラム・内容(敬称略)

Ⅰ.現状と課題
13:00 開会挨拶 がん対策推進企業アクション事務局
13:05 日本医師会よりご挨拶
横倉義武(公益社団法人日本医師会 会長)
13:10 国のがん対策のこれから
秋月玲子(厚生労働省 健康局がん・疾病対策課 がん対策推進官)
13:25 職域がん対策のアンケート結果報告

福吉 潤(株式会社キャンサースキャン 代表取締役社長、「がん対策推進企業アクション」アドバイザリーボードメンバー)

14:00
  • がん対策推進企業表彰での表彰企業の事例発表
    株式会社ワコールホールディングス 中島 善行(ワコール健康保険組合 常務理事)
    株式会社アシックス 鷲野 洋一(グローバル人事総務統括部 総務部 部長)
14:30 休憩
14:40 職域におけるがん対策 ~大人へのがん教育の重要性
中川恵一 (厚生労働省 がん対策推進協議会 委員・「がん対策推進企業アクション」アドバイザリーボード議長・ 東京大学医学部附属病院放射線科 准教授)
15:05 がん患者の就労継続支援について
柿沼 歩(日本電気株式会社 本社健康管理センター長/専属産業医)
15:20 国、地方自治体、企業、社会保険労務士、医療者、経験者による
パネルディスカッション 「がんになっても働き続けられる社会へ」

 

コーディネーター
中川恵一 (厚生労働省 がん対策推進協議会 委員・「がん対策推進企業アクション」アドバイザリーボード議長・東京大学医学部附属病院放射線科 准教授)

パネリスト

  • 阿南里恵(特定非営利活動法人日本がん・生殖医療学会 患者ネットワーク担当、「がん対策推進企業アクション」アドバイザリーボードメンバー)
  • 荒木葉子(荒木労働衛生コンサルタント事務所 所長、産業医、NPO法人キャンサーリボンズ「がんと働く」プロジェクトリーダー)
  • 古川剛士(株式会社古川 代表取締役社長)
  • 本岡 修(広島県保健福祉局がん対策課主任)
  • 酒井典子(社会保険労務士法人EEパートナーズ 代表社員、特定社会保険労務士)
  • 田中登美(兵庫医療大学看護学部 准教授、がん看護専門看護師)

17:00 閉会

がん対策推進企業アクション「年度統括セミナー」を開催しました

2016年2月24日(水) 13:00~17:00、日本医師会館大講堂において「がん対策推進企業アクション 年度統括セミナー」を開催しました。全国から、254名の方が参加しました。
会場(受付)の様子
▲会場(受付)の様子
「開会挨拶」
がん対策推進企業アクション飯塚威文事務局長より、がん対策推進企業アクションの事業概要、運営体制を説明し、2009年より1863社ががん推進パートナー企業として加わり、従業員数規模で約500万人になった経緯を説明しました。
飯塚威文事務局長哉
▲がん対策推進企業アクション
飯塚威文事務局長
「日本医師会よりご挨拶」
 日本医師会の横倉義武会長より、日本のがん対策が平成19年からのがん対策基本法施行とがん対策基本計画に基づき推進されていること、平成28年1月から始まったがん登録について、がん医療の質の向上、国や地域における科学的知見に基づいたがん対策、予防におけるがん検診実施につながるものと考えていることを説明されました。がんによる死亡者の減少をめざしているが、平成27年度がん対策協議会で発表された中間発表では、全体的にはがん死亡者数は減少しているものの、目標の達成が厳しいと報告されたこと、国民に対する禁煙教育や対策の更なる必要性を伝えました。日本医師会として、かかりつけ医、産業医、産業保健師からの積極的ながん検診受診の推進と、地域におけるがん対策の重要性を強調されました。
横倉義武会
▲日本医師会、横倉義武会長
「国のがん対策のこれから」
厚生労働省健康局がん・疾病対策課、秋月玲子がん対策推進官より、日本のがん罹患者数の現状と「がん対策推進基本計画」の概要、がん検診の現状と最近の動向について説明しました。
市区町村のがん検診の項目について、がん検診受診率の推移、平成25年度のがん検診受診者数からみた住民検診と企業におけるがん検診の受診者数をもとに、職域でのがん検診の重要性を伝えました。
「がん対策加速化プラン」を紹介し、短期集中的に対策を行っていくこと、職域におけるアプローチを強化し、実態調査を実施して更なるがん予防対策を進めていくこと、今後ガイドラインの策定など行っていく予定であると話しました。
がんとの共生に関しては、がん罹患者の就労支援について説明しました。問題点として、がんを罹患された方の3割近くが依願退職や解雇をされている現実を踏まえ、具体的な支援策として全国400か所にある、がん診療連携拠点病院等の相談支援センターで事業がはじまること、ハローワークの方でも就職支援をしていくこと、治療と職業生活を両立できるよう企業向けにツールを紹介し、平成28年度より産業保健総合支援センターで企業に対して研修や相談支援を行うなど国として行う更なるがん罹患者への就業支援の具体策を説明しました。
最後に、新たなステージに入ったがん検診の総合支援事業について説明し、名簿管理による個別の受診勧奨の必要性、精検未受診者への受診再勧奨を推進し、がんの早期発見につなげることの大切さを語り、国としても補助金を出すなどして一層注力していくと話しました。
秋月玲子対策推進官
▲厚生労働省健康局がん・疾病対策課
秋月玲子対策推進官
職域がん対策のアンケート結果報告

福吉 潤氏(株式会社キャンサースキャン 代表取締役社長、「がん対策推進企業アクション」アドバイザリーボードメンバー)より、がん対策の現状と課題をテーマにがん対策推進企業アクションが平成27年末~平成28年1月までがん対策推進企業パートナーを対象に大規模調査を行ったアンケートの結果報告を行いました。

今回の調査設計の3つの課題意識について説明がありました。1つ目は、「がん」への対策は、企業のどのレベルの課題なのか、福利厚生の課題なのか、人事配置を含めた人事戦略上の課題なのか。2つ目は現在企業・健保において実施しているがん検診の種類・方法は、本当に社員のためになっているのか。3つ目はがんと診断された社員に対してどのようなサポートがあるべきか。これを中心に調査をした旨の説明しました。
このような考えに至った経緯は、労働者のがん患者数は年間32万人に上り、約3分の1は労働者であることが強調され、社会として労働人口が減少し続け、定年が延長され、女性の就業率が上昇し続ける中、55歳以降がん患者が急増する背景や、女性は特に子宮頸がんと乳がんに若いうちから罹患する傾向にあることをあげ、職域におけるがん対策と必要性、特にがん検診を行うことによる早期発見こそが大切であり、企業が直面する現実的な経営課題として、がん患者の就業支援があることを強調しました。
冒頭、がん検診を企業が従業員に提供しているのかどうかの結果報告があり、胃がん・大腸がん・肺がんは中小企業をはじめ多くの企業では9割近くが受診できる環境にあることが示され、乳がん・子宮頸がんについては6割程度になっており、この2つのがんについて対策が重要であると説明しました。
職域でのがん検診は死亡率減少の科学的な根拠がある項目を実施しているのか、それともまだ研究段階の項目のがん検診もあり、科学的根拠のあるがん検診と、そうでないものをどれくらい併用して行っているのかを調べた結果を報告しました。
具体的には、大腸がんについては便潜血検査2日法を多くの企業で取り入れられており科学的根拠のある検診が行われています。一方で肺がん検診では喫煙者に対して国が推奨している喀痰検査を行っていない企業や、乳がん検診では、まだ科学的な根拠が十分でない超音波の検査も併用している企業が多く、また子宮頸がん検診では医師が細胞を取る方法(医師採取法)ではなく、送られてきたキットを使って自分で細胞を取る方法(自己採取法)を17%が行っていることを報告しました。正確に細胞が取れないであろうと言われている自己採取法を使用している企業が、まだまだあるとの結果が出ました。特に1/4の企業は子宮頸がん検診も行っていないことから、早急に医師採取の子宮頸がん細胞診を行っていただきたいと意見が述べました。
次に、検診受診率を上げて要精密検査となった社員の精密検査受診率を上げてこそ、初めてがん検診によって死亡率のリスクが減少することを説明し、会社は要精検者をフォローしているのか、その実態について説明されました。
検診受診率の把握は74.8%が行っているのに対して、要精密検査者の把握、受診勧奨、受診の確認と下がっていき、精密検査の未受診者への受診勧奨になると、実施していると答えたのが27.4%にまで低下してしまい、より一層の対策が必要だと語られました。
全体の傾向としては、大企業、中小企業に関わらず、しっかりと社員の検診状況を把握し未受診者においても受診勧奨を積極的にしている企業の方が結果的に、個人情報を把握しているからこそ、がんになった社員の就労面もサポートをしようとする実態も見受けられることが報告しました。

福吉 潤
▲福吉 潤(株式会社キャンサースキャン 代表取締役社長、「がん対策推進企業アクション」アドバイザリーボードメンバー)氏より職域がん対策アンケート結果報告
がん対策推進企業表彰での表彰企業の事例発表
株式会社ワコールホールディングス 中島 善行(ワコール健康保険組合 常務理事)氏より、同社におけるがん対策の歴史をはじめ、社内での検診受診促進の実例を紹介しました。検診受診率向上のカギは受診環境の整備に尽きるということが強調され、検診費用の立て替えの手間を無くすこと、会社で受診ができ定期健診のついでに受診ができること、就業時間内での受診ができ、上司や男性社員の理解が必要であることが話されました。
 禁煙教育については、女性が多い企業だからこそ工夫をし、美容・お金・家族に訴えるような情報提供をし、禁煙治療に対して費用補助をしていることなどが紹介されました。
 ワコールGENKI計画2020、ワコール元気宣言として「生活習慣病、がん、メンタルヘルス」を会社、健康保険組合、労働組合の三位一体で健康づくりをサポートし、目標とする数値を設定して活動をしていること、そして東京証券取引所から健康経営銘柄に選ばれたことを報告しました。
中島 善行
▲株式会社ワコールホールディングス 中島 善行氏が同社の取組を紹介しました
続いて、株式会社アシックス 鷲野 洋一(グローバル人事総務統括部 総務部 部長)氏より、同社におけるがん検診受診の状況の説明があり、本社約800名のがん検診受診率を見ると、婦人科検診である乳がん・子宮頸がん検診受診率は他のがん検診受診率に比べ低い傾向にあり、課題だと感じているとの説明がありました。2015年は2次検診対象者受診率(要精密検査対象者)が100%を達成したことを紹介し、イントラネットをはじめ安全衛生委員会を利用した情報発信、受診していないことが分かると管理部門や上長から直接指導が入るような仕組みになっていると話しました。就労支援に関しては診断から復帰までをサポートしていて、本人が心配、不安、困っていることなどを丁寧にヒアリングすること、上司や管理部門と連携し、治療に専念できる環境を整え、場合によっては家族や主治医とも連携していっていること、休職する状況になった際には専門の看護師が自宅まで訪問、情報収集、復職まで支援しているなどの具体的な取り組みを紹介しました。
鷲野 洋一
▲株式会社アシックス 鷲野 洋一氏が同社の取組を紹介しました
職域におけるがん対策 ~大人へのがん教育の重要性
休憩をはさんで中川恵一先生(厚生労働省 がん対策推進協議会 委員・「がん対策推進企業アクション」アドバイザリーボード議長・ 東京大学医学部附属病院放射線科 准教授)が登壇。最新のデータから、職域のがん対策の必要性を紹介しました。多くの先進国でがんによる死亡が減っているにもかかわらず日本は増えている。例えば米国に比べ、日本は高齢化の社会背景があるにせよ10万人当たりのがん死亡者数でみると1.6倍以上高く大きな差がついていること、がん検診受診率の低さが差につながっていると説明しました。
国のがん対策基本計画では死亡率20%減少を目指していたが、達成度は85%程度にとどまり達成できない可能性が高いことが話され、喫煙率が下がらないこと、がん検診受診率が向上していないことが背景にあると話されました。急激な高齢化で日本としても早急に対策をとること、がん教育の必要性を繰り返し訴えていました。講演の後半では、中川先生は今まで小中学校80校でがん教育を行い命と健康の大切さを伝えており、平成29年度より文部科学省がようやくがん教育を始めることを紹介しました。がんに関する誤解を解いていきたいと考えていきたいと意気込みを語りました。子供に向けての「がん教育」を始めることが決まった今、大人に対しても教育が必要、世代間の知識格差をなくすことが必要であると語り、高齢社会が続く中、リタイアした人が罹患する病気ではなく、就労世代ががんを罹患する時代になったことを強調し一層の就労支援が不可欠として、講演を締めくくりました。
中川先生
▲中川先生が最新のデータと共に職域でのがん検診の重要性を訴えた
がん患者の就労継続支援について
続いて柿沼 歩(日本電気株式会社 本社健康管理センター長/専属産業医)先生より、産業医は労働者の健康管理を専門的な立場から行う医師であること、先日事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドラインが厚生労働省より公表されたことを紹介し、ますます病気と就労について重要性が増していることが示されました。
 個人情報管理で気をつけていることとして、当事者にどこまで病気のことを開示していいかを確認しつつ支援を進めていくことが大切だと話されました。そして、主治医と産業医が連携しつつ職場復帰をめざし支援していくことの重要性が示し、がんの診断から療養までの具体的な例をあげ、社内と社外の制度を利用しつつサポートしていくこと、社内のサポートをする側が疲弊しないように注意することなどが語られました。
最後に積極的にがんの労働者を支援していくことが重要だと締めくくりました。
柿沼 歩
▲柿沼 歩(日本電気株式会社 本社健康管理センター長/専属産業医)先生
国、地方自治体、企業、社会保険労務士、医療者、経験者による
パネルディスカッション「がんになっても働き続けられる社会へ」
冒頭、パネルディスカッションに登壇する方々からご自身の取り組みについて紹介がありました。
阿南里恵(特定非営利活動法人日本がん・生殖医療学会 患者ネットワーク担当、「がん対策推進企業アクション」アドバイザリーボードメンバー)氏より、ご自身の経験からのがん治療と就労継続についての問題点を上げ、「がんと向き合った4,054人の声」を引用し、がんになっても安心して仕事を続けられるために必要だと思うことでは、制度の充実はもちろんのこと、今後キャリアコンサルタントが就労支援の専門家として活躍していくことの重要性を紹介しました。
阿南里恵
▲阿南里恵(特定非営利活動法人日本がん・生殖医療学会 患者ネットワーク担当、「がん対策推進企業アクション」アドバイザリーボードメンバー)氏
荒木葉子(荒木労働衛生コンサルタント事務所 所長、産業医、NPO法人キャンサーリボンズ「がんと働く」プロジェクトリーダー)先生より仕事と治療の調和ツールについての紹介がありました。NPO法人キャンサーリボンズで行った「がん患者さんの職場復帰に関する調査」から、職場ではがんが語られず、病院では働くことが語られていないことの問題点を上げ、「がんと働くリワークノート」開発の経緯を説明しました。
荒木葉子
▲荒木葉子(荒木労働衛生コンサルタント事務所 所長、産業医、NPO法人キャンサーリボンズ「がんと働く」プロジェクトリーダー)先生
古川剛士(株式会社古川 代表取締役社長)氏より同社におけるがん検診受診促進に関する紹介がありました。支援をしている湘南ベルマーレフットサルクラブの久光選手のがん罹患をきっかけに、若くてもがんになることに気づき、少ない人数で業務を回している中小企業だからこそ1人病気で抜けられると非常に困る、避けられるリスクは避けること、経営者としてがん検診の重要性を強調しました。がん検診を本人と配偶者も会社が費用負担をして実施していること、業務時間内で検診を受けられるよう調整していることなど、検診受診率向上の方法を説明しました。
古川剛士
▲古川剛士(株式会社古川 代表取締役社長)氏
本岡 修(広島県保健福祉局がん対策課 主幹)氏より広島県における先進的ながん対策について説明がありました。行政では異例とも呼べるインパクトのあるがん検診啓発を実施しデーモン閣下を起用して、広島県がん対策推進基本計画をもとに進めている事業の内容を紹介されました。県で独自に調査を実施し、経営者向けに就労支援啓発冊子を作成し、「Teamがん対策ひろしま」事業を2015年度より開始し、官民合同でがん対策にあたっていることを説明しました。
本岡 修
▲本岡 修(広島県保健福祉局がん対策課 主幹)氏
酒井典子(社会保険労務士法人EEパートナーズ 代表社員、特定社会保険労務士、東京都社会保険労務士会 社会貢献委員会副委員長)先生より、社会保険労務士が社会保険と労務を中心に業務を行っていることを紹介し、がん患者・経験者の就労支援について果たす役割を説明しました。国立がん研究センターでソーシャルワーカー、ハローワークの方と共に就労に関する相談に乗っていることを紹介しました。お金に関わる社会保険制度のことや労務に関する相談が多いことを報告しました。
酒井典子
▲酒井典子(社会保険労務士法人EEパートナーズ 代表社員、特定社会保険労務士)先生
田中登美(兵庫医療大学看護学部 准教授、がん看護専門看護師)先生より、就労がん患者が社会的(家庭や職場)役割を果たしながら治療を受けることができるための看護支援についての説明がありました。仕事や家庭での役割遂行が長期にわたる化学療法治療の動機づけになっているなど紹介し、治療開始からの精神的な悩み、体力低下による悩みなど多くの患者さんが経験することをあげ、がん看護専門看護師が情緒的な支援を行う必要性を伝えました。具体的な支援例として、正確な治療に関する情報提供や、他患者が職場で工夫している例などを紹介し、自分が仕事に対してどう考えているのかを周りに説明していく必要性があると説明されました。
田中登美
▲田中登美(兵庫医療大学看護学部 准教授、がん看護専門看護師)先生
それぞれの発表に続き、就労支援に関してのパネルディスカッションが始まりました。
冒頭、中川先生より阿南委員に、「ご自身が就労に関して苦労した経験があると聞きました。今振り返って、どうすればその苦労が避けられたと思いましたか」と質問があり、阿南委員からは「相談ができる人がいて、がんになっても会社に居てもいいんだよ、と言ってくれる人がいれば避けられたと思う。」と答えました。また、阿南委員からは「主治医に仕事のことを相談するというアイディアもその時にはなかった」と語り、中川先生からは主治医と産業医の連携の必要性が語りました。
産業医の荒木先生は「主治医との連携の難しさ、プライバシーの問題もあるので課題もまだまだある。」と話され、中川先生は「労働安全衛生法上、がんは私病との認識で産業医の範疇に無い。」と問題点が語られました。
若い女性のがん対策が遅れていることに関しては、古川氏は「社員のがん検診受診率は100%だが、配偶者の検診受診率はようやく60%を超えたところ。まだまだ目標には届いていない」と語り、会社としてがん検診の意義を理解し継続的に取り組んでいくことの必要であることが話されました。
広島県が経営者向けに啓発冊子を作成配布していることなど、県として企業におけるがん検診に積極的であることの理由について質問がありました。本岡氏からは、「がん検診に行こう推進会議で、市長をはじめ、民間の医療保険企業など149団体が加盟して官民協働しながら行っている。この活動を県もサポートしている」と紹介がありました。
また、中川先生より健康保険組合種別のがん検診受診率を取り上げ、「国家・地方公務員が加入する共済組合が最も受診率が高く、パート従業員や自営業者が加入する市町村国保が低いことを指摘し、産業医がいない中小企業では、社会保険労務士ががん対策についてのフォローを期待する」との意見が述べました。社会保険労務士の酒井先生からは、「傷病手当金など社会保障制度を利用するためにも、社会保険労務士に積極的に相談していただきたい」と語られました。
臨床の現場で、特に緩和ケアの現場では看護師が中心に職務にあたっていることに触れ、「より患者に近い立場で就労支援について生活面について看護師が関わっていくことが重要になるのでは?」との意見には、田中先生は「以前は目の前の痛み・辛さにフォーカスされていて生活面はフォローできなかったが、最近は一般的な病院でも就労支援も含め看護師が患者に対して生活面に対しての相談に応じたり、気にかけるようになってきたと思う」と語られました。中川先生からは、「治療の専門家である主治医では現実的に生活面のフォローは難しく、臨床心理士や看護師の活躍が期待されている、また企業では産業医はもとより保健師と看護師が連携をしながら患者を支援していくようになればよい」、との感想が話されました。
そして、阿南氏からご自身の経験のもと、「再就職をする際にどこまで病気のことを伝えなければならないのか?どうするべきなのか?」との質問し、産業医の荒木先生は、「本人の性格や病気の状況により異なる」と前置きしつつ、「職場での病気の開示に関してはシートを用いて練習していただいている。そのシートをもとに、職場の誰に病気のことを知ってもらいたいか、共感してもらいたいかを確認している」という回答しました。
最後に中川先生が「6割の方ががんを罹患しても完治する時代になり、がんと就労支援がますます重要になってくる」と話し、セミナーは終了しました。
パネルディスカッションの様子
▲パネルディスカッションの様子
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