
第3回『がんサバイバーによる体験談コラム』
私は人材サービス企業で働く乳がんサバイバーです。
現在はほぼ在宅で仕事をしています。この勤務形態はもちろんコロナの影響もありますが、私が勤める企業は2年ほど前からリモートワークを推奨しており、そのためのインフラも早くから整備されていたため、緊急事態宣言以降、業務に支障をきたすことなく、多くの従業員がリモートワークに切り替えることができています。
さて、私は今から6年前乳がんに罹患し入院手術をうけ、その後仕事をしながら抗がん剤治療を受けました。この抗がん剤治療中、一番つらかったのは混んだ電車に乗っての通勤でした。幸い当時からフレックス勤務制が導入されていたので、朝夕の一番混む時間帯を避けて通勤することができましたが、それでも立ったまま30分以上電車に揺られることは非常につらかったです。
6年前にもしもリモートワークができる環境にあったら、私自身のがん治療と仕事の両立の仕方も変わっていたと思います。例えば、病院で抗がん剤の点滴を受けながらリモートで会議に参加していたことでしょう。また、在宅勤務により満員電車に揺られることもなく落ち着いた体調、精神状態で仕事に望むことができたでしょう。
コロナにより世界中の多くの人が働き方の変化を求められ、いろいろな可能性を見出しつつあります。この動きががん治療と仕事の両立にも良い変化になると思います。
がん患者に限らず働きたいと思う人が働き続けられる世の中になってほしいと願っています。
がんに関する最新の「基本的な数値」をご存知ですか?
がん対策推進企業アクションでは、「がんに関する最新の基本的な数値」を国立がん研究センターの若尾文彦・がん対策情報センター長の協力を得て作成してみました。
1.日本人が生涯でがんになる(累積罹患=るいせきりかん)確率は?
男性は65.5%
(3人に2人)、
女性は50.2%
(2人に1人)
*これまで「2人に1人ががんになる」と言ってきましたが、これは女性のがんの罹患率が48%、男性が63%だったため。でも、最新の統計では女性が、ついに50%を超え、男性も上昇、まさに、男性は3人に2人、女性は2人に1人となったわけです。
(国立がん研究センターは男性も「2人に1人」と報告)
2.上記の中の国が推奨する検診5がん(肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頚がん)の罹患・死亡率は、それぞれ全体のどのくらいか?
男性の罹患率 46.5%
死亡率 49.5%
女性の罹患率 59.9%
死亡率 50.6%
*この数値は、考え方で大きく変わります。「なんだ、がん検診(男性3つ、女性5つ)をやっても半分しか発見できないじゃないか」というのと、「たくさんあるがんの中で、5つのがん検診を受ければ、半分は発見できるんだ」という声です。がんは、検診で全てが発見できるわけではないのですが、5つだけで5割の発見が可能というのは、日常生活を考えると、優先すべきものと言えます。
3.上記の5がんに前立腺がん(男性)を加えた場合の罹患・死亡率は?
男性の罹患率 62.8%
死亡率 55.2%
*前立腺がんは、国の推奨するがん検診の項目にはありませんが、多くの自治体で実施されていますので、取り上げてみました。5がんの時より、罹患が16,3%増、死亡は5,7%増ですので、前立腺がんの死亡率は罹患率に比べて高くないというのが分かります。
4.がんは全体の半分以上が原因不明というが男女別ではどうか?
原因不明は
男性46.7%
女性72.2%
*日本人のがんの原因は、半数以上が原因不明という研究結果がありますが、男女別に分けると、かなり差がでます。男性は「たばこ」というのが知られていますが、女性は原因不明が7割を超えています。よく、「生活習慣が悪いとがんになる」と言われますが、実際は違うということです。がんになった人を「生活習慣が悪いから」と決めつけてはいけない(特に女性)のです。また、野菜・運動不足が強調されますが、数値的には、かなり低いです。ただし、生活習慣は、がん以外の病気の原因にもなっていますので、生活習慣の改善は必要と言えます。
*遺伝について日本のデータはありませんが、「5%」という海外の報告(1993年・ハーバード大学)もあります。