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イベントレポート

2018/10/30
「職域におけるがん対策の最新情報」東海セミナーを開催しました。

がん対策推進企業アクションの東海ブロックのセミナー「職域におけるがん対策の最新情報」(主催:厚生労働省、がん対策推進企業アクション)が、愛知県名古屋市の名古屋ガーデンパレスにて10月30日(火)に開催されました。
同セミナーは10月17日に開催された北海道ブロックセミナーに続くもので、今年度全国で3回目の開催となりました。

「我が国におけるがん対策について」
(厚生労働省 健康局 がん・疾病対策課 課長補佐 栗本景介氏)

我が国では1981年にがんが死因の第1位になり、それ以降も死因の1位として死亡者数も上昇し続けています。2017年のがんの死亡者数は約37万人と、約3人に1人ががんで死亡しています。
平成18年に議員立法でがん対策基本法が成立し、それに基づいてがん対策基本計画が平成19年に第1期が定められ、平成28年には法改正があり、「がん患者の就労等」「がんに関する教育の推進」が盛り込まれました。この改正部分には学校はもちろん、企業のご協力が非常に重要です。
現在では平成30年3月に第3期計画が閣議決定されています。この第3期計画では、「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す」を目標にし、「がんの予防」「がん医療の充実」「がんとの共生」を3本の柱に、これらを支える基盤の整備として「がん研究」「人材育成」「がん教育、普及啓発」を進めています。特にがん対策推進企業アクションでは、がんの早期発見、がん検診等の「がんの予防」、がん患者等の就労を含めた社会的な問題の「がんとの共生」、「がん教育、普及啓発」に力を入れています。

がん検診には、対象集団全体の死亡率を下げる目的の「対策型検診」と個人の死亡リスクを下げる「任意型検診」の2種類があり、自治体などからハガキなどで案内の来る検診が「対策型検診」、企業などが従業員に行う検診が「任意型検診」となります。
がん検診の受診率は、年々上昇傾向にはありますが、国の目標とする受診率50%には男性の肺がん検診のみが該当、その他の検診はまだ50%に達していないのが現状です。またがん検診の受診率を国際的に比較してみると、日本は諸外国に比べて低くなっています。
がん検診の受診機会についての統計では、比較的職域でのがん検診の受診者が多くなっています。がん検診未受診の理由では、1位が「受ける時間がないから」、2位が「健康状態に自信があり、必要性を感じないから」、3位が「心配なときはいつでも医療機関を受診できるから」となっており、受診率向上のためには、もっとがんに対する正しい知識を広めることが必要であると思います。
職域におけるがん検診では、福利厚生の一環として実施されているところが多いですが、その検査項目や対象年齢などの実施方法はさまざまです。また、対象者数や受診者数等のデータの集約などが組織的に行われておらず、受診率の算定や精度管理が困難でもあります。
厚生労働省では、職域におけるがん検診の実施に関して参考となる事項を示し、科学的根拠に基づく検診ができるよう、「職域におけるがん検診に関するマニュアル」を策定しておりますので、ご参考にしていただければと思います。

がん患者の3人に1人は就労可能な年齢での罹患といわれており、最新の2014年の統計では、86万7408人のがん患者のうち、20〜64歳の罹患者は全体の27.1%、20〜69歳まで広げると全体の41.4%になります。
働くことが可能で、働く意欲のあるがん患者が働き続けるためには何が必要か、という世論調査では、「病気の治療や通院のための短時間勤務」「1時間単位の休暇や長期の休暇が取れるなどの柔軟な休暇制度」「産業医との連携」「職場の理解」などが求められています。
また、日本の労働人口の約1/3が何らかの疾病を抱えながら働いており、アンケートからも治療を続けながら働くための制度や、社内の理解が必要だということがわかります。
治療と仕事を両立するためには、今後は働き方改革実行計画に基づき、経営トップ、管理職等の意識改革、両立を可能とする社内制度の整備促進、傷病手当金の支給の検討など、会社の意識改革と体制の整備が必要です。
同計画では新たに、主治医、会社・産業医、両立支援コーディネーターの三者により、患者の治療と仕事の両立をサポートする「トライアングル型支援」を推進しています。
さらに、がん患者の就労に関する取り組みは、厚生労働省健康局がん・疾病対策課、職業安定局首席職業指導官室、労働基準局産業保健支援室の3部局により連携を密に取りながら進めています。

また、がん対策推進企業アクションでは、参画いただいたパートナー企業と「社内における普及啓発活動」「社内における活動・情報発信」「事業的な価値・社会的な価値の創出」に取り組んでおり、平成29年度末では2584社に、10月26日現在では2705社まで増加しております。本日は、さまざまな講演を予定しております。まだがん対策企業アクションパートナーに登録いただいていない企業におかれましては、ぜひこの機会にご登録をお願いします。

講演の様子

【がん対策推進企業アクション事業説明】
(がん対策推進企業アクション事務局 事務局長 大石健司)

がん対策推進企業アクションは、職域でのがん検診受診率を向上させるための国家プロジェクトであり、厚生労働省の委託事業です。「今年も行こう、今年は行こう、がん検診」をキャッチフレーズに、がんになっても働ける社会を目指して活動しています。

現在の日本は、女性の社会進出、定年延長などを理由に、従業員の7人に1人ががんになる可能性があります。がん対策は、いまや福利厚生ではなく経営課題といえます。従業員ががんになっても働き続けられる環境を整えること、そして人財(材)を守るがん対策が必要とされています。
また、がん対策に関する環境も変化しています。平成28年度より学習指導要領にがん教育の実施が明記され、小・中・高等学校でのがん教育がスタートするとともに、自治体の取り組みも活発化しています。
さらに「職域におけるがん検診に関するマニュアル」が策定され、科学的根拠に基づくがん検診が職場で受けられる環境整備も進んでいます。
加えて、がんに対する正しい知識を得ることが、今後の企業の成長にとっても大きなメリットとなることからも、職場での「大人へのがん教育」を提供することが求められています。

日本で1年間にがんになる人は約101万人、がんによる死亡者は約37.8万人、生涯でがんになるリスクは男性が62%、女性が46%と男性は過半数を超え、全体で見ても約半数ががんになる計算です。男性のがんの1位は胃がん、2位が大腸がん、3位が肺がん、女性は1位が乳がん、2位が大腸がん、3位が胃がんとなっており、年間で男性は22.3万人、女性は15.7万人ががんに罹患しています。さらに継続的にがん治療を受けている人は約163万人もいます。日本は人口比におけるがんの死亡率が高く、企業にとって人財損失リスクは大きな問題です。
がん患者の年齢別男女比では、50代前半までは女性の方が比率は多く、特に20〜30代では女性が大きく男性を上回ります。これは乳がんや子宮頸がんが若い頃になりやすいがんだからですが、さらに定年延長により男性のがん患者は急増し、就業者におけるがん患者は増えていきます。

このような状況にも関わらず、がん検診の受診率はOECD加盟30カ国の中で最低レベルです。毎年受診率は向上してきているものの、男性では肺がん受診率が51%、女性では乳がん受診率が44.9%でトップと、国が目標としている受診率50%にはまだ及んでいません。乳がん・子宮頸がん検診受診率を例に挙げると、諸外国では50〜80%に対し、日本は35〜50%と国の目標とする50%に届いていません。このように日本人は、がん検診を受けている人が少ないのが現実です。
がんは早期発見・早期治療が基本で、早期発見(ステージ1)された胃がん・大腸がん、子宮頸がん、乳がんの5年相対生存率は95%を超えており、がんは早期発見であれば治癒する可能性は高くなるとともに、経済的負担も少なく、仕事と治療の両立もしやすくなります。
平成29年度にがん対策推進企業アクションで行ったアンケートの「経営者側のがんへの理解度と事業者におけるがん検診実施状況」では、がんに対する正しい知識を持っている経営者や従業員のいる企業は、がん検診受診率が高いことがわかりました。いかに「がんに対する正しい知識(教育) 」が必要かわかります。

現在は、医療も進歩し治療成果が上がってきただけではなく、仕事と両立しながら治療が行えるようになってきました。診断時点で勤めていた会社に、現在も勤務中あるいは休職中の人は57%と過半数を超えていますが、一方で依願退職・解雇された人も34%おり、ここでも、がんになっても仕事は両立できるという「がんに対する正しい知識」が必要です。

今後、企業が取り組むべきがんアクションとは、企業の健康診断にがん検診を加えたり、検診の効果を啓発するなどの「がん検診の受診を啓発すること」。がんは早期発見が重要だということ、がんになっても働き続けられること、正しい生活習慣でがんになるリスクを減らせることなどの「がんについて企業全体で正しく知ること」。治療のサポート体制づくりや柔軟な休暇制度などの「がんになっても働き続けられる環境をつくること」の3つです。

人材を守るためには、がんの早期発見・早期治療が必要です。がん対策推進企業アクションは、職域でのがん検診受診率を上げるためのサポートをしています。具体的には、推進パートナー企業・団体(健康保険組合など)数と従業員数の拡大、がん対策を啓発する科学的根拠のあるコンテンツ制作と情報発信の推進、がん検診受診の現状把握と課題の整理などを行っています。現在の推進パートナーは大企業・中小企業を問わず平成30年10月15日現在、2705社・団体、約705万人の従業員総数を誇ります。
職域でのがん検診受診率を国の目標とする50%の実現に向けて、推進パートナー企業へのがん教育講師派遣や全国各地でのセミナー開催、がんに関する小冊子の配布、推進パートナーのがん対策事例の公開、各種データの提供など、企業のさまざまながん対策をサポートしていますので、ぜひご利用ください。

【がん対策推進企業アクション 推進パートナー申請ページ】
http://www.gankenshin50.mhlw.go.jp/about/registration.html

講演の様子

【治療と就労の両立を支えるがん検診】
(東京大学医学部附属病院 放射線科 准教授/がん対策推進企業アクション アドバイザリーボード議長 中川恵一氏)

国家プロジェクトであるこのがん対策推進企業アクションは10年目となりますが、ご存知の方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?(会場の1/4程度が挙手) まだまだ、認知度は低いですね。ぜひ本日の講演を聞いて、このプロジェクトの素晴らしさを周囲の方にお教えいただくとともに、少しでも多くの企業・団体がこのプロジェクトにご参加いただきたいと思います。

「治療と就労の両立を支えるがん検診」という大変難しそうなタイトルの講演ですが、一番重要なのは職場で「がんを知る」ということです。がんという病気を知れば、自然と早期に見つけておけば仕事にも影響が少ないということがわかると思います。すべての末期がんは、1個のがん細胞から始まります。そして、1 cm程度の大きさになって、ようやく発見できるわけです。例えば、5mmの肺がんというのは、我々専門医が最新の医療機器を駆使しても発見はほぼ不可能です。早期がんといわれるものは、2cm程度までのものをいい、それからだんだんと進行がんになり、転移すると末期がんとなってしまいます。
要するに小さすぎて見つからないがん、ようやく発見できる早期がん、進行してしまったがん、そして末期がんと、一連のがんのどこを見るかで、将来がまったく違ってくるわけです。こういうことを知っていただくことが非常に大切です。
がんは「わずかな知識の有無で運命がかわる」病気です。あらゆる病気の中で、基本的なことを知っているかどうかで運命がかわります。知っておくべきことは、本日お配りしている小冊子「がん検診のススメ」に載っていることで十分。必要なのは、それほど大業な知識ではなく、10分15分で読める程度の小冊子の内容を知っているか知らないかです。この程度のことを知らない原因は、今まで義務教育の中でがんに対することを教えてこなかったからになりませんが、今さらいっても仕方がないことです。がんのことを正しく知れば、自然とがん検診も受診するようになり、早期発見・早期治療が行えます。仕事との両立もできますし、医療費も安くすみます。大切なのは、自分の体は自分で守る、あるいは大切な人の体を守る、そのためには企業の中でがんのことを知ってもらいたいと思います。

がんになるのは男性と女性、どちらが多いでしょうか? これは圧倒的に男性です。生涯でがんにかかるリスクは男性が62%、女性は47%です。がんは細胞の老化といえる病気ですから、長期的に見れば人口の高齢化によりもっと数値は上がっていきます。
現在、がんにかかるとすべてのデータは、全例登録され、全国のデータが集約されます。これはがん登録推進法により、一昨年から始まった全国がん登録という制度ですが、日本は世界一のがん大国であるにも関わらず、制度化が非常に遅かったと言わざるを得ません。この遅れにより、日本のがんのデータはまだまだ不正確ですが、今後はより正確なものになるでしょう。

さて、男性にがんが多い理由ですが、これは生活習慣が悪いことからきています。がんになる原因の半分以上は、アメリカのデータによると喫煙と生活習慣です。とりわけ喫煙は大きな影響を与えます。がんは、たった1個の細胞が約20年をかけて1cm程度の大きさになる病気ですから、20年前の喫煙率がこの男女差に現れており、男性の喫煙率は年々減っていますから、将来的には男女の罹患率はそれほど変わらなくなるのではと思われます。
日本は世界一がんが多い国です。それは、世界一の長寿国だから当たり前の話です。しかも、日本ではがん罹患率の高い高齢者が働いているのが特徴です。
また、全体では男性の方ががんは多いのですが、若い世代では女性のほうが多くなっています。なぜなら、女性がなる乳がんは40代がピーク、子宮頸がんは30代がピークだからです。乳がん罹患においては女性ホルモンが大きく関係しますから、栄養状態のよくなった現代は生涯での月経の回数も多くなるとともに、女性の社会進出などにより子どもを産まない選択が増え、昔に比べて増えています。また子宮頸がんは、性交渉におけるヒトパピローマウイルスの感染が原因の100%です。性交渉の若年化により、子宮頸がんも若い人に増えています。

今、日本で一番多いがんは大腸がんです。一昔前は胃がんが一番でしたが、ピロリ菌感染がほとんどの原因の胃がんは、衛生状態のよくなった近代では、ピロリ菌感染者の減少とともに減り続けています。肝臓がんも同様に、輸血による肝炎ウイルス感染が原因の多くでしたが、現代では輸血のウイルス除去により急激に減少しています。
大腸がんのがん検診は「検便」です。1度の検査で2回、便を取るだけのわずかな手間で大腸がんを見つけられるのですから、やらない手はありません。大腸がんは「検便」で見つかるような早期発見であれば5年生存率98.2%に対し、進行して見つかった場合は5年生存率16%、10年生存率はほぼ0になってしまいます。「検便」をするだけで運命が変わります。
働くものにとって、がんは非常に大きな病気です。ずいぶん前のデータですがサラリーマンの死因の約半分ががんでした。最近の伊藤忠商事のデータでは、同社の在職中に病気で亡くなる人のうち9割ががんでした。要するに自殺を除いて、病気で亡くなるサラリーマンのほとんどががんだということです。繰り返しになりますが、とにかく、会社の中でがんを知ってもらって、がんを克服することが重要です。

がんの治療は「敗者復活戦のない一発勝負」といえます。最初に間違った選択をしないこと。正しい治療をすれば、がんは治せます。がん全体で見ても5年生存率は65%、早期がんに限れば95%が治癒します。ですから、試合に望む前に相手(がん)のこと、ルール(治療方法)を知っておく必要があります。
現在がんの告知率は100%です。そして、がんと診断された患者の1年以内の自殺率は20倍になっています。告知されて1〜2週間は、患者の精神は混乱します。この時期に会社を辞めたり、最悪の場合は自殺したりしてしまいます。データによるとがんになって退職する人は30%。特筆すべきは辞める時期で、診断確定時が32%、診断から最初の治療までが9%と、実に40%超の人が実際に治療を開始する前に退職しています。実際に治療をしてから本当に辛くて辞めるのではなく、がん治療は大変だと予測のもとに辞めてしまう。こういうことになる原因は、がんという病気を知らないからになりません。
また日本人は誤解していますが、「がんは、よほど進行しても症状を出さない病気」です。全身に転移したがんでも、よほど末期の末期にならない限り症状は出ませんから、早期に発見されるがんにおいては、自覚症状などまったくありません。ですから、普段の生活態度がよい人も、元気で健康だと思っている人も定期的に検診を受けなければなりません。
もしも進行がんや末期がんになってしまうと、完全治癒が難しいだけでなく、医療費もとてつもなく高額になっていきます。高い薬では、年間の薬価が1300万円かかるものもあります。いかに国民皆保険があるとはいえ、保険は企業や組合、税金などで賄われていますから、自分だけの問題ではないということを認識する必要があります。

また、日本は健康や医療に関する知識、ヘルスリテラシーが低いのも特徴で、国別の調査ではインドネシア、ミャンマー、ベトナムなどより断トツで低く、最下位となっています。これは学校で習ってこなかったからです。しかし、昨年の4月から小・中・高等学校でがん教育が始まりました。学習指導要領にも明記され、次の教科書改訂では、がんの項目が教科書に追加されます。このような正しいがん教育を受けた子どもたちが増えることで、将来的には正しいがん知識が広がり、ヘルスリテラシーも上がることが期待できます。

日本人はがん治療は手術だと思っている人が多いですが、がん治療には「手術」以外にも「放射線治療」「抗がん剤」があります。欧米ではがん患者のうち6割が放射線治療を受けています。日本ではまだ3割です。手術なら入院が必要ですが、放射線治療なら通院で可能ですし、通院なら働きながら治療を行うことも可能です。今では放射線医療機器も技術も進歩していますので、たった数回の通院で治療を終えることも可能です。がんの種類や病状によってはさまざまな治療の選択肢があるということを、がんになる前に知っておくことが大切です。
がんを克服するには、「がんを知る」ということです。禁煙や生活習慣を改めるなどの予防はもちろん、元気な時でもがん検診を受けること。そして早期発見・早期治療が大切です。

講演の様子

「胃がんの経験をとおして伝えたいこと」
(がんサバイバー 澤田崇史氏/キョーワグループ 有限会社ヘルスサポート 代表取締役)

私は普段、調剤薬局で薬剤師をしており、家族構成は共働きの妻と3名の子どもがいます。
私ががんを発症したのは昨年、43歳の時です。胃がんのステージ2cでした。それまでは、少しコレステロール値が高いくらいで、胃に関する自覚症状は全くありませんでした。昨年6月、年に1回の会社の健康診断があり、その10日後くらいに胃がんの告知がありました。その後すぐに入院や手術の予定を決め、手術前の検査を終えて、2週間の入院。入院2日目に手術を行いました。退院後3週間ほどで職場復帰をしました。告知から手術、職場復帰までは約2か月です。
私の胃がんは、低分化型といわれる進行の早いタイプのもので、告知時にすぐ手術をした方がよいと説明されましたが、すぐといっても仕事はどうすればいいのだろう、と思うと同時に、がん保険にも入っておらず、いくらくらい費用がかかるのかといった不安がありました。
また同時に、早期発見ではありましたが「いつまで生きられるのかな」と、急に“死”という言葉が身近なものになった気がしました。
妻には、家族が寝静まってから深夜に説明しましたが、案の定号泣され「早期だから大丈夫」となだめながら説得しました。会社へは、サラリーマンですから予定が1か月先、2か月先まで決まっており、関係各所に説明をしなくてはならず、本当に慌ただしく大変でした。
私が入院してからは、妻も仕事を休みましたし、仕事の同僚にも迷惑をかけてしまっていて、がんというのは自分だけではなく、周囲にも大きな影響を与えてしまうものだと考えさせられました。がんの告知、そして治療は普段の生活を一変させるような出来事だと思います。
手術では胃の4/5を摘出しましたが、幸いリンパ節への転移も認められず現在に至っています。進行の早いがんタイプであったことから、もしも発見があと1年遅れていたらどうなっていたかと思うと、本当に早期発見できてよかったと感じています。
手術後は、病院の廊下を端から端まで歩くだけで精一杯でした。しばらくして食事が始まりましたが、最初はだし汁のような液体とほとんど米粒のないおかゆでした。退院の前には、固形物を刻んだような食事になりましたが、2口3口で胃が苦しくなってほとんど食べられませんでしたので、退院時には体重が15キロほど落ちていました。
治療前は、退院したらすぐに仕事復帰がでると安易に考えていましたが、さすがに体重がここまで減ると、自分の体が自分の体でない感覚で、当初の予定より復帰を2週間ほど遅らせました。会社からは、体が本当によくなってから復帰すればいいと、親身になっていただきましたので本当に感謝しています。
退院後の生活については、やはり胃がほとんどありませんので食事が大変でした。少量をよく噛んで、ゆっくりとが基本です。味の濃いものを食べたり、量を食べ過ぎると胸焼けや逆流が起こりました。さらに、胃から腸へ急激に食物が流れ込むことによって起こるダンピング症候群により、動悸やめまい、脱力感が起こることもありました。また、胃がないことによってビタミンやカルシウムの吸収が悪くなることもあります。
今では、基本的に6週間ごとに通院をしており、腫瘍マーカーやCTなど、再発がないかの検診をしています。6週間経たなくても、体調で気になることがあれば随時受診しています。再発防止のために、抗がん剤も服用しました。副作用が心配でしたが、私の場合は胃が少し気持ち悪い程度で、若干の肝臓や骨髄の数値は低くなっていましたが、なんとか乗り切ることができました。
退院後は、がんが生活習慣病ということも気にして、嫌いだった野菜も取り、バランスよい食事を心がけています。
復職時に心配だったのは、体力の低下と、胃の切除による1日5回の食事です。車の運転も不安でした。会社からは、できるだけ残業のない勤務体系と自宅に近い勤務先へ人事異動していただきました。
職場復帰は、がんの種類やステージによって個人差がありますから、就労支援の方法もそれぞれ異なると思います。職場復帰するにあたっては、会社に大まかな治療の予定や生活する上での注意点、通院の頻度などを伝え、無理のない業務や就業時間でスタートしていただけたらと思います。また、がん患者が職場復帰する場合は、職場に迷惑をかけた分、頑張らなければと思いがちですが、「無理しなくていいよ」と定期的に声をかけていただければ安心できると思います。

がんを経験すると、再発の不安、死の不安がずっと続きます。生存率9割といわれても、残り1割は死ぬのかとネカティブに考えるときもあります。そして、どうしても死について考えてしまう時期、逆に前向きに生きていこうと考える時期、気持ちには波があります。毎回、検査の結果を知らされるたびに不安ですし、今後もこのような不安は消えることはないかもしれません。
しかし、がんになったことによって、命の大切さを再認識しました。命には限りがありますので、自分の人生を納得できるよう精一杯生きたいと思いました。また、いかに自分が周りの人に支えられて生きているのかもわかりました。生活習慣も見直す契機となりました。
実は、私の義理の兄も5年前にがんで他界しています。余命半年の宣告を受けましたが、脳への転移が予想より早く進み、1か月で亡くなりました。脳への転移があっという間で、愛する妻と双子の小さな息子にも、言いたいことが残せませんでした。

がんは早期発見、つまりがん検診が大切です。早期発見できるかどうかで、運命が変わります。その後の治療やお金の負担も変わります。今一度、自分の命の大切さ、そして周りの自分を支えてくれている人々への感謝を忘れず、予防と発見に努めていただければと思います。

講演の様子

【質疑応答】
回答者
中川恵一氏(東京大学医学部附属病院 放射線科 准教授)
澤田崇史氏(がんサバイバー)
栗本景介氏(厚生労働省 健康局 がん・疾病対策課 課長補佐)

質問)
私は、会社で健康診断の担当をしています。
従業員の受診率は100%を達成しているのですが、従業員から、妻に診断を受けさせたいのだけれども、何を言っても受診してくれないので、どうすればいいですか? との相談を従業員から受けます。
このような場合に、なにかよい方法はありますでしょうか?

回答)

中川氏
今回、お配りしている「がん検診のススメ」を奥様に読ませるのが一番だと思います。
検診を受けたがらない方は、「なんで検診を受けなければならないのか」がわかっていないから受けないのです。こういう人に、無理やり検診に行けとすすめても絶対に行きません。まずは、正しい知識を得てもらうことが大切です。
今は元気で痛みがないから平気だとか、様子がおかしくなってから病院に行けばいいなどと、ほとんどの日本人は、がんに対して勘違いしています。がんは、自分ではまったく症状に気づかない病気だということ、元気であってもがんは発生しているかもしれないこと、がんは治らない病気ではなく、早期に発見すれば完全治癒もするし、お金もそれほどかからないということなど、正しい知識を教えてあげることです。
そうすれば、自ずと検診に行くと思いますし、がん知識が理解できれば、その周囲のみなさんにも検診の大切さが広まり、より受診率は高まると思います。

質問)
胃がんの原因は、98%がピロリ菌感染と伺いました。それでは胃がん検診よりもまずは、ピロリ菌感染の有無を調べるほうが有効ではないでしょうか?

回答)

中川氏
これは非常に重要な質問です。勘違いして欲しくないのは、ピロリ菌の有無を調べるのは“検査”であって、“検診”ではないということです。つまり、ピロリ菌検査では、自分がどれだけ胃がんにかかるリスクがあるかという評価をするものです。検診というのは、読んで字のごとくがんを見つけるということです。ですので、ピロリ菌の検査をやったからといって、がん検診を受けなくていいという理屈にはなりません。
また、ピロリ菌がいなかったからといって、絶対に胃がんにならないわけではありません。国がやっている対策型検診にピロリ菌の検査が入っていないのは、ピロリ菌の検査で、胃がんの死亡率が下がるという明確なデータがまだないからでもあります。ですが、胃がんのリスクはピロリ菌が大きな要素を占めますので、検診を実施するのに税金の投入がない企業などでのピロリ菌検査を行うことは、ありだと思います。そして、もしもピロリ菌検査を行うのであれば、新入社員入社時など、できるだけ若いうちにやることをおすすめします。なぜなら、ピロリ菌が胃の中で存在している期間が長いほど、胃がんのリスクは高まりますから、できるだけ若いうちに発見して、それを除菌するというのが胃がんのリスクを下げることにつながるからです。
澤田氏
私も胃がんの手術をした1年後くらいに、ピロリ菌の除菌をしました。
中川氏
術後ピロリ菌を除菌したほうが再発しにくくなるデータがありますから、そのような対応を取られたのだと思います。
栗本氏
基本的には、中川先生がおっしゃられましたように、企業の任意型検診におきましても、国がすすめる対策型検診をベースにしていただければと思います。ただし、マニュアルにそって100%やって下さいというわけではなく、マニュアルを踏まえた上で、企業や団体においてコンセンサスが得られて、必要だと思われるものは加えていただいてもよろしいと思います。
中川氏
あくまでもベースは対策型検診で、それに合理的な判断でバリエーションを加えるのはありだと思います。例えば、腫瘍マーカー検診とか、PET検診とかになると、少しやり過ぎかもしれません。
講演の様子
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