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2021/11/10

令和3年度「がん検診受診率向上推進全国大会」を開催しました

毎年10月を「がん検診受診率50%達成」に向けた集中キャンペーン月間としています。今年度は、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、11月10日に東京都千代田区の一ツ橋ホールでWEB配信を併用したハイブリッド形式にて全国大会を開催しました。
当日は、厚生労働省による「国のがん対策の現状」についての講演や事務局からの事業説明、がん対策推進企業アクションアドバイザリーボード議長/東京大学大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授の中川恵一氏から「コロナとがん~職域がん対策の重要性~」の講演が行われました。

全国大会チラシ
▲全国大会チラシ
▲イメージキャラクタ「けんしんくん」
▲イメージキャラクタ「けんしんくん」

【国のがん対策の現状】
岩佐 景一郎氏(厚生労働省健康局がん・疾病対策課 がん対策推進官)

我が国において、がん死亡者数は年々増加しており、2019年には約3人に1人ががんで死亡し、引き続き死亡原因の第1位となっております。また、新型コロナウイルス感染症はがん検診にも大きな影響を与えています。厚生労働省では、がん患者が働き、生活をして自己実現させることを目指した対策を日々進めております。また、新型コロナウイルス感染症による新たな生活様式の中でがん検診をどうすれば最も良い形で推進できるかを見直すことで、がん検診の重要性を再認識する機会になると考えています。

「がん対策基本法」が平成18年に議員立法で成立し、法律に基づく第3期の「がん対策基本計画」を平成30年から実施しています。第3期計画では、「がんの予防」「がん医療の充実」「がんとの共生」を3本の柱とし、これらを支える基盤の整備という形で「がん研究」「人材育成」「がん教育、普及啓発」を進めております。

がん検診には、対策型の検診として集団に検診を推奨するものと、任意型の検診として各個人が自分のリスクに応じて検診を受けていただくものがあります。目的やその対象、費用負担について様々な違いがあります。

がん・疾病対策課 がん対策推進官 岩佐 景一郎氏
▲がん・疾病対策課 がん対策推進官 岩佐 景一郎氏

政府としては、多くの方々に対策型検診として推奨される検診を受けていただくことにより、国全体としてのがん死亡率を低減させることを目指しています。がん検診の受診率は、国民生活基礎調査の中で3年おきに把握しており、目標値としての50%を長らく掲げていますが、目標には未だ達しておらず、他国と比較しても受診率が低いことが課題です。また、我が国では、がん検診を勤務先で受けられる方が多いということが1つの特徴です。

がん検診未受診の理由について調査をしたところ、「受ける時間がない」という制約によるものがある一方で、「健康状態に自信があり、必要性を感じない」や、「心配なときはいつでも医療機関を受診できる」といったがん検診の必要性を正確に理解できていない可能性を示唆する理由が多くなっているという点は気がかりな部分です。
昨今の新型ウイルス感染症の影響下におけるがん検診の現状は、昨年4月・5月の1回目の緊急事態宣言期間では一時的にかなり減少し、その後回復傾向を見せておりますが、年間を通じて概ね1割から2割程度の減少となっています。
先日、日本対がん協会の調査で9%程度のがん発見者の減少があったという報道もありました。早期発見されないものは、その後時間が経ってから発見され、それらが進行がんとなり、予後が悪くなるということを我々としては危惧しております。がん検診の受診率向上の取組として、「がん検診は不要不急ではありません。しっかりと受けて下さい。」ということをPRするためのリーフレットを作成し、各自治体を通して周知しています。また、「第3期がん対策推進基本計画」に基づき、「職域におけるがん検診に関するマニュアル」を作成しており、本マニュアルに、望ましい検診や精度管理、その他必要な対応について記載しておりますので、ご活用下さい。

一方で、がんに罹患してしまった場合の就労や治療、仕事の両立支援についても留意していく必要があります。実際に15歳から64歳の働く世代の患者数が増えています。仕事を持ちながらがんの治療のため通院している方は増加傾向にあります。企業等においては、貴重な人材を失ってしまうことにつながり、両立支援のためにどういったことが必要かを調査しつつ、私達としても治療と仕事の両立を支援していくための取組を進めております。その中では、両立しやすい環境や、拠点病院などでがんと診断された時から相談できる環境の整備など、様々な形での支援を考えております。

【主旨説明】
山田 浩章(がん対策推進企業アクション事務局長)

事務局長 山田 浩章
▲事務局長 山田 浩章

本事業は企業・団体等における、がん検診の受診率向上と、がん患者さんの就労支援等を目的として立ち上がり、本年度で13年目を迎えました。企業におけるがん対策は様々ですが、①がんについて会社全体で正しく学び正しく知る②早期発見のためにがん検診の受診率を上げていく③がんになっても働き続けられる環境を作っていく、という三つが基本となります。現在、参加頂いている推進パートナー数は約3500社(団体)となり、パートナーの総社員数は約790万人という数値になります。本事業では広報・研修・企業連携等、様々な企業に向けてがん対策の啓発支援を行っており、例えば社内告知用のポスター・パンフレットの配布やYouTubeの配信、医師やサバイバーによる出張講座や講演イベントの運営、eラーニングコンテンツの提供など多岐にわたる活動を行っています。

【コロナとがん~職域がん対策の重要性~】
中川 恵一氏(東京大学大学院 医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授)

私は37年間、がんの臨床医をやってきましたが、わずかなリテラシーの違いで運命が変わる病気ががんです。今後、職域でのがんリテラシーはとても重要になってきます。
がんは運の要素がありますが自分の行動によって変化します。男性の場合そのリスクは半分以下になります。また早期で見つければ9割以上が治るため、他の多くの難病と比べるとコントロールしやすい病気となります。仕事についてもサラリーマンの3人に1人が離職し、自営業者の場合は17%が廃業するというデータがあります。問題はその退職時期について、告知された時が3分の1で、治療を始まる前に離職しているということです。がんは「不治の病ではない」というイメージを持っていただく必要があると感じています。
富士通健保組合様のデータで、2014年度に新たに大腸がんと診断されたけんぽ組合員に対し、がん検診の有無による費用を試算したところ、受診している方が、便潜血検査や偽陽性にかかる費用を含めても、未受診で結果的にかかる医療費より低額で、会社としても費用が軽減されることがわかりました。今は優秀な人材を集めるためには、給与よりも健康充実といった時代にもなってきているようです。
命に関わる病気として圧倒的に大きいのはがんであり、サラリーマンの死因の半分ががんです。病死にかけると9割ががんであるということは、健康経営を行う上で、がん対策というのが際立って重要で、このことは就活生も、多くの市民もよく知りません。命に関わるという意味においては働く者にとって遥かに大きいものががんなのです。よく認識されていないため、がんに関する健康経営の評価がまだ高いとは言えません。このようなことが多くの人や経営者にわかっていただけると環境はがらりと変わります。

まず年間約100万人ががんに罹患し約38万人ががんで命を落としています。そして新規のがん患者様の3分の1が働く世代ということになります。就労世代の男性は65%、女性は50.2%ががんに罹患します。若い世代は男性より女性の方ががん患者が多いことをもっと知っていただきたいです。例えば20歳から39歳までのがんについては圧倒的に女性の方が多く、子宮頸がんのピークは30代で、乳がんは一つのピークが40代後半になります。

まず年間約100万人ががんに罹患し約38万人ががんで命を落としています。そして新規のがん患者様の3分の1が働く世代ということになります。就労世代の男性は65%、女性は50.2%ががんに罹患します。若い世代は男性より女性の方ががん患者が多いことをもっと知っていただきたいです。例えば20歳から39歳までのがんについては圧倒的に女性の方が多く、子宮頸がんのピークは30代で、乳がんは一つのピークが40代後半になります。

我が国ではがん検診の受診を必須項目として進めたことがないのです。本当に必要であれば学校で必須項目として教育されるはずです。とにかく住民健診を受けてほしいですし、これがエビデンスのあるものだと理解していただきたいです。

東京大学大学院医学系研究科 特任教授 中川 恵一氏
▲東京大学大学院医学系研究科 特任教授 中川 恵一氏

ヘルスリテラシーに関してはオランダが高く、アジアでは台湾が突出しており、日本は最下位となります。保健の授業をきちんと受けていなかったことが要因になると考えます。
現在、学校でのがん教育について、中学校と高校の学習指導要領にがん教育は明記されております。中学校では今年の4月から全面実施、高校でも来年の4月から開始されます。がん全体での5年生存率はステージ1は92%、2期でも82%となります。子どもたちが学習すれば、「早期発見できれば大体が治る」というふうに思うはずです。

新型コロナウイルスは下火になってきましたが、がんの方が1日の死亡数は多く、コロナ禍で挙げた三つの問題、「生活習慣」「早期発見」「がん治療」のうち、がん治療に対する影響というのは「早期発見」が非常に影響を与えています。座りすぎは82%がんリスクを高めます。日本人はそもそも座りすぎで、コロナの前のデータで世界最長の7時間であるにも関わらず在宅勤務が増えさらに問題視されています。他国民は、長時間座ることが非常に不健康だということを知っているのです。

また、私の周りでもコロナ太りの人が増え、それだけでがんリスクが高まりますが、糖尿病を発症すると、よりリスクが上がり、全体リスクとして2割増えてしまいます。
コロナによって、がん検診が減っています。日本対がん協会のデータによると、2020年は19年より3割以上の減少、今年に入って1月~6月のデータを20年と比べると相当増えました。検診の自粛は早期発見の遅れにつながり、進行がんが増えます。そしてこれからがん死亡が増えると想定しています。実はがん発見の契機は、がん検診や人間ドックが16%ぐらいです。
国立がん研究センターの調査研究では、向こう15年から20年はがん患者は増え続け、女性で30%、男性で13%増加すると予想されています。多くの日本人の体の中で早期がんから進行がんに移っているということです。放射線治療は費用が安く、手術費用の半分となり、99%保険が効きます。コロナの規制でも使える且つ、通院治療が受けられます。放射線治療のために入院する必要はゼロです。
がん教育を子どもたちがアニメを見て学ぶ時代に大人がすべきことは何でしょうか。放射線治療は本当に両立支援にふさわしいです。職域でも、社員あるいは被扶養者の方にも知ってもらえるような仕組みをつくっていく必要があると思います。

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