2024/3/22 配信

  • ピアサポートとピアサポーター
  • 治療と『自己実現』の両立を目指して

ピアサポートとピアサポーター

がんの告知を受けたり、治療法の変更を説明されたり、あるいは積極的治療の終了を打診されたりなど、がん患者さんは様々な局面で重要な意思決定を迫られます。その際、「同じ体験をした方に話を聞きたい」というニーズが多いことが知られています。

体験の専門家・ピアサポーターに必要なこと

みなさんは、「ピアサポート」とか「ピアサポーター」という言葉を聞いたことがありますか?ピアサポートとは、同じ問題や状況を持つ人が、情緒的に支え合い、その問題に適切に対応するための知識や情報を共有していく関係のことです。ピアサポーターとは、「体験の専門家」とも呼ばれ、自らの体験を他者が活かせる形で語る(提供する)ことにより、患者・家族の情緒的な支援、リテラシーの向上に貢献する人のことを指します。 体験の専門家であるピアサポーターには、自分の体験を相手に活かせる形で語る力、相手の体験をじっくりと聴くあるいは聴き出す力、そして、相手の知りたい情報を的確に伝えるあるいは知りたい情報にアクセスする方法を伝える力が必要です。ですので、ピアサポーターには特別な技量が求められ、研修教育を受けることが必要となります。

ピアサポートの理解、ピアサポーターの普及へ

ピアサポーターの養成研修については、その実施が国のがん対策に盛り込まれているにもかかわらず、都道府県単位での研修はまだ100%の達成を得ていません。都道府県が養成研修を行ってもピアサポーターの活躍の場がないことも問題になっています。
我々医療者は、ピアサポートの意義を認識し、ピアサポーターの力を理解し、その普及や養成に協力する必要があると思います。また、利用者である患者さんやご家族、将来の利用者となり得る一般の方々への周知・啓発も重要です。
ピアサポートに関する詳細は、厚生労働省委託事業「がん総合相談に携わる者に対する研修事業」のウェブサイト(https://www.peer-spt.org/)で知ることができます。ぜひ、ご参照ください。

治療と『自己実現』の両立を目指して

私は2017年、39歳のときに中咽頭がんを罹患し、治療のため約9ヶ月の休職を余儀なくされました。幸い治療は無事に終わり、勤務先に両立支援の制度も充実していたことから、職場復帰も果たすことができました。
ただし、それまで思い描いていた管理職へのキャリアアップは難しいものになってしまいました。

本人が望むかたちでの「がんと仕事の両立」を

どうしても体力的な不安や再発・転移のリスクは以降もつきまとってくるため、いくら私が「できます」と言っても、私の努力だけではいかんともし難いものでした。

降格こそ免れていたものの、同僚や後輩が次々にステップアップを重ねていくのを見るのは、やはり辛いものでした。
そうした経験を踏まえ、がんと仕事の両立は、ただ治療と仕事を両立できればいいということではなく、本人ができる限り望む形での両立であることが今後一層求められてくるのではと思っています

罹患経験者も自己実現を目指して

特に仕事の面では、「今までよりも負荷を少なく働きたい」、「今まで同様キャリアアップを目指したい」、「治療をきっかけに社外活動も充実させたい」など、罹患経験者の自己実現の在り方もさまざまであり、健常者同様、罹患経験者も仕事を通じて自己実現を可能な限り目指せる世の中になっていくことを願ってやみません。

なお、私の場合はといえば、管理職の道は遠のいたものの、一方で、勤務先から、一般社団法人設立の許可を得ることができ、新たな自己実現の道を歩むことができています。
これもまた一つの両立支援の形ではないかと考え、せっかくの機会を無駄にしないよう、今後も社団法人代表として発信を続けていく所存です。

過去のメールマガジン

2024/2/29 配信

  • 健康診断で安易な腫瘍マーカーの測定はやめましょう
  • がんサバイバーライフ

健康診断で安易な腫瘍マーカーの測定はやめましょう

血液検査の項目に、「腫瘍マーカー」があります。その数値は、体の中にあるがんの存在を反映するとされています。「腺がん」に分類される多くのがんに関係するCEAや、乳がんに関係するCA15-3など、種類はたくさんあります。これらの腫瘍マーカーは、進行がんの治療効果判定では、ある程度有用なのですが、その多くは、早期がんで上昇することはなく、がんの早期発見には向いていません。

「偽陽性」判定や、正常値なのにがんが見つかることも

そんな腫瘍マーカーが、健康診断の項目に組み込まれていることがあるようです。血液検査の項目を増やすだけの、手軽なイメージもありますので、オプション検査として追加するかどうかを尋ねられて、なんとなく追加してしまっている方も多いのではないでしょうか。でも、健康診断では、後述するPSA検査を除き、腫瘍マーカー検査は受けるべきではありません。
腫瘍マーカー検査を受けて、高い数値が出た場合、それをきっかけに、「進行がん」が診断されることはありますが、根治を目指せる「早期がん」が見つかることはほとんどありません。がんの可能性があると説明され、不安の中で、精密検査(画像検査や内視鏡検査など)を受けることになりますが、結局、がんは見つからなかった、というのはよくあることです。本当はがんがないのに、腫瘍マーカーだけ異常値になった「偽陽性」と考えられます。腫瘍マーカーは、がん以外の理由でも上がりますので、偽陽性は珍しいことではありません。

一方で、腫瘍マーカーが正常値であったとしても、「早期がん」がないという保証にはなりませんので、安心のために腫瘍マーカーを測るというのも適切ではありません。
早期がんの発見には役立たないだけでなく、偽陽性の場合には、余計な検査を受け、不安を煽られることになりますので、利益よりも不利益が大きく上回ると言えるでしょう。

PSA検査も利益と不利益をよく理解して

前立腺がんのPSAについては、早期がんでも上昇するため、がん検診にも用いられることがあります。55~69歳の男性にPSA検査を用いた検診を行うことで、前立腺がんの死亡率を減らせることを示した臨床試験もあります。死亡を防げるというのは大きな利益ですが、一方で、治療の必要のないような早期がんも見つけて治療してしまう「過剰診断・過剰治療」などの不利益があることもわかっています。検査を受けることの利益と不利益のバランス十分に理解し、納得して受けることが重要で、なんとなく受けるものではありません。

もし、自分が受けた健康診断に、腫瘍マーカーが含まれているような場合は、それでよいのか、職場でよく話し合ってみましょう。企業の担当の方は、腫瘍マーカー検査を組み入れることの意味をよく理解して、慎重に判断しましょう。
こういうテーマはとても重要なものですので、お茶の間でも、会社でも、国民全体でも、もっと議論があってもよいと思います。是非、自分の問題として考えてみましょう。

がんサバイバーライフ

6年前、乳がんと診断されました。家族・親戚にも乳がんになった人がいなくて、私はがんのことをほとんど知りませんでした。

がん患者になって、やってきた現実

がんにはいくつかのタイプがあり、私は「トリプルネガティブ」タイプだと言われました。薬が効きにくく、進行が速いタイプ…それって最悪じゃないかと絶望しました。仕事も、友達もランチにも行けない。「がん」になった途端に全く違う人間になったような気がしました。がん患者というレッテルを貼られたようでした。
がんになる前の私は、アナウンサーをやっていました。プロ野球をはじめとするスポーツ選手にインタビューするのが主な役割でした。7年間で延べ2,000人以上の方から話を聞き、自分の言葉で伝える。やりがいのある仕事でした。それがもうできない。

絶望から転じた意外な面白さ

がんサバイバーとしての人生が始まりました。人前に出ることはかなり抵抗がありましたが、看護学生さんたちが髪をドネーションして作ってくださったウィッグをプレゼントして頂き、術後3か月で次女の幼稚園の謝恩会の司会をしました。がんサバイバーのウィッグファッションショーにも出させて頂きました。また、がんサバイバーの方と対談の機会も頂きました。そして、がんサバイバーとして体験談を語る、企業アクションの「認定講師」に。がん治療の最前線にいらっしゃる先生方のお話を聞き、体験者として伝える。私の最高のライフワークになりそうです。そして、今年はがん患者でヴェートーベンの第9『歓喜の歌』も歌えることに。
私のがんサバイバーライフ…決してお勧めはできませんが、なかなか面白くなってきました。

ブレスト・アウェアネスを意識してほしい

今日は久しぶりに人間ドックに行き、自分の身体について考える良い1日になりました。乳がんは唯一、がんに触れられる疾患です。私は手術直前までにっくき「がん」を触っていました。最後は5センチまで大きくなり、ズキズキ痛みもありました。重くて硬くて、早く私の身体からいなくなって欲しかった。でもその代わりに私の左胸もなくなりました。
ブレスト・アウェアネスは、「乳房を意識する生活習慣」という意味です。1人でも多くの方が、がんにならないために。乳がんサバイバーとしてブレスト・アウェアネスを伝え続けます。

2024/01/31 配信

  • がん情報シリーズ④ がん情報サービス「がん検診」が更新されました
  • 胃がんと骨密度

がん情報シリーズ④
がん情報サービス「がん検診」が更新されました

アドバイザリーボードメンバーの若尾です。今回はがん情報シリーズ④として、2023年12月に更新されたがん情報サービス「がん検診について」(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/about_scr01.htmlo)の情報をご紹介します。従来は、住民検診を見据えた内容となっておりましたが、今回の改訂で職域検診についての説明を追加されました。是非、ご覧ください。

がん検診について

1.がん検診の分類と職域検診では、がん検診の分類や職域における「定期健康診断」「特定健康診査」との相違などについて、紹介されています。

がん検診の分類の図

2.どんながん検診を受けるべきかでは、がん検診の利益や不利益を概説したうえで、科学的根拠が確立したがん検診を受診する必要があること、科学的根拠が明確でないがん検診の考え方、事業者や保険者に求められる受診者への対応などが紹介されています。

表1 国が推奨するがん検診の一覧

3.がん検診の流れでは、精密検査の受診まで含めてがん検診であることなどが紹介されています。

がん検診の流れチャート図

4.精密検査についてでは、精密検査機関(医療機関)の探し方、精密検査機関の受診時に持参するものなどが紹介されています。

5.各がん検診についてでは、厚生労働省の「がん検診に関するマニュアル」に記載されている「精度管理のためのチェックリスト」(保険者・事業者用)で求められている受診者への説明、及び要精検者への説明の「受診勧奨時に、下記の項目が全項目記載された資料を、全員に個別配布しているか」の要件に対応した各がん検診のA4版三折りちらし「〇〇がん検診をこれから受ける方、受けた方へ」のPDFファイルを掲載しています。

各がん検診のA4版三折りちらし「〇〇がん検診をこれから受ける方、受けた方へ」 例:乳がん検診三つ折りチラシ

さらに、「がん検診の適切な受け方」と題したよくあるQ&AをまとめたA4版三折りちらしと10分ほどの動画を追加しました。ダウンロードの上、是非、社内向け啓発資料としてご活用ください。

がん検診の適切な受け方 A4版三折りちらし
動画キャプチャ画像:「働く世代の方に向けて、適切ながん検診の受け方とその内容

▲がん検診の適切な受け方 紹介動画

胃がんと骨密度

2014年に胃がんで胃の3分の2を切除しました。現在は食事に関してはいろいろと自分なりに工夫しており、食事の量と食べるタイミングに失敗しない限りは手術前とほぼ変わらない生活を送ることができています。そんな中で手ごわい後遺症が骨粗鬆症(こつそしょうしょう)です。まさか胃の切除と骨密度が関係しているとは思ってもみませんでした。胃を切除するとカルシウムやビタミンDの吸収が悪くなり骨のカルシウムが減少していくそうです。

生活習慣改善と治療で骨密度が回復

骨密度が若年層の平均値の70%未満であれば骨粗鬆症と診断されます。手術前には84%くらいあった骨密度が手術後3年目くらいから少しずつ減り始め、6年目には71%になり治療が始まりました。医師からは「治療の目的は骨折を防ぐことです。骨折すると生活の質が下がり、場合によっては寝たきりになります。骨は一生作り替えられるので何歳になっても丈夫にできますよ。」と言われています。食事と運動と適度な日光浴。私の場合はそれに薬物治療が加わります。治療開始から3年、食事に気をつけたことと薬が効いたのか腰椎は94%、大腿骨は75%にまで回復しました。しかし部位によってはまだ低いので治療は継続しています。

受診と測定で早期発見と予防・治療を

初期の骨粗鬆症は症状も痛みもなく気づかないうちに進行していきます。皆さんも一度骨密度を測定してみてはいかがでしょうか。その結果丈夫な骨なら一安心、そうでなければ早く気づいて予防、治療を始めることができます。骨折を回避して健康寿命を延ばしたいですね。

2023/12/20配信

  • 検診や健診の意味を知ろう!
  • がんサバイバーとして、思うこと。

検診や健診の意味を知ろう!

日本は、健診大国ですが、がん検診低率国です。職域では、事業者に毎年の定期健康診断、有害物を扱う場合には特殊健康診断、交代勤務の方には、特定業務健康診断などの実施が法定で決められています。また労働者には受診することが義務づけられています。

受診の義務化が招くリテラシーの低下

それだけではなく、40~74才の方には、保険者(健保組合)には、特定健診・特定保健指導(通常メタボ健診)の実施義務があり、健保組合は実施率を上げるために受診勧奨しています。つまり、現在労働年齢の方には、様々な健診が義務づけられていて、実際は自分が何のためにどんな健診を受けているかの意識が低いことが問題です。

がん検診が低率な原因として、「会社の健診の中にがん検診も入っていると思った。」という声をよく聞きます。定期健診の会場を見ると、自分が何のために、何の検査を受けているのかを理解しないまま、義務としてベルトコンベアーに乗せされて受診しているというある意味で異様な光景を見ます。個人的には、この健診文化が日本人のがん検診に対するリテラシーを低下させている原因ではないかと思っています。

意味と意義を理解し、自身の健康を守る

何の目的でどれだけの精度があり、異常が出た場合にはどんなことがわかるのか?この説明がしっかりされていないままに義務化された検査を受けされ続けていることが問題と思います。がん検診においても、便潜血検査が大腸がん検診と知らずに受診されている方も多いと思います。なぜ、大腸がん検診に便潜血が選択されているのか?についてもそうです。

個人的には、自分の健康は自分で守る意識の醸成が必要であり、その中でまず第一歩として、健診や検診の意味を理解してもらうことが重要と思います。それには、もっと健診や検診の意義についての情報提供やその意義の相互議論が必要であると痛感する毎日です。

がんサバイバーとして、思うこと。

私ががん告知を受けたのは、2017年12月でした。当時は実家が経営する企業に籍を置き、責任のあるポジションに就いて3年目。また、本来のフリーランスとしてのコンサルタントや心理セラピストとしての活動もしていました。

家族の言葉にも傷つく

がん告知を受けたと、詳細を母と経営者である弟に報告すると、『初期で良かったね』と言われました。確かに左胸にあるシコリは1.5センチで小さく、ステージで言うと、ステージⅡaで初期の部類ですが、私の場合はリンパ節に転移していて、治療の1つに抗がん剤を提案されるレベルでした。そのような説明をしても、ステージでしか判断されず、わりと軽く受け止められたことが、非常にショックでした。
私は告知される前も特に変わった症状もなく、乳がんだとわかった時は逆に驚きました。元気な姿を見ているからこそなお、『初期で良かったね』で終わったのだと思います。

乳がんのオペは、女性の象徴である乳房へメスが入ります。冷静に受け止めていた私でさえ、そのことへの悲しみはありました。私は温存でしたが、温存や全摘など関係ないのです。女性の一部がなくなってしまうという想いは、言葉にできないものがあります。事実、母からは『少し切除して命が助かるなら、仕方ない』とまで言われました。昔の人の考えなのだと思いますし、母なりに励ましてくれたのだと分かりますが、やはり心に傷を負いました。

オペの後が真のスタート。続く治療と経過観察

またオペ後の治療の1つにホルモン治療があり、10年薬を服用することになりましたが、私には副作用が強く出て、強い倦怠感や手のこわばりなどに悩みました。日常生活や仕事にも支障が出るほどでしたが、このことに対する周りの理解はなく、心無い言葉を浴びせられました。
がんはオペがゴールではなく、スタートなのだと思います。いくつかの治療を受け、経過観察をしていき、寛解するまで10年と言われています。私のように、個人差はありますが、薬の副作用で悩んでいる人も多いと聞きますし、一昔前に比べてがんの認知度や理解度は深まってきたものの、まだまだだと実感します。

副作用が強くて体調が安定せず、仕事にも影響が出てからは休みを取って療養していましたが、復帰の見込みがないとのことで、解雇となりました。幸いにも、私は本来のフリーランスの仕事がありますが、これが会社員の方なら大変だろうと思います。

がん経験者が生きやすい環境を

がん患者さんの声を聞くと、同じような悩みを持っている人がたくさんいます。「治療しながらの仕事はキツイ」「周りの理解を得られない」「心無い言葉を浴びせられる」「遠回しに退職を迫ってくる」「解雇された」などです。日本でもがんに対する認知度や理解度は昔に比べて深まってきたとはいえ、がん患者にとっては生きづらい環境であるということに違いはありません。私のように解雇されたら、一般的には求職活動をしますが、がん患者だと知って雇ってくれる会社はあるのでしょうか?おそらくほぼ無いと思います。

そういった意味でも、様々な不安を抱えて生きづらい世の中だなと感じざるを得ませんし、安心して過ごせる世の中にしていかなければならないと強く感じます。2人に1人はがんに罹患すると言われているなら、少しでも早く環境を整えていく必要があるとお伝えしたいです。

2023/11/30配信

  • 医療分野におけるAI技術のサポートに期待
  • 自身と夫の罹患経験、周囲の取り組みを伝えていく

医療分野におけるAI技術のサポートに期待

AIの技術進歩はここ数年目覚ましいものがあり、ChatGPTをはじめとした対話型AIや、希望の画像を自由に描いてくれるようなAIも登場していますが、医療分野においてもAI技術の発展は顕著です。

内視鏡によるがん発見に奏功

たとえば内視鏡を用いる検査でもAIの利用が始まっています。これまで内視鏡によるがんの発見においては、検査を行う医師の目、つまり経験に頼る部分が大きく、その結果医師の技術差によって診断の精度にばらつきが生じるという問題がありました。その対策として、医療機関によっては2人の医師によるダブルチェックの導入なども行われてきました。
そこへAIの技術を導入し、内視鏡検査中の画像をAIがリアルタイムで評価を行い、医師の診断をサポートする仕組みが研究されています。これにより万一の病変の見逃しを防いだり、検査精度のばらつきなどを最小限にしたり、診断の精度向上を図るというものです。同様に、胸部X線などの画像診断においてもAI技術の活用の試みが始まっています。

検査の精度向上に影響大

検査の種類によってはまだまだ検証が必要な部分もありますが、がん検診や人間ドックにおいては、画像診断が重要な役割を果たすことも多く、こうした技術進歩が検査精度の向上に与える影響は大きいと考えられます。このように、がんの早期発見・早期治療において、AIを活用することは大きな鍵となりますが、がん患者の死亡率低減やQOL(生活の質)向上のために、私たちはこれらの新しい技術を積極的に取り入れ、医療の質の向上に努めていくべきだと考えています。

自身と夫の罹患経験、周囲の取り組みを伝えていく

私は、2020年から認定講師をしており、自分の子宮頸がんや夫の肝臓がんの体験を話してきました。今年度は、その活動を知った知人の紹介で、広島県の『Teamがん対策ひろしま』の出前講座でも、講師として中小企業5社に講演する機会を頂きました。

意見交換ががん対策の表明へつながる

がん対策推進企業アクションでも、中小企業へのがん対策啓発活動が行われていますが、今回、出前講座後、私は企業の社長と社員の皆さんと一緒にがん対策についてディスカッションいたしました。ある企業では、「女性社員の数が少ないので、会社に女性のがん検診車にきてもらうことができない→子宮頸がん、乳がん検診受診率0%」という課題がそのままでした。しかし、出前講座のあと、「女性社員が、女性のがんの検診に行けるようにする」と、社長が表明されました。このように、社長と社員の皆さんが、健康について意見交換する場が増えていくといいな、と感じました。

看護学生さんたちの効果的な取り組み

がん対策推進企業アクションでは、家族のがん検診啓発もしています。看護学生さんとがん啓発イベントをした時に、「子宮頸がん検診受けたことある?」と聞いたら、「私達は、大学の学園祭に毎年検診車を呼んで、みんなで検診しています」という答えが返ってきました。若い女性には心理的ハードルが高い子宮頸がん検診ですが、このような取り組みは、検診率アップにとても効果的だと、感心しました。皆さんの取り組み事例も含めて、これからも講演していきます。

2023/10/31配信

  • がん啓発の原動力
  • 様々な立場から配慮し、がん患者が働きやすい世の中へ

がん啓発の原動力

がん専門医として、がん検診の重要性を強調する記事を執筆することがあります。

医師にも寄せられる誤解や疑念

40年近い自らの経験と最新の科学的エビデンスをもとに、常に公正に、できるだけわかりやすく執筆しているつもりですが、残念ながら読者からの「お金儲けのための宣伝記事」とか「情報が古い化石のような医者」などという、数多くの批判的なレビューに直面し、心が折れそうになることがしばしばあります。なぜいまだにこのような誤解や疑念が存在するのか、そしてどうすれば私たちの啓発の取り組みを改善できるのか、その答えが見つからなくて自問自答の日々です。

患者さんやご家族の笑顔に救われる

がん検診は、がんの早期診断と早期治療のかなめです。がんは早期に発見されれば治療が成功する可能性が高まり、患者さんの生存率が大きく向上します。しかしながら、そんな医療情報を正しく理解し、実際の行動につなげるためのヘルスリテラシーを一般の方々に身につけていただくことは容易ではありません。
でもそんな懸念や不安を払拭してくれるのは、いつも実際の患者さんやご家族たちです。がん検診で内視鏡検査に来てくださった方に早期胃がんが見つかり、無事に治療が済んだ時の患者さんの満面の笑顔ほど私を勇気づけてくれるものはありません。
「先生のおかげであっという間に完治しました!」 「いえいえ、あなたが検診に来てくださったから大事にならなかったのです。」なんて会話は臨床医としての私の宝物です。

がん検診率を高めることで公衆衛生の向上にも貢献します。医療費の削減やがん治療に関連する負担の軽減など、社会全体に多くの利益をもたらすことが期待されます。がん医療者としての喜びを啓発のエネルギーに変えて、精一杯がんと向き合う毎日です。

様々な立場から配慮し、がん患者が働きやすい世の中へ

この度、約10年に渡るホルモン療法を終え、乳がんの治療が全て終了しました。とは言え、再発のリスクが無くなった訳ではないので、半年毎の検査は欠かせません。

患者数が増加しているからこそ、大人にもがん教育を

私が罹患した10年前、乳がんは14人に1人がなると言われていました。それが今や9人に1人。これだけ患者が増加しているのに、世間の「がん」に対する認識はそれほど変化していないなというのが正直なところです。教育現場でがん教育が取り入れられるようになったことは大変素晴らしいことだと思いますが、今こそ、大人のがん教育が急がれるのではないでしょうか。正しい知識がないことから生まれる誤解も多く、そういったことが、がんになっても治療をしながら働くことへの弊害になっているのではと思います。

経験者として、身近に感じられる話を伝えていく

私は、乳がんに罹患してからずっと、身近に居る人達に自分の経験を話しています。捉え方は人それぞれだと思いますが、ほとんどの方は、がんに対するイメージが変わった、検診に行く勇気が出た、などポジティブな感想を聞かせてくれます。やはり、経験者の話には何か、心に響くチカラがあるのかも知れません。
がん教育の中で、治療内容やお金のことなどは、医師や各専門の先生方にしっかりお伝え頂き、私達がんサバイバー講師は、自分の経験を通しての思いなど、より身近に感じられるお話ができればと考えています。

がんになっても働くことが当たり前の世の中になるように、一人一人が、いろいろな立場から、少し想像力を働かせて 日々の生活を送ることが大切なのかなと思います。

2023/9/29配信

  • 阪神優勝までの18年、医学の進歩とがん治療
  • 聞く経験を通して「自分事」として考えてみてほしい

阪神優勝までの18年、医学の進歩とがん治療

阪神タイガーズが18年ぶりのアレ(優勝)を達成しました!タイガースファンの私は、九回裏、岩崎投手がマウンドに上がる時の曲「栄光の架橋」でうるっとしそうになりながら、歓喜の瞬間を迎えました。18年前というと、2005年です。つい先日のように感じますが、この18年を振り返ると様々な出来事もありましたし、技術の進歩もありました。

医療技術と薬物療法の目覚ましい進歩

医療の世界、がん治療の分野においても様々な進歩がありました。手術において最も代表的なところでは、医療用ロボットの登場ではないでしょうか。実際、私の母親も医療用ロボットによる腎臓の部分切除術を受けましたが、術後1週間で退院することができました。従来の開腹手術ではそのような短期間での退院は困難であったでしょう。放射線治療では強度変調放射線治療(IMRT)の出現により、放射線による有害事象、すなわち、周囲の健康な組織に与える影響を従来の治療より抑えることができるようになりました。薬物療法の進歩も目覚ましく、沢山の新薬が開発されました。代表的なところではノーベル賞を受賞された京都大学名誉教授・本庶佑先生が開発したニボルマブなどが挙げられます。

治療を受けるのは人間。周囲への思いやりを

ただ、このような新薬は従来の抗がん剤と比べ副作用が多彩で、異なる点も多いため、他科との連携がより重要となってきます。代表的な進歩を述べましたが、これら以外にも新たな技術の開発がなされ、がん治療の成績や安全性、QOLの向上などに寄与しています。
このような医療技術の進歩もあり、がんの5年生存率は上昇しております。それと同時に、もはや、がんは特別な病気ではないので、皆さんの周りにもがん治療を受けた人、現在治療を受けている人も多くいらっしゃると思います。また、これからがん治療受けようとする人もいらっしゃると思います。この18年間に医療技術の進歩はあっても治療を受けるのは人間であることに変わりありません。がん患者さんも、そうでない方もみんなが幸せに過ごせるよう、お互いに思いやりながら生活をすることが大切です。

野球の応援では、少し度が過ぎたものもあるようです。どのような場面でも相手をリスペクトしないといけませんね。

聞く経験を通して「自分事」として考えてみてほしい

こんにちは。私は、これまでに精巣がんと甲状腺がんの二つのがんに罹患し、治療をした経験があるがんサバイバーです。患者になり、医療者や医薬品企業との、心理的な距離を感じ、いまでは立場を超えたワークショップや講演、イベントなどを企画運営する「患医ねっと」という団体を立ち上げ、それを日々の生業にしています。

自分事として考える大切さ

いま、これを読んでいる方の多くは、自分ががんに罹患したわけではなく、会社の中で制度を作ったり、がんに罹患した方をサポートしたりする方でしょう。
その際に、「自分が病気になった立場だったらどうだろうか」という意識が大切と思います。その発想により、例えば、仕事の内容よりは通勤がつらいとか、がんであることを周囲に知られることが怖いというように、患者はとても広い観点で悩みや困難なことがあることに気づくかもしれません。

身近な方の話を聞いてみる

がんに限らず、長期的に病気と向き合っている方や、治療・くすりを欠かせない方は大勢いるもので、みなさんのご家族、ご親族にもいるのではないでしょうか?まずは身近の方の話を、しっかりと時間を作って、聞く経験をしてほしいと思います。その方へアドバイスは不要です。何に困り、何を必要としているのか、そして解決策を一緒に考えてみるという経験がゴールでよいのです。

患者さんの話をウェブサイトで聞いてみませんか?

私たちは(がんに限らず)罹患されている方の話を対談形式で聞き、配信する活動をしています。毎週金曜日のランチタイムに患医ねっとウェブサイトより閲覧可能です。病気の話だけではなく、日々の生活の様子や、企業への期待なども話しています。ご興味があれば、「患医ねっと」にアクセスしてみてください。

患者と医療者をつなぎ、日本のよりよい医療を実現する

2023/08/31配信

  • がん細胞の遺伝子異常とがんゲノム医療
  • 患者が安心して暮らせる環境の制度化を望む

がん細胞の遺伝子異常とがんゲノム医療

「がん細胞は正常細胞に生じた遺伝子異常の結果生まれてくる」、今や常識となっているこの考えは、「がん細胞がどうして異常な振る舞いをするのか」という疑問を解明するために、地道な研究を重ねた基礎研究者の努力で見いだされました。さらに、細胞が際限なく増える、周りの臓器に進出(浸潤)する、あるいは遠くの臓器へ飛んでいく(転移する)というがん細胞特有の振るまいは、複数の遺伝子異常の積み重ねで生じることが知られており、多段階発がんと呼びます。正常細胞に、何でもいいから遺伝子異常(変異)が複数生じれば、必ずがん細胞が生じるかというと、実はそうではありません。がん細胞に生じている遺伝子異常は、がんにとって都合の良い遺伝子に生じるのです。

がん遺伝子とがん抑制遺伝子の異常ががん細胞を生む

珍しく料理をしようと慣れない包丁を使い、指先を切ってしまったとします。その場合、切り口の皮膚の正常細胞は死滅してしまいます。正常細胞の喪失が生じるのです。そのような状況になると、周囲の正常細胞で「増えなさい」と命令する遺伝子がオンになり、細胞が増え始めます。十分増えて喪失した細胞が補充されると、今度は「もう増えなくて良いよ」と命令する遺伝子がオンとなり、過剰な細胞の増加を防ぎます。このように、我々の正常細胞では、複数の遺伝子が働き、増えたり減ったりすることをコントロールしているのです。
がん細胞は、増えたり減ったりすることをコントロールする遺伝子に異常を生じて生まれてきます。細胞を増やす命令をする遺伝子には、その働きが強くなるような遺伝子異常が生じており、このような遺伝子を「がん遺伝子」と呼びます。一方、細胞が増えることを防ぐように命令する遺伝子には、その働きが無くなるような遺伝子異常が生じており、このような遺伝子をがん抑制遺伝子と呼びます。つまり、がん細胞では、複数のがん遺伝子やがん抑制遺伝子に遺伝子異常が生じているのです。

がんゲノム医療は、がん細胞を深く知ることが可能

2019年から保険診療となった「がんゲノム医療」の遺伝子パネル検査(正式には包括的がんゲノムプロファイリング検査)は、数百のがん遺伝子やがん抑制遺伝子を一度に調べて、がん細胞に生じている複数の遺伝子異常を検出し、その中から最も重要な働きをしている親玉あるいはラスボスみたいな遺伝子異常(ドライバー遺伝子異常)を、データベースを用いて推定するというものです。さらに、専門家会議を開催して、そのラスボスを倒す可能性がある薬剤を探します。現時点で、ラスボスに対抗する薬剤はまだ60〜70%程度でしか見つからず、実際に見つかった薬を使用できるケースは7〜14%と結果は十分ではありませんが、自分の身体に生じたがん細胞を遺伝子レベルまで深く知ることはできます。そういう意味では、「がんゲノム医療」は、薬物治療に特化した検査ではなく、患者さんががんという病気を遺伝子レベルまで深く理解し、納得のいくトータルケアを受けるために必要な選択肢のひとつなのだと思います。

※がんゲノム医療を受けるにはいろいろな条件があります。
詳しくはがん情報サービス(https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/genomic_medicine/genmed02.html)をご参照ください。

患者が安心して暮らせる環境の制度化を望む

がんサバイバー認定講師の川畑英美です。現在、堺市にある医療機関で、介護保険制度のケアマネージャー事業所の所長として日々元気に働いています。
約15年前肺がんに罹患し(検診で発覚)、未成年の子どもたちを残して死んでしまうの⁉と当時は死をとても身近に感じ漠然とした不安でいっぱいになった経験があります。

医療保険制度と介護保険制度の課題

ケアマネージャーをしていると、末期のがん患者さんがご自宅で療養される際に関わりを持たせていただく機会があります。
医療保険制度では、年齢に関係なく、主治医の指示によって、訪問看護師等が療養中の患者さんのご自宅へ訪問し、ご本人への医療処置の実施をすることが可能ですが、医療機関と同等の療養環境をご自宅で整備することはなかなか困難な現状です。
現在の介護保険制度では40歳以上の末期がん患者さんであればお住まいの地域の役所の采配や主治医の判断により、自宅で療養する際の電動介護ベッドや床ずれ防止マットレスなど必要な福祉用具を、必要な期間、所得に応じた費用でリース利用することが可能ですが、40歳未満の末期がん患者さんが自宅で療養を希望される際には、療養のための生活環境を整備する公的制度がありません。

患者とその家族の負担が軽減される社会へ

地方公共団体によっては、ローカルルールがある場合もありますが、ごく僅かです。
緩和ケア時の痛みのコントロールとともに、ご本人やご家族の介護負担が軽減されながら安心して自立した療養ができる自宅での生活環境の整備保証が制度化され、平等に人権・権利が保障される社会になるといいな、と願っています。

2023/07/31配信

  • NHKドラマ「幸運なひと」で伝えたかったこと
  • がん罹患後に筋トレを続けて、罹患前より体力アップしている話

NHKドラマ「幸運なひと」で伝えたかったこと

今年4月にNHKで放送されたドラマ「幸運なひと」で、医療監修を務めました。36歳でステージ4の肺がんと診断された中学校教師(生田斗真さん)が主人公で、がんになっても、普通に暮らし、自分らしく生き、ささやかな幸せを感じられる、そんな日常が、等身大で描かれています。

山中崇氏も感じた腫瘍内科医の成長

演出家の一木正恵さんと私が出会い、こんなドラマを作りましょうと意気投合したのは16年前のことでした。以来時間がかかってしまいましたが、ようやく実現したのがこのドラマで、私にとっても、とても思い入れのある作品となりました。
主人公を支える腫瘍内科医役の山中崇さんとは、撮影開始前日に対談させていただき、このドラマは、腫瘍内科医の成長の物語でもあるという話になりました。電子カルテに記録された「3人称」の患者→患者と医師が「あなた」と私として向き合う「2人称」の関係→共感しあう「私たち」という「1人称」の関係、という「3人称」から「1人称」への変遷が見事に演じられているのも見どころです。

患者と家族によるリアルな場面に生田斗真氏も感動

このドラマの中で、主人公に大きな影響を与える患者会の場面があるのですが、ここに登場したのは、プロの俳優ではなく、本物の患者さんやご家族でした。台本なしのリアルな言葉で思いを語っていて、この場面だけ、ドラマというよりドキュメンタリーだったのですが、違和感なく、印象深く、ドラマに溶け込んでいます。生田斗真さんも、俳優として、人間として、これまでになく心揺さぶられる体験だったとおっしゃっていました。
このドラマでは、「がんがあっても、普通に、幸せに」を支えるためのテーマとして、妊孕性(にんようせい)温存、アピアランス(外見)ケア、仕事と治療の両立、学校でのがん教育、AYA世代(15~39歳)がん患者のケアなどの話題が、ちりばめられています。また、このドラマの放送にあわせて、NHKでは、いくつかの番組でがんに関連するテーマが取り上げられました。私も、「おはよう日本」に出演し、朝から「がん教育」にかける熱い思いを語らせていただきました。

多くの方にこのドラマを見ていただき、いろんなことを感じていただき、「がん」と「幸せ」を普通に語れるきっかけとなることを願っています。

特集ドラマ「幸運なひと」 はNHKオンデマンドでの視聴が可能!
「ドラマ制作舞台裏 〜がんと幸せをめぐる対話〜」も配信中です!
NHK公式サイトはこちら。
https://www.nhk.jp/p/kouunnahito/ts/7P49G2W1KX/

がん罹患後に筋トレを続けて、罹患前より体力アップしている話

こんにちは。私は、自身も乳がん経験者でありつつ、「一般社団法人まめっつ」で仲間と一緒に「がん経験者のためのエクササイズ」を開催していて、筋トレや有酸素運動などの運動をしています。新型コロナの影響でオンラインでの開催だったのが、最近では乳腺外科クリニックでも開催するようになりました。がん経験者の方々が参加し、運動を行っています。

最初はあまり動けない人たち

少し歩いただけでもすぐに疲れてしまったり、だるさや疲労感や関節痛で動きにくかったりする人もいます。また、腹筋運動ができず、片足立ちも5秒しか続けられないなど、最初はあまり動けない人たちが、エクササイズに参加します。

継続で体力向上が数字になって現れた

それでも、仲間と一緒に楽しく動いているうちに変わってきます。
2023年の4月〜6月は、週2回プランクチャレンジを3ヶ月間続けてみました。継続時間を計測したところ、4月初めは平均57秒だったのが、6月半ばで1分30秒まで伸びました。じつは前年に計測した時は、20秒程度がやっとという人たちも多かったのです。

研究と実際は違うのでは?という誤解

さて、何でこんなことを書いているのかというと、がんの罹患後の運動が必要というお話をすると「研究上では必要性はわかっているのでしょうが、でも実際には、がんになったら運動できないでしょう?」と聞かれることがあるからです。
しかし、そんなことはありません。少しずつ体を動かしていくと、信じられないかもしれませんが、がん発症前よりも動けるようになるのです。私も動けるようになると同時に、中性脂肪もがん発症後に下がってきました。

がん研有明病院・乳腺内科部長の高野利実先生も「運動腫瘍学」というお話をされています。検索して見つけてみてください。

2023/06/30配信

  • がん情報シリーズ③職場の受動喫煙対策できていますか?
  • まさか自分がすい臓がんになるなんて

がん情報シリーズ③
職場の受動喫煙対策できていますか?

アドバイザリーボードメンバーの若尾です。今回は、がん情報シリーズ③として、「受動喫煙対策」について、ご紹介いたします。
5月31日は世界保健機関(WHO)が定める「世界禁煙デー」、厚生労働省の禁煙デーイベントでは、WBC日本代表監督を務めた栗山英樹さんと女優・モデルの星乃夢奈さんと受動喫煙対策などについて学ぶイベントが行われました。イベントの様子はYouTubeで視聴できます。(https://www.youtube.com/watch?v=-xdwAwBFMNoo

健康増進法改正で屋内禁煙に

イベントでもご紹介しましたが、わが国では、健康増進法改正が完全施行され、多数の人が利用する施設は、2020年4月から原則屋内禁煙になりました。
学校、病院・診療所、児童福祉施設、行政機関などは、患者や子どもが多く利用することから、より厳しい対応が求められ、原則敷地内禁煙となり、屋内は完全禁煙で、喫煙専用室等を設置することもできません。
一方、一般の事務所、工場、飲食店、ホテルや旅館の共用部などは、原則屋内禁煙です。喫煙専用室や加熱式たばこ専用の喫煙室は設置できますが、禁煙エリアへ煙が流出しないための要件を満たす必要があります。また、喫煙エリアは、利用者・従業員ともに20歳未満の立ち入りは禁止です。

受動喫煙を防ぐための取り組み:室外への流出防止措置の図

標識の掲示と受動喫煙の配慮義務

なお、喫煙が可能な施設では、喫煙場所に関する標識を掲示することが法律で求められています。
詳しくはがん情報サービスたばことがん 受動喫煙を防ぐための取り組み
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/smoking/tobacco06.html)をご覧ください。

喫煙場所に関する標識の例

さらに法律では、路上等の屋外や自宅等の私的空間であっても望まない受動喫煙の生じることのないよう、配慮することを求めています(これを配慮義務と言います)

このように、様々な対策が求められていますが、周知が十分とは言えない状況で、「法律が変わり、受動喫煙対策が強化されたことを知っていた」と答えた方は、わずか34.8%でした。詳しくは国立がん研究センタープレスリリース「受動喫煙対策について法改正3年後の意識や課題を調査」(https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2023/0531/)をご覧ください。
皆様のオフィス、工場などの受動喫煙防止対策について、この機会に見直すことをお勧めします。

まさか自分がすい臓がんになるなんて

私は、すい臓がんの手術をして今年10年目を迎えます。
夫の職場のがん検診を含めた家族検診で、高血糖値をきっかけに、すい臓がんを発見するに至りました。すい臓がんは、まだまだ手強いがんの一つですが、手術をすることができて私は命を救われました。生かされていることに日々感謝しています。

すい臓がんを告知されて

がんは、二人に一人がなる時代と言われ、身近な病気となりましたが、どこか他人事のように思っていた私でした。特別な症状もなく、告知されて「まさか自分ががんになるなんて」と、よくがん経験者の方から耳にする言葉が、すっかり自分にあてはまるものでした。

がんの正しい情報

すい臓がんを経験して、大切だなと思ったことは、がんの正しい情報でした。治療についても、先生に相談や質問もしやすくなりました。
がんは早期に発見すれば、治る時代になってきており、検診の受診や、生活習慣を気をつけることでリスク軽減にも繋がります。

ご自身と大切な人を守る検診

私は、夫の職場の家族検診を毎年受診していたことが、すい臓がんの発見に繋がりました。
病気が早期発見できれば、企業も大切な従業員を守ることに繋がります。そして、ご自身はもちろん、大切なご家族や友人の命を守ることに繋がる検診を、是非多くの方に受診していただけたらと願っています。

2023/05/31配信

  • コロナ5類へ 
    ~生活をみなおしましょう~
  • 子宮を失って想うこと

コロナ5類へ 
~生活をみなおしましょう~

スペイン風邪以来、100年に一度のパンデミックを経験し、この5月にようやく一息つくことができました。まさか歴史的出来事に遭遇するとは……日本はダイヤモンド・プリンセス号に始まり、デルタ株の時には若者でも肺炎で危篤状態となり救急車を呼んでも搬送できない、まさに映画のような時期を経験しました。

テレワーク常態化がもたらした良し悪し

そんな悪夢のような3年間でしたが、一方で、テレワークが常態化し色々な仕事がオンランでできるようになったことで、「仕事と治療の両立支援」については格段の進歩を遂げました。ただ、世の中は、良いことと悪いことがトレードオフになっていることが多く、テレワークがもたらす負の面もあり、座位時間が大幅に増えたことは、座位時間と関連する可能性があると報告されている健康障害、例えば大腸がんなどに気をつける必要があります。

ポストコロナを生きるための健康生活を考える

私たちは、2019年に一度たちもどり、3年間での生活や仕事、健診や検診の受け方などを総括して、新たなポストコロナの時代の生活習慣を整える必要があります。自分を振り返ると毎週1度はスポーツジムに通っていましたが、コロナの時は足が遠ざかり、しかしジムの会員を辞めてしまうと取り返しがつかない……と思いつつむなしく毎月の会員料が引き落とされています。がん検診についても確かに間隔が空いています。外出しなくなった分、家での飲酒量も増えた感じがします。社会的立場上感染に対して非常にナーバスになっていて精神的にも疲れました。

恐らく皆さまもこの3年間は思った以上にそれぞれのダメージがあるかと思います。がんは、生活習慣と深く関係します。ここで、一度振り返り健康生活を立て直してみませんか?

子宮を失って想うこと

私は33歳で子宮頸がんに罹患し、子どもを産む前に子宮を全摘しました。2023年4月に手術から5年が経過し、晴れてがん克服となりました。しかし、がんの恐怖は消えても、子どもを持てないという事実は一生続いていきます。

夫への申し訳なさ、母を悲しませるつらさ

子宮頸がんに罹患した時に感じたのは、夫への子どもを持てない申し訳なさと、思い描いた家族像が持てない悲しみ、そして母を悲しませてしまうつらさでした。母にがんであることを告げたとき、やはり電話口で泣いていた様子でした。子に対する母の無償の愛を感じる一方、私はこの気持ちを完全に理解することは一生できないとも感じました。

女性の社会進出とビジネスのダイバーシティが進む中、子どもを持たない女性も多くなっています。ですがそれを「選択できる」かどうかが重要です。「産まない」と「産めない」はやはり大きく違います。夫との二人だけの生活は楽しく充実し幸せですが、もし子どもを持てたなら…と想像し、少しだけ切なくなります。

お子さんのワクチン接種検討とがん検診の受診を

どうか、10代のお子さんを持つ方には、子宮頸がんについてお子さんと一緒に学び、予防ワクチンを検討してほしい。あなたが子どもを愛する気持ちを、お子さんに繋いでいってほしい。女性(特に20~30代)は、必ず子宮頸がん検診を受けてほしい。あなたが今描く将来像を選択し実現できるよう、がん検診を受けてほしい。そんな思いを、認定講師として伝えていけたらと思っています。

2023/04/28配信

  • 中小企業の健康管理、がん対策へも目を向けよう
  • 何のために「がん」になったのか?

中小企業の健康管理、がん対策へも目を向けよう

日本の企業における健康管理は、企業の規模によって大きな差が認められます。企業規模が大きい場合、専属産業医や常勤保健師が職員の健康管理に携わるなど、多くのリソースを職員の健康管理に回す仕組みや法整備がなされています。

事業規模による健康対策の偏り

一方、中小企業ではその取り組みにばらつきがあり、経営者の考え方によっては手厚い健康対策がなされている場合もありますが、多くはそこまで手が回らないのが現状です。
そして、企業における健康管理の一翼を担う産業医の選任義務は従業員50人以上の事業場に限られていますが、50人未満の事業場数は全体の96.2%、全労働者数の55.3%を占めているのが実態です。

小規模事業にも産業医活動を

現在、厚生労働省では「産業保健のあり方検討会」が開催され、多様化する職場のニーズを踏まえた、産業保健に関わる者の役割分担や連携のあり方、保険者等との連携のあり方、小規模事業場における産業保健活動のあり方について検討しています。50人未満の事業場における産業医活動も重要なテーマとなっていますが、安全配慮義務への対応が第一優先である産業医が中小企業でどのような役割を担っていけるかについては、議論の行方を注意深く見ていく必要があります。

企業アクションでは中小企業のがん対策にも目を向け、アンケート調査による現状調査や中小企業向けセミナーの開催など、様々な取り組みを行ってきました。日本の社会を根底から支えている中小企業のがん対策に、これからもしっかりと取り組んでいければと思っています。

何のために「がん」になったのか?

私は福岡市にある映像制作会社で、TV番組やCMのディレクターとして働いています。約6年前、耳の後ろにできた小さなしこりを調べたところ、甲状腺がんと中咽頭がんに同時に罹患していることがわかりましたが、手術、抗がん剤、放射線の治療が功を奏し、現在は社会復帰しています。

社会復帰後も「がん」は付きまとう

私の場合、辛い治療を乗り越えたあとに、別の辛いことが待っていました。休職後、半年ぶりの仕事場です。現場によっては、私の状態を知っている人と知らない人がいるため、妙な気を使わせてしまったり、場の雰囲気が重苦しくなったり…。また、家族とも私の体調の些細なことで言い合いになったり…。社会復帰後も「がん」という言葉やイメージは、いつまでも付きまといました。

これからも「がん」と共に生きていく

何かを変えたいと思い、がん患者の会や関係イベントに参加し、他のがんサバイバーの話を積極的に聞きました。人によって生き方や考え方は様々でしたが、それまで『なぜ「がん」になったのか?』と思い悩み、イライラするだけの状態から『何のために「がん」になったのか?』と考え、探求する行動が出来るようになりました。さらに、私自身が元気で明るい状態でいることにより、周りの人たちとの関係や雰囲気も自然と良くなっていきました。そして、最近はこう思うようになりました。私が「がん」になった理由は『探す』ものではなく『作る』ものなのかもしれないと。

2023/03/24配信

  • エビデンスの限界
  • 次世代へ、命を愛おしく思える未来を願って

エビデンスの限界

新しい抗体医薬の開発やAI診断の進歩など、がん医療は大きく変わりつつありますが、最新医療を導入し、その質を高めていくためには、エビデンスが不可欠です。エビデンスとは、医療において有効な治療法や診断方法について、科学的な研究や試験を通じて得られた証拠のことです。

患者すべてに有効ではない

ただし、エビデンスは決して万能ではありません。主治医にはエビデンスに基づいたガイドラインに沿って治療を行うことが求められますが、例えば患者さんの数が少ないがんでは、ほとんどエビデンスが得られていません。ある治療法や診断方法が有効とされたとしても、すべての患者さんに適用できるわけでもありません。患者さんの病状や社会環境によっては、個別の判断が必要な場合も多いのです。

知見に基づいた最善を模索する

ガイドラインによる治療が患者さんにとって最善の選択肢ではない場合には、主治医は自らの知識や経験に基づいた情報提供をして、次のステップをどうするか、患者さんと十分に話し合う必要があります。しかしながら、エビデンスを重視する医師が自らの裁量を過剰に制限してしまうと、極めて限られた治療方針しか提示できず、医師と患者さん、ご家族とのコミュニケーションや信頼関係にも支障が生じかねません。

これからのがん医療に向けて

そしてエビデンスを収集し、解析するには、多くの時間と労力が必要です。新しい治療法や診断方法が実際の医療現場に導入されるまでには、最低でも数年、場合によっては10年以上かかります。高額な医療費やその保険適用の問題もあります。21世紀のがん医療では、科学性のみならず、人間性や社会性、公共性など、さまざまな要素が深く融合していくことが求められています。

次世代へ、命を愛おしく思える未来を願って

私は大阪府堺市にある医療機関に勤務し在宅生活を支援するケアマネジャーとして元気に働いています。約15年前、肺がんに罹患し(検診で発覚)、未成年の子どもたちを残して死んでしまうの??と死をとても身近に感じ、漠然とした不安でいっぱいになったことがありました。

誰にでも訪れる”死”というもの

緩和ケアのご病態の方々の、人生の総仕上げの時期に、安心してその方らしく宝の時間を生き抜いて頂くための自宅療養ご支援も私の役割です。自分らしく生きる・悔いなく生き抜くとはどういうことなんだろうか?と思うことがあります。生まれ出たその瞬間から、時の流れは確実に”死”に向かって進んでいく。生と死は歴然として在り、皆に等しく訪れる”死”だからこそ、一人ももれなく、生きることを大切にできる社会になって欲しいと願います。

“死”を感じて自分らしく生きる

数年前より、「人生会議」「アドバンスケアプランニング」などの言葉が聞かれるようになりました。死生観を身近に感じていないと、死ぬことのみに焦点を向けがちですが、本来はより自分らしく生き切る為の“自分らしさ覚書”のようなものではないかと思っています。「ジブン年齢は、私が決める。」というCMのフレーズが好きで「私の総仕上げは、私が決める!」って、随分大人になった我が子たちに伝えています。

地域に格差なく「がん教育」が普及し、平時から、自分らしく生きること、そして、自分の命も相手の命も愛おしく思える未来を子どもたちに託しつつ、今在る時を懸命に生き抜く私たちの背中も、見せることができるといいな、と思っています。

2023/02/28配信

  • がん教育は生徒さんだけのため?
  • 胃がんの後遺症  私の場合

がん教育は生徒さんだけのため?

がん教育は生徒さんだけのため?

がん対策推進企業アクションでは社会人の方を対象としてがん教育を行っておりますが、最近では企業アクションと絡めたような形で、学生に対してもがん教育をするようになってまいりました。私も中学生のがん教育に携わらせていただいております。

生徒の周りの大人にも影響を与えるがん教育

お話しする対象が中学生であっても、その内容に大きな差はつけておりません。けれども、中学生の講義ならではの笑いをとれる場所があります(私が大阪出身だからと言って、笑いを取りに行っている訳ではありません)。中学生の講義は授業の一環なので、生徒さんだけではなく先生方なども聞いてくださっています。がん予防のためにタバコをやめましょうという話をするのですが、先生方の中に喫煙者のいることが多く、そこで生徒さんたちがその先生を見て笑う、というパターンです。笑われた先生は苦虫をつぶしたようになられることが多いですが、おそらく授業の後もその先生は生徒さんにいじられていることでしょう。そのように考えると、がん教育は生徒さんだけでなく、先生をはじめとする周りの方々にも、その影響を及ぼすことができる貴重な機会ではないかと感じております。

オンライン授業の話を子どもに聞かれて

現在のコロナ禍により、講演はもっぱら自宅からのオンラインです。ですので、たまに、私の子どもたちに講義を聞かれることがあります。「がん予防には適切な飲酒も大切なのでお酒もほどほどにと家族や周りの人に教えてあげてください」と講義しているのを子どもたちに聞かれてしまいました。晩酌時、酒量が少し多くなると子どもたちに、「自分でお酒はほどほどにって授業で言ってたよね」と指摘され、私も苦虫をつぶしております。がん教育は我が家にも良い影響を与えているようです。

胃がんの後遺症  私の場合

胃がんの手術を決めた時、「がんを取ってしまえば終わり」と簡単に考えていましたが全く違いました。退院する時医師から、「全く別の体になった、ということを忘れないように。残った胃は一生小さいままです。都合よく伸びたり大きくなったりしませんよ。」と言われました。手術から9年経った今でもいろいろ後遺症があります。

食事の仕方を間違えると…

胃の大きさが3分の1になった今、最大の関心事は「いつ、何を、どのくらい食べるか」ということです。胃の出口側を切除して残った胃と十二指腸を直接つないでいるので、胃の出口が閉じたり開いたりする機能がなく食べたものが胃にたまらず素通りしていきます。よく噛み時間をかけて食事をしなくてはなりません。食べ方を間違えるといつまでも満腹感が取れなかったり、激しい腹痛が何時間も続いたり、低血糖になって震えて冷や汗が出たりします。人前でも急にお腹がゴロゴロ鳴ったり、ゲップが出たり、おならが出たりもします。

食事のタイミングを時間で管理

胃の神経も一緒に切っていることと胃から出ている食欲を促すホルモンが減少することで、胃の中が空っぽになっても「お腹が空いた」という感覚がなく食欲が湧いてきません。そのまま何も食べないでいると低血糖になることがあるので、そうならないように食事のタイミングは時計を見て時間で決めています。胃を切除したことでカルシウムを吸収しにくくなり、年齢的なことも加わって3年前から骨粗鬆症の治療を始めました。

できるだけ後遺症が出ないよう日常的に注意すべきことが多くあります。でも、命を失っていたかもしれないことを思うと「やれやれ、仕方ないなぁ」と命が助かったことに感謝しています。

2023/01/31配信

  • がんの個別化治療

がんの個別化治療

「遺伝子レベルで患者さんに合わせた個別化治療を目指します」みたいな企業のテレビコマーシャルをご覧になったことがあると思います。闘病中の患者さん、あるいはご自身やご家族が「がん」という病気を経験された患者さんには、この言葉がすごく響き、とても魅力的に聞こえることでしょう。そして、「早くそうなれば良いな~」などと思われるのではないでしょうか?

臨床現場で行われているがん関連の遺伝子の検査

がんの個別化治療、特に個別化薬物治療は、すでに臨床現場で行われていることをご存じですか?白血病、肺がん、乳がん、大腸がんなどの薬物療法は、現在、がん細胞の遺伝子を調べ、その変異や異常パターン別に治療薬を選びます。つまり、がん細胞の遺伝子レベルの個性に合わせてお薬を使う個別化治療が行われているのです。
2019年6月からは、すべての固形がんを対象に、標準治療を受けているなどがんの種類ごとで一定の条件を満たせば、数百種類のがん関連遺伝子の異常を調べる検査(包括的がんゲノムプロファイリング検査)を受けることができます。この検査とエキスパートパネルとよばれる専門家会議を経て、がんの個性を決定する遺伝子異常を決定し、その個性に合致する薬剤を検索するというがんゲノム医療がすでに保険診療として行われているのです。実際にお薬に到達できる確率はまだ10人に1人程度ですが、自分のがんを遺伝子レベルで深く知ることができることはがんの個別化治療への第一歩だと思います。

ゲノム医療連携拠点病院などはオンラインで検索可能

がんゲノム医療に関する詳細は、がんゲノム医療連携病院・拠点病院・中核拠点病院のホームページで知ることができます。ぜひ、ご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/gan_byoin.html

2022/12/23配信

  • 「がん教育」と「企業出張講座」
  • がんになるのはあなた自身なんです

「がん教育」と「企業出張講座」

がん対策推進企業アクションの出張講座とともに、最近私が特に力を入れているのが、「がん教育」です。がん教育は、主に中学生や高校生向けに行われ、私のようながん専門医や、がん体験者が講師となっています。体育館などで授業を行うのですが、生徒の皆さんは、真剣な眼差しで話を聞いてくれて、授業後にはびっしりと感想を書いてくれますので、とてもやりがいがあります。

誤解を与えずに、伝えるべき大切なこと

授業では、がんにならないような生活習慣や、がん検診の重要性についてもお話ししますが、生活習慣では防げないがんや、検診で早期発見できないがんの方が多いのが現実です。「健康に気をつけていればがんを防げる」「早く見つければがんを治せる」というのを強調してしまうと、がんになった人や、治せない状態になった人は、「気をつけていなかった人」だという誤解を生み、がん患者さんを苦しめてしまうことになりますので、注意が必要です。
私が特に強調して伝えているメッセージは次のようなものです。
「がんについて、自分のこととして考え、ご家族やお友達とも話してみましょう」
「がんとともに生きている人がたくさんいることを理解し、誰もが自分らしく生きられる社会にしていきましょう」
「ご家族やお友達との時間を大切にして、日々楽しく過ごしていきましょう」

がんのことを自然に話せ、幸せに生きられる社会へ

誰もががんになる可能性があるのであって、がんは、特別な病気というよりも、老化現象に近いものです。自分も、自分の大事な家族や友達も、いつかはがんになる可能性があると想像しつつ、がんになったあとでも、誰もが自分らしく生きられるような社会になるように、みんなが、自分のこととして考えていくことが重要です。
がん患者だからと特別な目で見たり、差別したりしないこと。そして、大切な人ががんになったとしても、その人が大切な人であることに変わりはなく、今まで通り、普通に接すればいいということも伝えます。がんの持つイメージに惑わされず、見方を少し変えるだけでも、社会を変えていくことにつながるはずです。
このメッセージ、実は、企業向けの出張講座でもお話ししているものです。子どもも大人も、がんのことを自然に話せて、がん患者も普通に暮らせて、みんなが幸せに生きられるようにしていきたいですね。

がんになるのはあなた自身なんです

私自身、大学3年生で初めてのがん~精巣がん~になり、46歳で2つ目のがん~甲状腺がん~になりました。2人にひとりが生涯のうちにがんに罹患する時代。あなたが、いま、がんと宣告されるのはごく当たり前のことかもしれません。

いま宣告されたら?

病気に対する様々な思いとともに、仕事はどうする?家事はどうする?家族にどう説明する??・・・いきなり多数の未体験の課題があなたに降りかかってきます。自分が宣告されたと想像することで、あなたが、あるいはあなたの仲間がイザ!というときに、きっと役立つことでしょう。

企業で活躍する方へ患者の生の声を届ける

私は、がん体験を通して、自分の置かれた環境や気持ちを、職場の方や企業のみなさんに共有する難しさを感じました。そこで、2022年10月から毎週、くすりを必要としている方をゲストに迎えた対談を仲間とともに無料で配信し始めました。闘病経験がある方の声にご興味があったら、ぜひアクセスいただきたいです。
くすりと生活プロジェクト:https://kan-i.net/ml/

2022/11/30配信

  • がん情報シリーズ②
    がん情報サービスをご活用ください
  • 乳がん発覚から5回目の誕生日を迎えて

がん情報シリーズ②がん情報サービスをご活用ください。

アドバイザリーボードメンバーの若尾です。今回は、がん情報シリーズ②として、2022年4月の配信で、ご紹介した「がん情報サービス」について、より詳しくご紹介いたします。

スマホでも見やすい「がん情報サービス」
下フリックで常に3つのボタンが表示される

「がん情報サービス(ganjoho.jp)」は、2006年に成立した「がん対策基本法」に基づいて、国立がん研究センターが全国の専門家、患者家族などの協力のもと運営しています。
2021年7月に全面リニューアルを行い、スマホを意識して構成したこともあり、スマホの画面の説明をいたします。まず、どの画面でも下フリック(短く下に弾く動作)すると、画面下に「サイト内検索」「病名から探す」「相談先・病院を探す」のボタンが表示されます。

病名やがん診療の医療機関が簡単に検索できる

「病名から探す」は、がんの種類ごとの情報を見るもので、「テキスト検索」、「部位・臓器から探す」、「50音順から探す」、「日本に多いがん」で探すことができます。血液・リンパ、がん希少がん以外の主ながんでは、「○○がんトップ」「○○がんについて」「検査」「治療」「療養」「臨床試験」「患者数(がん統計)」「予防・検診」「関連リンク・参考資料」の9ページがあり、知りたい情報をタップすることで参照できます。以下に例として大腸がん(結腸がん・直腸がん)の画面を示します。

「相談先・病院を探す」では、全国453か所の「がん診療連携拠点病院等」の誰でも相談できる「がん相談支援センター」やその病院の体制、実績などを確認することができます。

メニューアイコンから各種の項目が展開

また、トップページ右上のメニューを開くと「病名から探す」「がんの治療と生活」「制度やサービスを知る」「ライフステージ別の情報」「がんの予防・検診」「資料室」のグローバルナビの項目が表示され、ご覧になりたい項目をタップすることで、メニューが展開し、各項目に含まれるコンテンツ名を見ることができます。
まずは、がん情報サービスにアクセスし、ご覧になってください。

乳がん発覚から5回目の誕生日を迎えて

先日、「乳がん」がわかってから5回目の誕生日を迎えました。年末に緊急手術だったので、術後からもうすぐ丸5年になります。ひとまず、少し安心です。手術した直後は、まさか5年後にこんな元気になるなんて、夢にも思っていませんでした。「がん」なんて人生終わってしまうと思っていたからです。

現役選手の闘病がもたらしたチームの原動力

結婚する前は、福岡でフリーのアナウンサーをやっていました。スポーツ担当で、主にソフトバンクホークスの選手にインタビューしていました。担当していた7年間の中で「がん」になった現役選手がいました。
藤井将雄投手。プロスポーツ選手は体力も人並み外れており、健康管理も徹底しているはずなのに病気になるのだと、まずは驚きました。肺がんで余命3か月と言われ、ご家族の意向で本人には病名と余命を告知せず、仲の良い友人と選手達、そして王監督や球団にも協力してもらい、もう1度マウンドに立たせる計画が進みました。
私達マスコミ関係者は、藤井投手にブログを書くように勧め、ファンの方と交流しながらメンタルケアのお手伝いをさせてもらいました。半年後、見事に公式戦に登板した後、残念ながら亡くなってしまいましたが、彼の功績とそれを支えたチームの力はその後の日本一を維持する原動力になりました。

術後5年が経った今だからこそ誓うこと

「がん」の怖さは知っていると思っていたのに、自分ががんの診断を受けたら、気弱な患者になっていました。抗がん剤で髪が抜け、まつ毛や鼻毛も抜けていく…。抗がん剤が点滴で体の中に入っていく、あの冷たい感覚を今でも覚えています。こんな怖い思いをしていたのか。私は何を残せるだろう。答えが出ないまま、5年が経ちました。
「がん」は十人十色で、症状も治療も人それぞれです。同じ食生活をしていても、がんにならない人もいます。逆に気を付けていても、がんはやってきます。もしも、あの時検診を受けていれば、たばこやお酒や甘いものを控えていたら…と後悔だけはして欲しくないです。そのために、ほんの小さな気づきでもお役に立てる事があるのなら、どこへでも飛んで行って私にできることを精一杯やりたい。術後5年を機に、ささやかに誓いました。

2022/10/31配信

  • 就業者の高齢化と
    がん治療成績の向上がもたらすもの
  • 再検査で実感した定期検診の大切さ

就業者の高齢化とがん治療成績の向上がもたらすもの

2022年9月19日に日経新聞で伝えられた記事によると、65歳以上の2021年における就業者数は過去最高を更新し909万人ということでした。65歳から69歳の年代における就業率は50.3%と、半数以上が働いている計算です。このように職場で高齢の就業者が増えると、当然がんを含めた様々な疾病を患う方々も増加します。

今後も増えると予見される治療と就労の両立

また、がんの治療成績が年々向上していることも重要な要素です。全国がんセンター協議会の統計によると、1997年~1998年にがんと診断された方の5年相対生存率が61.9%なのに対し、2012年~2013年には68.9%と大きく上昇しています。
このような背景から、今後もがんと向き合いながら働く人々が増えていくことが想定され、企業アクションの重要テーマである就労支援がますます大切になってきます。それと同時に早期発見に努めることで、生存率の向上はもちろんのこと、より体に負担の少ない治療方法を選択し復職をしやすくすることも重要になります。

早期発見であれば早い職場復帰も可能に

例えば胃がんであれば、内視鏡で治療が出来るか胃切除が必要になるかで、治療後の負担は大きく変わります。胃切除でも早期がんであれば十分良好な生存率を期待できるわけですが、術後しばらくは食事が思うように取れないなど、さまざまな体の不調から職場復帰が遅れたり、パフォーマンスが低下したりすることもあります。一方、より早期の発見で内視鏡治療が可能であれば退院後1~2週間での復帰も可能です。
従業員一人一人の健康と幸せだけでなく、企業における安定的な業務遂行の面からも、がんの早期発見と就労支援を推進していきましょう。

再検査で実感した定期検診の大切さ

乳がんに罹患してからおよそ4年半が経ちました。今は半年に一度、術後の定期検診を受診するのみで、罹患する前と変わらず仕事と子育てにまい進しています。私の乳がんが発覚した当時0歳だった娘も4歳となり、保育園の運動会では元気に走ったり踊ったりする姿を見ることができました。これも早期発見ができたおかげだと思っています。

不安にさいなまれた『所見あり』

実は先日も超音波、マンモグラフィー、MRIの検診を受けたところ、まさかの『所見有り』となり、再検査をすることとなりました。もしかしたら……という不安を持ちつつ、年内に会う予定の友人には「もしかしたら会う時に抗がん剤治療中で、ウィッグになっているかもしれない…」とかなり先走った報告までしていました。そのくらい不安でした。しかし再検査を受けたところ異常は見つからず、胸を撫でおろしました。

検査に行って後悔することはない

4年近く罹患前と変わらない生活を送っていると、心のどこかで『もう自分はがんにはかからないだろう』と考え始めていたのですが、今回の再検査は改めてがんの定期検診の大切さを実感する良い機会になりました。がん検診に行くことが怖い、再検査をすることが怖いという気持ちもわかります。ですが定期検診で早期発見できれば早期治療が可能となりますし、検査の結果異常がなければ『よかった!』と安心すれば良いのです。がん検診に行かなくて後悔することはあれど、行って後悔する事はないと思います。がんの定期検診について受診することを強くお勧めします。

2022/09/30配信

  • 健診・検診機関のサービスレベル向上のため受診者等も協力を
  • 質疑応答で聴講者と対話、自身のリテラシーも向上

健診・検診機関のサービスレベル向上のため受診者等も協力を

職域で実施されるがん検診は、これまでは「福利厚生」の一貫として、健保組合や会社が一部費用負担して実施してきました。目的は「がん検診を受検する機会」の提供です。そのため「受診結果後のフォローアップ」については検診機関任せになっています。現在の職域におけるがん検診において「精密検査が必要」である方が、精密検査を受診する割合である「要精検受診率」が低い場合(50%以下)も少なくなく、すなわち50%以上の方が放置されていることもあります。これでは、がん検診の意味がありません。

今後、検診機関が特に重点置くのは「検診結果の事後フォロー」

健診・検診機関については、「サービス機能評価」と言って、全衛連や人間ドック学会等の第3者の機関が、「適切な検診が実施されているか?」のチェックを行っています。これまでは、検査の精度を主に管理してきましたが、今後特に重点を置くのが、検診結果に対する事後フォローです。つまり「がん検診での『要精検』の方へ精密検査することを勧め、精検結果までフォローする」ことが検診機関の重要なサービスであることの周知徹底を図っていきたいと思います。すなわち検査だけして終わりということを防ぐことを目的としています。

検診機関を選ぶときは、「事後フォロー」が十分かを確認して

今後、委託する側が検診後フォローアップを積極的にされていると認定されている検診機関(サービス機能評価で認定された機関は、ホームページに記載されます)を積極的に選んで頂くことが、健全な検診機関の発展につながります。一方で、検診機関としてはそのフォローアップにはかなりコストがかかります。“安かろう悪かろう”が世の中の常であります。フォローアップにはコストがかかることをご承知頂き、受診者、委託する側が、検診機関を選ぶ時は、そのような検診後フォローアップがあるのかを確認の上、あるいは、それを条件に受診・委託して頂くことが検診機関サービスの発展を促すことになると思いますので、ご協力をお願いしたいと思います。

質疑応答で聴講者と対話、
自身のリテラシーも向上

コロナ禍でリモート講演が増えていますが、私は、リモート講演の質疑応答が大好きです。皆様ご存じのように、リモート講演の質疑応答は、気軽にチャットに記載できますよね。いろいろなご質問やご感想に触れ、たくさんの聴講者の皆様とのコミュニケーションをすることが、とても楽しいです。

子宮頸がん罹患経験から、保険内容について講演

私自身の子宮頸がん罹患は10年前。治療や制度も科学やIT技術の進歩で変化していることがたくさんあります。皆様からの質問に刺激されて、自分自身の健康リテラシーをアップデートしたり、次回講演のヒントにしたりしています。また、毎年続けてご指名頂く企業様もあり、今年は、自分が加入していた保険内容についてお話しいたしました。

2社のがん保険、1社は補償対象外に

当時、私は2社の保険に入っており、上皮内新生物で保険請求したところ、1社は上皮内新生物をがんとして補償してくれ、もう1社は補償対象外でした。当時の私は、がんを一括りで考え、保険補償対象について不勉強でした。がんになってからがんのことを知るのでは遅すぎます!健康な時から病気について学び、健康リテラシーをあげることが、豊かな人生を送る手助けになるはずです。

ちなみに保険も進化しており、異形成までを上皮内新生物として補償する商品もあります。10年前、異形成という言葉も知らなかった私ですが、認定講師としてお伝えしたいことがたくさんあります。また、どこかのセミナーで皆様とお会いできるのを楽しみにしています!

2022/08/31配信

  • Row, Row, Row Your Boat
  • 乳がん治療を続けて変化したこと、
    していないこと

Row, Row, Row Your Boat

「Row, Row, Row Your Boat」という英語の民謡があります。「漕ごう、漕ごう、ボートを漕ごう。下流にむかって、ゆっくりと。楽しく、愉快に、楽しく、愉快に、人生は夢に過ぎない」、というシンプルな歌詞です。中学校一年生の時、英語の授業で始めてこの曲を知った時、私にはすごく刹那的な感じがして、「なぜもっと前向きに考えないのだろう」、と思ったことを覚えています。今思えば、なんと幼稚だったのでしょう。

退屈そうな毎日は幸せな奇跡

がん専門医として、患者さんやご家族と対峙することは、自分の人生と向き合うことでもあります。これまでに数えきれない出会いと別れがありましたが、そんな経験のひとつひとつが私を成長させてくれました。親しくなった患者さんが、「青い空に浮かぶ白い雲って、ホントきれいですよね。」、「家から駅までの道に、今朝綺麗な花が咲いていたんです。」とか、時には「けなげに看病してくれるカミさんの後ろ姿が急に女神に見えました。」、なんてお話をしてくださるたびに、何気なく過ぎ去る一見退屈そうな毎日が、実は幸せな奇跡の連続である、ということを学ばせて頂いたのだと思います。

一歩を踏み出す人への応援歌

自分も還暦を過ぎて、ようやく気がつきました。あの歌は決して寂しい歌ではありません。年をとって人生が夢に過ぎないと悟った人が、人生のリアルに夢中の若者を応援したり、困難を前に一歩踏み出せない人たちを勇気づけたりしたいと思って歌っているのです。決して寂しくも悲しくも、ましていじけてもいません。すごく素直な、心からのポジティブな応援歌なのではないでしょうか。

乳がん治療を続けて変化したこと、していないこと

私は現在、乳がん治療9年目です。あと1年で10年…異常がなければ治療は終了です。最近、ふと私が乳がんに罹患した当時と今で、何が変わって何が変わっていないのかなと考えました。

想像とは違った治療経験

罹患した当時は、周りに乳がんを経験した人もいませんでしたし、がんに対する知識も全くありませんでした。告知を受けた時、私はこのまま死んでしまうのかなと思ったほど、「がん=死」という認識しかありませんでした。でも、いざ治療が始まると、想像していたものとは違い、抗がん剤の副反応で辛い期間を除けば、意外と普通に生活出来るのだと実感しました。ただ、脱毛や味覚障害、手足の痺れなど、以前とは全く違う自分と向き合い、どう過ごしていくかという「心の持ちよう」みたいな事が、とても重要になってくると思います。幸い私には、信頼できる医療スタッフと、いつも変わらず支え、接してくれる家族、親戚、友人が居てくれたおかげで、常に前向きな気持ちでいることが出来ました。

変わったことは、身近な人たちの乳がんへの認識
変わっていないことは、一般的ながんに対する認識

治療を始めた直後から、この経験を一人でも多くの方に伝え、検診の大切さを知ってもらいたいという思いが強くなり、まずは身近な友人、知人に伝えることから始め、実際検診で乳がんが見つかったこともありました。大きく変わったことは、自分を含め、身近な人達の乳がんに対する認識ではないかと思います。そして、なかなか変わっていないことは、一般的な、がんに対する認識ではないかと思います。ここ数年は、がん教育の重要性が拡がりつつありますが、私の実感としては、まだまだ認識の差を感じる場面が多いです。このことが、これからのがん教育への取り組み、がんになってもイキイキ過ごせる社会づくりのポイントになるのではと思います。

2022/07/29配信

  • 二次予防(早期発見・治療)の大切さ
  • 姉妹で同時期にり患、その後が明暗になったのは…

二次予防(早期発見・治療)の大切さ

がんは胃や肺などの内臓だけではなく、脳や骨など体の様々な部位に発生します。あまり聞きなれないかもしれませんが、口の中にもがんはできます。口の中にできるがん(口腔がん)では舌がんが最も多いです。

罹患を防ぐ「一次予防」、治療侵襲を減少、期間も短縮の「二次予防」

ところで、誰しもがんを予防したいと思っているのではないでしょうか。がん予防は、がんになりにくくする一次予防と、早期発見し早期治療を行う二次予防に分類されます。早期発見・早期治療がどうして予防なの?と思う方もいらっしゃるでしょう。早期発見・早期治療により、治療による侵襲を少なくし、治療期間を短くすることができます。また、がんは進行するにつれて、生存率も下がります。舌がんの手術を例に挙げると、早期舌がんの場合、舌の一部分を切除するのみで、多くの場合、術後にしゃべる、食べることを問題なくできます。
一方、とても進行した舌がんでは舌の大部分を切除し、体の他の部位から組織を移植する再建術が必要となります。早期舌がんと比べ、手術時間も入院期間も長くなり、また、しゃべること、食べることも術前より大変になります。ご自身の舌を下顎の歯茎に押し付けてしゃべってみて下さい。かなりしゃべりにくいと思います。このことより、二次予防の重要性がご理解いただけるのではないでしょうか。

がん検診の利益不利益を理解して受診を

二次予防のためには「がん検診」が大切です。がん検診には利益不利益が勿論ありますので、それらをきちんと理解したうえで、検診を受けるようにしましょう。ちなみに口の中はご自身で直接見ることができるので、歯磨き後にでも覗いてみてください。心配なことがあれば、歯科口腔外科や耳鼻咽喉科などで相談してください。

姉妹で同時期にり患、
その後が明暗になったのは…

私は乳がんサバイバーですが、5歳年下の妹も乳がんで2014年のほぼ同時期に二人ともり患していることがわかりました。私は幸いにも早期発見で今はこうして元気に暮らしていますが、妹は4年前に49歳で残念ながら亡くなりました。

妹の死後に見つかった要精密検査の通知

妹に乳がんが見つかった時、乳がんの定期的検診に行っていたのかと聞いたのですが、妹は「行ったことはある」・・そんな風に答えていたと思います。妹が亡くなってしばらくたった頃、母が妹の部屋の押し入れの奥からマンモグラフィーの写真と乳がん検診の結果票、そして医療機関への紹介状が入った大きな封筒を見つけました。検診結果票を見ると受信は2011年2月、結果は要精密検査となっていました。
結局妹は精密検査に行かず、その2年後の検診も受けず、2014年に自覚症状があり病院へ行った時にはリンパ節や骨に転移した状態になっていました。なぜ精密検査に行かなかったのか、なぜ2013年の検診を受けなかったのかは今となっては確かめようもありません。もしも精密検査に行っていれば妹は亡くなることはなかったのではないか、何か悔やまれる気がしています。

がんに命を奪われないために受診を!

がん検診を受けない理由にがんが見つかるのが怖いからという人の割合が結構あります。がんが見つかることは怖いです。でも、進行した状態で見つかることはもっともっと怖いです。がんに命を奪われないために、定期的に検診に行きましょう。命より大切なものはこの世にはないと私は思っています。

2022/06/30配信

  • がん経験者のその後の生き方を学び、社会全体を優しいものへ
  • がんは治る病気。重要なことはがん検診を定期的に受けること

がん経験者のその後の生き方を学び、
社会全体を優しいものへ

皆様、初めまして。北里大学の佐々木治一郎と申します。日ごろは腫瘍内科医かつ大学教員ですが、患者支援活動にも積極的に参加しています。よろしくお願いします。

がん経験者の医師が説いた「治療後の人生」

このコーナーのタイトルが「医師の診る四季」であるとお聞きし、真っ先に思い浮かんだのが“Seasons of survival; reflect of physician with cancer”という1985年のNEJM(イギリスの医学雑誌 The New England Journal of Medicine)の論文でした。著者のFitzhugh Mullan医師はがん体験者で、「積極的治療が終わった後に、がんが治癒したかどうかの結果だけにこだわるのではなく、そのあとの人生そのものを重視すべきだ」と主張しました。この論文発表を契機に、「がんサバイバー」や「がんサバイバーシップ」という概念が生まれました。
がん体験者とその体験者を支える人々を「がんサバイバー」と呼び、サバイバーの生き方を「がんサバイバーシップ」と定義して、それらを理解し、社会全体で支えていく動きが始まりました。

がんを乗り越える経験は、多くの「困難の克服」に当てはまる

がん体験者の中には、自らが「がんサバイバー」と呼ばれることに違和感や嫌悪感を抱く方もいらっしゃいます。一方で、がんを体験したことでその後の人生をどう生きていくかという「がんサバイバーシップ」の考え方は、がんに限らずすべての人がおそらく必ず経験する様々な困難を、その人がどのように乗り越えるか、乗り越える時に必要でありがたいと思う支援は何か、などを考える際に参考になります。つまり、この考え方は、人が生きていくことそのものに普遍的であると思うのです。

がん経験者の生き方を学ぶ

がんの患者さんや医療者を含め、がんに関わるすべての者が、「がんサバイバーシップ」を 理解する必要があると思います。みんなでがんサバイバー(がん体験者)の生き方を学び、時に支援し、究極的には社会全体をどのような体験をした人にも住みやすく優しいものに変えていくことが重要です。

がんは治る病気。
重要なことはがん検診を定期的に受けること

2017年9月の朝のことでした。
シャワーを浴びていたら、左胸に違和感があり、触れてみるとシコリがあり……びっくりしました。私は10年程、マンモグラフィーの検査をしてきませんでした。胸の上下左右を挟まれて痛いのと、面倒くささから、足が向かなかったのです。

「乳がん検診クーポンがなかったら」

たまたま、自宅に自治体から乳がん検診のクーポンが届いており、初診でもネットで予約できる乳腺クリニックを予約。自分の身体の現状を知るために、今までは自宅に届いても見向きもしなかったクーポンを使用してマンモグラフィーと、どうせならという気持ちでオプションのエコー検査を受けることにしたのです。
クリニックのドクターからは「怪しいので、更に検査を」と言われて、より詳細な画像検査~細胞診を受け、左胸に小さいシコリ、そしてリンパ節にも転移している事が判り、がん告知に至りました。

「自分の身体の状態を定期的にチェックする」

医療保険に加入するのも必要かもしれませんが、一番重要なのは、がん検診を定期的に受ける事です。
私の場合は10年という⾧い間、がん検診は受けてきませんでした。一昨年、昨年受けていたら、リンパに転移していなかったかもしれない。シコリももっと小さかったに違いない。そんな想いがあります。
かつての私のように、がん検診を受けていない方はまだまだ多くいると思います。がんは治る病気になってきました。定期的に検診を受け、早く発見すれば、安心して治療できるのです。がん検診がもっと受けやすくなり、1人でも多くの方に受け入れられる環境になっていくことを願ってやみません。

2022/05/31配信

がん検診の
プラスとマイナスのバランス

腫瘍内科医の高野利実と申します。

必要とされる腫瘍内科医の役割とは

腫瘍内科医とは、がんを診る内科医で、主に、抗がん剤や分子標的治療薬などの「がん薬物療法」を担当します。私が医師になった24年前にはほとんど知られておらず、私自身、腫瘍内科医を志しながら、道なき道を進んできた感じですが、今はだいぶ知名度も上がってきて、患者さんからも必要とされていることを実感しています。まだまだ専門医の数は少なく、これからもたくさん若手を育成しなければなりませんが、日本中の津々浦々に腫瘍内科医がいて、がん患者さんの道案内役としてお役に立てるようになることを、夢見ています。

治療目標を周囲と共有し、納得できる選択を

がん患者さんは、治療選択などで、いろいろな選択を迫られ、迷うこともたくさんあります。そのときに大事なのは、「何のために治療するのか」という治療目標です。治療目標を家族や医療者と共有した上で、じっくりと話し合い、効果(プラス面)と副作用(マイナス面)を天秤にかけて、治療を選択します。プラスとマイナスのバランスは微妙なこともあり、やってみないとわからないこともありますが、治療開始後も、医療者とよく話し合いながら、納得して治療を受けることが重要です。

がん検診で命が救われることもある

がん検診も同じです。「早期発見・早期治療」という標語をただ信じるのではなく、その検診を受けることで、どのような「いいこと」(プラス面)があり、どのような「よくないこと」(マイナス面)があるのかをよく理解し、納得した上で検診を受ける必要があります。

がん検診を受ける方の中には、「早期発見・早期治療」の恩恵を受けて命が救われる方がいらっしゃる一方で、がん検診を受けることによって、検査のつらさ、異常が疑われたときの不安、精密検査の負担などが生じます。見つける必要のなかった異常を見つけてしまい、不要な治療を受けることになることもあります。

そんなマイナス面があっても、プラス面(命が救われる方がいること)が上回ると考えられる場合に限って、がん検診が推奨されています。大事なのは、人類が幸せになることです。人類の幸せにつながるがん検診は何なのか、すべての人が考えて議論すべきなのだと思っています。

がん患者の多くが経験する
「失う」ということ

皆さま、こんにちは。がん対策推進企業アクションのがんサバイバー認定講師、かつ、一般社団法人がんチャレンジャーの花木裕介と申します。
4年前に中咽頭がんの治療を行い、今は経過観察をしながら、フルタイム勤務の傍ら、一般社団法人の活動をしています。罹患前は、フルタイム勤務の職場で管理職になるという目標を持っていましたが、罹患後、その目標は遠のいていきました。それならば、と一般社団法人を立ち上げて活動してはいるものの、がん罹患によって失ったもの(キャンサーロスト【弊法人の造語】)はそう簡単に割り切れるものではないということを肌で感じています。

キャンサーロスト=がんによって失わざるを得ないもの

出産、結婚、進学、就職、転職、昇進、夢、目標、今まで築き上げてきた家族との暮らし……。
弊法人では、最近、こうした「キャンサーロスト」に関するアンケートを実施したのですが、やはり多くの罹患経験者が、私と同様にキャンサーロストの経験をお持ちであり、一定数の方々が、その経験を乗り越えられていないという事実が見えてきました。実際、職場においても、思い描いていたキャリアを断念せざるを得なかったり、今の役職を降りざるを得なかったり、時には離職せざるを得なかったりする方々がいらっしゃいます。

「働き続けたい」などの本人の希望に沿った支援を

当然、ご本人の意思として、そういう状況になるという場合は致し方ないかもしれません。でも、もしご本人が今と同じように働き続けたい、目標を諦めたくないと思っているのであれば、できるだけその希望に沿って支援をしていただけたら嬉しく思います。なぜなら、私たちは確かに健康に不安を抱えてはいるものの、社会人として「会社に貢献したい」「自己実現したい」という気持ちまで失っているわけではないからです。

アンケート集計結果はこちら
https://www.gan-challenger.org/research/

【参考】「キャンサーロストとは何なのか?」(一般社団法人がんチャレンジャー制作)
https://youtu.be/mOJSSDhDUXQ

2022/04/28配信

がん情報シリーズ① 
まず、がんに関する正しい認識を

アドバイザリーボードメンバーの若尾です。 今後、当メルマガで不定期に専門であるがんの情報について寄稿させていただきます。

「がんは不治の病」という誤った認識

読者の皆様は、生涯でがんにかかる人は、何人にひとり程度かご存知ですか? また、がんと診断されてから5年後にその方がご存命である割合(5年生存率)はどのくらいと思いますか? このメルマガを受信されている方は、二人にひとり、生存率64.1%であることはご存じの方が多いと思われます。
ところが、世間一般の方には、知られていない状況です。内閣府が2016年に実施した世論調査では、2人に1人ががんにかかることについては31%、5年生存率が50%超えていることについては、29.5%の方しかそう思うと答えていないという結果でした。つまり、7割近くの方が、がんは稀で治りにくい不治の病という認識で、自分は関係ない他人事を思っているということです。

がんの正確な情報源を覚えておく

そのため、がん検診を受けない、喫煙率が下げ止まりであったり、がんと診断され(治療に専念する、会社に迷惑をかけたくないという思いで)離職したり、(戦力にならないと思われ)解雇されたりすることがあります。
これらは、まず、がんを人ごとではなく、自分事と考えることで改善させられる可能性があると考えます。がんについて確かな情報は国立がん研究センターのwebサイト「がん情報サービス(ganjoho.jp)」や、全国453か所のがん診療連携拠点病院などに設置されている、誰でも無料で相談できる「がん相談支援センター」(がん情報サービスで検索できます)で得ることができます。いざという時の備えとして、まず、この二つを覚えておいて下さい。

がんになったら
趣味のスポーツはできなくなる?

私の本業はインターネットの会社で働いていますが、がん患者・がん経験者向けのエクササイズも毎週開催しています。そこで、罹患後の運動や活動量を増やすことについてお話しする機会が多いので、その時のがん患者・がん経験者のみなさんについて書いてみます。

がん患者が運動したくない理由とは

少し前に、他の団体や企業と一緒に、がん患者が運動したくない理由を調べてみました。
運動したら術後の傷が開くのではないかと怖いとか、体力が戻ったら始めようと思うが、まだ体力が戻らないから、などほか、「走ってもいいのですか!?」という声もありました。調査の対象者には、術後7、8年もたった人もまじっています。
動かないでいると体力も筋肉もすぐに落ちていってしまうので、少しずつでも活動量を増やしていってほしいのですが、気持ちの上で、閉じこもっている人たちがいるのが気になりました。

海のスポーツが趣味の男性
がんの告知を機にやめた。もう一生できないと思っていた。まわりにも止められた。
でも、何年か後にはやめなくていいのだとわかった。海に行きたい。

アトラクションテーマパークが大好きな女性
がん患者がアトラクションテーマパークに行っていいのだろうかと迷っていた。別の治療中の人で、ステージ4の方がアトラクションテーマパークへ行ったのを知り、自分(ステージ1)も行った。少しの外出も躊躇していたのに2万歩も歩いていた。

気持ちまで抑えないで

2人は、はじめ、がんになり好きなことをあきらめていました。好きなことだけでなく、仕事を辞める、結婚をあきらめるという話も聞きます。でも、2人の例を見ておわかりになると思います。がんになったからと言って、やめたり、あきらめたりしなくていいのです。新型コロナに感染した時のように、家で過ごさなくてはならない理由もありません。

というと、「その人たちは元気だからできたのでしょう? 私は違う」とおっしゃる方もいます。できる・できないと、ああしたい・これが好きというのとは別だと思うのです。自分の気持ちまで抑えなくてもよいのです。

がんに罹患しても、いえ、罹患したら、ぜひ自分を大事に、やりたいことをしてください。
あなたのやりたいことは何ですか?

2022/03/25配信

「がん」になっても変わらない

今から4年前、がんサバイバーになりました。もちろんなりたくてなったわけでもなく、突然やってきました。2人の娘の塾や習い事が多く、送迎と仕事の毎日で、自分の体の声に全く気が付いていませんでした。

突然の宣告、自身と家族の大きなショック

「乳がんです。すぐに大きな病院へ行ってください」
近所のクリニックの先生からサラっと言われ、事の重大さに頭が真っ白。でもその時、家族もショックを受けていたようです。主人はその時に転職の話が来ていたのですが、妻ががんになったと、言えなかったようです。転職は取りやめ。
小学6年生だった長女は勉強どころではなく、学校で突然涙が止まらなくなって保健室へ行ったり、自宅でゴロゴロしていた私をみたくなかったのでしょうか、図書館や自習室へ毎日行ったりしていました。幼稚園年長の次女は「ママのおっぱい、いつ生えてくるの?」と聞くばかり。そのころは再建の希望もあったので、そんな話を聞いていたのかもしれません。

がんと診断されても退職しないで

あとから聞いたのですが、その頃、主治医からは最悪は余命半年と言われていたそうです。主人は急に料理など家事をやってくれました。知らなかった私は抗がん剤で脱毛することが怖くて、帽子ばかり買っていました。こ(夫)の心親(私)知らずですね。
でも、お陰様で生きております。それだけでもありがたいのに、こうやって体験談をお話するがんサバイバーのお役目を頂き、これからは恩返しの人生にしようと思います。
がんだと診断された時、人生が終わった…そんな気持ちになり、仕事を辞めてしまいました。やめなきゃよかったかな?と思う時もあります。もし今、がんだと診断された方にお会いしたら、全力で退職を止めます。なるべく変わらない生活をして欲しいのです。
抗がん剤で、脱毛しますが…薬が終われば生えてきます。左胸は全摘しましたのでぺったんこですが、再建はせず、時々傷を見て自分を戒めています。放射線治療も通勤中に寄り道できるくらい気軽な作業です。

通常生活に戻り、乗り越えるその先へ

「がん」のショックから、1日も早く立ち直り、通常生活に戻ること。それが何よりも早く立ち直る支えになります。
そして、「がん家族」のフォローやケアもこれからやっていきたいです。人生のアクシデント「がん」をのり超えた先には、結構楽しいこともあります。経験に無駄はないと思います。ですが、がんになってはいけません。がんサバイバーがこれ以上増えないように。微力ですが、健診の大切さや、知識を持つこと等、どんどん話していきたいと思っています。

2022/02/28配信

“前向きに悩む”ために、正しいがん知識を

がんサバイバー認定講師の川畑英美です。
現在は大阪府堺市にある医療機関に勤務し、がん末期の方や高齢によるご病気の方の在宅生活をお支えする介護支援専門員として元気に働いています。

40代で見つかった肺腺がん

私が自分の肺腺がんの発症を知ったのは、介護保険制度による通所介護事業所でリーダーとして第一線でバリバリと就業していた40代の頃。3年目の職員検診で肺に異常が見つかったことがきっかけです。喫煙もなく健康には自信があった私は信じられない気持ちとショックが大変大きかったです。幸い初期がんであった為、左肺下葉切除のみの治療で転移や再発は無くすでに13年が経過しました。

漠然とした“死”から孤独感でいっぱいに

当時の私には、がんは高齢者特有の病気であるような思い込みと、40代の若く元気な自分には関係のない出来事のようでした。がんの知識にも全く情報を持っていない無知な状況で、がんになったら死んでしまうの⁉と漠然とした”死”を一人で抱え込み、精神的に辛い立場に自らを追い込み、笑うことを忘れ、孤独感でいっぱいな状況を作り上げてしまったように思っています。

自身の経験からお伝えしたいこと

  1. 検診制度を身近なものに(日祝・夜間実施など)
    早期発見が大事。早期がんであれば最小限の治療で寛解も見込めます。
  2. 相談しやすい環境作り(個人でも企業でも)
    就労については対象となる制度の活用や治療しながらの就労継続などが可能です。(私の場合、当時は職場の体制から理解が得られず退職の打診を受け入れたため、後の再就職に大変困りました)

がんに対しての正しい知識を得て、前向きに悩む。選択肢や視野を広げ、誰もががんとの共生が可能な社会になることを望んでいます。

2022/01/28配信

不安なことがあれば、積極的に「検査」を受けてほしい!

社員が働きやすい環境づくりを常に意識し、コミュニケーションとる

家事代行サービスのパイオニアであり、リーディングカンパニーである、株式会社ベアーズの取締役副社長、髙橋ゆきです。
ベアーズは代表取締役社長であり、夫の髙橋健志とわたしの原体験をもとに、産業をつくろうと夫婦で創業しました。そして一男一女の母でもあります。

「大家族主義」

ベアーズは大家族主義です。社員が、その家族が、誕生日、出産などあれば、月に1度行われるマンスリーアワード(全社会議)にてみんなでお祝いをします。また、ベアーズは共働きも多く、ワーママで働いている社員もたくさんいます。保育園のお迎え、いきなり子どもが体調を崩し、すぐ帰らなくては行けなくなった場合でも、柔軟に部内で対応できる環境づくりをしています。仕事、プライベート、どちらかが傾くとどちらにも影響してきます。社員が働きやすい環境づくりを常に意識し、コミュニケーションをとっています。

「働いて、幸せに生きる」

わたしは‟幸動”して社会をつくることが大事だと思っています。
幸せを願う気持ちで自分の幸せな心を持って行動する、その行動が幸せな社会をつくっていくから‟幸動”です。
わたし自身、子育てに仕事に(勝手に)完璧主義だったので、身体を壊し、 パニック障害を発症し入院したことがあります。それ以来、愛する‟家族”と‟ベアーズびと”(社員)たちのために『愛』と『感謝の心』で毎年人間ドッグを受けています。
ベアーズびとには不安なことがあれば積極的に「検査」を受けてほしいと思います。何もなければそれで安心、不安なことは誰かに相談、どんなことでも‟幸動”することで変わります。社員が安心して休みを取れる、一歩踏み出せる環境をつくっていきましょう!

亡き夫の最期にみた医師の不見識と看護師の寄り添い

私の夫は17年前にすい臓がんで亡くなりました。47歳でした。診断から2年4ヶ月の闘病生活でしたが、忘れられないエピソードが2つあります。

検査結果をゴミ箱の中にポンと捨てた担当医

それまで使っていた抗がん剤が効かなくなり、担当医から「この病院でできる治療はもうありません。」と言われ、最後の抗がん剤治療の後に受診した時のことです。いつも血液検査の結果が2通プリントアウトされ、1通は夫が受け取り、もう1通は担当医がカルテに貼り付けていました。その日、夫に1通を渡した後、担当医はもう1通を夫の目の前でゴミ箱の中にポンと捨てました。無意識だったのかもしれませんが、その時の夫の気持ちを思うと17年経った今でも涙が出てきます。

薬の名前・効能を大きな文字と図に書き続けた看護師

夫はホスピスで最期を迎えました。当初から夫は延命治療を拒否し、「自分が処方されている薬の名前や効能などをちゃんと知っておきたい。」という希望を口にしていました。看護師さんはすぐに薬の説明を大きな文字と図で分かりやすいパネルにし、見やすいように枕元にセットしてくださいました。起き上がって話をすることがだんだん難しくなり、意識も朦朧としていく中でもそれをずっと続けてくださいました。心細く過ごす日々に寄り添ってくださったこと、夫の希望を最期まで尊重してくださったことが嬉しかったです。

患者とその家族は、いろいろな場面で落ち込んだり励まされたりを繰り返しています。

2021/12/24配信

罹患・治療体験を活かして伝えてゆく人に

私は大学3年だった20歳で「精巣腫瘍」に罹患し、抗がん剤などの薬に興味を持ち、製薬企業へ就職しました。入社した年に再発、治療を経て46歳で「甲状腺がん」を発症し、治療を受けました。現在は、がん治療の体験を活かし、医療職や企業のみなさんへの講演を本職にしています。

産業保健スタッフは社内でもっとアピールを

私が企業に在籍していた時を思い起こせば、産業保健スタッフの皆さんの役割や活動に関して無知でした。
逆を言えば、皆さんには社内の情報ツールを活用して、ご活躍の様子や取り組み事例をアピールしてほしいと考えています。それは、社員の方がいざという時に、相談してよい相手として思い浮かぶことにつながると考えています。

「辛いのでは」には「偏見」と「思い込み」が

がん患者は大変だろう、辛いだろうと、私の上司や同僚は気遣ってくれました。でも、私の場合は、もっと以前のように働きたく、また働くことで、その時は「がん患者」から「社会で活躍する人」になれました。
がんは病態差、個人差が大きい病気。良かれと思っていることが必ずしも当人には良いとは限りません。病状や考えを率直に聞き、その上で、対応策を一緒に考えられる風土がほしいです。

2021/11/30配信

「優しさ」と「理解」が、がん患者の心を救う

私は都内で働くワーキングマザーです。2018年春、当時0歳の娘を保育園に預け職場復帰をする直前に乳がんが見つかりました。当時は仕事と育児の両立に加え、治療も両立する事を考え、頭が真っ白になりました。
しかし現在、自分ががんサバイバーだという事を時には忘れるくらい、日常生活に戻っています。治療中はこんな日常に戻れるとは考えられないくらい、精一杯な日々を送っていましたが、家族、会社の方々に支えられ、抗がん剤治療を乗り越える事が出来ました。

普段通りに接してくれた周囲の優しさ

治療は2種類の抗がん剤治療を半年間と、手術でした。1種類目の抗がん剤治療の際は休職せず、2種類目の抗がん剤治療の際には数か月休職しました。現在は半年に一度の定期健診に通っています。
私が治療中に会社の方々との関わり合いで一番うれしかった事は、普段通りに接して頂けた事です。途中から副作用で髪も抜けてウィッグになったのですが、「似合っているね」と言われてとても安心しました。

職場の理解で治療・仕事・育児の両立が可能に

一方で大変だった事は、抗がん剤治療、仕事、育児のスケジュール調整です。幸い、リモートで仕事をする環境が整っていたため勤務時間、勤務場所を柔軟に変える事で対応する、副作用で辛い時期に被りそうな場合は事前に引継ぎができる状況にしておく等で対応しましたが、常に周囲とコミュニケーションを取り、自分の状況をフラットに話せる環境が功を奏したと考えております。話を親身に聞いてくださった上司や、同僚には感謝してもしきれません。

2021/10/29配信

誰もが気兼ねなく休める働き方への変革めざす

当社は、2006年に創業、働き方改革一筋で15年になる会社です。創業のきっかけは、日本の人口構造に着目したことでした。当時は、女性が出産・育児を経て、継続就業できるかどうかが多くの企業にとっての課題。ですが日本の人口構造を見ると、労働人口は減ってゆき、育児や介護などの家族のケアをしながら、自分の治療もしながら働く人が今後増えてゆくのは明らかでした。

がん治療など言い出しにくい時が人生にはある

働き方改革の専門家として1000社以上のサポートをしてきた経験からわかったのは、育児や介護、治療等、「何か事情がある人」だけに配慮をした「ワーク・ファミリーバランス」では、それ以外の人との対立構造を生み出してしまい、本質的に一枚岩になれない組織になってしまうということです。
真の「ワーク・ライフバランス」は全員のライフを大切に、全員に時間を返してこそ組織にとって価値を生み出してくれるのです。私たち自身も「ワーク・ライフバランス」を実践し、残業ゼロ・有給取得100%で増収増益を続けてきていますが、休みが必要でありながらも言い出しにくい時が人生にはあることに気づきました。がんの治療、不妊治療、子どもの不登校の対応など、プライベートなことでもあり、先の予定を見通しにくいような状況は特にそうではないでしょうか。

15分単位で取得できる「新しい休み」の導入

そこで、通常の有給休暇とは別に、「理由を問わずに」休める「新しい休み」を年間34日分全員に付与することにしました。
治療との両立の他、サバティカル休暇のように一か月休むこともできます。15分単位で取得することが出来るので、専業主婦から当社に加わった社員は、子どもたちがいきなり母の生活の劇的変化に驚かないように「新しい休み」を使って当初は短い勤務時間からスタートしてくれました。
チームで日頃から情報を共有しあい、いつ誰が急に休んでも仕事が回る仕組み作りがどんどん進んでいます。当社の社員は、8割が育児中、2割は介護経験有り、治療と仕事の両立経験者も2割います。これは言い出せているか、いないかの違いだけで、実はどの会社でも同じ状況かもしれません。

育児や介護、治療に届く”価値“を生み出す組織に

大切なのは、マーケットも今や育児をしている人、介護をしている人、治療をしている人が増えており、その人たちのかゆいところに届くサービスや商品に価値があるということ。その価値を生み出せる組織になるためには、事情がある人にも、無い人にも働く場として自社を選んでもらい、多様な価値観を内包した組織になってゆくことが重要なのではないでしょうか。
来春からは、男性の育児休業について、個別周知の義務化の法律も施行されます。誰もが気兼ねなく休める職場作りの第一歩、あなたの職場では何から始めますか?

2021/09/30配信

講演では、自身含む3人の家族の体験を皆さまに

認定講師として、がん対策推進企業アクションの全国大会やブロックセミナー、パートナー推進企業様への出張講座で、がん体験をお話しています。講演では、自分自身のがん体験だけでなく、夫と長女のがん体験も聞いて頂いています。自分ががんになった体験と家族ががんになった体験は、どちらも辛いものですが、両方の経験から皆さんにお伝えしたいことがたくさんあります。

要精検と言われながら受診せず進行

夫は、毎年、がん検診を受けていたのですが、精密検査が必要との結果が出ていてもすぐに受診せず、病院で診て頂いた時には、がんはかなり進行していました。すぐに病院に行かなかったことが、今でも大変悔やまれます。長女の時は、1年半看病のために病院で付き添い、看病と他の兄弟の子育ての両立について考えさせられました。そして、私自身は子宮頸がん検診で異形成という結果が出た時から、がんになる可能性があるという意識で、毎年、子宮頚がん検診に臨み、3年後に上皮内がんという初期で早期発見・早期治療ができました。

検診の後、結果を家族で話す機会を

がん検診を毎年受けることは早期発見に必要なことですが、「検診を受けたから安心」ではなく、検診を受けた後、その結果を家族で話す機会が大事だと思います。異常がなかった場合は、来年もみんなで受けようね、という話しをしたり、要精密検査であれば、一刻も早く病院に行けるように会社や家族がサポートしてあげる、そんなことが当たり前の社会になるといいな、と感じています。

2021/09/15配信

「がん」への先入観を持たず、話し合うことこそ肝要

2012年 9月末、何となく受けたマンモグラフィー検査で異常が見つかり、10月 3日、乳がんの告知を受けました。
当時私は保育園に勤務していました。異常が見つかったその頃は運動会前で、年長組を担任していたこともあり、すぐに精密検査が必要と告げられた時とっさに「今、仕事を休むわけにはいかないので無理です」と答えていました。今思えば、一番大切なものは何か…を完全に見失っていたのかもしれません。

「精検急いで」の医師の一言が転機に

そんな私に対して医師は、「急いでください」と真っ直ぐ目を見て諭すように言いました。その一言で、私の中で何かが動き出し、今に繋がっていると思うと感謝しかありません。
精密検査の結果、手術よりも先に微少転移を食い止める必要があるとのことで、すぐに半年間の抗がん剤治療に入りました。主治医からは、「治療しながらお仕事されてる方もいるよ」と言われましたが、保育という仕事柄、どんどん変化していく外見と、思うように動けなくなることに自分自身がうまく対処できないだろうと想像し、半年間休職しました。

終わりではなく新たな人生のスタート

職種や個人の考え方によって様々だと思いますが、もし職場で、がんに罹患した人が居たならば、可哀想に…お気の毒…仕事は無理だろうね…といった先入観は持たず、まず罹患(りかん)した本人と十分話し合って、どんな事が出来るか、どうしていきたいかなどを確認することが、罹患者が前向きに進んで行くための一歩だと思います。
がんになったら人生が終わりではなく、そこからまた新たな人生がスタートしたという気持ちで日々過ごしています。そして、自分の経験を語ることが私に出来るスペシャルなことだと思っています。

2021/08/30配信

がんと仕事の両立は「傾聴と理解」から

打ち明ける、打ち明けられる苦悩

 私はがんが見つかった時から職場でその事をオープンにしています。そのためかがんに罹患した同僚から相談を受けることがあります。内容は病気や治療に関する事よりも上司にどう打ち明けたらよいかや打ち明けた際の上司の反応に関する悩みが多いです。また、打ち明けられた上司からも相談を受けることもあります。部下から「がんになった」と打ち明けられたら、そりゃ驚いて反応に戸惑うでしょう。戸惑ったあまりに打ち明けたほうが傷つくような言動をとってしまう事もあるようです。今回は私が受けた相談や私自身の経験から、がんを打ち明けられた職場の上司に気をつけて欲しいことについてお話します。

10人10がん、傾聴と寄り添いを

 まず、憐れんだりしないでください。その人はがんが見つかってから職場で相談するまでの間沢山悩んで勇気をもって決意して打ち明けているのですから。次に、「知り合いに同じがんで手術して治った人がいる」とか、「いとこは 手遅れで見つかってほどなく死んだ」とか、ご自分が持っているがん患者情報を引きあいに出さないでください。
 10 人 10 がん。同じがん種でも全く同じ状況の人はいません。更には、がんに効くよと健康食品や民間療法などを勧めるのはやめましょう。親切心からいろいろ探してきてすすめる方は本当にいます。悪気がないだけに困るのです。最後に多くのサバイバーが言われて嫌だった言葉は「治療に専念してください」です。配慮のある優しい言葉のように聞こえますが、治療と仕事を両立しようと思っていたのに仕事をするなってこと?この言葉を言われてお先真っ暗になったってサバイバーが多いのです。専念するかどうかを決めるのは本人です。
まずは傾聴。そして一緒に両立できる方法を考えて欲しいです。

2021/07/30配信

患者への“寄り添い方”でアンケート。意外な結果に注目を!

 皆様、こんにちは。昨年も本メルマガでご挨拶させていただいた認定講師の花木裕介と申します。昨年ご案内させていただいた「がん罹患者にかかわる方必携『寄り添い方』ハンドブック」におきましては、100に迫る企業様にお申し込みをいただきました。新型コロナウィルスの影響等により、どうしてもがん対策の優先順位は低くなりがちですが、その中でも多くの企業様に、関心を寄せていただいたと感じています。

118人のがん経験者の回答は?

 さてこの度、「『寄り添い方』に関するアンケート」と称して、がん罹患経験者118名にアンケートを実施しました。家族、知人、友人、職場の同僚、上司、医療従事者といった周囲の方々が、回答者にどのようなかかわりを行い、彼ら彼女らが実際にどのように感じたのかを詳細に回答いただきました。以下、私が代表を務める法人のHPより、結果報告書を無料でダウンロードいただけますので、よろしければご覧くださいませ。

https://www.gan-challenger.org/research/

また、並行して制作を続けているYou Tube番組「寄り添い方体験談」も20回を超えています。かかわり方に関する罹患経験者のリアルな声を、毎回ゲストの方よりいただいており、本アクションの認定講師も多数登場しています。

https://youtube.com/channel/UCL_t5Zx5JO8apy9EzR2zJEw

 ぜひこれらを、皆様のがん対策、両立支援施策実行および検討にお役立てくださいませ。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

2021/07/15配信

企業が「女性のがん」に本格的に取り組む時代へ

「なんでこんな大切なこと、いままで教えてもらえなかったの?」
医療の一歩手前をつなぐことをミッションに、女性の健康教育と予防医療の推進を12年間行うなかで、ずっと聞こえてくる反響です。私は経営者として2009年に初期の子宮頸がんを罹患(りかん)しました。病気になってはじめて知った女性のがんの現状に衝撃を受けたことをきっかけに現在の事業を立ち上げましたが、12年経っても未だ職域における女性のがん対策は十分ではありません。

50歳代前半までは、男性より女性のがんが多い!

社会情勢の変化もあり、現在再び「女性のがん対策」がフィーチャーされています。企業におけるダイバーシティ推進、健康経営、女性活躍施策、さらにはCSR、ESG投資と、企業の皆様からご相談を頂戴する場面が急増しています。働き手の半数を占めるのが女性であることは言わずもがなですが、就労世代の50歳代前半までは男性より女性のがんが多く、20〜30歳代のがんの80%は女性で、その多くは子宮頸がんです。乳がんは40歳代をピークに増加の傾向にあり、生涯で9人に1人が罹患するというデータもあります。

ワーキングリボン(W RIBBON)が、職域の推進力に

つまり、働き盛りの男性社員のご家族にとって身近なのが、子宮頸がんや乳がんであるということでもあります。この課題に取り組むことが、企業にとっても社会的な責任なのではないか?という多くの声から、がん対策推進企業アクション「Working RIBBON(W RIBBON)」が始動。今年から11月を推進月間とすることを決定しました。まずは自社のがん検診受診率の状況を把握すること、対策の意義を共有し目的を設定することが重要です。ぜひ参加企業として、一緒に推進いただければ幸いです。

◉厚生労働省委託事業「がん対策推進企業アクション・女性会議」
Working RIBBON(W RIBBON)
https://www.gankenshin50.mhlw.go.jp/workingribbon

2021/06/30配信

患者・ご家族に寄り添い、「がんと仕事の両立」を支援

東京都社会保険労務士会では、委員会を設置し、下記のようながん患者の方の治療と仕事の両立支援事業を行っています。
• 医療機関等へ社労士を派遣し、患者さんやその家族の両立支援相談の実施
• 顧問先企業等を通じて、働く従業員の両立支援アドバイスの実施
• 相談支援者の育成・支援
治療と仕事の両立という時に、患者さんの立場から問題となるのは、大きくは2つ上げられます。
1つ目は、仕事を続けることができるのかという問題、もう1つは、治療あるいは、生活を維持していく費用負担への不安です。
私たち社労士は、労働・社会保険の専門家として、こうした問題を抱える患者さんやその家族に寄り添い、より良い解決策を見出すことを目指し相談を行っています。

事業主からの質問等にも対応

一方、事業主から、社員ががんに罹患したがどうしたらよいだろうか、という質問が寄せられることも多く、会社と労働者の間に立って、活用できる公的制度の提案や、会社として対応可能な配慮のアドバイスなどを行い、会社にとっても貴重な戦力を失うことなく、企業経営が継続できるようなアドバイスを心がけています。
 また、相談者の育成・支援という観点から、昨年末には、当委員会が、医療機関や企業での労務相談の現場で、実際に受けた相談を元に相談のポイントとその進め方をまとめた「がんの治療と就労の両立支援相談対応ハンドブック」を発刊いたしました。ご興味がおありの方は、是非お手に取ってみてください。
*ハンドブックは「メールマガジン本文」にて紹介しております

2021/06/15配信

がん検診もワクチン接種も“命を守る医療”と心得て
職場での接種を展開

昨年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、全国でがん検診受診が停滞したことが問題となりました。今年度は4月に入ってから緊急事態宣言が発出されるなどコロナ禍は依然続いていますが、健診機関では感染防止対策を行ったうえで通常通り運営をしています。
昨年の4~5月には首都圏においてほとんど健診が止まっていたという状況に比べれば、現在は、新型コロナウイルス感染リスクだけにとらわれずに、東大病院特任教授の中川恵一先生がおっしゃっていた「全体としての健康」を大切にすることの重要性が理解されてきたのではないかと思います。
一方で、健診は年に一回というのが身についている受診者の方々が多く、昨年ずれてしまった受診日から一年後の受診で計画を立てるために、今年度の4~5月の受診者数は例年に比べると少ない状況が続いていました。
このため、私どものところも4月から、空いているフロアや人員を活用し、コロナワクチン接種を積極的に推進できるような体制を検討していたのですが、ワクチンそのものが日本に入ってこなかったため、大型連休明けからワクチン接種を開始し、7月までは土日も利用して実施していく予定です。
予防という観点では、がん検診も予防接種も同じ“命を守る医療”の一つですので、一人でも、一日でも早くワクチン接種が進むように頑張りたいと考えています。

2021/05/28配信

職場におけるがん対策の重要性

がんは、今まで健康診断で一度も異常を指摘されたことのない「健康」な人が、ある日突然、「がん」と診断されることが少なくない。
企業におけるがん対策が重要になってきた理由は4点挙げられる。
1点目はシニアの就労人口の増加である。定年退職年齢の引き上げに伴い、特に60代の男性労働者が、定年退職後に非正規労働者になってから、がんに罹患することが少なくない。
2点目は女性の就労割合の増加である。専業主婦ではなく、職域でがんと診断される女性が増えている。
3点目は、女性のがん、特に、乳がんの罹患率の増加、子宮頸がんの発症年齢の若年化である。現在、9人の女性のうち1人が、生涯に乳がんにかかる時代であり、乳がんのリスクファクターとして、高脂肪食、多量のアルコール摂取(アルコールを飲めば飲むほど、乳がんになりやすい)、運動不足、経口避妊薬(ピル)等の長期投与などが知られている。女性労働者が多い医療・福祉業、小売業で、特に「乳がん治療と就労の両立支援」は極めて重要な課題である。
4点目は、がん医療の進歩である。(がん腫で大きく異なるが)抗がん剤や分子標的薬などの分野で新薬が次々と開発され、がん分野の診療ガイドラインの中には年に3~4回改訂されるなど、がん医療の進歩はすさまじい。内視鏡治療や腹腔鏡治療など身体により負荷がかからない治療などにより入院期間が短縮され、徐々にがんになっても復職できることが可能になり、がんになっても働ける人が増えている。

2021/04/30配信

私はインターネットの会社で働く乳がんサバイバーです。現在も治療中です。
2016年春に乳がんが見つかり、最初にしたことは大胸筋と腕の筋トレでした。術後はできなくなると思ったからです(今は筋トレしてます)。
告知後、予想と違っていたことがありました。まずは抗がん剤。
休職と思っていたところ主治医から「今は働きながら治療する」と抗がん剤の様子を説明され、それが一番のびっくり。
そして運動(リハビリ体操ではない)。
罹患後も運動できる、というより世界的には罹患後も運動すべしとなっていて、全がんで運動により罹患後の死亡リスクが減ると知りました。
今は、聖路加国際病院でがんと運動の研究をされていた先生と海外の専門家の教授にご協力いただき、
「まめっつ」という団体を立ち上げ、がん罹患者のみなさんと筋トレを続けています。
運動は、がんの予防としても最適です。ところが1人ではなかなか続きません。
何よりも仲間がいて心強いと参加者の声があり、続けるうちに体力が回復していく人たちがいるのは嬉しい限りです。
がん罹患者の筋トレと有酸素運動があたりまえになる気運が高まることを願っています。

第1回の花木裕介さんのように冊子を作成中です。
■お知らせとお申し込み
https://mamets.jimdofree.com/

2021/03/29配信

がん対策は、感染症チェックから。。

がん対策と言えば、がん検診が重要ですが、、その前に「リスク(危険)」という概念が大事です。リスクというのは、それが起こる確率のことを言います。例えば、一般道路を時速30kmで走行している場合と、時速100kmで走っている場合では交通事故にあう「リスク」は、100kmの方が高いと言えます。一時停止で確実に止まるのと、止まらないでは交通事故にあうリスクは違うでしょう。がんに罹るのもリスクが分かってきています。特に、明確にリスクが高く、それを治療すればリスクが下がるものが「ピロリ菌による胃がん」と「肝炎ウイルスによる肝がん」です。これらの感染症が原因となるがんについては、若い時に治療すればするほど、リスクは小さくなります。また、職域では結構、ピロリ菌や肝炎ウイルスの検査はされているにも関わらず、その検査結果を放置されている方が多いことがわかってきました。がんに罹ることは、ある意味「運」的なこともありますが、下げられるリスクは下げておいた方がよいと思います。少なくとも、ご自身に、ピロリ菌がいるのか?肝炎ウイルスがいるのか?については調べ、もし陽性であれば医師に相談することをお勧めします。

第8回『がんサバイバーによる体験談コラム』

私は公認会計士として監査法人で働く乳がんサバイバーです。
ちょうど3年前の今頃、0歳の娘とお風呂に入っているときに自分の胸にしこりを見つけた時の事は今でも覚えています。変だなと感じ、すぐに近所の乳腺クリニックで検査を行った結果、ステージ2の乳がんが発見されました。

それは、娘を保育園に預け職場復帰を控える中の宣告でした。仕事と育児の両立に加え、治療も両立することを考えると頭の中が真っ白になりました。

会社に事情を説明し、手助けしていただいたことで、仕事と手術、半年間の抗がん剤治療を両立する事ができました。途中から抗がん剤の副作用で髪も抜けてウィッグになったのですが、「似合ってるね」と言われてとても安心したことを覚えています。
現在も定期健診のために通院しておりますが、治療は行っておりません。
おかげさまで、今も同じ仕事を続けています。
0才だった娘も3才になり、日々の成長をとてもうれしく感じます。
これも早期発見のおかげで治療期間が短くすんだおかげです。

がんは早期発見ならば十分に治療と仕事の両立が可能だと思います。
自分の身体は自分でしか守れません。ぜひとも、定期健診はもちろん、女性であれば乳房のセルフチェックとしてお風呂での触診もお勧めします。

2021/03/15配信

ネットのフェイクがん情報に要注意!

わが国のインターネット上の健康情報には、科学的に確立されていないサプリ、検査、治療に誘導する商用目的ものなどが多く存在しています。がんの情報も例外ではなく、遺伝子治療、免疫療法など最新医療を謳って、医師や医療機関が発信しているフェイク情報も多く、真偽の判断は、たとえ医療者であっても容易ではありません。すべてのがんに効く、がんが消える、体に優しいなどの魅力的なキーワードが使われ、自由診療である場合は、まず、疑うべきだと考えます。わが国では、有効性、安全性が科学的に確認されたものが保険適応となり、最も効果が期待できるものが標準治療として診療ガイドラインで推奨されています。標準治療は、並の医療ではなく、最善・最良の利用であることを心に留めておいてください。

国立がん研究センターが運営するウエブサイト「がん情報サービス」(https://ganjoho.jp)は、科学的根拠に基づいた確かな、わかりやすい、役に立つがん情報の提供を、がんセンター内外の専門家の協力の下、中立性、公正性を確保して発信しています。各種のがんの解説をはじめ、誰でも相談できる全国のがん診療連携拠点病院等に設置された「がん相談支援センター」の情報【病院を探す】(https://hospdb.ganjoho.jp/kyotendb.nsf/xpTopPage.xsp)やがんの治療と仕事の両立を支援する【がんと共に働く】(https://ganjoho.jp/pub/support/work/index.html)なども掲載していますので、是非、ご利用ください。

2021/02/26配信

第7回『がんサバイバーによる体験談コラム』

[私のがんは痛かった]

認定講師 河野 美和

私は福岡出身で現在神奈川県に住む、乳がんサバイバーです。
「家族や親戚にがんで亡くなった人はいない。うちはがん家系じゃないけんね」というのが母の口癖でした。
私も無意識に、私はがんにならない。大丈夫だ。と何の根拠もなく、そう思っていました。これが間違いの始まりでした。

福岡から、神奈川へやってきて20年。二人の子供も中学受験と幼稚園の卒園を控えた秋、ふと気が付くと、胸が痛みます。走ると痛い程度でした。
「がんは痛くない」と何かで読んだのか、そんな大変な病気ではないと思っていました。でも、クリニックを受診したら…「乳がんです。すぐ大きな病院へ」。頭が真っ白になりました。人間ドック受けていたんです。でもそういえばその年は、長女のお受験でそれどころではなく、落ち着いたら受けに行こうと思っていました。
既に3センチを超えていたわたしのがんは「トリプルネガティブ」というタイプでした。すごい名前ですよね。
すぐに抗がん剤治療が始まり、あっという間に髪が抜けました。そして、眉毛や鼻毛まで。私の人生は終わった。と思いました。そして抗がん剤も効かず、1か月で5センチになったところで、緊急手術。左胸全摘出でした。抗がん剤の副作用で、つわりのような吐き気に襲われながら、ぼんやりしていました。とりあえず今は死ねない。卒業式まで、入学式まで。と毎日過ごすのがやっとでした。「ママ、このおっぱいはいつ生えてくるの?」5歳の娘に聞かれて、何も言えませんでした。もう元の生活には戻れない。仕事なんてとんでもない。誰にも会いたくない。そう思っていました。

それから3年、抗がん剤が終わると髪が生えてきました。もう一度生まれたような気分でした。お陰様でなんとか元気になりました。あの時、仕事を辞めなくてもよかったかもしれない…。と思うことがあります。
でも、私には正確な知識と判断力がありませんでした。
今なら、あの時の自分に言えます。
「きちんと治療を受けたら、元気になるから。頑張れ!」
そして、もう少し早く気が付いていれば、こんなことになりませんでした。がん検診をちゃんと受けること。受けたことに満足しないで、結果を大事にして、変化に注意すること。
これができていれば、もっと明るい人生だったはず。
私のような人が一人でも減りますように…と願うばかりです。

健康といのちの大切さを伝える「がん教育」

ご存じのように、わが国では死因の第一位はがんです。その累積罹患リスクは男性65.5%、女性50.2%にも達していますが(国立がん研究センター2017年データ)、残念なことに、いまだ多くの国民にとって、がんは罹患するまで他人事です。

がんは怖い病気だと知りつつも、なぜか自分はまだ大丈夫だと思っているような人に限って、医師にがんと診断されると「まさか自分ががんになるなんて」とパニックに陥ります。がんに対する知識も心構えも不足しているので、慌てて仕事を辞めてしまったり、一人で思い悩んで家庭や職場から孤立してしまったりします。

そんな国民へのがん啓発の切り札として、今、大いに期待されているのが、学校で正規の授業として行われる「がん教育」です。教員だけでなく、がん医療者やがん経験者たちも外部講師として参加して、子どもたちに正しいがんの知識を伝え、健康やいのちの大切さについても考えさせます。私もこれまで全国300校以上に伺いましたが、わずか45分の授業でも、子供たちは素晴らしい反応を示し、大人顔負けの意見を持つようになります。自分のいのちを大切にすることを学んだ子供たちが、いずれは他人のいのちを思いやり、わが国の将来をも考えられる大人になってくれると信じ、時間を見つけては喜々として学校に出かけています。

2021/01/29配信

第6回『がんサバイバーによる体験談コラム』

認定講師 松本 眞由美

私は札幌在住で、すい臓がんステージ4aで手術を受けて7年経ちました。

夫の職場のがん検診を含む家族検診を毎年受けていました。55歳の時、血糖値が高く要精密検査の通知がきて、すぐ糖尿病の専門医を受診しました。この病院は糖尿病の治療前の事前検査で腫瘍マーカーも項目に入れており、このマーカーに反応したことが私のすい臓がんの発見に繋がりました。

友人をすい臓がんであっという間に亡くしている夫は、私がすい臓がんかもしれないと伝えた時の第一声が「俺を一人にしないでくれよ」、この言葉は今でも忘れることができません。自覚症状もなく検診で見かっても初期ではないという事実が、すい臓がんの手強さを物語っているのかもしれません。 「まさか自分ががんになるなんて」私もそう思っていた一人でした。
当時ではめずらしかった術前化学療法の後、手術という幸運もあり再発せずに7年が経ちました。がんは悲しい出来事でしたが、がんになって経験できたことは、かけがえのない財産となり生かされてる命に感謝しています。

がんは2人に1人罹患する時代となり、私は検診で命を救われました。ご自身や大切な人の命を守る検診を多くの方が受けられることを心から願っています。

中小企業従業員の、がん検診等の実態を大規模調査へ

がん対策推進企業アクションと大同生命が共同でアンケート

▼1万人の経営者に直接質問。チラシ使い、がんの啓発も

がん対策推進企業アクション(厚生労働省委託事業)では、大同生命さんと共同で中小企業経営者へのがん対策アンケートを2月に実施します(WEBも活用)。大同生命さんの関係する全国の中小企業経営者に直接、聞く予定です。

この調査が画期的なのは、アンケートに答えてくれる経営者が1万人ほどに達するとみられること。また、従業員数が20人以下の企業を主なターゲットにするので、最前線の実態が把握できることです。さらには、企業アクションを紹介するチラシを経営者に見せるのですが、がんに関する基礎的な数値や、がんを正しく知るための「7か条」などを明示しており、「オトナのがん教育」も展開されます。

質問項目は13問。①従業員のがん対策(検診)に関心があるか②会社が従業員に対して直近2年間に実施したがん検診②検診受診率向上に取り組んでいること③がんになった従業員はいるか④がんになった従業員への支援制度―など。答えやすいように例示を示し〇をつけるようにしています。かなり詳細な例示のため、具体的な対応がアンケートで浮かび上がるようになっています。

2020/12/25配信

第5回『がんサバイバーによる体験談コラム』

認定講師 池田 久美

私は京都市で公立中学校の教員をしています。

48歳の時、47歳の夫をすい臓がんで亡くしました。自覚症状が出て受診した時にはすでにステージⅣで、発見が難しいがんとはいえ、「早く気づいていたら結果は変わっていたかもしれない。」という思いが今でもあります。

57歳の時、今度は自分自身が人間ドックで胃がんと診断されました。公立学校共済組合では満40歳、50歳での人間ドック受診に対し全額助成制度があります。それを利用して40歳で初めて人間ドッグを受けた際、「胃炎があります。将来胃がんになる可能性もあるので毎年胃カメラを受けた方がいいですよ。」と言われました。自覚症状も全くなく、多忙を理由に受けない年もありましたが、40歳の時の医師の言葉を忘れずにほぼ毎年検診を受け続けました。そして17年後に胃がんに罹患したのですが、早期発見、早期治療ができました。胃の3分の2を切除したことで食事の量が激減し体力がなかなか戻らず、術後8ヶ月休職した後復職しました。6年経った現在もこうして元気に仕事を続けることができるのは、自覚症状がなくても毎年検診を受け続けたからだと思っています。

復職後、職場の方々の理解と協力も仕事を続ける上で大きな支えとなりました。

生稲晃子さん(女優・がん経験者)が中川医師に聞く!

▼来年2月、「オトナのがん教育(YouTube)」新シリーズ

好評の「がんって何? がんになっても働けますか?」は、東大病院の中川恵一准教授の分かりやすい解説で、視聴者が増えています。1回3~4分と仕事の合間でも見られることも拡大の要因と言われています。

来年2月下旬からは、女優で、乳がん経験者でもある生稲晃子さんが、中川医師に「がんのひみつ(疑問)」を聞くシリーズになります。収録は年内に行われますが、生稲さんが、どんなところに疑問をもち、中川医師にどのような質問をぶつけてくるか、大いに注目されるところです。

*生稲さんは2011年に乳がんが発見され5回も手術。現在もホルモン治療中ですが、女優・リポーター・講演活動等で幅広く活躍中。「スイッチ!」(東海テレビ)火曜レギュラーを務めるほか、心理カウンセラーとしても活動されています。2016年には政府の「働きき方改革実現会議」の有識者委員に選出され、5年間闘病しながら働いてきた自身の経験から患者の主治医、会社・産業医に加え、両立支援コーディネーターを入れた「トライアングル型のサポート」が必要と提案して採用されて、広く推奨されています。がん対策推進企業アクションのアドバイザリーボード(助言委)メンバーでもあります。

2020/12/15配信

コロナ禍でも、がん検診・治療は受けるべき、と専門医の“忠告”

感染拡大状況を受け、受けるべきがん治療を受けないケースが増えています。これは、極めて憂慮すべき事態です。

衝撃的だったのが国立がん研究センターの胃がんの手術です。今年4月から10月に行われた外科手術の件数は90例。これは昨年の同時期の153件から41%も減少しています。東大病院でも43%減少とのこと。今年に限って、胃がんが減っている、ということはあり得ません。これは、胃がんの検査が行われていないために、発見がされていないということです。

実際、対がん協会では、全国の支部の調査結果から、がん検診受診者は2020年度(1年間)を通じて「3割減少」と推測しています。

文科省の「がん教育教材」では、「発生した1個のがん細胞が増え続け、10~20年かけてがん検診で発見できる1㎝程度の大きさになる。それが2㎝になるには1~2年。それ以降は進行がんになる」(趣意)と。つまり、命の危険に及ぶと。だから胃・肺・大腸がんの検診は1年に1回(胃カメラ検査は2年に1回)、がんの進行が他より緩やかな乳がん、子宮頸がんは2年に1回の検診を、と国を挙げて推奨しているのです。
検診で早期発見ができれば、早期治療によって、9割以上が完治します。手術の減少とは、がんの発見の遅れであり、それは、命の危険へと進んでいることなのです。

2日付の毎日新聞では、日本外科学会の池田徳彦副理事長(東京医大教授)と日本放射線腫瘍学会の中川恵一広報委員長(東京大准教授)が特集欄でともに、「病院は十分な感染対策をしているので過度に怖がらず治療を」(趣意)と手術、放射線治療それぞれについて語っています。そうであれば、感染対策を十分にして、がん検診をしっかり受け、がん発見に至ればすぐに治療すべき、といえます。中川医師は「検診の閑散期である来年1月から3月に検査を受けることを勧めます」(日経新聞2日付)と強く呼びかけています。

2020/11/30配信

第4回『がんサバイバーによる体験談コラム』

認定講師 澤田 崇史

私は、46歳の会社員で胃がんサバイバーです。現在も治療を継続しています。

2017年6月に会社の健康診断の結果、胃がんステージⅡの告知を受けました。
7月に胃の2/3を切除する手術をうけ、8月中旬から職場復帰しました。
職場復帰後、経過も順調かと思っていましたが、2019年1月に腹痛がひどく、念のため腹部から生検したところ再発が発覚しました。
夕方、仕事の最中に病院から電話があり、医師から検査した箇所から以前と同じ種類のがん細胞がでました、と言われた時は目の前が真っ暗になった気がしたことを今でもよく覚えています。
再発の告知は、初めてのがん告知より何倍も辛いものでした。

現在は通院しながら抗がん剤の治療をうけ、仕事も続けています。
私の場合、抗がん剤の点滴後、4,5日目あたりが下痢や倦怠感により体力も消耗するためそのような日は勤務時間を短縮するなど会社とよく相談しながら就労も続けています。

もしがんの告知を受けるようなことがあっても、焦りは禁物です。
がんの種類や病状にもよりますが、すぐに仕事を辞めなくても、治療と就労をうまく両立できることもあります。もちろん、まずはがんの早期発見・早期治療を大切にしていただけたらと思います。

がん治療には詐欺的なものもあり、だまされないことが肝要

がんと宣告されたら、ほとんどの患者さんがパニックになります。まして、完治しづらい状態となっていたら、何かにすがりたくなり、ネットや本屋などで探したりします。ここで、“おかしな治療”への道を進み、あとで、泣いてしまう(悪くなり、死亡することも)というケースが後を絶たないようです。
東大病院のがん専門医・中川恵一准教授(放射線治療部門長)が、日経新聞の11月25日付夕刊の連載コラムで、「あやしい医療の『宣伝行為』を見破るコツを伝授いたしましょう」と書かれていますので、以下に紹介します。

●ネット検索で上位にあっても、「広告」のマークがついたものは注意する
●「100%完治」、「末期からの生還」など、断定的な表現や誇張された表現は信用しない
●「体に優しい」、「セレブが使っている」、「あきらめないがん治療」などの曖昧な表現も要注意
●体験談や治療前後の画像を単に並べたものは信用しない
●保険が効かない自由診療の場合はとくに費用や副作用について確認する
●無料説明会、無料相談といった表現にも注意

<体験談2つ>
▼埼玉新聞記者で「くまがやピンクリボンの会」の代表・栗原和江さんは、熊谷市や隣接する行田市の小・中学校で高い評価の「がん教育」を展開されています。その栗原さんがFacebook(11月19日)で、「14年前、がん告知を受けたばかりの時、藁(わら)をもつかむ思いで『がんが消える水』(2リットル2万円)を購入。当時、息子たちに『おくさんは騙されています(息子たちは私のことをおくさんと呼びます)』と言われましたが・・。今では有り得ません。当時を反省しつつ、正しい情報の取り方がいかに大切かを実感。ヘルスリテラシーを高めて行きたいです」と書いています。
▼東京都八王子市に住む60代の男性は、栗原さんの話を聞いて、自分の見聞きしたこととして、「悪徳ガン治療の話しですね。最近、懇意にしている針医師が、咽頭ガンになり、変な水を買わされました。しかもペットボトルの蓋が空いたものを一本五万円でした。実に非常識な話しです。売った相手が建築屋のオヤジ。(針医師には)キチンと医師の処置を受けるよう勧めました」と。

「がんを正しく知る(正しい情報のみ収集する)」こと、そして、治療法などは専門医に相談するという基本的なことから外れないことです。担当の医師が信頼できなかったら、セカンドオピニオンという制度もありますから、自分の命に関わることとして、堂々とセカンドオピニオン、場合によってはサードオピニオンをやることを自身も、また、家族、友人・知人にも認識してもらうことが肝要です。

2020/11/16配信

子宮頸がんワクチンをめぐり、注目の3つの動きが・・

11月は子宮頸(けい)がん月間。3つの注目すべき情報を・・

① 厚生労働省が頸がんワクチンに関するリーフレットを改訂!

子宮頸がんワクチンに関するリーフレットを厚生労働省が改訂。接種を検討する際の参考にしてもらおうというものですが、「ワクチンでがんになる手前の状態(前がん病変)が実際に減ることが分かっていて、がんそのものを予防する効果を実証する研究も進められています。」と記述している点は、下記の②と連動して注目されます。

ワクチンは、2013年から小学6年~高校1年の女子を対象に定期接種がスタートしました。しかし、接種後の「副反応」の映像をめぐって大騒動となり、積極的な接種の呼びかけが中止され、一時は8割あった接種率が現在は1%未満です。

改訂したリーフレットはすでに自治体を通じて対象年齢の女性への配布が始まっているようですが、いまだ、「接種をおすすめするお知らせでなく、希望する方が接種を受けられるように情報提供するもの」との姿勢でもあります。でも、下記の②や③の情報等もあり、徐々に接種を勧めざるを得ない環境になりつつある、との意見があります。

② ワクチンで子宮頸がん発症リスクが約6割減⇒スウェーデン

先月初め、世界トップクラスのアメリカの医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に、子宮頸がんを予防するHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンを接種すると、実際に子宮頸がんを予防するという研究結果が掲載されました。ワクチンによる予防効果が実証された世界初の研究として注目されています。これまで、ワクチンが子宮頸がんを減らすかどうかは確認されておらず、それが「ワクチンは不要」との論拠の1つになっていました。

この研究はスウェーデン・カロリンスカ研究所などのチームによるもの。研究チームはスウェーデン国内の女性167万人について調査。10~30歳の間にワクチンを接種した人は発症リスクが63%減少。年齢別では17歳未満(日本の定期接種の対象年齢)で接種した場合、発症リスクが88%減少、17~30歳の接種の場合は53%低下しています。これほどの大規模調査での予防効果の確認は、ワクチン不要論を真っ向から否定する画期的なものです。

HPVワクチンは、子宮頸がんの前がん病変を予防できるとされ、がんの予防効果があるとされてきましたが、子宮頸がんは数年から10数年以上かけて病状が進むため、ワクチンの予防効果が明確な結果として出るのには時間がかかっていました。

研究グループは「ワクチン接種は子宮頸がんのリスクを大幅に減らすことにつながることが示された」としています。

③ 接種の勧奨中止で死者が4000人増加予測=大阪大研究チーム

大阪大学大学院医学系研究科の研究グループは、子宮頸がんを予防するHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの接種率が減少したことにより、2000年度以降生まれの日本女性の将来の子宮頸がん罹患者・死亡者数が増加する可能性を具体的な数値として示しました。

ポイントは、HPVワクチン積極的勧奨の差し控え(7年前)に伴い無料で受けられる定期接種の対象(小学6年~高校1年)を過ぎた2000~2003年度生まれの女子のほとんどが接種しないままだったことにより、避けられたはずの患者が約17,000人、死亡者が約4,000人増えた可能性があるとの予測です。同チームが接種率を計算すると、勧奨中止の影響が小さい1994年度生まれは55.5~78.8%ですが、影響が大きい2000年度生まれは14.3%、01年度生まれは1.6%、これ以降は1%未満としています。

大阪大研究チームの八木麻未特任助教は「日本で増加している子宮頸がんは、本来、HPVワクチンと子宮頸がん検診によってそのほとんどが予防可能です。一刻も早い子宮頸がん予防施策の改善が強く求められます」とコメントしています。

がん患者の4割(約15万人)が「痛み」の中で亡くなっていく!!

●がん患者さんの4割が、死亡直前まで「痛み」⇒遺族調査で判明
▼年間37万人のがんによる死者、うち14~15万人が苦痛状態で過ごす!
▼解決策⇒全医療従事者への緩和ケアの普及、治療技術の開発などあり!

がんの患者さんの痛み、特に亡くなる前の激しい痛みを取り除く(緩和ケア)ことを主要な目的の1つとしたのが2006年にできた『がん対策基本法』でした。
立法から10数年経ちますが、がんで亡くなった患者さんの4割が直前まで痛みを訴えていた実態が調査で判明、関係者を驚かせています。

これは全国約5万人の遺族(うち、がんが26,000人)を対象にした国立がん研究センターの大規模調査で明らかになったもの。この結果をテレビや新聞が、「死亡直前のがん患者約40%が痛み、緩和ケアの質に課題」、「医師の対処不足が原因」などと報じました。
がん患者さんの遺族調査は、国の施策に反映させるのが目的で2年前に試行的に5千人を対象に行われ、調査は有効と昨年は初の大規模全国調査となりました。

調査では、「亡くなる前1か月間、痛みが少なく過ごせたか」という質問に、「全くそう思わない」と答えた人が7.5%、「そう思わない」が11.6%。「あまりそう思わない」が10.1%、「どちらともいえない」が11.3%でした(合計40.4%)。「どちらともいえない」は、日本人は忍耐強く、苦労をかけている家族にも言わずに我慢しているケースがあり、家族も痛いといわない身内ながら、表情・態度等から「もしかして、痛みがあったのでは。だから『どちらともいえない』にしておこう」となったと推測されます。

また、痛みだけでなく、吐き気、呼吸の苦しさなども含めて「からだの苦痛が少なく過ごせたか」どうかの質問に、「全くそう思わない」と答えた人は8.6%、「そう思わない」13.6%、「あまりそう思わない」12.5%、「どちらともいえない」12.5%でした(合計47.2%)。

調査対象である2017年の20歳以上のがんによる死亡者数は36万9,837人ですから、4割となると14~15万人の方が、痛みのある状態で過ごしていたことになります。今回の調査は遺族への調査ですから、亡くなっていかれた患者さんの心身の苦痛はいかばかりであったか。これが、人生の最終段階(いわゆる終末期)におけるがん患者さんの実態ということであり、医療機関の痛みや苦痛への対処が足りない実情が浮き彫りになったといえます。

調査を担当した同センターの加藤雅志医師(がん医療支援部長)は「実態を反映した数字なのではないか。緩和ケアに対する医師の技術や知識の不足が考えられる」とした上で、①すべての医療従事者への緩和ケアの普及②苦痛を軽減するための治療技術の開発③患者や家族への緩和ケアへの理解促進―などを一層進めることが必要としています。

緩和ケアの現場への浸透が、いまだ不十分であることが明白になった以上、医師の対処の仕方の再検討、治療法の開発を含めた痛み除去への対応策など、国も関係学会も早急に取り組むべきとの声が高まっています。

2人に1人ががんになる時代。これは他人事でなく、自分ががんになった時のこととして、みんなで考えるべきかもしれません。

(調査内容資料)
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2020/1031/Investigation.pdf

2020/10/30配信

第3回『がんサバイバーによる体験談コラム』

認定講師 風間 沙織

私は人材サービス企業で働く乳がんサバイバーです。
現在はほぼ在宅で仕事をしています。この勤務形態はもちろんコロナの影響もありますが、私が勤める企業は2年ほど前からリモートワークを推奨しており、そのためのインフラも早くから整備されていたため、緊急事態宣言以降、業務に支障をきたすことなく、多くの従業員がリモートワークに切り替えることができています。
さて、私は今から6年前乳がんに罹患し入院手術をうけ、その後仕事をしながら抗がん剤治療を受けました。この抗がん剤治療中、一番つらかったのは混んだ電車に乗っての通勤でした。幸い当時からフレックス勤務制が導入されていたので、朝夕の一番混む時間帯を避けて通勤することができましたが、それでも立ったまま30分以上電車に揺られることは非常につらかったです。
6年前にもしもリモートワークができる環境にあったら、私自身のがん治療と仕事の両立の仕方も変わっていたと思います。例えば、病院で抗がん剤の点滴を受けながらリモートで会議に参加していたことでしょう。また、在宅勤務により満員電車に揺られることもなく落ち着いた体調、精神状態で仕事に望むことができたでしょう。
コロナにより世界中の多くの人が働き方の変化を求められ、いろいろな可能性を見出しつつあります。この動きががん治療と仕事の両立にも良い変化になると思います。
がん患者に限らず働きたいと思う人が働き続けられる世の中になってほしいと願っています。

がんに関する最新の「基本的な数値」をご存知ですか?

がん対策推進企業アクションでは、「がんに関する最新の基本的な数値」を国立がん研究センターの若尾文彦・がん対策情報センター長の協力を得て作成してみました。

1.日本人が生涯でがんになる(累積罹患=るいせきりかん)確率は?

男性は65.5%
(3人に2人)
女性は50.2%
(2人に1人)

*これまで「2人に1人ががんになる」と言ってきましたが、これは女性のがんの罹患率が48%、男性が63%だったため。でも、最新の統計では女性が、ついに50%を超え、男性も上昇、まさに、男性は3人に2人、女性は2人に1人となったわけです。
(国立がん研究センターは男性も「2人に1人」と報告)

2.上記の中の国が推奨する検診5がん(肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頚がん)の罹患・死亡率は、それぞれ全体のどのくらいか?

男性の罹患率 46.5%  
死亡率 49.5%
女性の罹患率 59.9%  
死亡率 50.6%

*この数値は、考え方で大きく変わります。「なんだ、がん検診(男性3つ、女性5つ)をやっても半分しか発見できないじゃないか」というのと、「たくさんあるがんの中で、5つのがん検診を受ければ、半分は発見できるんだ」という声です。がんは、検診で全てが発見できるわけではないのですが、5つだけで5割の発見が可能というのは、日常生活を考えると、優先すべきものと言えます。

3.上記の5がんに前立腺がん(男性)を加えた場合の罹患・死亡率は?

男性の罹患率 62.8%  
死亡率 55.2%

*前立腺がんは、国の推奨するがん検診の項目にはありませんが、多くの自治体で実施されていますので、取り上げてみました。5がんの時より、罹患が16,3%増、死亡は5,7%増ですので、前立腺がんの死亡率は罹患率に比べて高くないというのが分かります。

4.がんは全体の半分以上が原因不明というが男女別ではどうか?

原因不明は
男性46.7%  
女性72.2%

*日本人のがんの原因は、半数以上が原因不明という研究結果がありますが、男女別に分けると、かなり差がでます。男性は「たばこ」というのが知られていますが、女性は原因不明が7割を超えています。よく、「生活習慣が悪いとがんになる」と言われますが、実際は違うということです。がんになった人を「生活習慣が悪いから」と決めつけてはいけない(特に女性)のです。また、野菜・運動不足が強調されますが、数値的には、かなり低いです。ただし、生活習慣は、がん以外の病気の原因にもなっていますので、生活習慣の改善は必要と言えます。

*遺伝について日本のデータはありませんが、「5%」という海外の報告(1993年・ハーバード大学)もあります。

2020/10/06配信

第2回『がんサバイバーによる体験談コラム』

認定講師 柳田 真由美

私は、広島市在住で55歳の大学職員。夫と2人で暮らしています。

12年前、入浴中に胸の触診をしたところ、右胸にしこりを見つけました。
翌日検査を受け、そのしこりはがんではありませんでしたが、ドクターがマンモグラフィーの画像から疑問を抱いたため、MRIを撮ることを勧められました。
その結果、別の部位からステージ1の乳がんが発見されたのです。

2008年43歳、当時はホテルの管理職として多忙を極めており、
これから入院、手術、治療がはじまる。上司にどう説明しよう?
と、人生最大のパニックを起こしました。

ひと昔前の「がん」というと、「長期療養」「会社は退職」という社会通念がはびこっており、私は早く重い荷物を降ろしたいという思いから、20数年勤務した会社を退職したのです。

しかし、治療がひと段落すると体調は徐々に回復し、やっぱりまた働きたいと思い再就職活動を始めたのですが、40歳過ぎての就活は過酷そのもので、あのとき仕事を辞めなければよかった・・・と、いく度も後悔し、今でも未練があります。

がんは早期発見ならば完治する病です。
焦らず、投げやりにならず、病気というハンディに呑み込まれることなく、そのハンディを取り込み、歩んでいただけたらと願ってやみません。

「自分は大丈夫」は禁物です。
私は、がんは自然災害と似たところがあると思っています。
災害の被害を最少限にするためには”備え”が肝要。
がんも早期発見・早期治療なら最少限の対処ですみます。
そのための”備え”として、定期的な検診をお勧めいたします。

2020/08/27配信

第1回『がんサバイバーによる体験談コラム』

認定講師 花木 裕介

私は医療関連サービス会社に勤務する30代後半で2児の父です。

バリバリ働いていた2017年11月、突然、中咽頭がんステージ4aの宣告を受けました。
瞬間、「あと何年生きられるのか?」「家族、仕事、お金はどうなってしまうのか?」
などの不安が頭を駆け巡り、それは日増しに強まりました。

しかし、約9ヶ月に渡る治療・療養では、知人・友人、親族、勤務先のメンバー、医療従事者など多くの方々から応援いただき、2018年9月には無事に治療を終え職場復帰できました。復職後は、同じ病気に苦しむ方々の支えになれればと、産業カウンセラーのノウハウを活かし、出版・ブログ執筆等による情報提供や無料メール相談を開始。その中で、もっとも多かった相談が「罹患者とどう接すればいいのか?」でした。

そこで2019年11月、職場の了解を得て「一般社団法人がんチャレンジャー」を立ち上げ、今年5月には「がん罹患者にかかわる方必携『寄り添い方』ハンドブック」を発刊しました。
罹患者の体験談も多く掲載しています。

この冊子ががんになった仲間にかかわる際の何らかのヒントになれば幸甚です。
そして何より、事例を通じて、早期発見に向けたがん検診や予防などについて、日頃から話せる組織(企業)風土が生まれることを願っています。

■「寄り添い方」ハンドブック(無料)お申し込み先
https://www.gan-challenger.org/handbook